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第87話 共闘のフルグライト



〜前回までのあらすじ〜


テンガイの両腕を落とし、どこかへと消えたキリサメは、別の目的の為に戦場へと現れた。

マッスルゴブリン族の魔人筆頭、ムスコロと一戦を交えるが、分が悪いと判断したキリサメは再びどこかへと消えた。


再び夜が訪れ始め、『真血解放』状態へと変化したセンヤだったが、カルマとノワルは思いもよらぬ方法で、夜を纏うセンヤへと攻撃を当てる術を編み出した。


センヤとカルマのお互いの覚悟がぶつかり合う。

その時、カルマの驚きの生い立ちが明かされる……。







早朝に始まった戦いは、城護が他勢力を圧倒しつつも、未だに終わる気配を見せなかった。

やがて太陽が沈み始め、徐々に宵闇の足音が近付いてきた。




「『真血解放(リリース・ディストラクション)』」




太陽が完全にその姿を地の向こうに消したと同時に、黒炎に包まれながら真血解放へと至ったセンヤ。

カルマとノワルは一旦後退し、解放状態のセンヤを警戒する。




「知っているぞ、吸血鬼!一部の吸血鬼のみが使える、神から賜りし力!!同じ状態となった貴様を一晩スキャンし続けた結果、それは紛れも無い、天上に存在する『夜』だという結果を得た。ならば―――」




カルマは勢い良く飛び上がると、最初に上へと乗ってきたまま放置されていた装甲車へと飛び乗った。

彼の身体は装甲車の中へと格納され、完全にその姿を消してしまった。




«対象者:カルマ・トランキリテの搭乗を確認»

«ユニオン時は全ての武装を所定の位置へとお戻し下さい・・・全武装の格納を確認しました»

«頭部、脚部の軽微な損傷を確認。予備パーツとの換装を始めます»

«右腕部への強化右腕結合・・・完了»

«左腕部への強化左腕結合・・・完了»

«腹部への装甲腹部結合・・・完了»

«脚部への強化甲脚結合・・・完了»

«後背部への高純度魔力炉結合・・・完了»

«追加装甲『陽光炉』・・・腕部引き通し結合完了»

«最終チェックへと移行します・・・»

«システムオールグリーン»

«ご武運を»




「カルマ・トランキリテ、出るぞッ!!」




バシュッ!!!




装甲車の中から勢い良く射出されたカルマ。

そのまま宙に浮いた状態で、ロボットアニメで見た事のあるようなポーズを決め、轟音と共に地面へと着地した。

先程よりも更に装甲に厚みが増しているが、どことなくシャープに見えるデザインをしていた。




「フッ………これを見せるのはお前達が初めてだ。これが俺の完全武装(フル・アーマー)モード……テェム博士の回路を組み込んだ最強の形態だ……!そして………」




腰へと仕舞われた雷響を抜くと、刀身は先程の蒼と違い、燃えたぎる紅蓮のような赤へと染まっていた。

雷響の周囲は、まるで昼間のように照らし出されていた。




「急造で造り上げた『陽光炉』。これは強烈な『陽』の力を持ち、文字通り『夜』を穿つ。この意味が分かるか、吸血鬼」




「ほう!なるほど!……ムンッ!!!『太陽石の加護(グレイト・ヘリオライト)』!!!」




ノワルの絢爛大剣、そして鎧は、太陽のようなオレンジ色の輝きを放ち始めた。

日長石(サンストーン)』別名『太陽の石(ヘリオライト)』。

古くから太陽の力を宿す石と信じられており、ソルシエラの今は亡き故郷の名産品でもあった。

石の持つ力を強化するノワルが扱えば、微力な太陽の力でさえ何倍にも強化する事が出来る。




「なかなか興味深い能力だ、魔将。後で調べさせてもらおう。先ずは……貴様から潰すッ!!吸血鬼ッ!!」




移動速度も格段に増したカルマは、勢い良くセンヤへと斬り掛かる。

終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)でそれを受け止めると、カルマは右手に持った大きな銃から、光輝く銃弾が放たれた。

ギリギリでそれを躱すが、それはセンヤの脇腹付近を掠めていった。

どうやらこの銃から放たれる銃弾も『陽光炉』の恩恵を受けているようで『真血解放』状態のセンヤにも当てる事が可能なようだ。




「ドッセェェェイッッ!!!」




躱した先にはノワルが先回りしており、太陽の石(ヘリオライト)の加護を得た『絢爛大剣』での斬撃が待っていた。

宙で回転しながら、振り下ろされる『絢爛大剣』を足で蹴り飛ばす。

センヤは蹴りの反動で2人から距離を取り、体勢を立て直した。

2人を圧倒するセンヤの撃破を最優先とした2人は、完全に共闘をする事を選んだようだ。




「勝つ為ならば俺は魔将とも共闘しよう。最大の障害は貴様だと判断した。吸血鬼」




「それはつまり柔軟な思考ッッ!!!」ニカッ




2人は悪びれる様子も無く、肩を並べていた。

『真血解放』状態となれば、攻撃を受け付けなかったのだが、まさかここで攻撃を当てる事が出来る者に出会うとは思いもよらなかった。




「何人束になろうが、邪魔するなら叩き潰すだけだッ!」




今度はセンヤからカルマへと先に仕掛ける。

体術も交えた激しい打ち合いが始まる。

ノワルも参戦し、同時に2人の剣を受け止める事もあったが、それでもセンヤへとやや分があった。




(まだだ………!!まだ足りない……!!!)




この戦いを終わらせる為に、力技だがセンヤはここ周辺一帯に『紅水晶』を発生させ、戦いの幕引きを図ろうとしていた。

しかし、範囲がかなり広い為、それには大量の魔力を必要としていた。

大気からの魔力の吸収、そしてノワルやカルマから奪い取った魔力では、まだ到底足りていなかった。

しかしそれを2人が待ってくれる訳も無く、3人の剣の刀身がぶつかり合い、1歩も譲らぬ睨み合いが始まった。

カルマの紫色に光る目が、鎧の奥からセンヤを見据える。




「国跡を破壊してでも、貴様らを殺し尽してでも手に入れる……それが俺の覚悟だ。吸血鬼ッ!」




「そうかよ……俺はお前のその覚悟を通す気は無い……!カルマ・トランキリテッ!!」




センヤが強引に2人の剣を跳ね除け、再びカルマへと距離を詰め猛攻を仕掛けた。

カルマも何発か陽光弾を放ちつつ、激しい打ち合いを続ける。

宙に浮かぶヘリオライト結晶を発生させたノワルは、そこから陽の力を帯びた光弾をセンヤへと放つ。




「奴隷を解放したいそうだな!!そんな事をして何になる?その気になれば不意を打ち主人を殴り殺す事だって可能だ。俺がそうしたように(・・・・・・・・・)。何故それをしない?奴らは這い上がる事を止め、心まで奴隷に落ちた負け組だッッ……!!!」




「…………ッ!?カルマッ……!!」




センヤと相対するカルマ自身も元奴隷であり、金の無かった両親から、幼少期にその身を売られたのであった。

美しく中性的な顔立ちだったカルマは奴隷商から男娼館へと売られ、10にも満たぬ歳で、その身を成金の中年の男へと捧げた。




それから数年経ち、彼は中年の男に気に入られ、彼のさほど大きくもない屋敷へと買われ、昼は使用人として働き、夜は夜伽を務めた。

男の体裁もある為、カルマは『存在しないもの』として扱われ、外に出る事すら禁じられていた。

しかし彼は働く傍ら、屋敷の中で様々な情報を集め、実力主義で、力のある者を兵として募っていたアンビシャスへの逃亡を計画した。




そしてある夜、カルマは夜伽の後、眠りに着いた主人である男を花瓶で殴り殺し、持てるだけの金を屋敷から集め、窓から逃げ出した。

途中で衣服を書い、最低限の装備を整えたカルマは、魔物に何度も襲われつつ、国を幾つか跨いでアンビシャスへと向かった。




アンビシャスでは、実力を知る為に、人間や魔物、機械兵と戦うテストが存在したが、カルマは剣を取った事は無かった。

しかし、屋敷で彼は医学の人体に関する書籍を読んでおり、最小限の動きで人体の弱点を突く戦い方で勝ちをもぎ取って行った。

不思議な戦い方をする男がいると聞いた当時のアンビシャス王は、実際にその目でカルマの姿を見た。




剣を取ると言うにはまだ若く、中性的な顔立ちをした男は、血走った目で、アンビシャス王を睨んでいた。

その姿はまるで、追い詰められて尚、敵の喉笛を噛みちぎらんと隙を伺う、飢えた狼の様だったと、彼は後から評していた。

カルマの『生』と『力』に執着した姿を気に入ったアンビシャス王は、彼を通常の兵科ではなく、特務兵科へと彼を採用した。




カルマはその容姿から、女性からは特に人気があった。

しかし、彼はその生い立ちから自身の中性的な顔立ちを嫌った。

彼は、幼少期に絵本の中の脚色された勇者に憧れを抱き、己の中で重厚な鎧を纏った英雄像を作り上げていた。

彼はいつしか、極端な変身願望と憧れから、身体の機械化を強く望むようになった。

カルマ自身が元奴隷だったという事に驚きを隠せないセンヤへと、彼は更に剣と言葉を畳み掛ける。




「貴様の過ぎた利他主義はまた別の弱者と不幸を産むぞ!!万人の幸福などこの世にありはしない!!弱肉強食だッ!!常に虐げられる者、虐げる者によって世界は成り立つ!!誰かの不幸が誰かの幸福となるのだッ!!!」




「人が人の未来を縛る世界が当たり前なら……ッ!!誰かが変えなければならないッ!!!これ以上、俺やサナ、そしてお前のような者を生まないためにも!!俺は戦うッッ!!」




「人も……世界も変わる事は無いッッ…!!!世界は……どこまでも弱者に非情なんだ……ッ!!!」




お互いの覚悟が剣を通し、ぶつかり合う。

ノワルは2人の会話に何か思う所があったのか、剣は振るいつつも、一切口を挟まずに沈黙していた。




「デュラハルド、やはり貴様はここで潰さねばならんッ!!俺は俺のみの幸福を追い求める!!お前の思想とは決して相容れん!!―――放てッ!!『白雷轟天(ディストルツィオーネ)神之裁(ケラウノス)』ッッッ!!!」




カルマの合図と共に、沖合に停泊したアンビシャスの母船に取り付けられた巨大な砲身から『白雷轟天・神之裁』がデュラハルド大陸の国跡へと放たれた。












カルマの身体は殆どが機械化されています。

幾つか、生身の部分は残されていますが、その中で彼が最も大切にしているのは『眼』です。


この『眼』があったからこそ、アンビシャス王からの推薦を貰い、後に「飢えた狼のようだった」と評された『眼』なので、誇りに思っているのです。


因みにマキナリアも『眼』を気に入っており、彼の眼を「美しい眼だ」と度々褒めてたりします。

カルマの視覚に映るデータは、特殊なコンタクトだったり、兜の裏側に表示されてたりします。




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