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第77話 天恵

梅雨明けを……梅雨明けを……




魔人筆頭は魔将に合流する為、そして城護はある程度の防衛が済み、お互いに道中の機械兵を蹴散らしながら、国跡へと向かっていた。

そして、今回の全ての元凶であるアンビシャスの準備も整おうとしていた。




カルマは船内のコントロールルームで、アンビシャス情報部から送られてきた、センヤの情報に目を通していた。




「コレグよ。……貴様は吸血鬼の存在を信じるか?」




カルマは側近であるコレグという男に、資料から目を逸らさずに話し掛けた。

彼も突然カルマから話しかけられ、質問の意図をよく理解できなかったが、取り敢えず聞かれた事に対して自身の見解を話し始めた。




「吸血鬼、ですか………急ですね。あのデュラハルド大陸の奥、古城に封印されているとは聞きますが………どうなんでしょう?実の所、あまり信じてはいませんね。何より、あの昔話には不自然な点が多いですよ」




コレグは吸血鬼の存在に対しては懐疑的だった。

バンデッタに今も住んでいる、何代目かは忘れたが、勇者の先祖が封印したと言われている。

昔、幼い頃に母からの絵本で読み聞かせられたのは覚えているが、今となっては、ただのおとぎ話という認識であった。

カルマも返答に頷き、話の続きを始めた。




「ところが、あの新しき国の指導者、情報部からの話によると、この大陸の名であり、遥か昔に封印された『デュラハルド』と呼ばれる吸血鬼の王族を名乗っているようだ」




「へぇ……そりゃまた大きく出ましたねー……それになんの意味が?」




封印された吸血鬼の名を騙る人物が、新たなる国を作ろうとしている。

道化にしては規模が大きすぎるし、王となる人物がそんな事を名乗っても何の意味があるのだろうか。




「俺も疑ってはいた。だが資料に目を通している内に、認識が少し変わった。……聖騎士軍の左遷先である古城があるだろう?あそこは最近、聖騎士軍が駐留していないらしい」




「………」




「事実かどうかは不明だが、最近、封印されていた棺が壊れ、中から吸血鬼が蘇ったという噂が各地で広まっているようだ」




「それから間を置かず、この辺りでは見ない長身痩躯の男が龍種を1人でねじ伏せ、不在だった領主に名乗り出た」




コレグは一言も発さず、カルマの話を聞いていたが、背中に少しずつ汗が流れ始めていた。

幻想であった筈の存在が、徐々にコレグの中で実在する者として、形作られていた。




「それだけでない。冒険者連合組合で、同じくその男が核級(コア)に所属したとの話もある。それ程の実力者が何故、今まで全くの無名だった?幾ら未発達な大陸とは言え、名前が上がる筈だ」




「カルマ様………それに、しっかりとした裏付けはあるのでしょうか……?もしかすれば、今まで目立たないように行動していた実力者がいたかも知れませんよ?」




確かに、普通の人間でありながら、異様な程の力を持っている男の存在は誰もが知っている。

かの聖騎士軍元帥、エトワール・スターダスト。

規格外(アンノウン)』『(きらめき)の男』『隕石の拳(メテオフィスト)』等々……、彼は大量の二つ名で呼ばれ、それに恥じない程の強さを持っていた。




が、口では否定的だが、コレグは知っている。

アンビシャスの情報部はグァンダレラ大陸の中心部を除き、世界中のあちこちに派遣されているという事を。

しかし、それでも信じられない、信じたくはなかった。




「裏付けか。日中担当のお前は夜間、休んでいるから知らないだろうが……原理は分からんが夜間の間、奴は髪が白く変わり、相手の物理、魔法攻撃を全て無効化する。幻影か何かかと思ったが、それとも違う」




「なっ………!」




何を言われても否定するつもりだったが、これにはコレグも予想外であった。

そんなもの、人間の為せる技ではない。




「………『歴史』そのものが蘇り、現代の我々に今、立ちはだかっているんだ。………だが、千年も封じられていた吸血鬼、魔王に仕える魔将。そんなもの、人々が築き上げた『文明』の前には無力だ」




コレグが絶句する中、船内の無線からノイズが走り、連絡が入る気配がした。




『……こちら増援部隊。カルマ様、応答求みます』




無線機の会話の許可ボタンを押し、カルマは資料を置いて正面のモニターへと向き直る。




「俺だ。何か不備があったか?」




到着にはまだ時間が掛かる筈の為、早期の連絡は何かの不備や、不都合な事が起きたのだろう。

しかし、増援部隊からの連絡内容は意外なものだった。




『カルマ様、間もなくそちらへと到着しますが、如何致しましょうか』




「……予定より少し早いな。上等な加速装置でも積んでいるのか?」




『ええ、それなんですが……海流が普段とは違う動きをしていまして。前例が無い分、安全を考慮してルートを変更しようかと思ったのですが、迂回をした場合、あと1週間は掛かる計算になったので、恐る恐る……』




同時に送られてきた増援部隊の船の進行ログを確認すると、確かに普段の海流の動きとは違っていた。

普段はリズアニア大陸へと向かって流れている筈だが、ログでは明らかにデュラハルド大陸の方へと流れている。




「…………フッ……何も恐れる事は無い。勝利の女神が我々に微笑んでいるのだろう。やはり『世界』は我々を選んだのだ……!!」




この天恵的な海流の一件が、カルマの中に小さく燻っていた、未知の存在への不安を完全に吹き飛ばした。




「よし、量産船へと指示を飛ばせ。機械兵の量産は続けつつも、大陸への出撃を止めろ。増援は我々の船に横付けしろ。これからの動きを指示する」




カルマは偵察から一転、強気になり、大陸へと再び強襲を掛ける為の陣形や、各担当の配置などの指示を始めた。




「我らが女王陛下は早くの成果を心待ちにしておられる。最早我々に待つ理由など無い。制圧前進あるのみ!!明日、『歴史』は『文明』の前に敗れ去るのだッ!!」




雷を纏う紺色の大剣を抜き、カルマは正面の画面に映るセンヤ目掛け突き付けた。

明日の朝、ついに三勢力それぞれを率いる者達が国跡、大陸を巡り、集結しようとしていた。










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