第75話 無自覚なる者たち
最近雨が多く頭痛ばかりです。ロキソニンも耐性が出来始めているのかあまり効かなくなってきました。
そして、感想ありがとうございます<(_ _)>
心がかなり救われます。
午前4時現在………
アンビシャスの強襲からあと数時間で丸一日が経とうとしていた。
侵略の最長記録は2日。
国ではなく大陸の為、規模が違うので比べる意味は無かったが、今の制圧度は未だ10%程度だった。
〜各々の状況〜
センヤ……真血解放状態で魔将・ノワルと交戦中。間もなく太陽が昇るため、再び肉弾戦に。
サナ&キリナ……大工団&精霊と共に、国跡内に侵入した機械兵を倒しつつ、負傷者の手当。
ファテナ……聖騎士軍、冒険者や傭兵たちと、徐々に防衛ラインを広げる。
食料を確保し、国跡へと空からの支援も検討。
メロ……引き続き機械兵と交戦中。そろそろ足が疲れてきた。
テンガイ……キリサメに両腕を落とされ、意識を失う。安否不明。
ロッシュ&テンガイ一派……テンガイを心配しつつも、街に壁を建設し、住民を機械兵や魔人から守る。
アディッカ……機械兵らを2丁の拳銃で破壊。この戦いが終わった後、一旦リズアニアの山奥にある故郷へと戻る予定。
アッシャー……オーク壊滅後、負傷者の手当をしつつ、近くの冒険者と傭兵を統率、機械兵の殲滅、及び供給源の特定を開始する。
カテドラル……第二波を察知し、渋々魔骨兵をノーマルから、ちょっと良い骨のレアにグレードアップ。量産中。
実は機械兵の大半は魔骨兵が倒し、残骸を1箇所に集めているのだが、あまり目立っていない。
レイズヴェル……シャウトで機械兵を倒していたが、近隣住民からの苦情が入り、渋々棍の物理攻撃に。
ウェンゲージ……『もう1人』から通常時のウェンゲージに戻り、再び機械兵と交戦中。
街の周囲に魔物と機械兵のみを攻撃する浮遊水晶を設置。
ジューン……機械兵は解体、アンビシャス兵は丸腰に。多分城護たちの中で一番優しい。
ノワル……センヤと戦闘中。鎧が傷付き、微量の魔力、体力をセンヤに吸収されるが、直ぐに再生を繰り返す。
カルマ……沖から機械兵を送り込みつつ、国跡の監視。
アンビシャス本国からの増援到着まであと1日ほど。
それまでにセンヤとノワル達の消耗を狙う。
………そして、燃える2人は今も戦い続けていた。
「やっ!」
「オラァッ!」
──ッゴッ!!
宵闇の中、両者の拳、そして脚が高速でぶつかり合い、当たる度に爆炎が巻き起こる。
2人の周囲に存在する鉄などがドロドロと溶け始める程の高温となっていた。
人々こそ避難しているが、ブーケ自身も既に街の事は考えていないようだった。
「ブーケちゃーんパーンチ!!」
──ヴオォッ!!
「ッとぉ!ハッハァ!ふざけてる癖にとんでもねー威力だ!ハァッ!!」
最早、並の冒険者では目視が困難な速度での打ち合いとなっていた。
格闘がメインの2人はお互いの攻撃を見切り、同じ威力で同じ攻撃を出し、相殺する。
力は互角だったが、経験の差ではブーケに分があるようであった。
しかし、どちらかと言えば戦いと言うよりは、お互いの力を受け止める相手に楽しみを覚えているだけだったりもした。
そんな2人の周囲には、自然とギャラリーが集まり始めていた。
………人間ではなかったが。
<攻撃たたたたたたた………>
ジュウ………
そもそも近付いただけで溶けてしまうので、文字通り機械兵は手も足も出せないのだが、攻撃全振りの機械兵は躊躇なく2人へ突っ込んでいく。
<攻撃たたたたぃしょうおうおうおうガガガガ>
ジュ………ボンッ!
溶けて爆発する機械兵。
「あーーーーーーー!!!!邪魔くせぇ!!声がムカつくんだよ声がァ!!!」
ジュボアッ!!
アスワードの蹴りで一瞬で溶ける機械兵。
溶けた鉄を雨粒のように振り払い、ブーケとの戦闘を再開する。
久しぶりに手応えのある相手に出会い、テンションがかなり上がっているアスワードだったが、思わぬ邪魔が入り、逆にストレスの方が上回ってしまった。
「パーーー!!!」
「御先祖!止まれッ!」
迫るブーケのパンチに、アスワードは両手を前に突き出し、彼女を制止する。
「ンチっ………なになにー?」
アスワードの鼻先ギリギリで止まった拳は、もし食らっていた場合、建物を薙ぎ倒しながら激しく吹っ飛んでいただろう。
「コイツらの事どう思う?御先祖」
アスワードは周りの機械兵を指さし、次にブーケを指さした。
「うーん…邪魔!」
少し考えた結果、やはりブーケも邪魔らしかった。
彼女の答えを聞いたアスワードは両手を平手で1回打ち、次に握りこんでゴキゴキと骨を鳴らした。
「よっしゃ、じゃあ先にコイツら片付けてから続きやるぞ」
「じゃあどっちが多く倒せるか勝負!」
「乗った」
ブーケとしても自分の仕事は減る上に、アスワードとも楽しい殴り合いが出来るので、断る理由など特には無かった。
お互いの仲間、そして主が戦っているが、それとこれは別だ。
「じゃあ…………行くぜッ!!」
アスワードの合図と共に、2人は視界に入る機械兵へと殴り込みを開始した。
自ら触れて溶けるより先に、拳が叩き込まれる。
「オラオラ一発くらい当ててみやがれッ!」
「弱ーい!!ちょー弱ーい!」
2人は張り合いながら街を出て、他の街に辿り着いては半ばムキになりつつ機械兵を狩り続けた。
彼らの通った道にはドロドロに溶けた機械兵と、焼け焦げた草木が新たな道を作っていた。
そして午前8時………
大陸をグネグネと駆け回り、目に付く機械兵を狩りに狩った。
やがて大陸の端から端まで移動した2人は、いつしか大陸南東の海岸にいた。
「んー……見当たんねぇな。俺は27968体」
「私は多分28000体!」
たった2人で5万を越える機械兵を葬り去った。
しかし2人の体力、魔力はまだまだ余裕であり、1割も消費していなかった。
「多分て………ま、良いか」
アスワードは楽しければそれでいいので、特に結果は気にしていなかった。
「フゥー……さて、そろそろ決めるぜ、御先祖よォ。お互い1発だ」
「だからブーケちゃんって呼んでって言ってるでしょー!」
ぷんこぷんこと怒るブーケを笑うと、アスワードは周囲から魔力を取り込み始めた。
「『呼び覚まされし獄炎』!!」
アスワードの身体が爆炎と竜巻に包まれながら燃え上がり、巨大な炎の悪魔の姿へと変貌を遂げた。
口元に超火力の巨大火球が出来始め、それはまるで小さな太陽のようであった。
一方、ブーケは高く飛び上がり、丸まりながら前後に高速回転し、こちらも大きな火球を作り出した。
火球の中心からブーケが表面に飛び出しながら現れると、そのまま火球に蹴りを入れ、アスワードへと真っ直ぐ落とした。
「『花嫁からの贈り物』!!」
「『獄炎滅波』!!!」
巨大な力同士がぶつかり合い、周囲は閃光に包まれた。
やがて小石を辺りに跳ねあげ、巨大な土煙の中から元の姿に戻ったアスワードが現れた。
本人の姿は元に戻っており、特に外傷などは無かった。
しかしアスワードの周囲には隕石が落ちたようなクレーターが出来ており、凄まじい威力だった事が伺える。
「駄目だな、これ以上は『遊び』の範疇を超えちまう。そうだな……次は俺らの大陸でやろうぜ」
ここまでの規模でありながら、なんと2人にとってはまだ『遊び』でしかなかった。
「うーん……城護はセンヤ様が治める場所じゃないと移動できないんだよねー。アッシャーになんとかならないか聞いてみる」
「おう、来たら歓迎するぜ。里帰りだな。城護と魔将って立場はあるが、俺らはイフリート、イフリータだ。楽しけりゃなんでもいい。じゃあな!」
気分の良いアスワードは手をヒラヒラと振ると、近くにある太い地脈を目指し、鼻歌を歌いながら歩き始めた
「〜♪」
そう、この男。
完全に当初の目的を忘れていた。
そして、一緒に来たはずのノワルの事も。
「バイバーイ!」
無邪気に手をブンブンと振るブーケ。
満足そうな彼女は、そのまま砂浜へと寝転がり、鼻歌を歌いながら余韻に浸っていた。
「〜♪」
そう、この女も。
完全に当初の目的を忘れていた。
だがしかし、この強くも脳天気な2人によって、カルマの放った第三、第四の機械兵の殆どが狩り尽くされてしまった。
いつの時代も人の道を阻むのは、決まって人知を超えた存在である。
全ての戦いが終わった時、カルマは心からそれを痛感した。




