第69話 魔人の行軍
最近はB'zばかり聴いています。BURN -フメツノフェイス-が好きです。
魔人筆頭たちは話し合いの結果、各種族ごとに人目につかないルートを選び、国跡へと向かっていた。
魔人筆頭にはアスワードから通信機が渡されており、筆頭ごとに通信が可能であった。
「この暑苦しい魔力……アスワード様か。暑いというか……熱い……」
リザードマン族の魔人筆頭、レザールは戦闘中のアスワードの魔力を感じ取り、顔をしかめる。
熱と乾燥に強いリザードマン族であるが、それ以上にアスワードの放つ魔力は熱すぎる。
『なぁ、少し寄ってかねぇか?』
同じく魔力を感じたオーク族、強硬派の魔人筆頭であるガイネスは、アスワードの戦いを見物したい為、通信機で他の魔人筆頭たちを誘った。
『待て、我々は元々、国跡に人間の大規模な拠点が出来るのを阻止する為に駆り出された。寄り道をしている暇は無い。それにオーク族の領土を増やしたいと意気込んでいたではないか』
理知的なマッスルゴブリン族の魔人筆頭、ムスコロは自由なガイネスを止めようとするが、彼には彼なりの自論があるようだ。
『それとこれとは別だ。魔将の戦闘を見るのも勉強になるもんだ。お前らも魔人筆頭で魔将にコキ使われるよりか、さっさと強くなって魔将になった方が今よりは楽になれるぜ』
確かに今の魔人筆頭は、言わば中間管理職のような役職であり、中々苦労が絶えない。
何より、魔将の戦いをこの目で見るという経験は稀なものである。
実際、他の魔人筆頭たちも、少し観戦したいと心の中では思っている。
魔力を感じ取った配下の魔人達も、明らかにザワついていた。
『……しかし魔将になると魔王に仕える為、限りなく人間に近い姿を与えられるのは、私はあまり好みでは無いのです。人が呑みにくい。そも、イフリートとオークでは戦い方も違うではないですか。ま、私達は此度の戦で人が呑めればなんでも良いのですが』
人間と明確に敵対している点がガイネスと一致しているラミア族の魔人筆頭、シュランゲだったが、性格は真逆の為、賛同はしていないようだった。
一度、魔人と言っても『人』の部分にはかなりの差がある。
人間と共生の道を選んだ魔人の殆どは、姿形が元々人間に近い種族が多かった。
しかし、この場にいる種族で話を進めるが、トカゲが進化の過程で徐々に人型に近づいていったリザードマン族は、人型だが身長が人間より大きく、肌は鱗に覆われ、顔はモロにトカゲである。
元々人間だった筋骨隆々の男が妖精に呪われ、豚と人のハーフとなった事が起源のオーク族も人型だが、身体は並の大人の2倍はあるし、肌も灰色にくすんでいる。
顔も人に近いが、豚の要素を多く持っている。
一部のストイックなゴブリン達が身体を鍛え続け、自身の遺伝子に筋肉の情報を覚えさせ、とうとう一種族を確立させたマッスルゴブリン族は、ベースがゴブリン族なので肌は緑色、目はギラギラと赤く、頭髪が生えない。
大型のメスの蛇に恋をした人間の男が、無理矢理交わった結果、誕生したラミア族は上半身が人であり、下半身が蛇の姿であった。
起源となった男は交尾後、メス蛇に丸呑みにされて死んでしまったが故、人呑みの本能が子に受け継がれてしまった。
このように、魔人と言っても性質や容姿が人に近いもの、魔物に近いものが存在する。
そしてイフリートやスライム等の不定形の魔物は人の姿になる事も出来るが、元々の形は人では無い。
維持するのも中々難しかったりするので、『魔人』に属するイフリートやスライムは知能こそあるが、必要時以外は知能が獣に近い『魔物』と同じく、イフリートはただの炎、スライムは丸っこい姿を取っている事が多い。
魔王は魔将に人型の殻を与え、自身に仕えやすく、そして人間の領土で活動しやすいようにした。
魔王自身の魔力で作られた人間の殻は異常な力を持っており、ただでさえ強力な魔将にまるまるその力が追加される訳である。
しかし殻はあくまで殻である為に、本来の姿である時の力は少し抑え目になってしまう。
壊れない程度に殻を破れば、本来の力と殻の力が合わさり、どちらの力もMAXで使えるようになる。
だが殻を破るという事は、それ程までに追い込まれているという事であり、普段から簡単にバリバリ破って良いという訳ではない。
「やっぱ少しくらいなら……」
ガイネスがそう言いかけた時だった。
山岳地帯のルートを選んだオーク族だったが、岩場の影から人間のような何かが高速で飛び出し、ガイネスの頭に一撃を食らわせると、そのまま街の方へと逃げ出した。
「……ッてェなぁ!!あのクソ人間を追えェェ!!」
「「「オオオオオオオオオオオ!!!!!」」」
激高したガイネスは国跡へ向かうルートの事など最早頭に無く、自身へと不意打ちを食らわせた劣等種を追う事しか考えられなかった。
勿論、他の魔人筆頭の持つ通信機越しに、ガイネスの怒声と、それに触発された他のオーク族達の声が聴こえてきた。
「……だからオークと組むのは嫌なんだ」
レザールはため息をつき、それに続くようにムスコロ、シュランゲも深いため息をついた。
オーク族が走り去った後……
先程、オーク達がいた場所から少し離れた所で、大きな岩の上に胡座をかく1人の男がいた。
彼は身体の半分ほどを機械化しており、残り半分は生身であった。
鼻から下は過去に抉り取られたのか、痛々しい跡が残るも機械で補われていた。
背中、腕、足、腰等の至る所に、様々な長さの刀が収納されており、その全てが彼の得物である。
『ふぅむ、タフだが単細胞なオーク族を煽る……カルマ殿はそう出るか。上手く回るかは腕の見せ所……しかし、それを選択したという事は……いや、何も言うまい』
『では、少しばかりだが拙者も一役買わせてもらおう……ハァッ!』
男は顎を軽く掻くと、岩場を軽々と飛び跳ね、暴走するオーク達の後を追った。




