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第68話 カルマと浪漫

起床する時の曲を好きな曲にしているんですが、嫌いになりそうです。




日が暮れ、辺りが徐々に闇に包まれる頃……

デュラハルド大陸東、国跡周辺では依然、国と大陸を巡り、戦いが繰り広げられていた。




それを静かな沖合から眺める者達が居た。







〜沖合の船、船内〜




船外にはこれも技術部の血と汗と涙の結晶、魔力同士を繊細に反射させあい、存在を隠す光学迷彩装置が施されていた。




カルマは船内の自室から、マキナリアへと増援を求める為に、アンビシャスへと連絡を取っていた。




『増援か……なるほど。お前の予想を軽々超えて来る連中が相手か。手を出しあぐねていた国跡をモノにするだけの事はあるな』




画面に映るマキナリアは、別段普段と変わらない態度でカルマの話を聞いていた。




「見通しが甘かったのは自分の責任です。しかし、必ず、必ずやあの国、大陸を女王陛下に、アンビシャスに献上してみせましょう」




カルマは自身の甘さに歯を食いしばるが、顔も機械化している為、マキナリアには伝わっていないようだ。




『増援は構わん。先程向かわせた。十分な下調べの時間も無く成果を急いだ私にも責任がある。そちらにデータを送る。後で目を通しておけ。到着は少し遅れるが2日後だ。目的地の設定などはお前が後で連絡しろ』




「ありがとうございます!」




『しかし、増援にあたり兵器は幾らでも量産が効くが、生身の転生者はそうもいかない。バンデッタ攻略まで無駄には出来ない。船で眠らせておけ』




『……』




『不服か?』




「……いえ」




『ならば良い。期待している』




マキナリアはそう言い残すと、カルマとの通信を切った。

肺は無いのだが、カルマは大きなため息をついた。







「状況は?」




カルマは甲板へと出ると、これもまた技術部の開発した特殊望遠レンズで、国跡の状況を確認している部下へと、状況を確認した。




「現在、国の代表者の男と、魔将と思われる男が交戦中です。国跡周辺は魔物の数も徐々に増えてきており、かなり混沌としています。試しに監視ドローンを数機飛ばしてみましたが、前述の2人の男の異常な魔力に当てられ、すぐに墜落してしまいました」




「ハハハ、異常な魔力か。だろうな。大気魔力制御無しだと、この距離でも俺の視界画面にノイズが走る。しかし、誤算も誤算だがどうやら我々に追い風が吹いてきたようだ」




カルマは腕組みをしながら、レンズで見た景色を映している画面を見ていた。




「……厶……レンズを少しずらせ」




「こちらですか?」




「そうだ、そう、そう……違う、行き過ぎだ、今度は戻り過ぎだ、そう、その間、そこだ。そこ」




画面に映し出されたのは、戦うメロの姿だった。

レンズを操作していたアンビシャス兵は小さく笑うが、カルマは気付いていなかった。

メロの姿を凝視するカルマ。




「『転生者』は使わないんですか?」




カルマが何を考えているか知っているアンビシャス兵は尋ねる。




「来たるべきバンデッタ攻略の日を考慮し、使用するなとの命令だ」




カルマの音声があからさまに数トーン下がっている。




「数人くらいならバレないんじゃないですか?」




「……駄目だ」




カルマに使えている兵士は全員、表情が読み取れない分、声のトーンでカルマの心情を察する。

今はもうテンションがナメクジのように地の底を這っている。




「でもカルマ様、転生者の不思議な能力を見たい、が口癖だったじゃないですか。最近は聞かなくなりましたけど」




「……それとこれとは別問題だ。私情は挟まん」




(…………………………)




確かに、好きだ。

一見なんの変哲も無い、武器としての役割を持たない物が暗器として使われたり、逆に『The 武器』というような、ゴツゴツと洗練とはかけ離れたデザインの武器から放たれる超強力な攻撃と、後に残る火薬の匂いも大好物だ。

画面に映る少女は、足を様々な武器に変形させ、体術を駆使しながら機械兵を切り刻んでいく。

実に素晴らしい。スタイリッシュナイスデザイン。




この船の自室も隠し部屋のようになっており、特殊な操作を施さなければ中へと入れないようになっている。

これはカルマの『浪漫』に理解がある技術部が専用に造ったものであり、これを見せられたカルマは、専用室に関わった技術者全員を飲みに招待し、全ての支払いを持ったという。




魔人に片腕をズタズタにされ、治癒か改造かを選ぶ時、彼は改造を選んだ。

初めて自身の腕を改造し、人体に負担を掛けないようにと微妙な仕込み刃と数発しか撃てない銃身が取り付けられた時、それでも非常に感動した事は今でも忘れられない。




しかしそれとこれとは話が別なのだ。

作戦に俺個人の『浪漫』は必要無い。




「……それより、機械兵の生産は滞りないか?」




これ以上話すと、本当に数人程度なら転生者を使ってしまいそうだ。

話題を変える。




「はい、滞りなく」




本来の性能に戻した機械兵を量産し、襲撃の第二波を仕掛ける。

魔物の出現に、先程戦ったモノより数段強い機械兵の襲撃、そして日が暮れた夜間の戦闘は大きな混乱を招くであろう。




「2日だ。このまま2日様子を見る。その間にどちらかが潰れれば良し、両者が潰れなくともかなり疲弊しているだろう。人間も魔物も生命体である以上、な」




機械兵の量産は専用船が数隻存在しており、機械兵自体は防御よりも素早さ、攻撃力に特化させているので、パーツは2日間全力で量産してもまだまだ余裕がある。




「少し……掻き乱してやろう」




カルマの兜の目にあたる部分が、怪しく紫色に輝いた。




────────────────────




「……宜しかったのですか…?」




王の間にある玉座に腰掛けるマキナリア。

その隣に沈痛な面持ちで立つアンビシャスの巫女、レシヴ・ブランシュは尋ねた。




「受け取ったのだろう?奴らがここに来る神託を」




マキナリアは表情を変えず、手元の機械でカルマから送られてくる映像を見ていた。




カルマが沖に一時撤退を決断してからの事だった。

レシヴがマキナリアの元へ、神託を受け取ったと大急ぎでやって来たのだ。

神託の内容はいつも通り抽象的だったが、どう解釈してもアンビシャス現女王の前に新しい国の王が現れ、戦う事を意味していた。




新しい国の王、それはつまりカルマは大陸、国の奪取に失敗し、結局あの国は国として完成してしまう。

この事をカルマに伝えたとしても、彼はそれでも戦うと言うだろう。

ならば彼に余計な事を吹き込み、心にわだかまりが出来てしまうよりか、全力で戦って戦場で散る方が、彼にとっても本望だろう。




「量産の効かない強力な兵器を無駄にする必要も無い。ゆくゆくはバンデッタ攻略の為に必要となる。聖騎士軍元帥の拳聖・エトワールと勇者は強者が束になっても手に負えん」




カルマが散ったとしても、それで終わりではない。

アンビシャスはこれからも進み続け、敵国を倒して吸収し、大きくなっていかなければならない。

三機将のカルマ程の男がやられる国が敵国として回り、尚且つ相見える神託も受け取った。

ならばここで貴重な兵器を使うのは得策ではない。




「仮に新国とバンデッタがアンビシャスを潰す為に同盟を結んだ場合は……いや、あのガキはそこまで人間を信用していない」




(…………しかし、考えねばならんな)




マキナリアは玉座から立ち上がると、レシヴを置いて1人、どこかへと向かった。










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