第67話 戦闘、世紀末の絢爛魔将
少しずつ落ち着いて来ました。
人手は依然として足りませんが、忙しさに慣れてきたという感じでしょうか。
次章はソルシエラをメインに据えた話になりそうなんですが、まずは今の章を頑張ります。
四字熟語大好きマンです…
「な、なんだ貴様はッ!?」
冒険者が地鳴りのような足音に驚き、音のする方向を振り向いた。
すると山のような大男が、猛烈な勢いで前傾姿勢になりながらすぐそこまで迫っているのが見えた。
「邪魔ァァーー!!!」
ドゴッッオォンッ!!!
「ッうぐぉッ──!!?」
避ける間もなく、冒険者は大男のタックルに吹き飛ばされ、あえなく空を舞った。
「正義執行!!ハハハハハ!!!!」
突然現れたイレギュラーに機械兵や魔骨兵、冒険者、傭兵が攻撃を仕掛けるが、男はものともせず、速度を緩める気配もない。
「アレは……アカツキ君に任せよ」
遠目に見ていたメロもノワルの異常な強さを目の当たりにし、センヤに相手を任せる事にした。
(…来るッ!!)
「見つけたぞォ!!!!」
サングラス越しにノワルは満面の笑みを浮かべ、より一層速度を早めながらそのままセンヤへと全身で衝突した。
ギィィンッ!!!
ズ………ズズズズ……………
大男の肩と終告げる紅薔薇の刀身がぶつかり合う。
その衝撃でセンヤは数メートル後ろへと押し戻された。
(なんて力だ…!!)
この男、ヴァスターリアの身体を受け継いだセンヤよりも更に大きい。
(終告げる紅薔薇で吸収出来ない…!ギンベッカと同じモノか!?)
大男の肩は鉱石でコーティングされており、それが彼の身体との境界となっていた。
そしてそれは異常な硬さをしており、思い切り終告げる紅薔薇を打ち付けたにも関わらず、傷の1つも付いていなかった。
「俺は秩序の番人!!魔将………ノワーーーーーールッッッ!!秩序維持の為にこの国をブチ壊し、そしてお前らをブチ殺す!!!」
「ッ!魔将だと!?」
テンガイから話は聞いていたが、センヤが魔将と相対するのは初めてであった。
何を仕掛けてくるか分からないので、センヤは丸腰の胴体に思い切り蹴りを入れ、ノワルを後方へと吹き飛ばした。
「オボアッ!?」
ノワルは機械兵の群れに派手に突っ込み、その衝撃で機械兵の回路はノワル本人の大きな魔力に反応し、小爆発を連続で巻き起こした。
「貴様ァァ!!!初対面の者にいきなり蹴りを喰らわすとはァ!!!」
激高し起き上がったノワルはピンピンしており、一切のダメージが入っていないようだった。
「お前だっていきなりタックルして来ただろ!」
「俺は良い!だが貴様は駄目だ!!!」
「緊張感の無い奴だ……!」
自己中心、得手勝手、傍若無人なノワルの態度にセンヤは思わずツッコミを入れてしまうが、そんなもの彼にとっては全くのお構い無し、正に自分がルールである。
「今度は喰らわん!『我が秩序の煌めきよ』!!イエーーーーー!!!」
「…ッ!?」
太陽が徐々に傾き始めている中、突然ノワルが叫んだかと思うと、思わず目を背けてしまう程にノワルの全身が光輝き始めた。
(…魔法、ではない……城護の護法と似た能力か?)
光の中、巨体であるノワルのシルエットが更に一回り、二回り巨大化する。
そして眩い光の中から、美しくも凶悪な大剣、大人2人分ほどの大きな盾、そして重厚な鎧を纏ったノワルが現れた。
驚くべき事に、その全ては正にキンキラキンとの表現がしっくり来る程の宝石で作り上げられていた。
「どうだ!!この輝き!!即ち、我が正義!!我が秩序!!絢爛大剣!絢爛大盾!絢爛兜!絢爛鎧!褒めろ!!」
目の前でポーズを取り、自慢の鎧をセンヤへと見せびらかすノワル。
絢爛絢爛とやかましい。
「剥がせばどれくらいの値段で売れるんだろうな」
「フッ……値段に目を付けるか……だが、ノットフォーセール!剥がせはァ……せェんッッ!!!」
ギィィンッ!!!
…ズゥゥゥンッ!!
(……重いッ…!!)
ソルシエラが振り回していた長剣は、細身のソルシエラを含めて、どこから凄まじい力が出ているのか分からなかったが、ノワルは大剣も本人も見た目通り、切ると言うより殴打、バリバリの質量で殴って来る。
終告げる紅薔薇で受け止めたものの、センヤの足元は衝撃でヒビ割れ、身体がゆっくりと沈み始めた。
「クッ!『紅魔法』鎖の六章『鮮血の軛』!」
「ヌゥッ!」
このままでは力負けしてしまうので、一旦『鮮血の軛』でノワルを縛り付け、センヤはノワルの前から脱する。
『鮮血の軛』が絡み付いている内にノワルに攻撃を仕掛けたかったが、軛は数秒だけ絡み付いた後、簡単にノワルから剥がれ落ちてしまった。
「我が絢爛武装の全てはあらゆる鉱石を融合させ、その鉱石がもたらす効果を、『俺が望むもの』だけ発揮させた物だ!」
「『原初鋼鉄』外部、内部からの魔力の流れを遮断し、あらゆる物理的衝撃に耐えうる強度を持つ!」
「『宝来魔石』脆いが、身に付けた者の魔力消費を低減させ、低燃費での魔法使用が可能となる!」
「『絶奇晶』加工が難しいが、外部からの魔法の効果を軽減し、逆に魔力を吸収する!」
「それ以外にも一日に身体が必要とする栄養を簡単に補える効果とかもありまァす!健康な身体にこそ正義の魂が宿る!!」
「そして……」
ノワルは絢爛大剣を大きく振り回し、地面へと思い切り打ち付ける。
そしてセンヤが持つ終告げる紅薔薇を指さした。
「お前のその剣は未だ見たことの無いモノで出来ている!!お前をブチ殺した後にゆっくりと調べてやろう!!」
「悪いがそう簡単にくれてやれるほど軽いもんじゃない」
強者同士の戦いは、機械兵に一切の接近を許さず、剣の打ち合いによって発生した衝撃によって紙くずのように吹き飛ばされていく。
終わる気配を見せない大剣の打ち合いは、長時間続いた。
やがて、沈みかけていた太陽はその姿を完全に地の彼方へと消した。
「貰ったァッ!!!」
ノワルの絢爛大剣がセンヤの首を刎ねる為、首筋へと横薙ぎに振りかぶる瞬間、センヤは黒い炎に包まれた。
「真血、解放」
「ヌゥッ!!?」
黒い炎に包まれたセンヤの首を、ノワルの絢爛大剣がすり抜けていく。
渾身の一撃を外したノワルは剣の重さに振り回され、ゴロゴロと転がった。
「ここからは俺の時間だ」
真血解放により夜を纏ったセンヤは防御の必要が無くなり、全ての動きを攻撃へと専念する事が出来る。
「貴様ァァ!!!攻撃が当たらんぞ!ズルいぞ!!!」
「俺は良い、だが貴様は駄目だ。…だったか?」
「ヌゥゥゥゥ!!!!」
ズゥンッ!ズゥンッ!ズゥンッ!ズゥンッ!
悔しげに地団駄を踏むノワル。
それは小規模な地震のようで、周囲の機械兵や人間は1地団駄の度に軽く宙へと浮き上がる。
しかしこの魔将、スタミナが異常だ。
あれだけ長時間打ち合いを続けても尚、息のひとつも切らす気配が無い。
この夜は長くなりそうだとセンヤは軽くため息をついた。




