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第64話 SHOUT!

お久しぶりです。

職場は正に一触即発です。

全員の性格が普段の10倍は悪くなっています。

隅っこで小さくなっていたい。

カップ焼きそばの四隅に追いやられた野菜のように。




レイズヴェルがウオスタスの入口をくぐると、これまで解放してきた街と同様に、人の気配は全く感じられなかった。




「んー…妙っすね」




レイズヴェルは首を傾げる。

どこの街も人間は広間に集められ、自由に動く事は出来なかった。

その為、人間の気配が感じられないのは当たり前だが、同様に機械兵も全くとして見掛けないのだ。




これまでのケースでは入口に、そして街の中を警戒する機械兵が、必ず存在していた。

しかし、入口も難なく通り抜けられたし、こうやってじっくり考え込める程には敵の気配が感じられない。




「とりあえずブラついてみるっすか」




基本、ダルさMAXのレイズヴェルは考えるのを止めた。

人が出れば話を聞けばいいし、敵が出たなら倒せば良い。







しかし、歩けども歩けども、誰ともすれ違わない。




「誰もいないっすね本当に」




レイズヴェルはその場に立ち止まり、周囲を見渡す。

そして、急に背後へと方向転換した。




「誰っす?」




レイズヴェルは振り向きざまに棍を突きつける。




「あ……あの……」




向けられた棍の先には、怯える女性の姿があった。




「あ、悪いっす。てっきり敵かと」




レイズヴェルは舌を出して武器を担ぎ直し、住人へと尋ねた。




「皆無事なんすね。ここはもう開放されたんすか?誰ともすれちがわなかったっすけど」




「先程、冒険者の方々が来てくださって……纏めて機械兵を蹴散らしてくださいました」




確かに、女性が指さした先には、住人らしき人々が、機械兵の物と思われる残骸を一箇所に集めていた。




「…ほうほう、ならウチが働かなくて済みそうっすね。楽なのは大歓迎っすよー」






レイズヴェルはそう言うと、ニコニコと住民の頭を鷲掴んだ。




「…り、領主様?」




バギィッ!!!




レイズヴェルは住人の頭を躊躇いなく握り潰した。




飛び散る血液………ではない、これは冷却液だ。

鋼鉄の頭蓋が砕け、冷却液と細かなネジ、回路が爆ぜる。







「心音が聞こえねーんすよねぇ。てめーら。耳障りな鉄の擦れる音がギィギィ聴こえやがるっす……何より、(ソウル)を感じねぇ」




レイズヴェルは残った胴体を棍で殴り飛ばし、フェイクであろう機械兵の残骸の山へとシュート。

人間へと擬態した機械兵が残骸もろとも吹っ飛ぶ。




「んで室内からは怯える人間の声、街の奥の方からは指揮官すかね?それっぽい声が聴こえるっす」




ヒュインヒュインヒュインヒュイン………




ドンッ!!!




棍をブンブンと振り回し、底を地面へと打ち付ける。

先端のマイクをオン、口元へと近付ける。




「来いよ、デク人形共が……起きやがれ(ウェイクアップ)、ライブの時間だぜ……?」




レイズヴェルの誘う様な目付きが、戦闘モードへと移行する擬態した機械兵たちを捉えた。







────────────────────







「……これは予想外だ」




街中にシャウト、そして良く分からないジャンルの歌が聴こえてくる。

そして、その度に大まかな機械兵の反応が、次々とロストしている。




カルマの機械化した顔面は終始、無表情だった。

いや、機械だから、という事でもあるが、本人しか知りえないその表情も、無表情であった。







元々は人間の皮を剥いで、それを機械兵の上から被せていたのだが、時間が経つと臭う、破れやすい為に扱いが難しかった。

カルマは技術部と共に、極限まで人の皮膚に近いゴムを開発した。

実際の人間をスキャンし、その皮をリアルな超薄型ゴム製の素材で作り上げると言う、前代未聞の技術であった。




中身には大まかな変更は無かったが、より人間らしく思考、リアクションを可能とさせる人工知能を積んであった。

オリジナルとなった人間の大まかな性格、そして回路に声を吹込めば自動で音声を生成し、人間らしく振る舞う事が可能である。




指折りの変人どもが集まる技術部、そしてカルマの自信作は、幾度も他国の攻略に役立った。

しかしここに来て、全くの想定外が現れた。




「全く……帰還した際には技術部の連中の尻を叩かねばならんな。俺も慢心していたようだ。」




相手の心音から、人間に擬態した機械兵を見破る者など、存在する事が珍しい……というか初めて得た知識であった。




「ここの拠点は放棄する。行くぞ」




カルマは必要な書類を持ち出し、拠点としていたテントを出た。




「か、カルマ様……」




「この大陸も必要だが、まず優先すべきは国跡だ。あそこを抑え拠点にし、本国から更なる増援を要請する。1つの手柄も得られず一旦引こうものなら我々はアンビシャスの恥晒しだ。それに、一旦国跡へと向かえば、奴らも内陸へ集中するだろう。海が手薄になる。そして本国から滅銀以上のランク兵器の増援を呼ぶ」




慌てる兵士に歩きながら手短に説明し、今後の動きについて伝える。




「アンビシャスにその命を捧げられる事は兵士たちにとっても本望だろう。我々は進むのみだ」




カルマと、運良く報告に現れた兵士は港へと引き返し、船へと乗り込み、ウオスタスを後にした。




街の中にはレイズヴェルのシャウトが響き渡る……








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