第55話 死炎と死宝の魔将
モンエナ飲むとお腹痛くなる現象
〜魔王の居城、通称『黄昏の城』〜
「リズアニアにはヒタム、ユオダスが向かってる。アイツらばっか働かすのもなんだし、俺らも働くか?労働の喜びってな」
魔将の滞在室でダラけるアスワードが、ソファの背もたれから頭を垂らし、周囲の魔将に呼び掛ける。
「さっき連絡があったが、デュラハルド大陸、ちょっとここ人間に取られんのは痛い。まだこっちが整わねぇ。という事で、2名ほど魔将を募集します。手を上げてくださーい。誰もいない場合は出席番号が若い順からになります」
シーン……
ビュンッ!べチンッ!!!
「痛ァいっ!!」
アスワードの額に宝石がクリーンヒット。
痛さに悶絶し、アスワードは床をゴロゴロと転がる。
「うるさァァァァイッ!!!騒ぐなッ!騒ぐなッ!!騒ぐなァァァァァ!!!」
アイマスクの上からサングラスを装着したノワルが飛び起き、ベッドの上で怒りの絶叫。
可愛らしいスライムがデザインされたピンクのパジャマを引き裂く。
勿体ない。
「いでぇ…いでぇよ……ってか俺とノワルしかいねーじゃんよ……」
他の魔将は誰もおらず、部屋の中に居たのは眠っているノワルと、暇をしていたアスワードの2人だけだった。
「デュラハルド大陸は我等の物!!勝手に人間が争っているようだが違う!!!我!々!の!物!」
緑色のモヒカンを両手でワシャワシャする。
これまた可愛らしいナイトキャップがアスワードの元へ飛んできた。
それを何の気なしに被るアスワード。
「聞いてたのか……じゃあ行くぞ。数だけは一丁前に多いらしいから魔人筆頭と魔人、魔物もめっちゃ連れてく。……うーん。俺には似合わないな」
「着替えてくる!!!ちょっと待ってて!!」
「ほいよ行ってらっしゃい」
アスワードは似合わなかったナイトキャップを脱ぎ、それをハンカチ代わりにヒラヒラと振りながら、着替えに行くノワルを見送った。
魔将は莫大な魔力を持ち、魔力が豊潤な太い地脈のある土地へと、転移が出来る。
魔人筆頭たちはそこまでの力は持っていないので、数日掛けてやってくるそうだ。
一足先に転移し、デュラハルド大陸を歩く2人の魔将。
ノワルは緑色のモヒカンに、真っ黒なサングラス。
テッカテカのジャケットの中からは、ムキムキの筋肉が覗いていた。
アスワードは赤髪の短髪で、黙っていればイケメン。
退屈そうに空を見上げながら、欠伸をしてモヒカンの隣を歩く。
「……お?」
近くに人影が見え、アスワードは人影の元へと走っていった。
「おーう、そこの冒険者の兄ちゃん、ちょいちょい」
「…ッ!!なんだ、人間か。2人とも見慣れない格好をしてるな。どこの冒険者だ?どこのランクに所属している?」
大陸では見かけない顔に、冒険者の男は怪訝な顔をする。
「まぁまぁ細かい事は置いといて、今この大陸どーなってんの?それを知りたい」
アスワードはお構い無しに、ヘラヘラと冒険者に尋ねる。
「……少し前に、よく分からん連中がこの大陸になだれ込んできた。そいつらは街を占拠し、脱出しようとした人間は機械兵によって容赦なく殺される。この辺りは隠れる場所も無いから、急いで逃げるといい」
「なるほどねぇ。ありがとよ」
ジュッ
「人間も魔物も燃えりゃ同じニオイすんのなー」
アスワードが冒険者の肩に触れた途端、冒険者はあっという間に消炭と化した。
黒く消炭となった亡骸は倒れ、地面に当たったと同時に、ボロボロと砕け散った。
「アスワァァードッ!道草は食うんじゃあ無いッ!!」
「情報収集の為に現地人と交流は常識だぜ?やっぱ聞いた通りで合ってるな。……あんまり派手な事すると目ぇ付けられるから動けねぇが……まぁ良いか。久しぶりに暴れる暴れる暴れまーす!」
アスワードは手に付いた墨をパンパンと払い落とす。
「ほう、情報収集………なら!!……………許そう!!!」
ノワルは両手をグーサインにし、真っ白な歯を見せつけながら口角を上げた。
「ハハハ、基準がガバいな」
アスワードは半ば呆れながら笑う。
すると、街からの脱走者や、街にいなかった人々を攻撃、殺戮する機械兵が、前方から手甲剣を剥き出しに、猛スピードで襲いかかって来た。
<攻撃対象です。攻撃対象です。攻撃対象です。>
「煩いぞぉッ!!ビックリするだろうが!!!」
ボゴォンッ!!
<こうげ>
ノワルは怒りを爆発させ、宝石に変化させたキラキラの拳でアンビシャスの機械兵をぶん殴る。
機械兵の手甲剣は脆くも叩き折られ、本体ごとぶっ飛んで行った。
「マジで情緒振り切れてんな……お、街が見えるな。あそこにお邪魔するとするかね」
2人の前方に、アンビシャスに占拠され、機械兵が周囲を警備をする街が見えてきた。
動乱のデュラハルド大陸に、新たなる危険な勢力が現れようとしていた。




