第52話 始まりの朝と脅威の足音
前話の話数間違ったまま1日放置してました。
ハズカシーイ!
〜朝〜
地下室からは物音1つせず、彼女が蘇ったかどうかは不明であった。
センヤは地下へと続く木製の蓋に乗せられた重石をずらし、ゆっくりと蓋を開けた。
「……おーい」
……………
やはり、地下からの反応は無い。
センヤ達は、ゆっくりと地下へと続く階段を降りる。
ロウソクの炎はまだ消えておらず、ベッドには少女が昨日と変わらない姿で眠っていた。
「……どうだ?」
センヤは軽く身体を揺さぶる。
すると、ベッドの上に寝かされた少女の目が開き、瞳がゆっくりと動いてセンヤ達を見つめた。
「…あ、……あ………あ、の………」
少女は口をパクパクと動かすが、上手く言葉が話せないようだった。
身体も動かす素振りを見せるのだが、指先が少し動くのみで、腕までは上がらないようだ。
どれくらいかは分からないが、確かに彼女は人間として、生き物としての終わりを迎えていた。
しかし、彼女は無事、生き返る事が出来たらしい。
身体の全てが完治するまでは、まだ時間が掛かるようだが。
その事実にセンヤは安堵の息を漏らす。
「君に何があったかは今日の夜に話そう。少なくとも、ここに君に対して危害を加えるような者はいない………すまない、地下に居ては気が滅入るだろう。地上へ連れていこう」
センヤは少女をゆっくりと抱え、階段を上がっていった。
これから色々とやる事の多いセンヤ。
少女の事は、サナとキリナが快く引き受けてくれた。
ちなみにメロは早起きが嫌いらしく、まだベッドの中で寝息を立てていた。
外から人の足音が聞こえ、センヤは拠点の外へと出た。
そこには見慣れた髭面の男が立っており、目が合った瞬間に、男はニヤリと笑った。
「よう、下見は終わったか?」
「ロッシュさん!」
「儂だけじゃない、アルム・ルブラ率いる精霊、そしてお前さんの使用人達も、間もなくやって来る。全員、与えられた仕事は完璧にこなしたさ」
ロッシュの言う通り、遠くに巨人の精霊たち、そして城護たちがこちらへと向かってくるのが見えた。
「朝飯は各々済ませてきた。早速作業に取り掛かりたいが……」
その言葉に、センヤは昨日、拠点で見つけた物の存在を思い出した。
「ロッシュさん、これを」
センヤは拠点の地下で見つけた区画図を胸から出し、ロッシュへと手渡した。
顎髭を撫で、ロッシュはそれを隅々まで目を通す。
そして、視線が右端へ行った所で、少し目を見開いた。
「………ほぅ、区画予定図か。見た限り、お前さんが望んでいた場所自体はしっかりと揃っているな。しかし良いのか?当初のお前さんの要望していた配置とは変わってしまうが……」
「構いません。元々決まっていたものに、こちらが下手に手を加えると、恐らく何か問題が起こるのでは無いかとの懸念はありました。ならば最初から予定されていたものの方が良いに決まっています」
センヤのその言葉に、ロッシュはニヤリと笑う。
謎のタイミングの笑みに、センヤは首を傾げる。
「心で誓った曲げられぬものは曲げてはいかん。しかし、時にはそのような柔軟さも必要だ。それはお前さんの良いところさ」
「………それに、儂の知り合いが幾名かここの建設に携わっていた。全員行方知れずになったがな……さっき、ここに来る途中で、その1人が大事にしていた腰袋と道具を見つけた。そして、この区画図………そいつらの最後の仕事を、儂が完成させてやらにゃならん」
ロッシュは寂しそうな、しかし、ようやく彼らがどうなったかを知れて、安堵した表情を浮かべた。
「……ロッシュさん、後で、来て頂きたい場所があります」
恐らく、昨晩倒したスケルトンの中に、ロッシュの知り合い達がいる筈だ。
生きての再会は叶わなかったが、せめて眠っている場所で再会を果たさせてあげよう。
やがて、精霊たちの先頭を歩くアルム・ルブラも、センヤの元へと到着した。
「よう、依頼主。お前さんから貰った魔力量はやはり半端ないな。こちらの世界での活動時間は、国の建築、そして観光に当ててもお釣りが来る程だ……流石に永住はしないがな!それに、数年単位でこっちにいると、今度は身体が精霊界に馴染まなくなる」
精霊にも様々な事情や、文化があるようだ。
センヤは少し精霊界に行ってみたくなった。
「センヤ様、城護一同、ただ今戻りました。国跡再建設に当たって、周囲の守護を努めさせていただきます。テンガイ様たちは、何やら村で様々な問題が起こっているらしく、そちらを解決してから来るようです」
アッシャーが代表して、帰還の挨拶をした。
うん、全員いつも通り…………?
「レイズヴェル、何かあったのか?」
瞼が少し腫れ、目が赤い。
明らかに泣いた証拠だ。
「……なんでもないっす。なんでも」
「そ、そうか」
そっぽを向くレイズヴェルに、センヤはそれ以上の追求は止めた。
センヤの前には、城護、パラツオ大工団、ルブラカンパニーの面々が集まっており、建設が始まるのを待っていた。
そして、センヤは全員を見渡し、宣言する。
「皆、宜しく頼む。俺の、俺達の夢の第一歩だ!」
オオオオオオオオオオォォォォ!!!!!!!
そして、国跡を再び1つの国として蘇らせるため、大規模な建設が始まった。
そして、数日後────────
〜デュラハルド大陸、港町 ウオスタス〜
「な、なんだありゃあ……」
「こっちに向かってくんぞ!!た、待避だ!」
突如として、他の船を無理矢理押し退け、大型の機械船がデュラハルド大陸へと、幾つも接岸、それと同時に多数の兵士が船から現れ、あっという間に街を、街の入口を包囲してしまった。
そして最後に、巨大な人型の機械がゆっくりと、船から地面へと降り立った。
「準備は済ませておいたか?」
「全てはご指示の通りに。此度もカルマ様の素晴らしいご采配を間近で見られる事、とても嬉しく思います」
「フン、誉めても何も無いぞ」
今回、マキナリアに代わり、この大陸の奪取、作戦指示を任された男。
帝国三機将が1人、カルマ・トランキリテ。
通称『冷血機将』カルマ。
身体の大半を、既に重騎士をモチーフに機械化しており、身長は既に3mを超え、全身に武装を施していた。
一時の情に流されず、時には味方を切り捨ててでも、勝ちを取りに行く非情の男である。
彼が元人間だという事は、一目では誰も分からないだろう。
「良いかお前達、街から出るんじゃない。少しでも街から出たり、不穏な動きを見せた場合、お前達はは機械兵の攻撃対象となる。全員、大人しく広場の中央で固まっておけ」
「なッ、何勝手な事言ってやがる!!」
1人の男が勇みよく立ち上がる。
それに対し、カルマは冷たい笑みを浮かべた。
最も、既に顔すらも彼は機械化しており、その表情など誰にも分かる筈が無いのだが。
「立候補、嬉しいぞ。毎回、お前のような馬鹿が1人見せしめになる」
ザンッ!
ドサッ……
カルマの腕から高速で刃が打ち込まれ、額を貫かれた男はその場に倒れた。
「良いか、この男と同じ様になりたくないのなら、先程言った通りに動け。俺は同じ事を二度言うのが嫌いなんだ」
人間を躊躇いなく殺したカルマに、住民や冒険者たちは恐れをなして広場の中央へと移動した。
全員が中央へと集まったのを確認すると、カルマは兵士たちに指示を出した。
「では、本物の『武力』と言うものを、この大地に刻み付けよう。各領地を制圧、そして最後は国跡を。この大陸を『アンビシャス』へと捧げるのだ……進軍……開始ッ!!」
カルマの指示により、デュラハルド大国へ大量の機械兵、及び人間のアンビシャス兵が解き放たれた。




