第47話 消えた者達の行方
牙突!!!!
リリーが去った後、比較的損壊が少ない建物を見付け、そこを拠点とする事にした。
辺りの廃材を使い、センヤは手早く拠点となる建物を補修した。もうお手の物である。
国跡はとても広く、センヤとメロが手分けして魔物を排除した。
暫くして、2人は集合場所である拠点へと戻ってきたが、その頃には既に日が落ち、辺りは暗くなり始めていた。
「…リリーさんがある程度倒しておいてくれたお陰で、こっちはあんまりいなかったよ。アカツキ君は?」
「………こっちもまあまあだな」
そう言うセンヤの表情は、ひと仕事終えて満足したようなものではなく、少し考え事をしている表情であった。
「満足出来なかったの?相手になろーか?広いしさ」
メロが黄泉脚をブンブンと振り回す。
彼女もあまり満足してはいないようであった。
流石に戦闘好きなだけはある。
「……いや、少し考え事をな。…もう遅い。今夜は休もう」
「……んー…了解」
拠点の中では、ここに滞在していた冒険者の道具がそこそこ見つかった。
やはりこの建物は滞在するのに適しているのであろう。
子供たちが中の道具を片付け、サナとキリナが外で焚き火をして、軽い夕飯を作っていた。
「〜〜♪……〜〜♪」
サナが歌詞の無いメロディだけを鼻歌で口ずさむ。
「サナちゃん、そういえば最近その曲多いよね」
キリナはサナと行動する機会が多いので、最近よく聴く同じメロディーだと、ふと気が付いた。
「あっ、すいません……なんでしょうか、聞いた事無い筈なんですが……最近、この曲がずっと頭の中で繰り返すんですよねー……」
サナも首を傾げる。
これは本人ですら無意識にしている行動のようであった。
「アタシが知る限り、倒れたサナちゃんが目覚めた日の夕方からは歌ってたかも」
「何か、この刻印と、私がしたという予知……が関係しているのでしょうか?」
確かに、時期的にそれが無関係とは言えないだろう。
そもそも、物心付いた時には既に奴隷だったのだ。
出生や、先祖など何か思い当たる筈がない。
「ただいまー。倒してきたよ」
「ただいま、何か問題が発生したりは?」
掃討に向かっていた、センヤとメロの2人が帰ってきた。
2人はあまり疲れておらず、魔物もリリーさんが粗方倒していてくれたというのは、やはり本当だったようだ。
「センヤ様、メロさん、おかえりなさい!問題なしです!」
「おかえり、そろそろ出来るよ!」
中では子供たちが、綺麗に道具を棚に戻していた。
掃除道具もあったらしく、中の塵や埃を掃除してくれていた。
綺麗になった拠点で、夕食の時間が始まった。
「ねーねー、サナちゃん歌ってー!」
和気あいあいと食事をしていると、子供たちの1人、イチカが、サナへと歌をリクエストした。
こうやって、様々なタイミングでサナに歌のリクエストが来るのは、決して珍しい事ではなかった。
サナは立ち上がり、拠点の少し開けた空間へと移動した。
「今日はですねー……リズアニアの田舎町にいた時に聞いた歌です。こほん……」
「目覚めを待つ 花々の 蕾は」
「遠い宙に輝く 太陽へ向け いつか咲き誇る」
「たとえ太陽へ 届かないと知っていても……」
カシャ……ン………
「…え?」
全員がサナの歌を聞く為に、静かにしていた為、謎の物音を聞き取る事が出来た。
どこか、ここからあまり遠くない距離で、何か、物音が鳴った。
仕留め損ねた魔物だろうか、それとも、新たに現れた魔物か。
それとも、同じくここで一旦休息しようとした冒険者か………。
カタッ………ズッ………ズッ……………
また、音が鳴った。
近い、確実に近付いてきている。
音の数も、複数に増え始めていた。
「…メロ、皆を守ってくれ。俺は外へ出る。『紅魔法』番外『虚栄虚飾の王政』」
ギンベッカ戦で役に立った『虚栄虚飾の王政』。
センヤの魔力を核にし、大気中の魔力で人型にコーティングする分身。
簡単な行動しか出来ないが、それでもかなり役に立つ。
センヤは拠点の周囲に分身を配置し、1人で拠点を後にする。
カタッ………
ズッ……ズッ……
月を背に、逆光となった人影の群れが、おぼつかない足取りでこちらへと歩いてくる。
「国跡を再建しようとした人間が、全員行方不明……途中で財が尽きたのは分かるが、現場に携わっていた関係者、誰か大工の1人くらい行方を知っている奴が居てもいい筈だ。……工事が真っ当に中止になったならな」
センヤは背から終告げる紅薔薇を引き抜く。
それと同時に、魔力の鎧を全身に身に纏う。
鎧の各所に存在する赤い装飾が、ゆっくりと明滅を繰り返す。
魔力量は十分過ぎる程だ。
「………ここで死んだんだ、全員」
人影は、宝石などの高価な装飾品を身に付けた、恐らく元出資者であるスケルトン。
腰袋を身に付けた、大工のスケルトン。
そして、まだ所々に肉の付いた腐死人。
よく見れば、まだ小さな子供たちの姿もあった。
きっと、ここに滞在してしまった冒険者や傭兵、普通の商人やその家族達であろう。
拠点に置いていった道具は、決して置いていった物では無い。
……あれは遺品だ。
「カカカカカ……また愚かな人間共が我が手先となりに来おったわ……」
「今度の人間は中々に強い肉体を持っていそうだ。ククク……楽しみだ……」
スケルトンや腐死人の群れの最奥に、死術者の魔人が数体現れた。
恐らく、国跡が出来るより以前から、ここを住処としていたのだろう。
「『真血 解放』……死術者からの解放、そして無念を晴らす事こそが、俺が出来る弔いだ……行くぞッ!!」
幼い子供まで手を掛けた魔人に、怒りを燃やすセンヤは単身、終告げる紅薔薇を手に群れへと切り込んで行った。




