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第46話 国跡の視察と現支部長

ね、眠い……



妹は学校がお休みなので毎日が日曜日のようです。



ちきしょう!ハネルも日曜日ほしい!




マキナリアが連絡を受け、デュラハルド大陸への派兵を指示する数日前に戻る。




かつて、国が存在しないデュラハルド大陸は、領主たちの纏め役として、聖騎士軍のデュラハルド支部長が代役として『国王』のような役割を持っていた。

しかし魔王復活に伴い、中立の大陸であるデュラハルド大陸には、爆発的に魔物が増えた。




そのため、人間の領主達がリズアニア大陸へと逃げ出し、領地を纏める者達が全員いなくなってしまった。




領主が雇っていた領地内の警備は、爆発的に魔物が増えた事、そして領主から賃金が支払われなくなった事により、領地の警備を放棄。

それまで、簡易的な柵でしか領地の区分けを行っていなかった為に、柵はいとも容易く魔物に破壊された。




聖騎士軍も魔物の対応に追われ、領地の警備や纏め役などに割ける人員は少なく、ファテナは良く頭を抱えていたという。

それから領地が曖昧になり、現行の地図で、領地の区分けがまともにしてあるのは、片方の手の指に収まる数しかなかった。




なのでセンヤは、まず聖騎士軍に代わり、領地を纏める国を作り、次に領地の区分けを明確化し、信頼出来る人物を領主に据える。

そして、そろそろ定職に就こうと考えている冒険者や傭兵を、各領地内の警備隊にしようと考えていた。




パラツオ大工団とルブラカンパニーは、センヤの依頼で通行料、関税などは取らないが、怪しい者を弾く為に関所や大規模な柵を作るべく、大陸の各場所へと散った。

最終集合場所は国跡となっている。







「らぁっ!」




「そりゃっ!」




「ギェッーー!」




キリナのキック、サナのパンチが、魚人型の魔物へと炸裂する。

魔物は倒され、ビチビチと何回か跳ねた後、そのまま動かなくなった。




「おおお〜〜……」




子供たちから感嘆の声と拍手が上がる。

勿論、2人がピンチになった場合は、いつでもセンヤとメロが飛び出せるようにしていたが。




「最近、空いた時間に、サナちゃんと2人で城護の皆さんや、テンガイさん達に戦い方を教えてもらってるんだ」




「あまり戦ってほしくは無いんだが……少しでも身を守る技術があるのと無いのとでは、大きく変わってくるしな」




センヤは2人の成長も喜ばしいが、少し心配でもあった。

まるで年頃の娘を持つ父親のような心境である。




「そうですそうです!キリナさんも私も吸血鬼なんですから『真血解放』出来るはずです!」




「ね、それが出来れば少しでもセンヤさんの役に立てるんだけど……今は体術の基本で、武器を使った戦い方は教えて貰ってないんだけどね」




そう言うと2人は背中に背負っていた武器をセンヤへと見せた。

簡素だがしっかりとした出来である。

材質的に、恐らくメインで使われているのは骨であろう。




「アタシが槍で、サナちゃんが2つに割れた盾……2つともカテドラルちゃんが作ってくれたんだけど……なんでサナちゃんの盾が割れてるのかが、分からないんだよね……」




キリナが首を傾げる。

2つに割れた盾の事をカテドラルに尋ねたのだが、




「たては、ふたつが、ひとつで、とじる。からんからん。やりは、ほつれを……からーん」




と、よく分からない答えが帰ってきた。







「これはですね、それぞれ裏に持てる部分があって、両手に装備してパンチをすると下に付いた刃で攻撃できるんです!」




サナが両手に装備し、シャドーボクシングをする。

確かに、両爪のような感じで武器にも使えるが、それなら盾でなくても良いのではないだろうか。






国跡まで距離があったので、途中の村で馬車使いを雇い、国跡まで一気に連れてきて貰った。

暫くはここが拠点となるので、途中で何ヶ所か村に寄り、食材なども多く買い込んだ。

国跡で降ろしてもらい、馬車使いに金を渡す。




ここは4箇所ある入口の内、西側の入口のようだ。

工事関係者が出入りしていた為に、門などはまだ作られておらず、国を覆う外壁、そして広大な内部は、地面に石畳が敷きかけ、大まかな店や住居の区画などが分けられているのみで、これから幾らでも弄りようがあった。

しかし、雑草が生い茂っている所や、崩壊した作りかけの建物、中は魔物が住むには最適な環境になっていた。







「ハァッ!」




ザンッ!




「グェアッ!?」




少し歩くと、聖騎士軍に所属すると思われる格好をした女性が、今まさに魔物を、片手剣で切り裂いた瞬間に出くわした。




「…?珍しいですね、こんな所に冒険者とは……」




女性は片手剣の血を払うと、鞘へと仕舞う。




「私は聖騎士軍デュラハルド大陸支部長、リリー・アムルーズです。訳あってこの国跡に住み着く魔物の駆除を行っていました。あなた方は?」




「俺はセンヤ・アカツキ・デュラハルド。ファテナさんを通して色々とお世話になっています」




「あぁ、貴方が……ファテナさんは元気にしていますか?」




センヤの名前と、ファテナの名前でピンと来たようだ。

やはり気になるのは、前任者であるファテナの事のようだ。




「今はラグディスの領主代理を頼んでいます。本人は至って元気ですよ。腕の良いマッサージ師も見つけたみたいです」




(いやぁー照れるっすねぇ……腕が良いだなんて)




センヤの脳内に、ニコニコと笑うテンガイの姿が現れた。




「まったく……あの人は何を考えているんだか……私には全く理解できません……前々から奔放な方だとは思っていましたが……そもそも、ある日突然『悪い、クビになるわアタシ。後頼んだ』って急に居なくなるだなんて……もう………」




ファテナ曰く、リリーにはあまり好かれていなかったとの話である。

確かに、リリーが今話している内容は、あまり好意的なものではなかった。

しかしセンヤは何かと世話になっている部分もあるので、リリーが言い過ぎていると感じた場合は少しフォローも入れようかと考えていた。




「そもそも、彼女は仕事も出来る、剣の腕も天才レベル、私なんかでは意見を提案する事さえおこがましい、近くにいるだけで緊張してしまいます」




(ん?)




なんだろう、風向きが変わってきた。




「私なんかより、なんでも要領良くこなしてしまう。男性ばかりの聖騎士軍でファテナさんが指揮を執る姿はとても頼もしく、新兵だった私はファテナさんに憧れて、少しでも近付けるように努力をしたんです」




口ではああ言いつつも、やはり信頼はしていた様だった。

ファテナが嫌われていると言っていたのも、きっと、前述の通り、緊張のせいであろう。

センヤ達は、いい加減だがここまで信頼されているファテナを少し見直した。




「……そしてベランダで夜風に吹かれながら、煙草の煙を燻らせるファテナさんの横顔は、とてもじゃないですが直視できません。……訳が分からないレベルでカッコ良すぎじゃないですか……」




(…お?)




また風向きが変わりそうだ。

……ダメな方に。




「模擬戦後のシャワーでファテナさんの引き締まった身体を眺める至高で至福の時間がもう訪れない………働き詰めで、生活習慣が乱れがちのファテナさんのお世話が出来ないだなんて………あの3日目のむせ返るような香りが、私は忘れられない……!」




リリーはワナワナと震え、歯をギリギリと食いしばりながら、両拳を握り締めている。




ファテナへ抱いている感情が、憧れや恋愛感情だけならまだしも、リリーはだいぶ性的な方へと走っているようだ。

子供たちはそこまで深い意味が分かっていない様だったが、センヤを含めて4人はちょっと引いた。

いや結構引いた。




「……おっと、そろそろ次の仕事です。私はこの辺りで失礼させてもらいましょう。ある程度は私が片付けましたが、まだ残っているかもしれません。……私がこういうのも変ですが……この大陸にどうか、平和と安定をもたらしてください」




真面目な表情に戻ったリリーは、センヤに手を差し出し、互いに握手を交わす。




「…そうだ、行く前にこれをあげましょう。この大陸にはもう不要な物かもしれないですけど。しかし物には使い時がありますから」




そう言うとリリーはポシェットの中から、沢山の魔丸が入った袋をセンヤに手渡した。




「これは…?」




「この大陸には魔力が無かったでしょう?なのでこの魔力が封じられた【魔丸】をリズアニアから個人的に輸入して使っていたんです。味は葡萄味ですよ」




「ありがとうございます。リリーさん」




センヤ自身が魔力不足になる事は無いだろうが、テンガイ達が必要になる時が来るかもしれない。

これは有難かった。




「では、改めて『白魔法』精霊の番外『彼方への翼(フェルン・アムルーズ)』」




リリーは片腕を上げると、そのままどこからか飛んできた大鷲の精霊が腕を掴み、聖騎士軍デュラハルド大陸支部のある方へと飛び去って行った。







「……ファテナさんの事大好きなんだな……リリーさんは」




愛の形は人それぞれだと、センヤは腕を組みウンウンと頷いた。




「やー……ちょっと、私には難しいお話ですね……」




「あー…ハハ、真面目だけど……正直過ぎるって言うか、さ……」




「………メロはノーコメ。アカツキ君こっち見んな」




センヤは分かったような分からないような、そんな感じだったが、残りの3人は、やはり少し引いていた。








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