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第42話 精霊さんいらっしゃい

ロッシュさんは気難しい男ですが、気に入った相手にはとことん良いお爺さんになります。

気に入らない相手には、どれだけ依頼されてもその依頼を引き受けることはありません。




〜朝〜




ダダダダダダ………




バァンッ!!!




ロッシュは大工団の仲間達が休んでいるホールへと向かい、ドアを勢いよく開け放ち、彼らへと言い放つ。




「お前らァ!!!でけェ仕事だ!!!!領地の可視化!関所!そしてゆくゆくは国を作るぞ!!国だぞ!!!ガハハハハハ!!!!」




「……は?」




「夢でも見てんのかい?」




オッサン達が顔を見合わせてお互いに頬をつねるが、どうやら夢ではないらしい。

しかし、5分もすればすぐに理解し、昨晩、センヤとロッシュが纏めた書類に目を通し始めた。

この辺りの飲み込みの早さも、彼らが凄腕大工と呼ばれる所以かもしれない。










元支部長のファテナから、現聖騎士軍のデュラハルド大陸支部長まで話を通してもらい、全ての領地をセンヤを領主とし、領主代理として移動が可能になった城護たち、そして不足分はテンガイ一派に請け負ってもらった。




城護は本来、あと数名存在するのだが、残りのメンバーの復活には、城の広大な地下を整備しなければならない為、後回しになっていた。

突然の事に領地内の村人達は驚いたが、手が回らない聖騎士軍よりかは大丈夫だろう、という事で、なんとか受け入れてもらった。




ロッシュ達、大工団の仕事に支障が出ないよう、領主代理となった皆は、まず付近の魔物の掃討が始めの仕事になった。




センヤはメロは国跡の視察、サナとキリナ、子供たちは大工団達への補給を行う事になった。










ロッシュ達は、まず手始めにラグディス領の関所、それを繋ぐ大きな柵を作る為、ラグディスから少し離れた場所へと来ていた。

最初の仕事である為、センヤ達も彼らに同行した。




「んんむ………久しぶりに呼ぶな。少し儂の後ろに行くんだ、危ないからな」




ロッシュの注意に、全員がロッシュの背後に回り込んだ。

これから何が起こるのだろうか。




「『白魔法』精霊の番外『百腕の鬼大工(ヘカトン・パラツオ)』!」



ロッシュが地面へと両手を着く。

すると、ロッシュの手前に紋様が浮き上がり、直後に地鳴りが起こり始めた。







ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!







ボゴォッ!!ボゴッ!!ドゴォッ…!!!!







地面がバキバキと割れ、紋様を破壊しながら、地の底から大量の長く太い腕を持つ、ゴーレムの様な生物が現れた。




「ブオオッホッ!いきなり地中に転移か!!久しいな、ロッチャの坊主!」




どこに口があるのか分からないが、ゴーレムの様な生き物は、懐かしい、という様な感じでロッシュへと語りかける。




「ロッチャ?」




センヤは首を傾げる。

名前がちょっと違うのではないか?

それに対し、ロッシュは大きなため息をついた。




「ロッチャは儂の親父だ。1年前ほどに亡くなっている。儂も既に坊主ではないのだが、我が家に代々伝わる精霊『アルム・ルブラ』は未だに儂をあぁ呼ぶ」




ロッシュはやれやれと、巨大な『アルム・ルブラ』を見上げる。




「ヌハハハハハ……!!吾輩からすればまだまだお前などヒヨッコよ。して、何用だ。吾輩は精霊界でも建築業界の最先端を行く精霊だぞ。取材とかもある。忙しいのだ」




「えーーーっ!!」ガーン……




「精霊界とかファンタジーっぽいの期待してたのに……」




悲痛な声をあげ、サナ、キリナ、子供たち、メロの全員がガックリと項垂れる。




「少女達よ。夢を壊して申し訳ないが、そういうものなのだ。商魂たくましい連中はこっちにも販路を広げている……で、何を作るんだ」




アルム・ルブラは少女たちに手を合わせ、イメージを破壊してしまった事を詫びると、ロッシュの方へと向き直った。




「パラツオ家に大恩ある方からの頼みだ。この大陸中の領地の区分け、そして関所の設置、そして国が存在しないからな、ここから東にある国跡を再建する。そこそこ掛かりそうだ」




それを聞いて、アルム・ルブラは大量の腕で頭を抱えるジェスチャーをした。

顔がどこだか分からないので、表情も読み取れないが、意外と感情豊かな精霊である。




「こちらの世界での10日は精霊界での1日。しかしそれでも………うんむむ……もっと呼ばねばならん。そこの依頼主、お前が一番魔力がありそうだ。お前を媒介して精霊界から吾輩の所の従業員を呼ぶ。それで良いか?」




アルム・ルブラは、大量の指でセンヤを指さした。

何だかあれだけの巨体で、多くの指をさされると、物凄い圧を感じる。




「工期が早まるに越した事は無い。こちらからも宜しくお願いしたい」




センヤはアルム・ルブラに手を差し出した。

彼もそれを1つの手で握り返し、魔力の受け渡しの準備が整った。







「…では魔力を貰うぞ………おぉ…おほぉ…!おっほほほほ!!!ほほほほほ!!!な、なんだなんだ!凄いな!!むぉほほほほほほ!!!」




アルム・ルブラはセンヤの魔力量に、驚きと喜びの声を漏らす。

子供たちは奇声を上げるアルム・ルブラに怯え、一斉にサナ、キリナ、メロの後ろに隠れた。




「よし、よしよしよぉーし!!この辺で良いか!」




「それだけで良いのか?まだまだあるぞ」




魔力のストック量が段違いのセンヤは、一流の魔法使い10人分の魔力量を取られてもピンピンしていた。




「ヌハハハハハ!!!大した奴だ!!だがこれ以上は無関係の奴まで引っ張り出しかねん!!そんな事をしては吾輩があちらに戻った時にドヤされてしまうわ!!」




アルム・ルブラはなんだかロッシュに似ている。

性格が合うからこそ、アルム・ルブラは歴代パラツオ家の専属精霊契約を結んでいるのだろう。




「ついでにお前の身体に『パス』を作って置いた。あちらで誰が応えるか分からんが、お前程の魔力量を持つ者なら、とんでもない奴を呼び出せるかもしれんな。魔力量が十分な時に試してみるといい。やり方は坊主から教われ」




「?あ、ありがとう」




アルム・ルブラが気を利かせて、ロッシュと同じく精霊を呼び出せるようにしてくれたようだ。

国跡の再建が終わってからロッシュに聞いてみよう。

……ちょっとワクワクする。




そうこうしている内に、アルム・ルブラの時よりも、地面が激しい振動を始めた。







……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!







ボゴンッ……!ボゴッ!ボゴゴゴッ!!!







「ブホォッ!社長!!急にどうした!!」




「アボフッ!なんだなんだ!!ここは!!」




「ンブラァッ!人間界か!初めて来たぞ!!」




アルム・ルブラに負けず劣らずの巨大な精霊たちが、地面の中から現れた。

しかし社長のアルム・ルブラと同じく、自分が何故呼ばれたのか飲み込めないようであった。




「ちょいと吾輩だけでは足りぬ案件でな、手伝え!!」




ザワ………ザワ………




社員精霊たちはアルム・ルブラの強引な命令に、皆で輪を作り話し合いを始めた。

そして、少しして代表者の精霊が一歩前に出て、アルム・ルブラに纏まった意見を言った。




「社長、その……終わったら観光しても良いか!今回、ここに来たのは初だと言う奴らが多いんだ」




「構わん!ただし精霊証明書を付けよ!魔物として狩られてしまうぞ!それと、あまり人間に迷惑を掛けるなよ!サイズも人間レベルまで小さくなるように!」




アルム・ルブラは全ての腕の手をグーサインにした。

無理やり呼び出しておいてだが、仕事も含めた研修旅行のような形になった。




「おお〜!」




パチパチパチ…!




社員精霊たちから拍手が上がる。

恐らく人間界の通貨は持っていないだろうから、センヤは全員に数万メロを支給する事にした。




あちらでは魔力は貴重であり、こちらの世界へ観光、または契約した者に呼ばれた時には、魔力を大量にストックして精霊界へと帰る。

精霊界では、魔力は食べれば超栄養源、加工すれば美しい武器や家具へと変わる。

こちらの世界の者と契約をすれば、召喚の際にコストとして魔力を貰える為、あちらの世界では契約を望む精霊も多い。

故に契約受付所なる施設があり、あちらからの契約申請をリアルタイムで貼り出し、精霊たちは相手の深層意識から読まれた契約条件に目を通し、了承すれば無事契約完了となり、あちらの世界へと喚ばれる。

たまにある事なのだが、契約者と精霊のフィーリングがかなり一致した時、精霊の了承無くあちらへと喚ばれる事もある。

精霊自身も相手とかなり相性が良い為、契約を拒む事は非常に稀である。




パラツオ大工団のメンバーが100名。

そしてルブラ・カンパニーの精霊が200名。

センヤと両組織のトップは話し合いをし、従業員を各地に振り分ける事にした。




「この人数が居れば、領地の区分けくらいは簡単に終わるな。精霊は人間50人分程の働きは余裕で出来る」




「わ、私たちはどうすれば…?」




補給担当のサナ達は困惑する。

まさか大陸中を走り回る訳にもいかないだろう。




「なぁに!散ってもすぐに終わる!国跡に着手した時に手伝ってくれい!」




「わっわっ」




ロッシュはサナの頭をワシワシと撫でる。

祖父が存在しなかったサナは、最初は驚いたがそんなに満更でも無いようであった。




じー……




子供たち、キリナ、メロもそれを眺める。

視線に気が付いたロッシュは、皆の元に向かい、順番に頭をワシワシと撫で始めた。




「全員、歳で言うと儂の孫みたいなもんだな。……困った事があったら儂に言え、これは儂ら一族が、デュラハルド家に対して恩義がある事とは別だ。あ奴もまだ若い、人生は長いからな。これから様々な事を知り、成長していく。あ奴だけでは解決出来ない事もあるだろう。そして相談をあまりしないタイプだろうからな。皆も気付いたら儂に知らせてくれても構わない」




ロッシュはセンヤに聞こえないように、サナ達に伝えた。

彼女たちを、そしてセンヤを見るロッシュの目は、実の孫を見るような、とても優しい目をしていた。




「木材とか石の材料は全部ファテナさんが聖騎士軍を通して許可を取った。近くの森林から切り出して構わない」




「了解した。吾輩もその辺の許可が気になっていたんだ。これで遠慮なく仕事も出来よう!ヌハハハハハ!!!!」




2人の話が纏まったのを確認すると、ロッシュは全員の前に立ち、宣言した。




「よし!それでは皆の衆!仕事だ!!持ち場へ向かえーー!!!」




ロッシュの号令により、大工団と精霊たちはデュラハルド大陸の各地へと散った。







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