表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/119

第36話 知略と策謀の魔人

あと少しで第二章も終わります。

第三章では国が出来たり侵略戦争だったりまだ出番が無い聖羅十傑とかも出てきたりする筈です。


宜しく御願いします<(_ _)>




〜夜〜




センヤとメロは、ギンベッカと思われる人物がよく受け取り場所に指定する湖を目指し歩いていた。

道中、夜行性の魔物と何匹か遭遇したが、現役核級(コア)、吸血鬼の王に叶うはずも無く、運悪く彼らは散っていった。




「…てかさ」ジロジロ




「ん?なんだ?」




「それ目立つんだけど……」




魔力で生成した鎧。

鎧の所々に赤い装飾が付いているのだが、それが赤く発光している。

暗い夜道を歩くとかなり目立つ。

実際、5回魔物と遭遇したが、内4回はこの光に釣られてやって来た魔物だった。




「これは感覚的なものなんだが……俺の現在の魔力量を表しているバロメーターみたいなものだと……思う」




「なんで自分で生成した鎧の機能を自分が知らないかな……今でどのくらい?」




「そうだな……並だ。終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)で敵から体力、魔力だけを吸収したり、さっきの魔物の様に、普通に刃として斬った場合も吸収するようだ」




「並でそれって…吸いすぎたらどうなるの?」




「……そういえばどうなるんだろうか」




確かに考えた事も無かった。

吸い過ぎたらどうなるのだろうか、爆発でもするのだろうか。

分け与えたりする分には、タンクとしての役割を期待出来るが、爆発するのは不味いだろう。




「その光ってるのが激しく点滅するとか?」




「ウルトラマンみたいだな」




「……ふふっ…ウルトラマンって……ピンチじゃんそれ…」




「ハハ、星に帰らないといけないな」




夜道で2人して笑い合う。

転生者同士だからこそ通じ合う会話なので、2人共なんだか嬉しかった。

暫く歩いていると、アッシャーから連絡が入った。




「ん、アッシャーから連絡だ。すまない、少し止まってくれ。その方が話しやすくてな」




「アッシャー?連絡?スマホ?」




「スマホがあると思うか?」




センヤとメロはその場に止まる。

アッシャーからの連絡に承認を出し、会話を始める。




『アッシャーか、どうした?』




『テンガイ様がお伝えしたい事があるらしく、お繋ぎしました。変わります』




(テンガイ……?珍しいな)




意外な人物に驚くが、きっとアッシャーに頼んでまでセンヤに伝えたい事があるのだろう。

敢えて何も話さず、テンガイに代わるのを待った。




『…旦那』




『テンガイ、どうかしたか?』




『頼みがある。……ギンベッカのヤローを……ブッ潰してくれ!』




(襲撃……ボードン……魔物化……爆弾……そうか、テンガイ………)




『テンガイ………その怒り、確かに俺が引き継いだ。待っててくれ。お前の怒りを必ずギンベッカにぶつけよう』




テンガイの振り絞る様な声と、アッシャーを通して伝わったテンガイの想い、それはセンヤに余すところなく全てが伝わった。

そして連絡が途切れ、念での会話は終了した。




「便利な能力……で、どんな連絡だったの?」




「男と男の約束だ。俺は想いを託された」




「…ふーん」




色々と思うところがあったのか、メロがそれ以上話を聞くことは無かった。

そして歩いている内に、受け渡し場所にしていされる湖が見えてきた。

センヤは先程のボードンの件を踏まえ、メロにある作戦を提案をする。




「メロ、恐らくだが……」




「ん、ん……了解。念には念を、ね」




センヤはメロに耳打ちをする。

メロはそれを聞き、その作戦に納得したようだ。

そしてセンヤの元を離れ、メロは湖の西に生い茂った森の中へと、身を潜めた。







メイクゴブリンは、通常のゴブリンと違い、細やかな作業が得意だ。

性格は職人気質で、丁寧な物作りを心掛けている。

しかし作業に力を入れ過ぎて食事を怠り、餓死するメイクゴブリンも珍しくない。

更に一部のメイクゴブリンは、人間の工房に住み、その技術を教わり修行をするものもいるらしい。




「ギギニャ〜♪」




ヤヤガとギンベッカの隠れ家、その真横に作られた洞窟のような空間で、メイクゴブリン達は魔武器、魔防具を作っていた。

朝昼晩、定期的にギンベッカから魔族栄養食を貰いつつ、働ける空間は、彼らにとって最高の環境であった。




………ズゥゥゥッンッ!!!




その最高の環境が、脅かされようとしていた。

突然の巨大な揺れ。

天井からはパラパラと小石や土が落ちてきた。




「ギッ!?」




………ズゥゥゥッンッ!!!




「ギギ!ギニャガ!ギギギーニャ!!」




「ギギニャ!ギーニャ!」




………ズゥゥゥッンッ!!!




どうやら、避難しようとする者と、このままここで作業を続けたい者で意見が割れているようだ。

その間にも揺れは続き、とうとう壁にはヒビが入り始めた。




………ズゥゥゥッンッ!!!




「ヒッ!ヒィッ!?ギ、ギンベッカ殿、こっ!これは一体!?」




「……どうやら、尻尾を掴まれた様ですね」




振動と共に落ちてくる天井に、ヤヤガは半分パニックに陥っている。

しかしそれでもなお、ギンベッカは焦る事も無く冷静に状況を把握していた。




「ヤヤガ殿、出ますぞ。ここで死んでは全てが終わり。魔武器、魔防具のストックは惜しいですが諦めましょう。貴方の資産は港の『アラクネラ』の中にある筈です。安心して脱出してください」




湖の中央に、水中から小島が現れ始めた。

その小島の真ん中に穴が開き、中からヤヤガは顔を出した。

ハシゴを登る最中も揺れは収まらず、小島に上がった後も揺れは定期的に続く。

ヤヤガは何が原因なのか、周囲を見渡して原因を探る。




「ど、どこだ、災害か!?魔物か!?な、なんなんだ!?」




すると、離れた陸地に、赤い光が見えた。

よくよく目を凝らすと、それは人の形をしている。

その人物は片膝立ちで、拳を一定間隔で地面へと打ち付けていた。




「なんだアイツは……!?ま、まさか拳1つで湖の下まで振動を伝えていたのか……!?」




ヤヤガに続き、ギンベッカも翼を広げ、地下から地上へと姿を現した。

センヤは拳を止めて立ち上がり、真っ直ぐギンベッカを見据える。




「…よう、会うのは2回目だな、ギンベッカ」




「やはり、気付いていましたか。貴方の戯言に付き合うのも一興でしたよ」




あの日、民衆に囲まれた時に仕掛けた釣り針は、ギンベッカにはお見通しだったようだ。

しかし、こうしてギンベッカがわざと食い付いたお陰で、テンガイがこちら側へと付いたのだが。




「そいつはどうも、じゃあ『本物』の策を見せてもらおうか、ギンベッカ」




「クク……思い上がるな、人間。貴様1人に私が策を講じるとでも?」




ギンベッカは手袋を外し、指を鳴らす。

すると山からは巨大級(メガトン)の赤い飛行系龍種が五体、湖からは、同じく巨大級(メガトン)の青い水棲系龍種が五体現れた。




「策など要らぬ。圧倒的な物量で押し潰す、脆弱な人間なぞこれで終わりだ」




ギンベッカは翼で空へと飛び、腕を組みながらその場で観戦を始めた。

自身が手を汚すつもりは毛頭なく、高みから愚劣な人間を見下すのが常の魔人、ギンベッカ。

しかし彼は1つ、致命的な思い違いをしていた。




「悪いな」




センヤは背中に装備した大剣、終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)の柄を掴む。

鞘はいつもよりも激しい黒炎となり、大気中に消滅する。




「人じゃねぇ、『鬼』だ」




刀身に手を滑らせ、血を黒炎へと変える。

ギンベッカはセンヤの予想外の行動に多少驚く素振りを見せるが、空から降りてくる事は無かった。




真血(リリース)……解放(ディストラクション)ッ!」




鎧を身に付けた状態での『真血解放』は初めてだったが、鎧ごと全身が黒炎に覆われ、伸びた髪は兜の隙間、首元から腰まで流れた。

コートを脱ぎ捨て、即座に黒翼を広げ、センヤもギンベッカと同じ空へと飛翔する。




「ククク……それで私と同じ場所に立ったつもりか?」




「さぁな、上か下かは戦って決めればいい。……来いよ」




「フン…行け、赤龍。奴に自身の愚かさ、浅はかさを思い知らせてやれ」




「…ヴォアアアアア!!!!!」




ギンベッカの命令によって、赤龍達がセンヤへと襲いかかって来た。

今度は制御装置こそ付いているが、前回の赤龍よりも制限が少なくされているらしく、炎も吐けるようになっている。




「オオオオオオオオオオオオ!!!!」




「…邪魔だ」




突っ込んできた一体目の爪を足ごと切断し、飛び上がりながら終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)で首を落とす。

身体は血を吹き上げ、地面へと落ちていく。




「オラァッッ!!!」




二体目は炎のブレスを吐き出すが、センヤは炎を切り裂き頭を蹴り飛ばす。

その先には三体目の赤龍がおり、二体は衝突する。

瞬時にそれらの上へと移動したセンヤは、急降下しながら二体を纏めて両断する。




「『紅魔法』鎖の六章『鮮血の軛(ブラッド・バインド)』!重ねて『白魔法』裁きの終章『裁きを告げる十字星(サザンクロス・ジャッジメント)』ッ!!」




四体目、五体目は魔力で出来た紅い鎖に自由を奪われ、体内に光を打ち込まれる。

瞬間、赤龍は体内から聖なる白き十字に、その身を貫かれた。

けしかけられた赤龍を全て倒し終えたセンヤは、切っ先をギンベッカへと突き付ける。




「…お前の余興に付き合うのも一興……とは言わねぇ。お前は人を弄び過ぎた……必ず潰す」




「クク……甘い、甘いな。青龍よ、奴を止めよ」




センヤの前に、湖から陸へと上がった青龍が立ち塞がる。

ギンベッカは地上へと降り、不安げに事が進むのを眺めているしかなかったヤヤガへと話し掛ける。




「ヤヤガ殿、力を、貸していただけますかな?」




ギンベッカは緑色の目を細め、ヤヤガと視線を合わせる。

あれだけ信頼していたギンベッカが、今はなんだかとても恐ろしく見える。

赤龍を倒され、何故、笑っていられる?




「ギ、ギンベッカ殿……?何を…?」




不安なヤヤガを無視し、ギンベッカはヤヤガに後ろを向かせる。

そして懐から、何やら六角系の機械を取り出し、ヤヤガの背中へと近付けた。

すると、機械の角から足が生え、ヤヤガの肩、腹、腰をしっかりと掴み、機械の中心部が発光を始めた。




「こ、これは?ギンベッカ殿!?」




魔物化装置(エヴィルメア)………ヤヤガ殿……貴方を失うのは惜しい…いえ、情ではありませんよ。これは使いやすい道具が壊れる、という意味での事です。あぁ……残念だが………とても高揚している……!」




ギンベッカは普段と変わらぬ表情で、淡々とヤヤガに言って聞かせる。

人間など幾らでもいる。

心の弱い者など腐る程いる。

力に溺れない者などいない。




「人とは弱いモノ……弱っている人間には、今自身が掛けて欲しい言葉を掛け、分不相応な力を与えれば、簡単に私を信頼し、力に溺れる……」




「う、嘘だ……嘘だ…………うっ…うああああ!!!!!」




「では、対価を頂きましょう。大きな、大きな、対価を……」




魔物化装置(エヴィルメア)を取り付けられた背中を中心に、人を魔物化させる因子が徐々に広がり始めた。

あの吸血鬼を名乗る領主は、青龍の妨害を受けている。

今の内にヤヤガを魔物化させましょう、この魔物化装置(エヴィルメア)は私の最高傑作だ。

ボードンや寄せ集めのクズ共に使った三流品とは違う、この私自らが全てを作り、心血を注いだ一流の芸術品に他ならない。




見た事も無いような化け物……傑作が出来上がるだろう。

出来が良ければ功績が認められ、私は強大な力を得る事になる。

『魔人筆頭』……いや、『魔将』にまで登り詰めるかもしれない。




しかし、最高傑作の誕生を待つギンベッカは気付いていなかった。

闇の中、音もなく水上を駆ける黄泉脚の兎を。







(10m………3、2、1……!)







「……させないから」







キィンッ…………!







「なっ………!?」







人間を魔物化させる魔物化装置(エヴィルメア)は、日本刀に変化したメロの鮮やかな黄泉脚によって、ヤヤガの背中から引き剥がされるように切断された。

そのままメロはヤヤガの首根っこを掴み、黄泉脚で地を蹴って対岸へと着地した。




「アカツキ君、仕事はしたよ」




「ありがとう、メロ!」




メロが着地したタイミングで、センヤも青龍を全て倒し終えた。

やはり予想通り、ギンベッカは人間を破滅させるのが趣味のようだ。

人の弱味に付け込み、最後には『対価』と称して最悪の結末を与え、絶望のままに人を利用する。







「…………どこまでも舐め腐りおって………!!このグズ共がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」




「許さんッ、許さんぞッッ!!!」




センヤとメロに怒りの目を向け、激昴したギンベッカは、なんと自身の身体中に『三流品』と吐き捨てた魔物化装置(エヴィルメア)を取り付けた。







「ウぐぅ………オオ、オ、オオ…オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」







ベキベキと骨が軋む音が聞こえ始めた。

1つだけでも、身体にはかなりの負担が掛かる魔物化装置(エヴィルメア)。これだけ付ければ、骨格レベルから身体が変異するに決まっている。

しかし今のギンベッカはそれすら厭わない。

自身の策を妨害され、ついには最高傑作さえ破壊された。

このゴミ共を生かしてはおけない、必ず殺す。




「フゥー………!フゥー………!!ゴロジデヤル………!!!!!」







元の線の細い梟の姿は消え、筋骨隆々の身体、そして言葉からは怒りが常に漏れ出し、彼の得意とする知略と策謀は既に感じられなかった。

龍種の大きな爪、鋼鉄の翼、剥き出しとなった巨大な牙、様々な魔物の要素が交わり、まさに異形の生き物へと変貌していた。




「バーカ、負けフラグじゃん」




「ギンベッカ、貴様に引導を渡してやろう…!!」




センヤは終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)の切っ先を、メロは大太刀へと変化した黄泉脚を振り上げ、ギンベッカへと向ける。




今宵、正義を成す吸血鬼の王が、悪逆の魔人に裁きを下す。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ