第35話 天涯地角の2人
前回ちょっと下ネタチックな事をぶっ込んでしまいました。
ブクマが増えては減りました。
ハネル好きやねん……!下ネタ……!
「……………」
「失礼の極みっすね。ぶっ殺したっす。処理はカテドラルに任せるっすかね」
秒殺である。
当然、半魔物化しただけの人間が、元『魔将』である城護たちに勝てる訳がなかった。
城護は全員、ヴァスターリアが生まれる更に前の、デュラハルド家当主に戦いを挑み、その強さ、強欲さ、人柄などに惹かれ、魔将から『城護』になったのだ。
残るはテンガイとボードンのみ。
過去に魔物を辞め、城護へと変わった城護たちは、人間と、人間を辞めた者の戦いを静観していた。
「ヌがァッ!!」
ボードンの肩から生えた触手がテンガイを襲う。
しかしテンガイはそれをひらりと躱し、両手に持った小刀で、触手を切り落としていく。
「付け焼き刃だな。分不相応な力を持つから使いこなせねぇんだ」
「何故ダッ!俺ハお前ヨリも強イ!!コノ与えラレた力が負ケる筈が無イッ!!」
触手、炎、風の刃、鋼鉄の爪が一気にテンガイを襲うが、それらを容易く躱していく。
「半魔物化して、ならず者の寄せ集めのテッペン任されて、強くなったつもりか?」
ドンッ!!
「ガッ……!?」
テンガイのかかと落としが、ボードンの脳天を直撃する。
先程からボードンの攻撃は一切当たらず、テンガイが一方的にダメージを与える展開になっていた。
軽い脳震盪を起こしたボードンは、その場へと倒れた。
「お前にゃ向いてねぇよ。もう止めとけ」
「グゾッ……グゾォ……何デ、何デ俺はいつもこうなんダ!俺ハ何をしテモ失敗バかり!ナノに、なノニお前ハどンドん上に行っチまウ!!俺ハ変わレな イ!!」
ボードンは悔しさのあまり、それまで積もりに積もっていた想いを吐き出し始め、涙を流した。
触手と拳で地面をバンバンと何度も叩く。
「ハァー………」
ボードンの予想外の行動にテンガイは頭を掻き、ため息をつく。
確かに知っていた、ボードンが努力をしていたのは。
冒険者連合組合から依頼を引き受け、不器用なりにも依頼をこなしていた。
強くなる為に、自分より強い魔物相手にも果敢に立ち向かっていく事も。
その合間を縫って、テンガイ達の妨害をしていた。
「……止めだ。…チッ、今更人っぽい事言ってんじゃねーよ。殺す気も失せたぜ。……消えな」
「…グオオオオッ!!」
ガッ!
テンガイは小刀を鞘へと仕舞い、もう戦う気が無い事を見せる。
だがボードンは立ち上がり、拳大の石をテンガイへと放つ。
その石はテンガイに軽く蹴飛ばされ、ボードンの頬をかすめていった。
「今更!!もウ引キ返せネぇんダ!!」
「……『引き返せねぇ』か。まだ心ん中じゃ『引き返してぇ』って思ってんじゃねーか。なら、誰に許可を取る事もねぇ。テメー自身で決めた事なら今からでもやり直しは効く。……もう止めろ、ボードン」
「…テンガイ………」
「その姿は今までの生き方の報いだ。背負って生きてけ、命あっての物種だからな。『半魔物傭兵』として生きてくも良し、魔物として生きてくも良し。精々冒険者共に殺されないように生きてくんだな」
テンガイはボードンに背を向け、後ろへと手をヒラヒラ振りながら、城へと歩き出した。
「…テンガイ……クソッ…そレがお前が信頼されル理由カよ…ッ……ハ、ハハハハ!!『半魔物傭兵』…悪クネぇな!俺モこレか…………………アッ?」
ボードンは笑いながら、攻撃を止めて元来た道を引き返そうとする……が、視界全体に、あの魔人の姿が突如として現れた。
『おや、ボードンさん、どちらへ行かれるのですか?』
「アッ…!あァァア!!!ギ、ギんベッカ…!」
ボードンは尻もちを付き、腰が抜けたように後退る。
しかし脳内を弄り、ギンベッカの像と声を伝えている為、どれだけ後ろへ下がろうとも意味が無かった。
「……様子がおかしいです。テンガイ様」
「…みたいだ……です」
アッシャーがテンガイを引き止めた。
引き止められたテンガイは、アッシャー相手なので、丁寧口調になってしまう。
ボードンは依然として、錯乱したかのように、何かに向かって話しかけている。
『貴方は人を超える力を得たでしょう?自分を馬鹿にしてきた方々にも復讐を成し遂げた。……最も、あれだけ恨んでいたテンガイさんには、情でほだされてしまった様ですが……』
「……ギンベッカ、俺ハもウ降リルる」
『いけません、いけませんよ。力と快楽の代償は決して小さくはありません。それでは貴方を『爆弾』にした意味が無くなってしまいます』
「バ、爆弾……ッ!?」
ボードンは驚きと絶望の入り交じった声を上げ、自身の運命が既に決まっている事を知り、深く絶望した。
そんなボードンの気持ちとは裏腹に、身体は立ち上がり、テンガイ達の方へと一歩、また一歩と歩みを始めた。
「なッ……何デ…か、身体ガ……勝手、ニ、ア、ア、ア、アアアアアアアア!!!!???」
『あの領主が不在なのは残念ですが……裏切り者の始末くらいには役立ってくださいね』
「あわわわ、周囲の魔力を急激に吸ってますよぅ!」
鑑定眼を持つウェンゲージが、大気中からボードンが大量の魔力を吸い上げている事を確認する。
ボードンの身体は急激に膨らみだし、半魔物化した身体は球体となり、まるで出来の悪い人形のようになっていた。
「アッ……ア、ア、ア、ア、ア、ア」
『それでは、対価を頂きます』
「……ッ!?全員逃げろッ!!」
ドォォォォォォォンッッッ!!!!!
「…間に合ったかしら?…みんな大丈夫?怪我してない?」
間一髪、駆け付けたジューンが水で防壁を作り、爆発を免れた。
ボードンが爆発した周囲はかなりの大穴が空いており、一番前にいたテンガイは、水の防壁が無ければ今頃死んでいた。
「…………チッ、死んじまいやがった。あの馬鹿」
口では毒づきながらも、テンガイは様々な感情が入り交じった表情をしていた。
テンガイはアッシャーの方へと歩き出し、1つ、頼み事をした。
「…アッシャーさん、旦那に連絡は繋げる…ますか?」
「はい。私に触れて頂ければ」
「ありがたい……ございます」
テンガイはアッシャーの肩に触れる。
すると、脳内に声が響き渡り始めた。
『アッシャーか、どうした?』
『テンガイ様がお伝えしたい事があるらしく、お繋ぎしました。変わります』
『…旦那』
『テンガイ、どうかしたか?』
テンガイの声を聞き、彼に何かがあった事をセンヤは察した。
『頼みがある。……ギンベッカのヤローを……ブッ潰してくれ!』
『テンガイ………その怒り、確かに俺が引き継いだ。待っててくれ。お前の怒りを必ずギンベッカにぶつけよう』
テンガイの吐き出すような声を聞き、センヤはその怒りを胸に仕舞った。
その全てをギンベッカにぶつける為に。
「…終わりましたか?」
「…アッシャーさん、ありがとう、ございます…」
力が抜けたのか、その場にへたり込むテンガイの肩に、アッシャーは手を置いた。
「アッシャーさん…?」
テンガイが不思議そうにアッシャーを見上げる。
アッシャーはそのまま真っ直ぐ前を見つめたまま、テンガイに語り出した。
「…センヤ様は他者の喜び、怒り、悲しみをまるで自身の事のように想う事が出来、自身の身を犠牲にしてまでも、手を差し伸べるお方です。ですので安心してください。貴方の想いは伝わった筈です」
「……ありがとう」
テンガイは自身の怒り、そしてボードンの無念をセンヤへと託した。




