第34話 ご趣味はなんですか?
風邪が治りかけるタイミングで、悪天候の中、丸1日外でのお仕事を任せられたりします。2回目です。
悪化します。
あはん
徐々に空が暗くなり始めた。
敷地内の修復作業を行っていた城護たちと、サナ、テンガイは城へ戻ろうと、荷物を片付け始めている。
今日はジューンが夕飯を作る日なので、ジューンだけが一足先に城へと戻っていた。
「皆さん、ありがとうございました」
「いえ!私もお手伝いがしたかったので……」
「そうそう、俺も運動がてらって奴だしな」
テンガイの仲間たちは半分が城へと戻り、長旅だった為に身体を休めていた。
もう半分は距離が離れている為、一旦近くの宿屋に泊まるとの事。
「さ、ジューンさんが夕飯作ってるし、俺らも戻るかね……ん?…サナちゃん?どした?」
城へと歩き出していたサナ達だったが、先頭のサナが急に立ち止まり、後ろを振り返った。
テンガイや城護も立ち止まり、全員がサナの方を見る。
「………来ます」
「来る?何が?」
サナの目は見開き、普段のユルい雰囲気など微塵も感じさせない、どこか神々しささえ感じる、全くの別人の様になっていた。
「…キリナさんが危ないです!」
「!」
その言葉に、城護たちとテンガイは瞬時に戦闘モードへと切り替わり、テンガイとブーケは一足先に森へと走った。
「城護全員が動く事はありません。ジューンとカテドラルは引き続き城の中で業務をこなしてもらいます。レイズヴェル、ウェンゲージ、貴方達は武器を構えなさい………っと」
(………サナ様、貴女は一体……)
サナは気を失い地面に倒れそうになるが、瞬時に移動したアッシャーが支える。
そのまま抱き抱えながら城へと一旦戻った。
〜森の階段〜
「な、なんなのアンタ達!」
バキッ!
「うゲぇッ!」
「おオッ!強ェおんナは嫌ィじゃネぇ!」
「ヒヒヒ…!ヒヒヒヒヒヒ!!!」
キリナのパンチで、奇妙な男が吹っ飛ぶ。
しかしその男達はゾロゾロと群れを成し、すぐに距離を詰めてくる。
タイミングが悪く、センヤから渡された護りのブレスレットは、服屋で作業をする際に外してしまっていた。
「……ッオラァッ!!キリナさん!無事か!」
「ブーケちゃんパパパパパンチ!!」
「ぐへェッ!」「うガっ!」「んバッ!」
キリナの背後に迫っていた男が、テンガイの蹴りによって吹っ飛ばされる。
周囲にいた男たちも、ブーケのパンチによって纏めて階段下へ落ちていった。
「テンガイはキリナを連れてって!」
「了解した!後ろはブーケさん頼んだ!」
森の階段は狭く、思う様に戦えないと判断した2人は、テンガイがキリナを、敵をブーケが担当し、その場を凌ぐ事にした。
「て、テンガイさん!?どうなってるの?」
「恐らく俺らとは別のギンベッカの刺客だ!にしても多いな!!」
門はどうせ壊されるからいっそ開きっぱなしにしておきなさい、とのアッシャーからの指示があり、門は開きっぱなしになっていた。
そこからキリナを抱えたテンガイが現れ、城へと一直線に駆けて行った。
「リーハ!来い!」
2階の窓が開き、中からテンガイの仲間、リーハが飛び出した。
「リーハ、キリナさんを頼んだ」
「了解!」
キリナをリーハに渡すと、テンガイは再び城護たちの元へと戻った。
「ギャー!!!キモーーーーい!!!」
バタバタとブーケがダッシュで門を通り抜けて来る。
その後ろから男たちが、ドタドタとブーケを追い掛けて走って来る。
まるでアイドルと、その追っ掛けのようであった。
「テンガイ助けろー!!」
ブーケはテンガイの後ろに隠れる。
フードを被った男たちは、ゾロゾロとテンガイ達の前に集まった。
30〜50人程であろうか、かなりの人数である。
「こコなら脱いデモ良イぞ!お前ラ!」
「へへへへへ……!!」
ババババッ!!
男達はフードを脱ぎ捨てた。
暗い森の中ではよく見えなかったが、月明かりに照らされて、男達の奇妙な姿が露になった。
「うわー……あんなんが『裏』に控えてんなら『表』の俺らなんかじゃアテにもしてないわな。ギンベッカは」
テンガイが引き気味に自嘲する。
それもその筈、屈強な男たちは、自身の身体を半魔物化していた。
身体の各所に魔物のパーツが融合させられ、歪なシルエットとなっている。
一際大きく、そして人一倍魔物化が進んでいる男が、男たちをかき分け群れの先頭に出てきた。
「よウ、テんガイ。死んダかト思っテいたガ……まさカ裏切リとハナ。見損なッタぞ」
「…お前、ボードンか、テメーも俺らの邪魔ばかりして来たが……落ちるとこまで落ちたな。あ、俺は元々見損なってたけど」
「知り合い?」
逃げてきたブーケが、テンガイを盾に後ろから顔を覗かせる。
「俺らはまぁまぁ優秀だったからなぁ。過去にでっかい依頼があって、最初はボードンに依頼してたんだが、悪い噂を聞いた依頼人が、急遽俺らに変更したんだ。そっから目ぇ付けられてる」
「黙レ!!!アレさエ受けテりゃ俺だっテ今頃ハ、超人気の売レっ子傭兵にナッてタ筈なんダ…!!」
「普段のテメーの素行を恨むんだな、俺らの世界じゃ信用が全てさ」
「グッ…!!!俺ハ身ノ程知らズの馬鹿にケリを付けルッッ!各自、ヤリてェの女のトコに向カえッ!」
「オオオオオオオ!!!!」
ドドドドドド…!!!
男たちはボードンの号令により、各城護たちの元へと向かった。凄い勢いで。
ブーケ……
「君みたイな運動好キそうナ元気ナ子が好きなんダよねェ……匂イ嗅ぎタイなァ……」
「スパッツとカはイてまス?」
「うげぇ……やっぱきもい」
アッシャー……
「片眼鏡!ボーイッシュ!男装!だガ巨乳!ウオオオオオオ!!!!」
「エロに無自覚ダ!!こノ女ハ!!ドスケベ百点満点!!!」
「殺します」
ウェンゲージ……
「ナイスオッパイ!!お嬢様みたイな見タ目もグー!!」
「見ーせーロ!見ーせーロ!」
「ひっ、ひぇぇぇ……」
レイズヴェル……
「無い乳ダ…!」
「無い乳ダ!!!」
「死ね」
己の好みに従った男たちは、良い感じにバランスよく割り振られた。
好意的な城護は誰一人としていなかったが。
「…さア、決着ヲ付けルぞ!!テンガイ!!」
「今まで命だけは見逃して来たが、魔物化したなら話は別だ。覚悟しろよ?ボードン」
テンガイは背中から二対の小刀を抜き、構える。
ボードン&魔物化したボードンの仲間たち、そしてテンガイ&城護の戦いが始まろうとしていた。
〜城内〜
「…モルルモ……笑った!」
「…っ」
「はい、ジーニー動いた!これで全員捕まったね」
「くっそー!!ファテナさんつえー!!」
「ハッハッハ!あんだけルール説明したのに、カテドラルが開始直後に骨をぶん投げてきた時は驚いたが、これが大人の力さ!アタシつえー!!」
その頃、城内ではカテドラル&子供たち、そしてファテナが、城の長い廊下を使いながら、この世界の『だるまさんが転んだ』で盛り上がっていた。




