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第33話 自由無き輪廻

カフェインが無いと生きて行けません。


摂らないと頭痛がやって来ます。


カフェインに飼い慣らされています。




陽の光が差し込まない、薄暗い洞窟の様な空間に、ヤヤガとギンベッカは潜んでいた。




「ギニャ!ギニャガ!ギニャーガ!!」




「ギ……ギニャ?」




「ギニャーガガ!ガガニャ!」




ベシッ




「ギ……ギニャ……」シクシク




その隣の空間では、手先の器用な魔物、メイクゴブリン達がせっせか魔武器、魔防具を製造していた。

1匹、要領が悪いのが居るらしく、頭を叩かれて涙ながらに作業をしている者もいた。

ギンベッカの仕事は完成した魔武器、魔防具に魅了魔法を掛けるだけである。




「ふぅむ……テンガイさん達との連絡が途切れて1週間…」




「ギ、ギンベッカ殿……やはりあの領主にや、やられてしまったのでは……あぁぁ……や、奴らが我々の事を話せばもう終わりだ………計画が……」




今までが好調だった故に、ヤヤガは焦りに焦る。

人を裏で操る快感、そして全盛期を超える金を得た事により、ヤヤガは気が大きくなっているが、それは一時的なものであった。

根が小心者なので、不測の事態に弱いのである。




「いえ、テンガイさんには我々の本拠地は教えていませんよ。何にせよ、あの領主が関わっている事は確かです。私が雇った『裏』のボディガード達を派遣させましょう。それで片がつく筈です」




ヤヤガの不安をよそに、ギンベッカは至って冷静であった。




〜〜~〜〜〜〜〜〜〜




書類での手続きを終え、核級(コア)の勲章とパスポートを貰った。

観戦していた人々から、記念に酒場で酒を奢ると誘われたが、丁重に断りながら冒険者連合組合を出た。




何故かセンヤ持ちでメロの新しい服を買う為に、メロが行きつけだと言う服屋に行く道中、ヤヤガとギンベッカの件を尋ねた。




「へぇ〜…魔人ねぇ。魔物の素材だけ要求するのは珍しくないけど、結構大口で依頼してくる人はそうそういないかな。メロも何回かそれっぽいの引き受けたけど、加工業の商人とかかな、って思ってた」




「見た目はフードを被っていて、目が多分緑色なんだ。大口の依頼の内、そんな依頼人に遭遇した事は?」




「あ、それなら結構あるかも」




「何か居場所に心当たりは無いか?」




「んー……詳しい場所は分かんないけど、材料の引渡し場所が毎回、ラグディスから少し離れたとこにある湖の手前なんだよね。あの辺に家とか無かったけど……」




メロがペラペラと引き受けた依頼一覧のメモを捲る。

意外としっかりしているようだ。




「湖の近くか。……まぁ見当はついた。…あの辺は民家も無いし少し強行手段に出ても良いな」




『センヤ様、宜しいでしょうか?』




数ある強硬手段の中から、どれをするか、と考えていた所、アッシャーから遠隔で連絡が入る。




『アッシャーか。大丈夫だ』




『テンガイ様のお知り合いだという大工の一団が見つかったそうです。今現在、ラグディスから西に離れた山奥の村に滞在しているようです。居場所を変えられるのを防ぐ為に、まだ接触はしていません』




『話しかけただけで居場所を変えるくらい頑固なのか……ひねくれ過ぎだろ……。ありがとう。こちらはヤヤガの件で有益な情報を得た。今日か明日には終わらせる』




『かしこまりました。ご武運を』




そうこう話している間に、何やら見覚えのある服屋の前に2人は立っていた。




「ここがメロの行きつけの店。メロの服はぜーんぶオーダーメイドだから」




カランカラン…




「いらっしゃいませ……って、メロちゃんと……その剣は…センヤさんかな?鎧着てるからパッと見わかんなかったよ。それより2人とも知り合いだったんだ?」




「え、アカツキ君とキリナさん知り合いなの?」




そう、ここはキリナさんの服屋である。

メロが着ている服は明らかに千夜が元いた世界に存在しているデザインであり、この世界には無い筈だ。

オーダーメイドで作ってくれる店があるんだろうとは思っていたが、まさかキリナさんの店だったとは。




「アタシは色々あって今、皆とセンヤさんのお城で暮らしてるんだ。あ、この前頼まれた服作ったよ。持ってくるね」




キリナさんはパタパタと店の奥へと引っ込む。

再びメロと2人きりになるが、メロが訝しげにセンヤの事をジロジロと見ている。




「キリナさんに変な事してないよね」




「俺がすると思うか?」




「思う」




「ま、マジか…どこだ、どの辺だ」




メロの即答に軽くショックを受ける。

センヤは魔力で出来た鎧を解除し、素顔をメロへと見せる。




「…どうなってんのその鎧。てか普通に顔整ってるのなんかムカつくわー」




「理不尽か…」




キリナさんが奥から服を持って現れる。

同じパーカーだが、色は真っ黒で所々にピンクの差し色が入っている。




「はい、こんな感じだけど…どう?」




「今回も注文通りのデザイン!ありがと、流石キリナさんだね。さっきアカツキ君がメロの服汚したから、支払いはアカツキ君で」




「釈然としないが、キリナさんの服なら喜んで支払おう」




頭上に『?』を浮かべるキリナさんに3万メロを渡す。

ここに来て、転生者の『メロ』と、この世界の通貨の名前も『メロ』だという事に気が付いた。

恐らくこの世界に来てから散々揶揄されてきている筈なので、敢えて何も触れない事にする。

その間に着衣室で素早く着替えを済ませ、メロは早速新しいパーカーを着て現れた。




「じゃあ行くよ、アカツキ君。キリナさん!またお願いするね!」




「す、すまないキリナさん、色々あって数日城を空けるかもしれない。子供たちの事はカテド……」




メロに服を引っ張られながら、キリナさんに数日城を空ける件を伝える。

グイグイ引っ張られる為、話が途中で途切れてしまった。




「センヤさん……メロちゃんみたいな子が好み?」




キリナは更に頭上に『???』を浮かべつつ、2人を見送った。







しばらく歩くと、ラグディスの商店街とは別の大通り、宿屋には泊まらず、長期滞在を決めた冒険者たちが、居を構える住居街へとやってきた。




その中の1つ、木造3階建てのアパートの様な建物の一室に案内された。

メロはここに住んでいるらしい。

ドアの鍵を開け、メロはセンヤを家の中へと招き入れた。




リビングには簡素な仕切りが隔てられ、片方はウサギグッズがてんこ盛り、そしてもう片方はやたら武器や刃物が置いてある。物騒だ。

恐らくウサギの方がメロ、そして刃物の方がカンナと呼ばれる人物の部屋なのだろう。




「この2つに仕切られた部屋……友達であり同居人、さっき言っていたカンナという名の人物か」




「……うん。この世界に放り出されて、3日間森の中をさまよった時に偶然出会ってね。それから一緒に行動するようになったの」




メロは武器や刃物がてんこ盛りの方へ行き、ベッドへと腰掛ける。

小物や刃物はしっかりと整えられ、あまり生活感を感じない。

しかし家具にはホコリが溜まっておらず、メロはいつでもカンナが帰ってこられる様に、掃除だけは欠かさないのだろう。




「カンナは私よりも1年早くここに来てたらしくてね。この世界の事を教えてもらったの。それから2人でパーティを組んで、一緒に生活してた。でも……」




メロの表情に陰りが見える。




「……リズアニアにある機械大帝国『アンビシャス』は好戦的な国で、他国に次々と侵略戦争を仕掛けては吸収してどんどん大きくなっていったの。他の追随を許さぬ技術力で機械兵士を量産、そして『自由無き輪廻(リンカーズ・マリオネット)』の存在」




「『自由無き輪廻(リンカーズ・マリオネット)』……?」




聞き覚えは無いのだが、内容は名前からして大体の想像はついた。




「『アンビシャス』は『転生者』を捕まえて、一切の自我を制限して管理下に置く『自由無き輪廻(リンカーズ・マリオネット)』を無理やり付けて、自国の兵器として扱ってるの。当然人権なんて無い。『この様な恐ろしい能力を持った者が人間である筈がない』って」




「『アンビシャス』の兵士はこの大陸にも現れた。私がここに来て半年経った頃に……冒険者連合組合の依頼を終えて帰る途中、メロとカンナはそいつらに見つかった」




メロはパーカーを握り、顔を俯かせ肩を震わせる。




「カンナはメロを逃がす為に、アイツらの囮になって………メロ、1回『自由無き輪廻(リンカーズ・マリオネット)』を取り付けられた転生者と戦ったんだけど……」




「………2人の兵器化された転生者に襲われて…1人の転生者の攻撃が、もう1人に間違って当たってね……片腕が千切れ飛んでも、無表情でメロに攻撃を止めないの………」




「カンナが……カンナが、あんなふうにメロを攻撃してきたら、手とか足とか失くなってたら、どうしようって………」




生意気だったメロが、パーカーを握る拳に涙を落とす。

『誰かに頼れ』センヤはそう言ったが、国1つ相手にする事を、1人の少女が一体誰に頼れば良いだろうか。

センヤは自身の浅慮を恥じると共に、『アンビシャス』の人を人とも思わない所業に、激しい怒りが湧き上がるのを感じた。




「メロ、約束しよう」




センヤはメロと同じくらいの高さに片膝を付き、メロの両手を自身の両手で握り込む。




「カンナや他の転生者は必ず俺が救う。そして、『アンビシャス』……転生者を兵器化している外道は俺が完膚無きまで叩き潰す」




好戦的だという国『アンビシャス』。

こちらが国を作れば、恐らく兵力や、物資のしっかりとした基盤が作られる前に、侵略戦争を仕掛けてくるだろう。

国の形をこちらに作らせ、後から乗っ取ってしまえば、他に国も無く、後から別の国が作られる事も無いこの大陸丸ごとを支配出来てしまう。

『アンビシャス』にとって、これ程旨味のある国は無いだろう。




「でも……アカツキ君だって、『転生者』だから…きっと……」




メロの言葉を聞き、センヤは終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)を外し、コートを脱いだ。




「確かに、普通の『転生者』ならな」




センヤはコートの奥に仕舞っていた、大きな蝙蝠のような翼をメロへと見せ付けるように広げる。

顔を上げたメロは、センヤの姿に驚きを隠せなかった。




「そ、それって……」




「俺は普通の『転生者』じゃない。言うなれば『回帰転生者』だ。この身体は千年前の俺自身の身体、封印されていた吸血鬼の身体だ」




「俺が望む世界に『自由無き輪廻(リンカーズ・マリオネット)』など不要だ。俺にも協力させてくれ」







「……信じるから。……応えてね」




ゆっくりと、メロから手が差し出される。




「…!……ありがとう。必ずカンナを救い出してみせる」




センヤはその手を取り、2人は協力関係となった。

その後、2人は様々な情報を共有しあい、夜になるのを待った。




手始めにヤヤガとギンベッカを倒す為に。







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