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第31話 海底2万マイルの猛者たち

土〜日〜祝〜が なななないっ♪

連続オヤスミ なななないっ♪

されども給料 上がらないっ♪


つらぁい……




「メロさん、すみません、今、領主様の登録をしているので、その後に伺います。今日は窓口担当が少ないもので……」




「へぇ…じゃあメロがテストしたげる」




メロは男性から書類を奪い取り、端っこにリアルなウサギの落書きを始める。




「メロさん、核級(コア)じゃないですか……流石にそれは順序を飛ばし過ぎです。まずはそうですね……」




やんわりと書類をメロから取り返し、ウサギの絵を一瞬消そうと思ったが、意外と上手かった為に消すのを躊躇う窓口の男性。




「領主様は巨大級(メガトン)の龍種を討伐しているので、実力としては既に深海級(アビス)はあると思うのです。どなたか、深海級(アビス)で領主様と戦って頂ける方はおりませんでしょうか?」




窓口の男性は酒場に居る面々に大声で呼びかける。ザワザワと声が聞こえる中、傷だらけで上半身裸の男性が立ち上がる。

背中には大きな斧を背負っており、かなりの武闘派な男のように見える。




「じゃあ、俺がやろう」




男は見た目通りの声で立候補した。

それに対して周囲の傭兵、冒険者たちが沸き立つ。




「『傷だらけの男(オール・スカー)』アルガルフか!いい勝負になるぞ!」




「領主殿も中々強いようだが俺はアルガルフに掛けるぜ!」




「ではアルガルフさん、領主様と中庭へどうぞ。中庭に着き次第、私は窓口の業務に戻るので、後の事はジャッジに任せます」




センヤは男性に連れられ、アルガルフと中庭へ続くドアをくぐった。

四角形の中庭はそこそこの広さがあり、周囲には既に観戦目的の冒険者や、傭兵たちがガヤガヤと話をしていた。




多数のギャラリーに見守られながら、センヤとアルガルフは向かい合った。

どうやって上がったのか、メロは屋根の上に座り、観戦をしている。

センヤはなんだか爺さんと、2人で組手をした時を思い出して懐かしい気分になった。




「領主殿、宜しく頼む。遠慮はしないぞ」




「あぁ、頼む」




2人は握手を交わし、2人の真ん中にジャッジを務める女性が現れた。




「どちらかが倒れて10カウント経過、もしくは気を失った時点で終了です。殺害は認められていません。勝負は1回勝負です。では、始め!」




「先手必勝ッ!ウオオオオオオオオ!!!!」




ドォォンッッ!!




開始の合図と共に、アルガルフは戦斧を振り上げ、センヤへと素早い突進を仕掛けてきた。

思っていたより素早い。

アルガルフは戦斧を思い切り地面へと叩き付けるが、センヤはそれを一回転しながら後ろへと躱す。




戦斧が叩き付けられた地面は大きな穴が空いており、戦斧の威力がかなりのものである事を証明していた。




「ほう、躱すか!」




戦斧を引き抜き、アルガルフは満足そうに笑みを浮かべる。




「フッフッフッ……アルガルフはあの筋肉ダルマの図体からは想像の出来ない素早さと破壊力を持っている。領主殿はどう攻めるか。おまけに『傷だらけの男(オール・スカー)』の二つ名は伊達じゃない。あらゆる外傷に、彼は耐性があるぞ!」




観戦している傭兵・冒険者マニアのカシオンが説明を始める。

彼の手元には分厚い本があり、それはアルガルフのページが開かれていた。

これは傭兵・冒険者たちの情報が書かれたメモの集合体であり、彼らが亡くなった場合、亡くなった人のメモは『英霊達の書』に纏められるらしい。




「フハハハ!!ではもう一……か……い………?」




アルガルフはガクリと地面へと膝を突く。

戦斧を地面へと落とし、膝に続き両手も地面に突いてしまう。




「ぬ…?な、何故だ…?戦斧が…お、重いッ…」




戦斧を必死に持ち上げようとするが、ビクともしない。

様子がおかしいアルガルフに、周囲にも混乱が広がり始めた。




ザワ……ザワ……




「なんだ?アルガルフの奴…調子が悪いのか?」




「さっきまで振り回してたのに重い?領主殿の魔法か?」




周囲も理解が追い付かないが、1番追いついていないのはアルガルフ本人であろう。

傷だらけの男(オール・スカー)』。

最初はただの痩せ我慢だと揶揄されていただけだったが、いつしか周囲はアルガルフを本当の意味で『傷だらけの男(オール・スカー)』と呼び始めた。

例え自身より強き者を相手にしても、絶対に退かず、最後には粘り強い勝利をもぎ取る。

この傷たちは彼自身の勲章でもあり、自信なのだ。




「領主殿ッ!な、何をした!?これは何なんだ!!俺は何をされているッッ!!?」




アルガルフの声に、周囲のギャラリーは更にザワザワと騒ぎ始める。

彼がこのような声を上げる事など、前代未聞の事であった。




「ネタばらしにはまだ早そうだ。悪いが決めさせてもらうぞ、アルガルフッ!」




センヤは終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)を構え、アルガルフへと足を踏み込んだ。




血閃壱刃(ケッセンイチジン)ッ!」




ザンッ……




吸血鬼の身体能力と、魔力を足へと集中させる事により高速で直進し、目にも止まらぬ一太刀を浴びせ、相手を一発で戦闘不能へ追い込む。

子供たちが考えてくれた技だ。

正直技名を言うのは何だか恥ずかしいな、とも思ったが、意外と……悪くない。




アルガルフは白目を剥き、その場に完全に倒れ込んだ。

ジャッジがアルガルフへと近寄り、脈を確認する。




「死んではいないようね…ビックリした……勝者、センヤ・アカツキ・デュラハルド」







オオオオオォォォォ!!!!!







「なんだありゃあ…早すぎる……」




「一太刀も食らってないぞあの領主…」




「フォォォ……とんでもない人が出てきましたねぇ……んんんんんメモの更新が止まりませんよ!」




カシオンのメモが止まらない。

歓声も大きかったが、それに混ざって疑問の声もチラホラと聞こえてきた。

屋根の上のメロのみが、何が起きたかを理解していた。







「一回転した時…さりげなく切り付けてる。血は出てないみたいだけど。メロじゃなきゃ見逃しちゃうね……けど、あの名前…多分、アカツキ・センヤ。彼も……」




メロはニコニコしながら、屋根から出した足をバタバタとさせる。

センヤの元へはジャッジが駆け寄り、何か話をしているようだ。







「領主様…基本は本調子での戦いを考慮して、ランク戦は1日に1回のみ行われるのですが……無傷で終わってしまったのと、是非とも戦いたいという方が現れまして……特例でそのまま超深海級(ハダル)に挑めますが…どうなさいますか?」




「ありがたい。俺も早くなるべく早く上位に名を連ねたいからな。頼む」




(ソルシエラの名前もあったからな……なんか癪だ)




「分かりました!では、パスメノスさん、前へ!」




アルガルフは知り合いの冒険者たちに担架で運ばれ、入れ替わりに、今度は真逆の、ヒョロ長い男がやって来た。







「私の名はパスメノス……超深海級(ハダル)に所属する、芸術品コレクターの冒険者です……」




ブォンッ!ウォン…ウォン…ウォン…ヴォンッ!




「おぉ〜……」




「出た…『流麗剣舞(シャル・ウィ・ソード)』パスメノス!相変わらずスカした野郎だが、剣舞は悪くねぇ……」




パスメノスは美しい長剣を腰から抜き、その場で鮮やかな剣舞を披露する。

これには周囲のギャラリーも感嘆の息を漏らす。




パスメノスは剣舞を終え、センヤへと真っ直ぐ長剣を突き出す。







「デュラハルド……この大陸、そして伝説の吸血鬼一族を統べる当主のみが名乗れる名を冠する者……実に興味ぶか」




「どーん」







「なっ…!?」




パスメノスは長い口上を話している途中だったが、突然メロが屋根から飛び降り、下段に脚を滑らせパスメノスの足をすくい、そのままどこか遠くへ蹴り飛ばしてしまった。




「んー…シンプルに長い。ジャッジ、多分この人超深海級(ハダル)も無傷で終わるよ」




「理不尽だ…だが、その理不尽を平然と行えるだけの力がある……」




周囲もドン引くが、誰も止められる者が居ないのでどうしようも無い。




「だからさ、メロとやろーよ。アカツキ・センヤ」




「俺の名前を……!?……この世界に来ているのは俺だけでは無いという事だな?ウヅカ・メロ」




「飲み込み早くて助かるよ。スキル『黄泉脚(ヨミアシ)』」




メロの足全体に、黒の瘴気が現れ始める。




「出たぞ……アバレウサギの黄泉脚が…!」




「魔法…じゃないんだよな…アレ。何なんだ?」




スキル。

勇者ソルシエラが用いていたものと同じ技術。

そして目の前のウヅカ・メロは、恐らくセンヤが元いた世界と同じ世界からやって来た人間だろう。

この世界にやって来た人間は、センヤを除き何かかしらのスキルを持っているのだろうか。

色々聞きたい事がある。




「ま、アカツキ君の知りたい事は、メロに勝ったら教えてあげる」




メロはパーカーのポケットに手を突っ込んだまま、前かがみになりセンヤへと舌を出した。







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