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第29話 はたらく吸血鬼さま!

お医者様から、もう少し自分の身体を大事にしなさいとのお言葉を頂きました。

しかしハネルの脳内は、戦場に行く度にボディをボロボロにして帰ってくるサイボーグ兵士と、馴染みの技術者との会話みたいだな、としょうもない妄想をしておりました。

あ、インフルではありませんでしたが重度の風邪でした。久しぶりの更新で申し訳ないです。




「……あっ…!」




「んっ…♡そこぉ……」




「……!?」




(なんだ……?いや、本当になんだ!?)




センヤはテンガイを探しに城を歩き回っていた。

そんな時、ある部屋から、ちょっと?…いやちょっとじゃないな。ちょっとじゃない。

普通に怪しげな声が聞こえてきた。

これはファテナの声だ。

あれから1週間、アッシャーにいい加減働けと詰め寄られたファテナは




「じゃあ兄ちゃんの代わりに領主の仕事やってやるよ。支部長の仕事よりは楽だろーし。街の防衛とかは兄ちゃんとテンガイ達に頼む」




正直、この申し出は有難かった。

ヤヤガとギンベッカの件に、領地を覆う壁の建造、そしてゆくゆくは国跡の修復等、仕事が多い。

しかし領主を任された以上、その仕事を疎かにする訳にはいかない。




ラグディスの住民たちはセンヤが来るものだと思っていた為に、最初は代理のファテナに驚いた。

…が、流石は元支部長、手際が良く、時には暴力的に問題を解決し、信頼を得ていった。

今日は領主館が休館日の為、城で休んでいるとは聞いていたが……




目の前の事から目を背けたい為、話は変わるが、現在、この大陸には街や村はあれど国が無い。

最初に地図を見た時、かなり驚いた。




ファテナ曰く、今まで国を作って、この大陸をまるまる自身の領土にしようとした者は何人か居たらしい。

しかし、国程の規模となると、ヤヤガの様な結界魔法を使える者に結界を依頼した時点で、予算が吹き飛ぶ。

更に結界維持装置も大きなものとなる為、更に予算が吹き飛ぶ。

そして何より魔物の数が多く、建物の建設が中々進まない。

多くの魔物を倒す為には、広範囲に火力を放てる魔法が便利だが、過去にそれが使える訳もなく、雇った傭兵達がしっかり一体ずつ倒していかなければならない。

最後にはリズアニアの富豪たちが手を組み、金を出し合って何とか10分の3程は出来たが、その時点で全員が破産し、全員行方知れずとなった。

所有者達が失踪している為、国跡は所有者無しとされ、完成すること無くそのまま野ざらしになっていた。




そこでセンヤはこの国跡をベースに、解放した奴隷たちが普通に生活を送れる国を作ろうと考えた。

この城も十分広いが、奴隷たち全員を収容する事は出来ない事は分かっていた為に、この国跡の存在はとても有難かった。







「ヘッヘッヘッ……姐さん、ここが良いんだろう?」




「そこ…んっ!…もっと…もっと強くしてぇ♡」




テンガイの声も聞こえてきた。

彼も加わって1週間経ったが、もうなんかしっかり子分キャラが板に付いてしまっている。




「…せんやさま、なにしてるの?からん」




「おわっ!?」




気が付けばカテドラルが後ろに立っている。

まずいぞ。これは実にまずい。

カテドラルは精神年齢が3〜4才程だ。

もしかしたらまだ何が起きているか分からないかもしれない。

そっと連れて行……




「カテちゃんどこいくのー!あっ!いた!」




「兄ちゃんどうしたの?こんなとこで」




まずいまずい団体様だ。

キリナさんは服屋に働きに出ている。

今日は勉強が無い日なので、遊びながら城を走り回っているのだろう。

こんな時の王の恥ずかしくない対応ってなんだろうか。

この子たちは既に『この声はおかしい』と認識できる年頃である。

それとなく誤魔化し場所を移そう。




「この場所には面白いものは無いぞ。そうだ。ファテナさんとレイズヴェルがやっていたカードゲームを教えよう」




「えー!何隠してんのー!」




「見せてよー!」




……失敗した。

すると子供たちは器用にセンヤの足、背中を伝い、どんどん登ってきた。




「ちょっ!待て待て待てバランスが、バランスが!」




子供たちを背中に溢れさせ、センヤはグラグラと揺れ始めた。

慌てているセンヤが不意に下を向くと、純粋な視線と目が合ってしまった。




「…」じー




「かっ!カテドラル待て!」




「…からーん」




ぴょいーん




しゅたっ




「お、お、お、おおおお!!!!??」




ドーンッ!!




「…旦那、何してるんですかい?」




開いたドアの先には、ベッドに寝転がり上半身裸でマッサージを受けるファテナと、頭にハチマキをし、腕まくりをしたテンガイの姿があった。




「よう兄ちゃん。大家族のお父さんごっこか?」




ファテナはよっこらせとベットから立ち上がる。

まだ垂れてはいないそこそこ大きな乳房が露わになるが、ファテナは気にもしていない。




「か、隠せファテナさん!」




「さー、皆あっちで遊ぶっすよ〜」




テンガイが素早く、子供たちを別の場所へと移動させた。

センヤもすぐに後ろを向くが、当の本人は何も気にせず、ゆっくりと鼻歌を歌いながら着替え始めた。




ファテナは着替え終わり、お茶を飲みに行った。

入れ替わりにテンガイが戻り、センヤはようやくテンガイと話ができるようになった。




「テンガイ、頼んでいた知り合いの大工とは連絡が付いたか?」




「いやーそれなんすけどあの親父と大工連中、納期も守るし腕は確かなんですが気難しい男で……特定の所に住まないんすよ」




メインは大工だが、ギンベッカやヤヤガの情報も集まればと、テンガイの仲間たちに、この大陸中を探させている。

彼らに何かあった時の為に、キリナさんにもだが、センヤは自身の魔力を圧縮し固めたブレスレッドを身に付けさせた。

命に関する危機が発生した場合、その魔力はセンヤの姿を取り、戦闘を始める。

危機が完全に排除されてからも、それから24時間の間は対象者を守護する。

この技術はウェンゲージから教えてもらった。

なんでも宝石を盗もうとする泥棒に、宝石自体が襲い掛かるようにした技術の流用らしい。




「なら先にギンベッカとヤヤガに関しての情報集めからだな」




「それなら、ギンベッカは魔武器、魔防具の素材を、腕の良い冒険者から買い取ってましたし、冒険者連合組合に登録するのは如何でしょうか?」




「街の人達に『領主業押し付けて本人は気楽に冒険か』とか言われないか…?」




「それなら『ラグディス領を覆う壁を作る為の、腕も実力もある大工を探す』と言えば良いのでは?現に結界も破られてますし、きっと皆結界だけじゃ駄目だと思ってると思うんすよね」




「成程、それならラグディスの将来に関する事だから批判は少なくて済むかもしれないな」




「ま、就任日に赤龍を叩き伏せた領主なんて前代未聞ですし、多分反対する奴は居ないすよ。ん、それと最低限、鎧とか身に付けてないと笑われるっすね。幾ら夜に力を解放すると攻撃全部無効になる能力を持ってるとはいえ、それまともな人が聞いたらドン引きっすよ」




テンガイ達に自分が吸血鬼である事と、能力の話をした際には、正に開いた口が塞がらない、が1番しっくりくる表現だったが、まぁあんだけ強いならそりゃ納得だと、何となく受け入れられてしまった。




「すんません、俺は仲間の報告待ちなんでここ動けないんすよね。恐らく冒険者連合組合へは旦那1人で行ってもらう事になるっす」




「あぁいや、構わない。話は色々と参考になったよ。ありがとう」




「いや、俺らもここで野良よりか大分良い暮らしさせてもらってるんでこんぐらい、なんて事ないっすよ〜」




(レイズヴェルの「っす」口調はダルそうな感じだが……テンガイのは本当に子分というか……元々誰かに仕える仕事ばっかりしてたから慣れてるのか…?)




センヤはテンガイに見送られ、鎧が無かったかもう一度、あの隠し部屋を探す事にした。

しかしヴァスターリアの記憶に繋げても、鎧の記憶は一切出てこない。

そうこうしている内に広間へと着いた。

カテドラルを除く城護たちは現在、城の外部の城壁や門などを補修している。

広間には1人だけ、窓から外を眺めているサナがいた。




「サナ、何か見えるのか?」




「いえ、城護の皆さんが頑張ってるので、私もお手伝いします!と申し出たのですがやんわり断られてしまって…。紅茶と軽いお茶菓子を持って行ってあげるくらいしか私には出来なくて……。センヤ様はどうかなさったんですか?」




「サナ、それも立派な仕事だ。今自分が出来る事をしっかりこなすのも難しい事なんだぞ?俺は情報収集の為にな。冒険者連合組合に向かう用事が出来たんだが……この格好のままだと笑われるらしい。防具などを身に付ける必要があるみたいでな。もう一度あの隠し部屋を探しに来た」




「ではサナもお手伝いします!」




「ん、ありがとう。サナ」




1〜2回程度しか座った事の無い玉座を素通りし、その後ろの壁に埋め込まれた、封印されていた棺桶を外す。

後ろにぽっかりと空間が現れる。

中の財宝は一応、ウェンゲージが全て回収し、宝物庫へと全て仕舞った筈だ。

サナと一緒に灯りを持って中へと入るが、既に何も無い空間だけが広がっていた。




「うーん……なんにもありませんねぇ……直接の王様の所有物だから更に隠し部屋があるんでしょうか?」




「城は殆ど修復されたからな……今から探しに壁を壊すのも申し訳ないし、何より城護は修復前に気付くと思うんだ」




「ですよねぇ」




「…センヤ様、サナ様、どうかなさいましたか?」




入口からアッシャーが顔を覗かせていた。




「アッシャーさん、センヤ様の鎧に何か心当たりはありませんか?今必要なんですが……見当たらないんです」




「鎧、ですか……先代、ヴァスターリア様は『我は鎧を身に付けるほど脆くは無い』と仰っていたので、王専用の鎧は物として存在しておりません。しかし勇者との決戦の際には、御自身の魔力を鎧の形に生成し、身に付けておられたようです」




「そりゃ何回記憶に繋げても場所についての情報が出ないはずだ」




「はい。なので今回も魔力で生成していただくしか……」




「と、取り敢えず頭にそれっぽいワードを思い浮かべて適当に生成してみるか…」




(鎧……吸血鬼……王……)




紅い魔力がセンヤの全身を多い、足元から徐々に鎧を形成していく。

そして……




センヤが日本人だからだろうか、和洋折衷の鎧をセンヤは身に纏っていた。

ベースは西洋の鎧なのだが、兜の側面から悪魔の様な2つの大きな角が突き出ており、湾曲して正面へと突き出ている。

そしてその角の根元から首を覆うように(しころ)、肩から腕に大袖、腰から太ももの前後左右に草摺(くさずり)、胸には鳩尾(きゅうび)の板が取り付けられていた。

背中はしっかりと羽が出るようになっており、少し動かすが窮屈には感じず、邪魔にはならないように出来ている。

湾曲した2つの長い角、センヤのスラリとした手足。

荒々しい猛者である様にも見えるが、どことなく女性らしいような不思議な美しさも兼ね備えた鎧が完成した。




恐らく吸血鬼というワードで、センヤは無意識の内に鬼の様な角、鎧と王で戦国時代の武将の要素が混ざったのであろう。




「ど、どうだ…?自分だとよく見えないんだが……」




「今まで見た事のない鎧ですが……不思議と合っている感じがします。ヴァスターリア様とはまた違う趣きがあって美しいです」




「ばっちりですよセンヤ様!鎧はあまり詳しくありませんが…強そうです!」




アッシャーとサナには好評だった。

いや多分余程変なデザインじゃない限り褒めてくれるだろう、この2人は。




センヤは私室でコートを羽織り、終告げる紅薔薇(エンド・オブ・ローゼス)をコートの上から装備した。

きっと少しはそれっぽくなった筈である。




「じゃあ行ってくる。もしかしたら数日間城を空けるかもしれない。頼んだ」




「かしこまりました」




「あの、センヤ様!私も…」




サナがセンヤを呼び止め、1歩前に出る。

呼び止められたセンヤは後ろに振り返る。




「ん?どうした?」




「………いえ、頑張ってください!」




「…ありがとう。良い報告を期待していてくれ」




センヤは不思議に思ったが、サナに改めて声を掛けると広間を出ていった。

サナは自分の服をギュッと掴み、その後ろ姿を見送った。




「…アッシャーさん、何か、お仕事はありませんか?」




「…では、私達と一緒に外の修理をお願いできますか?吸血鬼のサナ様でも大変だと思いますが…それでも宜しければ」




「はい!是非ともよろこんで!」




「…話は聞かせてもらった!俺も手伝おう。連絡待ちで城に居なきゃならんが、何せやる事がないからな。少し身体も動かしたい」




広間に現れたテンガイも混ざり、3人もセンヤに続いて城の外に出た。




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