第14話 戦いが終わって
センヤとファテナが、勇者についての話をしている間に、グェネリロの遺体と、その仲間たちは聖騎士軍によって全て回収された。
子供たち、そしてキリナは軽い火傷や、手の治療を行った。
センヤもグェネリロから受けた傷が多々あったが、あの黒いオーラを発したと同時に、その全てが完治した。
少しして治療が終わったらしく、キリナ達がやって来た。
センヤもキリナへと駆け寄り、手の怪我を確認した。
「キリナさん、怪我は…!?」
「うん、ちゃんと手当てはしてもらったけど……手、怪我が治った後も後遺症が残るかもしれないって……ううん、皆が生きててくれて、母さんの形見があるだけでも幸せだよね」
「キリナさん…俺の詰めが甘かったせいで…本当に申し訳ない…」
センヤは深々とキリナに頭を下げる。
「そんな…!センヤさん!頭を上げて!センヤさんが居なかったら…アタシは今、全てを失くしてたんだ……」
キリナの家は完全に焼け落ち、鎮火はしたものの、家が建っていた場所は瓦礫と灰の山になっていた。
聖騎士軍の何名かは、その中から焼けずに済んだ物を探していたが、発見は絶望的であった。
センヤの後ろからファテナがゆっくりと歩いてくる。
「キリナ・クレイトスだね。今回の事は非常に残念だった……こんな時に申し訳ないが、住む家のアテはあるのか?もし無いのなら、聖騎士軍の支部の宿舎が少し空いてた筈だから、そこに暫く住むといい」
服屋の建物はあったが、その建物は住む事に適してはいない。
しかし、聖騎士軍の支部はラグディスから離れた別の街に建てられている。
そこからラグディスの街にある自分の服屋へ行くには、魔物が蔓延る道を歩いていかなければならなかった。
生活を取るか、収入を取るか。
キリナは迷っていた。
しかしキリナのすぐ近くに、魔物は出ない、服屋からは近く、引くほど広くて大きい建物を所有する者がいた。
「俺の城に住むといい。荒れ果ててはいるが広さだけはこの街すらすっぽり収まる筈だ。魔物もまだお目にかかってない」
その言葉に反応を示したのは子供たちだった。
「に、兄ちゃん城に住んでんの!?」
「舞踏会も開けるかな!?」
「ま、まぁ…きちんと直せば開けるかもしれないな」
やろうと思えば舞踏会は今でも開催できるだろうが、30分やったとして穴に落ちずに生き残っているのは数組程だろう。
「ん、話は纏まったみたいだな。あ、軍長殺しの罰則金は75万メロだ。兄ちゃんに払えるか?フフ…分割でも良いぞ?」
ファテナがニコニコと両手を差し出す。
多分数万くらい抜く気だこの人。
支部長だと言うが…なんだか色々と残念な人である。
センヤは懐から小袋を出し、その中から更に紙幣の束を取り出し、数え始めた。
「ん………では、これで。確認してくれ」
「うっそぉ……アタシ困ったら兄ちゃんのとこに嫁に行くから。吸血上等バッチコイ」
センヤの正体を知るファテナは親指を立ててグーサインをする。
あの日、サナに吸血をしたのを目の当たりにした部下たちには、箝口令を敷いたらしい。
しかし、この人は家事全般を全てセンヤに投げ、絶対何もしないだろう。
美人の煙草は絵になるが、子供たちには悪影響だ。
ファテナは手渡された札束を、口の端から涎を垂らしながら数えていた。
……訂正しよう。恐らく中抜きは数万では済まないだろう。
「……ん、確かに。じゃあアタシらはここらで撤収だ。捕まえた連中から他の組織の事も聞かないといけないしさ。土地の持ち主はクレイトス家になってるから後々の事は本人に任せるよ。じゃ、皆戻るぞ!」
ファテナの号令で聖騎士軍たちは一斉に引き上げた。
「キリナさん…家の片付けはまた今度にしよう。今日はもう城で休もう」
「センヤさん…ごめんなさい。何から何までお世話になって……」
「良いんだ、キリナさん。それに同じ城で過ごすんだ。これからは家族同然だと思ってほしい」
センヤは子供たちの方へ向き直り、キリナと同じく今後の事を伝える。
「勿論君たちもだ。これからは俺やサナの事も家族として扱って欲しい。皆も疲れただろう。城に面白いものは無いが…しっかりと休んでほしい。では……」
「兄ちゃんちょっと待って!皆、こっち!」
「…ん?」
センヤが出発を言いかけたが、子供たちは何やら集まり出し始めた。
そして子供たちは焼けた家の残骸の前へと並び、言った。
「今までありがとうございました!」
一斉に頭を下げ、深々とお辞儀をする子供たち。
彼らは今まで世話になったキリナの家にお礼を言ったのだ。
「…みんな…!」
「…いい子達だ。このまま真っ直ぐと育ってほしい」
親を亡くした子供たちがここまで純粋に育っているのは、ひとえにキリナが沢山の愛情を注ぎ、しっかりと教養を身に付けさせているからであろう。
子供たちは暫く頭を下げた後、こちらへと戻ってきた。
そして目指すは山の上、センヤの荒城。
城名とかあると呼びやすいのだが、後々調べてもそれらしい資料も名前も出て来ず、かといって名前を付けるのも何だか恥ずかしい為、呼び名は『城』か『荒城』に落ち着いた。




