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第94話 『死聖』と『光聖』



〜前回までのあらすじ〜


世界最大の国土を持つ、リズアニア大陸の大国バンデッタは、未曾有の脅威に晒されていた。

2人の魔将に加え、多数の魔人筆頭及び魔人達、そして大量の魔物が最大規模の襲撃を仕掛けてきたのである。


急襲を掛けた彼らはバンデッタの外周にある施設や、自然地区を制圧、徐々に中央へと向け、圧力を掛け始めた。

しかし、聖騎士軍の強者が集められた『聖羅十傑』達も反撃を開始し、戦況は五分となっていた。






〜バンデッタ『ガルダ山』〜




バンデッタの南にそびえる『ガルダ山』は、普段は初心者から上級者まで、登山者に人気の山なのだが、今は戦場と化していた。

鋼鉄の爪を持つモグラ型の魔人が占領しており、通り掛かる者を次々と爪の餌食とした。




彼らは大きく分けて二種類おり、モグラに近い『夜行種』と人間に近い『昼行種』が存在した。

単純な戦闘力なら『夜行種』が強いが、彼らは太陽に弱く、目がほぼ機能していなかった。




ガルダ山の麓……雨の夜、破壊工作を任された『夜行種』のモグラ魔人達は、明日の作戦の為に現地の下見を行っていた。見えないのだが。

しかしこの雨が、視覚以外の感覚が優れている筈である彼らの明暗を大きく分けてしまった。




「この辺りが奴らの補給線だ。情報によれば恐らく、明日の夜に補給を行う筈だ。我々は予め掘った地中に潜り、奴らを襲撃。余裕があれば物資も破壊しておくようにっ――――――」







ぐるんっ……




「えっ……」




ゴキッッッ…………




瞬間、自分の見ている景色が360°裏返った。

何が起きたのか理解出来なかったが、確かな事は、最早自分は絶命しているという事であった。




「1人落とした」




「こちらも1人」




「同じく」




モグラ魔人の背後から、まるで死した彼らの影が、意志を持って動き出したかのように、黒ずくめの人々が次々と現れる。

夜間の雨、という絶好の狩場に、魔人達はノコノコ現れてしまったのであった。

最後に、破壊工作のリーダーと思われる魔人の死体の後ろから、フクロウの頭蓋骨を加工した面を被る男が現れた。




「周囲に気配無し、制圧完了」




彼は聖騎士軍聖羅十傑が1人、『死聖』ヴェレノ・ルート。

彼が率いるのは『冥府の使者(グリムサナトス)』。

元々は、秘密裏に世王へと仕える暗殺者集団であったが、時代と共にその存在は公然の秘密となり、アラガ教の総本山であるバンデッタが暗殺者集団と関わっているという悪印象に加え、世王がその気になれば彼等を敵対する者へと差し向け、不都合な事実等を抹消してしまうのではという権力の悪用を指摘された結果、『増加する魔物の脅威に対抗する為に新設された部隊』の名目で、そっくりそのまま名前だけを変えただけで、聖騎士軍へと入軍させられた経緯を持つ。




しかし、表舞台に出た彼等の腕が鈍る、という事は決して無かった。

冥府の使者(グリムサナトス)』の武器は己の体一つであり『闘法』を駆使して多彩なる体術を繰り出す。

彼らを率いるヴェレノは、ゴーストの魔人のハーフであり恐ろしい技の使い手ではあるが、至って善良な青年であり、殺しは仕事としてドライに割り切っている。




「やはり夜間の巡回の人数を増やしておいて正解だった。ここ数日、奴らの行動範囲が明らかに広がっていた」




モグラ魔人達はガルダ山の山頂を制圧して陣地を敷いており、ヴェレノ達は麓に本拠地を置いていた。

主に中腹付近での戦闘が激化しており、彼らは一進一退の攻防を続けていた。




「しかし、ここでの補給は細心の注意を払っていたのだが……いつ知られた……?」













彼女は、大きかった。




「邪魔ぁっ!!」




ドヴブォゴボォォォォォンッッッッッ!!




身の丈程もあるサイズの大剣を軽々と振るい、岩石の魔人を次々と、まるでスライムを斬るように、彼ら自慢の身体を切断……いや、粉砕していく。

かなりの重量を誇る大剣を、轟速で振るうのだから、その際に発生する破砕音は、およそ普通の人間が出せる音では無かった。







聖騎士軍聖羅十傑が1人、『光聖』ラルジュ・ヴィーナ。

彼女が率いるのは『輝きの戦乙女(シャインヴァルキリー)』と呼ばれる女性のみで構成された部隊。

ラルジュは母親が巨人、父親が人間のハーフである。身長はなんと2m30cmにもなる。

特徴として剣がデカい、背がデカい、乳がデカい。何から何までデカい。




「お姉様ーーー!!やっちゃってくださーーい!!!」




「お前らもぉっ!やれぇッッ!!!!」




『ギャアアッ!!』




バンデッタの南西、国境付近のクゥザ砂漠は、岩が多く転がっており、岩石の魔人が擬態や自身の身体を補強したり等、彼らが目を付けない理由は無かった。

ゴーレムの精霊と、岩石の魔人は遠からず種の近い者同士である。

ゴーレムの精霊達は、身体の表面が研磨されており、つるつるした光沢なのに対し、岩石の魔人は、野性味のあるゴツゴツとした岩を身体とする。




『ア、アイツ、ヤバイ』




『ヤバイ、デカイ』




感情表現に乏しい岩石の魔人達ですら、口々にデカいヤバいデカいの大合唱を始め、ズリズリと後退を始めた。

しかし、そのまま撤退をしていれば良かったものの、その大合唱が命取りである。




「ア゛ァッ!?アタシはァッッ!!デカくなァいッ!!!」




ドゥルゥゥゥゥオオオオオオンッッ!!!




『アガガガァッ!!』




暴れる駄々っ子が積み上げた積み木の山を崩す様に、岩石の身体を木っ端微塵に弾き飛ばす。

吹っ飛ばした身体の一部は他の魔人にも当たり、衝撃で身体が崩壊してしまった。

その使い方は剣ではなく、鈍器。




……ハンマーは可愛くないので、剣を選んだ。

しかし彼女のサイズや、力加減を考慮した結果、当初の可愛らしいデザインが、この超巨大な大剣となって彼女の元へと納品されてしまった。

至る所に彼女の思い描く『可愛さ』を取り入れたのだが、その圧倒的大きさは可愛くなかった。

職人の前で彼女は喜ぶ素振りをしたが、持ち帰ってから、ベットの枕に顔を押し付け、鼻水と涙をボロボロ零しながら、可愛さの欠片も無く、泣いた。







彼女の元へと派兵された攻撃部隊は、その辺に転がる石ころと化した。

部下達の黄色い声が聞こえてくるが、彼女は誰にも聞こえない声で、ぽつりと呟いた。




「デカく、ないもん……」












『聖羅十傑』は、1000年前にソルシエラが魔王を討伐した際の『グァンダレラ総決戦』において、魔将を倒した、又は相討った10人の聖騎士軍兵士を称える為に、戦後に作られた称号・集団です。

必ずしも10人必要な訳ではなく、ある程度の過不足があっても問題はありません。

現在は聖騎士軍内でもかなりの実力を持つ者が任命され、部下の兵士達も様々な状況に対応出来る様、聖騎士軍内外問わず、何かに特化した者達がバランス良く集められています。



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