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第一話 転校生がサキュバスだった

異能が世に知れ渡り始めて数年が経った。

が、未だ解明されていない謎の多き存在だった。

唯一わかっているのは、成長期の子供にのみ発症する病であることだけ。

そんな世界でただひとつ、異能者たちが平和に暮らすために作られた都市があった。


なんで、僕の暮らす都市が特区なのかは知らない。僕は、発症していないただの凡人だった。

「こら~!もう起きる時間よ~!」


僕にとって、当たり前の朝が過ぎていく。母に起こされ、リビングでテレビを見る。

『今回確認された症例は、軽度とみられ、日常生活には問題ないとの観点から、保護観察処置が取られたということです』

つまらない朝のニュース。僕には全く関係ない情報が流れていく。

『突如として発症し始めた異能が、この世界に浸透してまだ年月は浅いものの、人々は、向き合い、暮らしているのです』


「いってきまーす」


僕の母親は毎日家事をして、父は単身赴任でいない。幼馴染もいなければ、別段中の良い友人がいるわけでもない。

僕は異世界転生をしていなければ、異世界からモンスターが召喚されているわけでもない。

そんなこと、現実には起こらないことだとわかっていた。僕は当たり前の毎日を過ごすことで日常を消化しているのだった。

理由なんてない、なにもない。




6月も過ぎ、そろそろ夏も近づいていたある日。学園生活も順調だったある日、それは突然やってきた。

いつものように朝礼が終わると思っていた僕は、一時間目の準備のため机の中を覗き込んでいた。

-がさ、ごそ

「いいぞ、入ってくれ」

-がらっ

扉の開く音がした、僕はいつもと違う"におい"にハッとした。

「えー、今日から新しいクラスメートが加わることになった。…さぁ、挨拶して」

先生の声がする、凛とした声が響く。僕は思わず顔を上げた。

「は、はじめまして。錐縞 緋衣(きりしま ひえ)と、申します…」

そこには、頭に角が生え、尻尾がある人間がいたのだ。

「今日から一緒のクラスになる。仲良くしてやってくれ」

意味がわからなかった。

この日常に、漫画やアニメにある日常が、現実に起きてしまった。僕は目を疑った。


彼女の奇妙な出で立ちや"におい"で、クラスは騒然となった。

-がやがや

--おいおい、なんでこんな時期に?

-ざわざわ

--かわいい~赤くなってる!

-ひそひそ

--なんかだりーな…

「ハイ静かに!…錐縞は、"サキュバス"初症例001だ。

…みんなもわかってると思うが、この学園では特別な取り組みがされている。

症例法は知っているな?ここが症例法特区なのももちろん理解していると思う。

仲良くしてやってくれ。以上だ。」


症例法、異能が発症した患者を保護してケアをする校則。そして、その患者を保護する症例法特区。

なーんて言うととんでも学園やとんでも地域だけど、医療施設が充実しているただの学園や地域に過ぎない。

そもそも異能がなんだって言う話だ。僕には関係ない。転校生がサキュバスだって?興味もない。


「あの、隣、の、席なので、よろしくお願いしますね。」

どきん

「あの、あ、すいません。私、"におい"がちょっとキツくて、困らせてしまうかもしれないですけど、がんばりますから!」

あたまが、ボーッとする。凛とした声が、頭に響く。

のうに、ちょくせつひびく。

「あう、えと、すいません!」

-バチンッ

錐縞が、自分の顔を強く叩いていた。はっとする。我に返った。今、何が起こった?

錐縞の頬は赤くなっている、…どうやら能力に侵されていたようだ。これが…"サキュバス"。

「…いや、大丈夫。よろしく、錐縞。」


平凡な日常に、ほんの少しのヒビ。そんな感じのする今日の出来事に、僕は胸が苦しくなった。

この胸の苦しみが、サキュバス由来のものだと願うばかりであった。



初症例001"サキュバス"。

においで相手の思考を妨害、誘惑する。

気合を入れないとたれ流しになってしまう、要注意。

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