999. 親方しみじみ夜・明け方の誘い
少々長いのです。お時間のあります時に。
この夜。親方はちょっと、浮かれてしまった。良かれと思った話が。
親方は、2台の馬車の間にベッドを置いて、いつもどおり、やってきたコルステインと話していたが。
結果から書くと、コルステインが帰ってしまう事態を招いた。
流れとしては。
コルステインが来た⇒今日の出来事を話す⇒イーアンに相談したことも話す⇒男龍に言われたことも話す・・・ここでコルステインが『ちょっと訊きたい』となる。
『イーアンに相談した』までは、コルステインも『ふむふむ』で聞いていてくれた。
しかし『そもそも、どうしてそうなった』と質問されて、ルガルバンダの話になり、親方は『コルステインとの関係を大切にした』ことを強調。
でもコルステインは、違う見方をした。
タンクラッドの気持ちは理解したものの、男龍の伝え方・タンクラッドの言い方に、自分が彼を守っていないように感じた。
無表情で、自分の状況を考えるコルステインに気が付かず、親方は喋り続けた。
『俺は。ヘルレンドフと違う。お前が好きだし、お前と一緒にいる時間をもっと増やしたいし、大切にしたいのだ。
イーアンも、それで良いと言ってくれたし、男龍の祝福をこれ以上、貰うことはなくても・・・コルステインと一緒にいられるように、俺が頑張れば良いと思った』
ニコッと笑ったタンクラッドに、コルステインは笑わなかった。
あれ?と思って、タンクラッドは、青い大きな目を覗き込み『一緒だぞ』と、もう一度笑顔を向けたが。返って来た言葉は『コルステイン。お前。守る。する。違う?』だった。
その訊き方が、何か責められているように感じ(※天然だけど気が付く)親方は、ちょっと唾を飲み込み『守ってくれている』棒読みで答える。コルステインはそれでも疑わしげな表情が変わらない。
どうしたんだと、様子が変なことを心配したタンクラッドに、コルステインは、顔を彼の顔の高さまで下げると『お前。男龍。守る。何で』と来た。
ここからは平行線だった。
どんなに親方が、誤解を解こうとしても、言い訳しても、コルステインは『男龍が守るのが、自分より上か』とその一点からズレない。単純に物事を理解するコルステインだからこそ、下手な理由が一切利かない(※本質重視)。
そしてとうとう、苛立った親方が『何度も言わせるな!俺は、お前と一緒にいると言っているだろう。そこが大事じゃないのか?男龍の祝福よりも、お前と一緒が良いって』言ってるんだよ・・・と、怒鳴っている(※頭の中の会話で)途中。
最後まで言わせることなく、聞きたくないとばかり、首をぶんっと振ったコルステインは、さっと立ち上がると、青い霧に変わって消えてしまった(←こっちもイライラ)。
『コルステイン!』
『待ってくれ(※本日二度目の『待ってくれ』コール=親方版)!』腕を伸ばして、慌ててベッドから立ったものの、既に青い霧はおらず。愕然として、その場で宙を見つめる親方。
怒らせた・・・・・ それだけは分かる。何で?何でだ。どうして?
俺は。コルステインも喜ぶと思ったから。今日の、満足した気持ちの決着を、伝えただけだ。それがどうなると、こんなザマになるんだ・・・分からない状態に放心。
段々、ムカムカしてきて、親方はベッドをバンッと叩く。
『俺が何したんだ。コルステインを取ったのに!』それで、コルステインに守ってもらう状態が通せるなら、そっちが大事なんじゃないのか!何でこうなるんだよっ・・・歯軋りする親方の苛立ちは(※静か)誰にも聞こえない。当然、コルステインにも届かない(※既に地下)。
「~~~~~っっ!!!」
言葉にならない悔しさと、何か分からないけど怒らせちゃった感に、親方むしゃくしゃ。だが、このままでは、コルステインと不仲が続く恐れもある。
これは、イーアンに言わなければ(?)と気持ちを入れ替え、馬車の扉を開けようとして、何となく・・・中から、聞きたくない系統の(※夫婦の夜だから)物音が聞こえた気がし、盛大に舌打ちして、親方はベッドに戻る。
「ちっくしょう!あいつら、暢気な(※八つ当たり)!人が困ってるのに、イチャつきやがって」
どうすりゃ良いんだと(※静かに)怒り続ける親方は、簡易ベッドに一人、ゴロゴロのた打ち回り、地面に落ちた。
「く。くそ・・・こんな不様な夜になるとは」
顔に付いた砂を払いながら、どうにもならない気持ちに大きく溜め息をつき、タンクラッドは地面に胡坐をかいて、少し冷静になって考えてみる。
そして、考えること1分。深呼吸してからベッドを離れ、馬車から距離のあるところまで移動した(※イチャ音、聞きたくない)。
それから、乾いた地面の砂を両手でかき集め、小さな山を作ると、左手の指に嵌っている指輪を擦る。
「ショショウィ」
小さな声で名前を呼ぶと。見る見るうちに白い煙が砂の山から立ち上り、月明かりの下に白いネコが現れた。
『ショショウィ!』
出てきた地霊に抱きつく親方(※心の友)。ショショウィは少し驚いたようだったが、タンクラッドの腕の中で彼を見上げ『タンクラッド。昨日、呼ぶない。ショショウィ。寂しいした』と打ち明ける。
『そうだな、そうだ。ホントだ。俺が悪かった(※ショショウィに反省)。ちょっといろいろあってな。呼べなかったんだ』
これから、毎日呼ぼうな(※またムリのある約束をする)と笑顔を向けると、ショショウィは素直に頷く(※すぐ信じる仔)。
大きな緑の目でタンクラッドを見つめ、何か悲しそうなその顔を、ペロッと舐めてあげるショショウィ。タンクラッド、素朴な優しさに涙ぐむ。
『お前だけだよ、俺を信じてくれるのは』
『タンクラッド。寂しいするの?どうして』
いや、良いんだ、こっちのことだよ・・・イタイ傷に、ちょびっと温もりが生まれた親方は、ショショウィを抱き締めた腕を解いて、横に座り直す。
『俺のことより、お前のことを聞かせてくれ。今は何をしていたんだ?』
『ショショウィ、歩いてた』
そうか、そうか、と笑顔で頷く親方。地霊をナデナデしながら『何か食べたか』とか、『食べない』と言われて、『力をもらったか』と言い直したりして、こんな具合の他愛ない会話で、ショショウィに癒される時間を過ごす。
特に解決策もないままだったが、親方はショショウィに癒されながら、月の下で、夜更けになるまで一緒にいた。
ショショウィが、明日も呼ぶのかと訊いたので、『勿論だ』と答えると、ショショウィは『他の人も会う』と言い始める。他の人って誰だろう?と思ったら『ザッカリアとフォラヴ、バイラ』のことだった。
ショショウィなりに、お友達と理解している様子。『会うの。良いと思う』そう言う地霊が、まー、可愛いので。可愛い可愛いショショウィの希望とあり、親方は『じゃ、昼間に呼ぼうな』と約束してあげた(※お子さん状態)。
そしてショショウィは、タンクラッドとお話していたが。
ふと、何かを気にしたようにキョロキョロし、撫で続ける親方を見上げると『戻る』と告げた。
随分話したので、気持ちもすっきりしたタンクラッド。帰宅を了解し、戻る前にと、気になったことを一つだけ訊いておく。
『お前は、俺がこうして呼ぶ時。疲れたりするのか』
『しない。大丈夫。あっち、体あるの』
何やら不思議なことを言ったので、もう少し詳しく教えてもらうと、どうも『山に体がある』ような言い方。
それ以上は、ショショウィにも説明し難いため、親方は了解して、出て来てくれたことにお礼を伝えて、地霊を戻した。
『また明日な。明るい時間に呼ぶから』じゃあな・・・煙がひゅ~っと消える様子に挨拶し、タンクラッドは地霊の消えた後を見つめる。
「コルステインのこと。何も解決していないが(※ショショウィと遊んでたから)。
でもな・・・こうしてショショウィと会えるのも。怒らせたが、コルステインと居られるのも。俺が今の状態だからなんだよな」
これ、貴重だよなぁと呟くタンクラッド。白い月を見上げ、上空に早く流れる雲の影を暫く眺めて。タンクラッドは、よっこらせと立ち上がり、ベッドに戻った。
*****
明け方近く。ドルドレンは起きていた。小窓を開けていたので、親方の様子を何となく知っている。
昨晩。イーアンとイチャイチャした後(※ひっそりイチャついたはずなのに)。親方の寝ている方の壁外から、舌打ちや土を蹴る音が聞こえ、ハッとしたドルドレン(※営みバレてる?!=バレてる)。
事後・・・イーアンは即行寝たので、ドルドレンは何気に気になって、親方とコルステインのベッドを、小窓からそっと覗いてみると、どうしてか、二人ともベッドにいない。
普段。覗いちゃ失礼だから~と思って、並べた馬車間に向いた窓は開けないのだが、舌打ちにビビって、うっかり見たベッドに、二人ともいないとなると、どうしたのかと気になってしまった。
それで、ちょいちょい様子を見ていたのだが、真夜中になって戻ったのは親方だけ。
コルステインがいないので、何かあったのだろうことは分かった。何となし、暗がりのタンクラッドの様子も細かい部分は見えないだけに、心配だし。明日になったら訊いてみることにし、ドルドレンも眠った。
こうして朝。まだ夜明けにもならない手前の時間。ドルドレンは目覚め、そっと起き上がって、開けておいた窓の外を見る。やはり、親方一人・・・・・
余計なお世話かなと思いつつも、放っておけないドルドレン。少し考えて、静かに着替える。
昨日の夜はミレイオが気を利かせて(※『久しぶりに二人きりで寝なさい』って⇒意味は一個)いなかったので、眠るイーアンだけに気をつけて外に出た。
静かに静かに馬車の横を覗くと、親方が眠っている。ドルドレンは頭をかいてから、やっぱり声をかけようと思い、側へ行くと『タンクラッド』と何度か名前を囁いた。
ふっと、目を開けた親方。ドルドレンを見て、ボーっとしている。ドルドレンは『タンクラッド。起こしてすまない』そう最初に伝えてから、ボケーッとしている鳶色の瞳を覗き込み『出かけないか』と誘ってみた。
「ドルドレン・・・どうした。何かあったのか」
「うむ、その。お前とちょっと、出かけたいと思って」
「俺と。何だ。どうしたんだ」
眉を寄せ、まだ暗い時間に起こされたタンクラッドは、理由を訊ねながらも起き上がり、欠伸をして目を擦る。
親方の機嫌が悪そうなのは、朝になる前に起こされたからなのか。それとも、別の理由でもあるのか。
とはいえ、寝ぼけているタンクラッドは、普段なら一緒にいるはずのコルステインがいないことを、ドルドレンが何も言わないことさえ、気付いていない様子。
きっとコルステインと何かあったのかも、と理解をつけて、ドルドレンはそれには触れず『すまないのだ。でも一緒に』もう一度言い掛け、首を傾げた親方に『分かった。もう言うな』と言われて黙る。
「どこへ行くつもりなんだか・・・こんな時間に」
「離れた場所で龍を呼ぶから。そこまで歩こう」
「龍?テイワグナなんか知らないだろう。本当に何かあったのか?」
うん、とか、いや、とかモゴモゴ言いながら、ドルドレンは親方の立派な股間が治まるのを待ち(※このまま歩かせたくない)何となく形が馴染んで(?)来たかなと思ったところで、先に歩き出した。
親方も立ち上がって伸びをし、周囲に気遣いながら、総長の後をついて行く。
空にまだ、明けの明星が見える時間。
涼しい風の吹く乾いた土の上を、二人の背の高い男が歩く。ドルドレンは、後から付いてきたタンクラッドに合わせて、少し歩調を緩め、並んで歩くことにした。
「何かあるなら言え。どうしたんだ。こんな時間に出かけるなんて」
「俺とタンクラッドが話せる時間が。あまりない。二人で話せる時間がほしい」
「何?」
意外な答えに、タンクラッドは総長の顔を見て『お前はいきなり、何を言ってるんだ』とちょっと笑う。ドルドレンも少し笑って『朝方しかないから』控え目に理由を続けた。
親方はそれから、じっと総長を見つめたが、彼が笑みを浮かべているまま、こっちを見ないので、それ以上は訊かないで歩き続けた。
暫く歩いて馬車がかなり離れたところで、ドルドレンは笛を吹いた。『俺も呼ぶか』タンクラッドが笛を出したので、ドルドレンはその手に手を重ねて止める。『ミンティンを呼んだ』だから必要ないと言う、総長。
「ますます。何だか変だぞ。どうした、ドルドレン。何でミンティンで男二人乗り」
「話すのが楽だ。一緒にいれば」
タンクラッドは、微笑むドルドレンを見て、彼が昨晩○○○していたのを思い出し、怪訝そうに目を細める。でも、こいつ・・・男色傾向もあるんだよなぁと思うと、少し警戒もしてみるが(※俺を狙っているのかと)。
怪訝そうな親方の視線を気にせず、やってきた青い龍にドルドレンは手を振る。『おはよう、ミンティン』手を振る男に、青い龍も『何でコイツらなんだろう?』的な目で見ているが、とりあえず着陸。
降りてすぐ、背中に二人が乗ったので、ミンティンも訳が分からないものの、浮上した(※優しい)。
「悪いな。朝から呼んで。このまま海へ向かってくれないか」
前に乗ったドルドレンが頼み、ミンティンはちょっと彼を見た後、ふらら~と海へ向かう(※きっと何かあるんだねって感じ)。
「ドルドレン」
「何だ」
「お前。変だぞ。いい加減、何があったのか話してくれ。海に向かってどうする。皆が心配するだろう」
「しない。ちゃんと一筆、書いておいてきた」
全然理由が分からない親方は、前に乗ったドルドレンに、理由を話すように急かす。『おい、何だって言うんだ。こんな時間に起こして。いきなり、海なんかに』おかしいぞ、と詰め寄る。
振り向いたドルドレンは、すまなそうに微笑むと『お前が心配だった』そう答えた。
「俺?俺が何で心配なんだ」
「タンクラッドはいつも、コルステインと仲が良い。一緒に眠っているし、コルステインは男女の別がないにしても、女性のようである。お前もコルステインを『彼女』と呼ぶ。想い合っているからだ」
「突然・・・おい。お前、もしかして」
「そうだ。偶然だが、お前しかいないことに気が付いて。どうしたのかと思った。余計なお世話だろうが」
「本当だ。そんなことで呼び出したのか!大きなお世話だぞ」
しつこく訊いてみれば。何だそれは、と怒るタンクラッド。話すことなんかない、と吐き捨てると『バカなことして。俺は戻る』そう言って笛を吹こうとした。
「タンクラッド。戻らないでくれ。そんなに怒るな。仲間だから気になる。個人的なことに差し挟む気はないが、俺が気に掛けたことだけは知っていてくれ。理由を訊こうなんて考えていない。
ただ、タンクラッドが誰かに話して、何か良い状態を招くなら、俺で可能なことはと」
「ドルドレン」
タンクラッドは、自分を振り返ったまま、白い髪の混じる黒髪をなびかせる男を見つめ、少し笑った。それから笛を腰袋に戻すと、その手で前の男の頭を撫でた。
「お前は・・・総長なんだよな。いつも、そうしてきたのか」
「そうでもない。気がつけないことの方が、ずっと多い。騎士は人数が多いから。だけど今は、俺の気が付いた時、もしかしたら力になるのが、間に合うくらいの人数だ」
灰色の瞳に、明るくなり始めた空の光が映りこむ。それをじっと見て、タンクラッドは微笑んだ。
「優しいんだよな。いい大人のくせに。お前はどうしてそうなのかな」
「分からない。でも。放っておけない。俺たちは、同じ馬車で旅をする。助け合うのは・・・義務でも、しきたりでもない。皆はそう思わないにしても、俺の家族だ」
「そうか」
青い龍の背中で、少しずつ風の匂いが変わるのを感じる二人。
黙ったその後。暫くの間は空を見ていた。そのうち、白む空に走る乾いた風には湿り気が含まれて、それも少しすると潮の香りが入る。
「もうじき海だ」
「そうだな・・・ドルドレン。俺はコルステインを怒らせたんだ。良かれと思って話したことが、何だか逆だったみたいでな」
ぽつっと話した親方に振り向き、うん、と頷いてドルドレンは、彼の鳶色の瞳を見つめる。
親方は、昨日のことも簡単に聞かせる。昼にルガルバンダに言われたこと。一人で考えた馬車の午後。イーアンを助けた後、彼女に相談したこと。そしてコルステインに話した後のこと。
ドルドレンは黙って聞き続け、ちょっとオーリンの話を思い出した。オーリンは悩む時・・・大体が付き合い話で悩んでいる印象がある。
親方も、女性との付き合いが少ないから、難しいのだろう(※こんな時はクローハル=懐・・・と思ってしまう)。
コルステインは女性ではないし、話の内容がどうも、力と存在に傾いているけれど、親方は『男女の思考の違い』のように捉えていそうだった。
話すだけ話したタンクラッド。夜中に、ショショウィを呼んで癒されたことまで教えてくれた(※暴露)。
「そうか。苦しかったのだな」
「今夜も悩むかもな」
ハハッと情けなさそうに笑うタンクラッドの膝に、ドルドレンは、ぽんと手を乗せた。『見るのだ。もう海だ』潮の香りがどんどん強くなる風の中、真向かいに水平線が現れる。
「ああ・・・津波の朝を思い出すな」
「うむ。俺も思い出した。あの時、コルステインは俺から離れて、タンクラッドに移った」
ハハハと笑ったドルドレンに、思い出したタンクラッドも一緒になって笑う。
『お前、俺に取られたと思ったのか』そうか?と訊くと、ドルドレンは首を振って『乗換えが早い!とは思った』と答える。その答えに、また笑うタンクラッド。
「あの深刻な戦闘で、あっさり、お前に笑顔を向けたのだ。お前が気に入ったんだなと分かった。
そしたらどうだ。今じゃ毎晩通って、一緒に眠り、その上、今日は夫婦喧嘩みたいだ」
「バカなことを・・・いや。そうか。そうだな、本当だ」
苦笑いするものの。この一ヶ月ちょっとで、タンクラッドはコルステインとの時間を、改めて振り返る。
前を見ると、灰色の宝石のような瞳で微笑む総長が見ている。親方は手を伸ばして、その頬を撫で(※ドルは赤くなる)『有難うな』と礼を言って、海に目を向ける。
「海だ。綺麗だな」
「うん。ハイザンジェルに海はない。俺たちは、海や漁師の歌を歌う時・・・馬車の家族の話だ。その歌は、東の川のことだった。
ここでは、本当に海を見ながら、海の歌を紡ぐのだろう」
「ドルドレン。俺に力を貸してくれると言ったな」
前方の海を見て話していたドルドレンは、うん?と振り向く。
タンクラッドが超絶イケメンスマイルで『歌ってくれ』と囁く。
何だか・・・胸きゅーんってなったけど、ドルドレンは頑張って頷き了解した(※自分、浮気者なんじゃないかと心配になる瞬間)。
ドルドレンは、気持ちを正して(?)。すっと息を吸うと、覚えたばかりのジャスールが教えてくれた馬車歌を歌い始める。
その声は、水平線を輝きに包む朝の光に溶け、涼しい潮風に乗って、遥かな空へ舞い上がる。
ドルドレンが歌う、テイワグナの馬車歌。青い龍の背の上で、親方は嬉しそうに異国情緒な言葉で流れる、美しい歌に聞き惚れた。『元気をもらうな』微笑む親方は、満足そうに呟く。
青い龍も楽しそう。のんびり飛んで、背中に乗る『勇者』と『時の剣を持つ男』のために、ぐるーっと海辺を飛び続ける。
そして、歌声が静まったところで向きを変え、朝陽に青い体を煌かせながら、皆の待つ陸へ戻って行った。
お読み頂き有難うございます。
気がつけば999話。明日は1000話でございます。
彼らの旅は始まったばかり。それでも1000話に到達しました。これの理由は。明日にでも活動報告にと思っております。
いつも、お立ち寄り下さいます皆様には、理由を改めて知る必要もないかもしれません。常に書き続けました理由が明日も見えると、ご存知でいらっしゃるでしょうため。
それでも、記念と言いましょうには、少々思い上がりかも知れませんが、そのささやかな私の記念として、きちんと文字にしておこうと思います。
明朝は、魔物資源活用機構の1000話です。ああ。有難うございます。心から、感謝して。




