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魔物資源活用機構  作者: Ichen
見つめ直す存在
862/2954

862. テルムゾの魔物 ~恵み

 

 皆で話し合った後。親方はここで、報告の連絡をする。楽しいイーアン・タイムである。きっと誉めてもらえるなと思う(※親方も嬉しい)。



 いそいそ珠を取り出し。皆の見ている前で、親方は無表情を決め込んで呼び出す。


『はい。イーアン』


『今日はどうだ。子供は』


『しょっちゅう生まれていますよ。報告をどうぞ』


 あっさり流された。寂しいのだが、ここは気を取り直して、誉めてもらう方へ期待する。昨晩からの仕事を細かくきちんと伝え、肥やしも大丈夫そうだと言うと、イーアンは喜んだ。


『素晴らしい。コルステインに大好きですよとお伝え下さい。何て素敵なのでしょう』


『俺もコルステインは大好きだ。でも勘違いするなよ。お前の方が好きだぞ』


『私もタンクラッドは好きですよ。コルステインの方が好きですけれど(※ホント)』


 余計なこと言うんじゃなかった、と舌打ちする親方。イーアンは笑って『コルステインが活躍しました』と喜び、改めて感謝した。


『それでな。毒をもつ花があった。あれ、どうしたら良いだろうな。吸い上げたようで増えていたんだ』


 親方は白い花の雑草の存在を伝え、フォラヴが言うには、魔性はなく、毒を含むが根を通して土に影響を出していないようだと教えると、イーアンは考える。


『はっきりお答え出来ませんね。難しい。私なら全て刈り取ります。そして。普通の焼却じゃダメでしょうねぇ・・・金属かもしれませんから』


『金属?ああ、毒が金属と話していたな。それなら、炉で焼けばどうだ。金属なら何か出てくるんじゃないか』


 タンクラッドらしい展開だなぁとイーアンは思う。でもそれで具合が悪くなられても困るし、金属の種類も分からないから、適当な提案は出来ない。そしてここで、ふと思う。


『話を変えますが。南北の魔物は』


『それはまだ見ていない。とりあえず肥やしの報告だ』


『タンクラッド。では、南北の魔物について、私が何を考えたか教えます。どうぞ聞いて下さい』


 イーアンはそう言うと、生き残っていた雑草ちゃん二種類の予想と、南北の魔物の場所、それから付近に空洞があるかどうかの話をした。昨日寝る前に考えていたことを、ほぼ説明すると、タンクラッドは理解した。


『凄いことを知っている。お前はいつも、俺たちと全く違う視点で見ている』


『それは知恵を受け取る世界にいたからです。もっと知っていて良いはずですが、間に合いません』


 とにかくね、と続けるイーアン(※業務優先)。龍に頼んで、地下に空洞を探してもらってほしいと、お願いする。

 もし在ると分かっても、すぐに穴を開けるのではなく、ガス(※変なヤバイ空気と説明)が発生しても困るから、一々慎重に動くように念を押す。


 こうして午後の作業が決まり、イーアンとタンクラッドの、本日一度目の連絡は終えた。



 タンクラッドはイーアンとの会話を皆に伝え、ミレイオは毎度のように笑って感心していた。ザッカリアは全然分からないので、ふぅんで終わる。シャンガマックが反応し、『もう一度』と親方に話を聞き返す。


「山がないなら。空洞?ですか」


「そう言っていたな。金属があるだろうと」


「連絡珠を貸して下さい。俺がイーアンと話したい」


 ええっ・・・親方、ちょっと嫌。バニザットが何かを知っているのか、イーアンに確認したがっている。

 イーアンは忙しいと思うぞ、とやんわり遮ってみたが、ミレイオに『あんた、喋ったじゃないのよ』と刺され、渋々、珠を渡した。


 褐色の騎士は一つ、自分の予想が当たっていると感じた。急いでイーアンを頭の中で呼び出し(※初連絡珠使用)これで良いのかな、と思っていると、頭に響いたあの人の声。



『はい。イーアン。タンクラッド、まだ何か』


『俺だ。シャンガマックだ』


『あら。これはシャンガマック。どうしましたか。何か情報が』


『そうだ。山があったかも知れないんだ。遺跡に山の絵があったから』


 急ぐ彼の言葉に、イーアンも想像のパズルが嵌った。にやっと笑うイーアン。

 それを横で見ているビルガメスは『子供が笑わなくなるから、攻撃的な思考はやめろ』と注意した(※イーアンは無視する)。


『シャンガマック。あなたは何に気がついたのですか』


 イーアンに役に立つ、と感じたシャンガマック。掻い摘んで遺跡の詳細を伝える。場所、村からの距離、周辺の地形、遺跡の絵の内容、時代が古代でもなさそうであること・・・・・


『どうだろう。山があったのかと、イーアンが話していたと聞いて・・・そうかと思って』


『あなたが気にして下さっていた、山。シャンガマックがいて良かった。余計な破壊をせずに済みます』


 イーアンは彼を誉めると、自分の思うところを教えた。シャンガマックは感心しながらも、彼女が言いたいことを、間違えないように覚えた。


『では。シャンガマック。私が話したことを皆さんにもお伝え下さい。そして、またミンティンを親方に呼んで頂いて、ミンティンに探してもらって下さい』


『分かった。有難う。イーアンの知恵に感謝しよう。あ、そうだ。ビルガメスにも感謝を。彼は精霊ナシャウニットに、俺の守りを与えるように言ってくれた』


『ビルガメスが聞いていますよ。あなたも空に遊びに来れば良いと。あなたを、龍の骨で戦う大地の戦士、と呼んでいます。それでは気をつけて』



 シャンガマックは思わぬ言葉をもらい、イーアンにお礼をもう一度言って、通信を切った。


「終わったか。何だって」


 親方は、彼の手の珠をそーっと取り返し、話の内容を訊ねる。シャンガマックは嬉しそうに『素晴らしい話だ』と笑った。

 機嫌が良さそうな褐色の騎士に、親方は何となく羨ましいものを感じる(※自分は業務のみ)。そんな顔をしていたのか、シャンガマックはニコッと親方に笑いかけると、機嫌の良い理由を話した。


「ビルガメスにお礼を言ったんです。精霊の加護をもらう手配をしてくれたのが、彼だから。

 そうしたら、ビルガメスは俺のことを『龍の骨で戦う大地の戦士』と呼びました。空に遊びに来るように、って」


「カッコイイ!いいな!シャンガマックの剣のことでしょ、龍の骨って」


 ザッカリアがすぐに誉めて、笑う褐色の騎士に『いいな、カッコイイよ』と何度も羨ましがった。ミレイオも頷いて『的確。あんたってすぐ分かる』と微笑む。


 親方は、とっても羨ましかった。凄いカッコイイ呼び名だな・・・男龍にサラッと言われたら、そりゃもう、自慢だなと思う。でも自分も何度か、ビルガメスに誉められているので、それはそれとした。


 シャンガマックは話を戻し、遺跡の絵を描き写した資料を開いて、皆に見せる。


「それで。イーアンの話ですが。俺は山の存在があった可能性を伝えたんです・・・これですね。この絵。

 イーアンはそれを聞いて、行動をかなり細かく指示しました。ミンティンで()()を探すんです」


「そうなの?()()探す気なのね」


「はい。俺はでも、ミンティンを呼ぶ前に精霊を呼び出して話をしたいです。最初のイーアンの話を聞いて、確信までないにしても、俺も気になっていたことが、現実なんじゃないかと思い始めていて」


「ん?あんたも気がついていたことなの?」


 ミレイオは時間を見て、少し早いけれど、昼食を食べながら聞かせてと頼んだ。

 シャンガマックは了解し、ミレイオは向かいの店に料理を注文に行った。今日は全員持ち帰りにして、ドルドレンの寝る部屋で、4人は店から買って戻った食事を広げて食べる。



「食べ終わったら、出かけます。とりあえず俺が先に行って。戻ったらまた、タンクラッドさんに」


 シャンガマックは最初から話す。自分が遺跡の絵を見て、山が昔近くにあり、そこから採掘していたのではないかと思ったこと。


 しかし、山自体は見当たらないし、丘ばかりで、丘には草しかないこと。村に入れば林もあるし、村から向こう南に向かえば木々も増える風景だが、遺跡の近くには何もない不自然さ。


「俺は思ったんですが。何かこう、山と呼ぶよりも、岩の丘みたいなものがあったのかと」


 それが、金属なり何かを採掘する場面に繋がるもので、取り尽して、今は消えた存在ではないか、と思ったシャンガマック。タンクラッドもミレイオも、ザッカリアも面白そうに聞いている。


「イーアンは、金属を吸い上げる植物の存在や、金属を含むと思われる魔物などの情報で、この土地に、金属を含む地質があると考えています。

 彼女が知りたかったのは、そのきっかけになる()()がどこにあるのか、でした。山がないかと思っていたが、見た目にない。それなら地下に空洞でもあるのか、そこに金属を含む水脈があるのかと思ったようです。

 それで、タンクラッドさんに『ミンティンで探してもらえ』と言ったのです」


「空洞を探すのね。ミンティンが昨日、魔物の根を見つけたみたいに」


「そうです。でも心配があって。閉ざされた空洞だと、危険な空気が発生して充満している可能性もあると言いました。それが怖いから、慎重に少しずつ動くようにと、イーアンは言いました。


 ここで俺も思いました。俺が想像した岩の丘は、まだあるんじゃないかって。

 それがただ、もう見向きもされずに風化に任せて、出入り口も土や草で閉ざされ、長い年月の間に岩の上にも草が生えたら見えないだけとか」


 それをイーアンに話したら、彼女はそれなら間違いなく遺跡と村の間だ、と答えた。


「彼女は、村の北側に多かった雑草と言うか、あの植物が示す鉱物は限られているだろうと言い、探すなら南じゃなくて、北の丘だと言ったんです。

 恐らくそこに、俺が想像している場所が埋もれているし、出入り口があるとして、完全に閉ざされていなければ、中の空気も流れているかもって。上手く行けば、遺跡の内容と同じことが起こるだろうとも」


 だからもう、これは自分が出かけて、ミンティンではなくて、精霊にまず聞いてみようと思うと、褐色の騎士は話を終えた。


「面白~い・・・何か、分からないけど勘が騒ぐ。私も一緒に行く」


 ミレイオは皆の顔を見渡してから『宝の匂いがする』と、にやつく。ザッカリアも行きたがったので、昼食が済み次第、シャンガマックと二人は出発することになった。タンクラッドも何となく、そんな感じがする。一緒に行きたいが、自分は二番手。でもイーアンも待機(?)だからと思えば我慢する。



 食事が終わり、親方に総長を預けた3人は、すぐに北側にある遺跡を目指して出かけた。


 龍で飛んで見に行った、昨日の魔物。北の魔物は岩が焦げたと分かる、黒変色していた。

 上空から『あれが、コルステインの雷』呟いたシャンガマック。ミレイオもお皿ちゃんで通り過ぎる時に『あんなの、あいつからすれば一瞬よ』と教える。ザッカリアは津波の時に見た、紫の雷を思い出して身震いした。


 それから遺跡をすぐに見つけ、村と遺跡までの距離を見てから草地がある方へ、3人は降りた。


「ここで精霊を呼びます。あの魔物の村側じゃない方・・・こっち側は、()()()()なんですね。草もあるし」


 魔物がいた場所から村側は枯れていたが、その逆側は草があるので、本当に狙ったんだと理解する。気持ちを入れ替えて、褐色の騎士は龍と二人に離れるように言い、精霊を呼ぶ言葉を唱え始めた。


 漆黒の瞳に水色と明るい炎の色が混じる。少しずつシャンガマックの髪の毛が浮き始め、黄金の飾りが輝きを増した時、彼の前に金色の光と共に、小さな竜巻が起きた。


 初めて見るミレイオは、ガン見。ザッカリアもちょっと怖がりながら、自分の龍に抱きつく。


『タガンダ・エウィガ・シャンガマックの息子。バニザット・ヤンガ・シャンガマック。その用を伝えよ』


『バニザット・ヤンガ・シャンガマックの声に応え、その姿を現し給う恩恵に感謝。精霊ナシャウニットに訊ねる。あの村を汚した力は魔物のものだが、元はそれより以前に、この土に齎された恵みであったか』


『耳を傾けよ、バニザット。お前の立つ場所こそ、求める場所。草を分け、石を退け、求めを見つけ、再び与えられた喜びを人々へ伝えよ』


 シャンガマックの顔が嬉しさに明るくなる。例を言おうとすると、精霊はもう一つ教えた。


『汚れた土は()()()()で清めよ。いかづちの内は、精霊の鍵ドーナルの手を、()()()()清めよ』


 精霊の助言は、言い終わるや否や、風に消え、その姿も風景に溶けて消えた。シャンガマックも戻り、自分を見ている二人に振り返ると、にっこり笑った。


「ミレイオ。ザッカリア。ここだと教えてもらった。探そう。そして、汚れた土の浄化も、コルステインとフォラヴで合っていたんだ」


 シャンガマックの言葉に、ワクワクするミレイオとザッカリア。笑顔丸出しで早速、周辺を調べに入った。



 彼らが出て行って、親方は昼寝で待つ午後(※することない)。昼寝して、そう経たない内に、扉が叩かれて目が覚めた。


 ドルドレンの部屋に戻ってきたフォラヴに、親方は彼らが場所探しに出ていることを話し、フォラヴは食事をしてくるように言った。『食べないとダメだぞ。お前も体力を使う』気遣う親方に、フォラヴは微笑んだ。


「有難うございます。でも、村の方が私に差し入れを下さって。それを頂戴しました。私が戻りましたのは、報告に来たのです。

 村の土の染み。毒はありますが、魔性が消えています。魔物を倒して下さったからか」


「そうか。それは良かった。じゃあ、もう。毒さえ抜けば侵食されないな」


 フォラヴは頷いて、自分の範囲でどこまで出来るかと、それだけを心配してこぼした。親方は彼を励まし『お前の力は凄いぞ』と誉めた。『人々の生きる糧を取り戻している』そう言って、白金の髪をナデナデ。


 ただ。確かに村は広いし、フォラヴだけでは大変だなと親方も思う。少し二人が黙っていると、廊下が賑やかになり、思ったとおり、あっさりミレイオたちが戻ってきた。



「ただいま。ねぇねぇ!・・・あら、フォラヴ!良かった、あんたに用があるのよ」


「吉報だぞ、フォラヴ。それと、タンクラッドさんに確認を願います。俺が見ても」


「凄いんだよ。キラキラなんだ!光が当たると、凄い綺麗なんだから!あれがあれば、もう大丈夫だよ」


 3人が部屋に入るなり、同時に喋るので、親方もフォラヴも驚いて黙らせる。『一緒に喋るな。まず何だって?フォラヴに吉報からだ。次がキラキラ(※宝に反応)で、次は俺の確認の意味だ』親方が彼らに座るように言うと、逆に腕を引っ張られて立たされた。


「何だ。落ち着け。急ぎなのか?」


「俺が話します。まずフォラヴに。俺は精霊に聞いた。この汚れた土を清める方法だ。

 お前の力を、水に加えるんだ。手を水に打って、土を清めろと教えてくれた。思うに、広い範囲はコルステインの雷で・・・あの、土を清めるのはいかづちとも、言われましたから。

 夜にコルステインに頼んでもらって。それでフォラヴ。コルステインの雷で出来ない範囲は、お前の力だ」


 シャンガマックは友達に話しながら、立ち上がったタンクラッドにもお願いし、最初の重要事項を伝えた。フォラヴはホッとしたように頷く。親方も、コルステインの出番だと分かって微笑んだ。


「それから。キラキラのことです。これはもう、見た方が早いです。ミレイオに案内してもらって下さい。俺はここに残ります。それで、()()()()()()()()もらって、村長に見せに行きましょう」


 褐色の騎士の言葉に、親方は眉を寄せる。もう、一つしか想像出来ない。でも本当にそんなことが・・・と思ったら、ミレイオに腕を引っ張られて『行くわよ、早く!袋持って行くわよ!(※やる気満々)』慌しく連れ出された。


 シャンガマックは笑って見送り、ザッカリアと一緒に、何があったのかをフォラヴに話した。妖精の騎士はとても驚いていたが、すぐに喜びの笑顔を湛え『良かった。本当に良かった』と頷いた。



 この後。フォラヴはシャンガマックに教えてもらったように、村の中の狭い範囲、人々が住む場所を集中的に癒すことにし、『手を水に打ち』の言葉を実行した。


 それは、桶に入れた水に手を浸し、彼の力を含んだ水を地面に振ると、浄化されていくことを示していた。フォラヴがそのようにすると、水の落ちた土の色は見る見るうちに変わり、痛んだ土は癒されて戻った。


 村の人はそれを見て『水を撒くなら、自分たちも手伝う』とフォラヴを手伝い始めた。フォラヴが手を浸して力を注いだ桶の水は、妖精の清めを受けて輝き、村人が汚れた土にかけるとその土を癒した。


「これなら。午後も、明日も頑張れば。村の中も変わるかも」


 皆さんが手伝ってくれて、早まる浄化を期待するフォラヴの顔に、疲れよりも喜びが満ちる。

 村の人たちは、フォラヴが2日間一人で、土を癒した姿に感謝して彼を休ませ、彼にただ、水に触れてもらうことだけをお願いし、水を運んでくれた。



 一方、親方&ミレイオ(※中年組)は、到着した遺跡近くの現場で、嬉々として採石に励む。


「凄いじゃないかっ!こんなの、よく放置しておけたもんだ!これだけあれば、何年でも旅出来るぞ」


「バカ言わないでよ!旅なんてさっさと終わらせて、楽しい老後を悠々自適に過ごすのよっ(※50越えると老後を意識する)」


「お前のじゃないぞ、村人のだ。盗人じゃないんだから」


「あんただって、今!『これだけあれば』とか言ってたじゃないのさっ!何よ、その袋っ、それ自分の分でしょ!」


「当たり前だろう、労働代金だぞ。退治頼まれたんだから、こういうところから貰っとくもんだ(?)」


「私のこと言えないじゃないの。あー、イーアンがいたらなぁ!絶対喜んだのに~」


「そうか。あいつが言っていたとおりだぞ。こうしたことがあるとしたら、地震で出来たんじゃないかって。教えてやろう。それだけでも喜ぶ」


 二人は言い合いしながらも、元気に鶴嘴(つるはし)を振るって、ガッチンガッチン、鉱物を掘り出す。母岩の少ないオイシイ部分をせっせと選んでお持ち帰り用に、そこそこ良さそうな部分を村用に(※順序が逆)と頑張って分ける。


「私らがこんくらい貰ったってさ。ここぜーんぶ、そうだもんね。こんな量があれば、村なんか一発で復活するわよ!」


 ミレイオが満面の笑みを向けた場所。親方もハハハと笑って、目を向けたその場所。


 そこは、なだらかな草原の丘に開いた、扉なき入り口から続く、金鉱。

 地下に降りる古い階段と、その先に木材で穴を支えた通路があり、そこを抜けた後に出た大空洞は、一度は消え去った恵みを、再び露出させて来客を待っていた。地下に流れる水の中にも、光を当てれば煌くものが見える。


「これ。栽培種が育つまでは、村を支えるわね」


 明るいミレイオの声が、大きいな空洞に響いた。

 二人は、4つの袋に採石した石を詰めると、重さに喜びながら、村へ戻った。そして2つは馬車に(※オイシイやつ)もう2つは、村長のいる役場へ運び、これからの話を膨らませた。



 あれこれ忙しい午後も終わり、夕食と風呂が済んだ後。親方はもう一仕事。


 予め村長に、今夜雷が落ちる予告をしておいた、その様に・・・・・

 コルステインに頼んで、村を囲む土に紫電を落とし続けた。それは遠くから見て、村を守る雷の垂れ幕のようだったと、後日、人の話題に上る光景だった。



 こうして3日目の仕事を終えた夜。


 眠る前。ドルドレンの頭の中に入ったコルステインは、暫くしてから、ぱっとベッドを離れ、親方に笑顔を向けた。

 それと同時に、『コルステイン!』と響いた声。暗い部屋の光に、灰色の瞳が煌いた。

お読み頂き有難うございます。

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