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魔物資源活用機構  作者: Ichen
旅路 ~テイワグナ入国
798/2953

798. インガル地区 警護団地方行動部にて

 

 午後の雨は降り続く。街道を進み、どこへ向かうのか。地図を確認したくても、地図が濡れてはインクも滲む。仕方ないまま、道順だけは記憶に残すドルドレン。


 幸い、たいして細かい道はないまま進んでいるので、街道の方向と、分かれ道、大きい辻の幾つかを忘れないようにするだけだった。



 御者の席に座りながら、腰袋の中に手を入れる。イーアンの珠を見つけて応答を願った。イーアンはすぐに出た。


『イーアン。無事か。馬車にいるんだな』


『はい。オーリンが隠して下さいました。それで荷物の奥にいます』


『良かった。聞こえていたか分からないが、これから警護団だ。そのまま隠れていられるか?その、お腹の調子とか』


『ドルドレンたら。お腹はどうにかなります。私、緊張すると一日我慢するので』


『それはいけない。早く言いなさい』


『今、そこじゃありませんでしょう。先ほど、ミレイオにも連絡をしました。一応状況をお伝えして、ミレイオもまだ動けそうにないと分かりましたので、また夜にでも連絡すると話しました』


『そうか。警護団へ向かっているが。どうなるやらだ。頭の悪そうなヤツらだから』


『どうにもなりませんようなら、私が出ます。タムズも呼びます。片付けますからね』


『うう。君は何て頼もしいんだ。すまないね。タムズ・・・こんなことで呼び出すのも嫌だが』


『ビルガメスだと、止める間もなく龍の愛でちょいちょい消されますから、それを思えばタムズ』


『恐ろしいな。そうだ、タンクラッドは?どうしたのだ』


『タンクラッドはベッドの下にいます。隠れたそうで、探されることもなかったようです』


 先にフォラヴとザッカリアを見つけたからか、部屋の数と人数を見比べて疑わなかったのかも、とイーアンは想像出来る理由を伝えた。ドルドレンも一安心。


 気をつけるようにとイーアンに言われ、ドルドレンは礼を言い、イーアンも見つからないでと案じた。馬車の中に愛妻がいると確認出来ただけでも充分。タンクラッドも難なく逃れたと分かった。


 とにかく、アホな警護団が知らない仲間は、ミレイオも合わせれば3人残っている。3人とも強力だ。彼らがいてくれる分には、万が一があっても大丈夫だろうと安心した。


 夕方は近付き、曖昧な明度が少しずつ目を晦ませるように暗がりへ導く中。

 ドルドレンとシャンガマックが御者を務める旅の馬車は、街道沿いにぽつんと見えてきた、形ばかりは立派な施設へ向かった。



 到着したのは夕暮れ。街道沿いの施設は、あの言い争った地点から20㎞未満くらい。空はどんよりと暗く、すっきりした夜空の濃さではない、淀んだ濁りのある夕暮れが辺りを包んでいた。


 馬車を付けるように促された場所に入れ、2台の馬車は敷地に停車する。黒い馬車から降りた男5人は、ドルドレンを含む仲間5人を呼び、施設の中へ連れる。

 施設の前には、テイワグナ公用語で名称が書かれた札があり、『インガル地区 警護団地方行動部』とあった。シャンガマックはそれを見て、地名だけは覚えておこうと思った。



 馬車の中で待つイーアン。オーリンが移動中に教えてくれた、情報をお浚い。


 ざっと大まかにまとめると『ブサイクな男2人と(※オーリンを捕まえた二人のこと)普通の顔の浅黒い男2人。一人だけ男らしい感じ。年齢層は20代が2人、40代50代が3人。背は平均で低め。頭髪の薄いのが3人』だった。


「あまり当てになりませんよ。警護団の建物の中に入っては、似た様な人が多そうです。彼らを探して選んでから、攻撃するのは難しい」


 オーリン情報に、イーアンは悩む。何かあれば、伴侶から連絡が来るだろう。そうしたら、その人たちを先に『こら(※ビルガメス流注意法)』と戒める・・・のか。私は。

 そう思うと、どうなのそれ、と思う部分。助けるならいざ知らず。『こら』は、さほど意味もないような・・・・・ 


 オーリンは、新しく恋しちゃった彼女の影響でもあるのか。馬車を降りる前、緊急事態の真面目な顔で、イーアンに『俺が戻るまで絶対に出るなよ。君は無事で』とか何とか言っていた(※男らしさアピール)。

 一応、うんと頷いたが、イーアンが思うに、きっと自分の方が強い気がする(※オーリン龍の民<イーアン女龍)。


「龍気を貸して頂けましたらね。私がお守りしますのにね(※正解)」


 うんうん頷きながら、イーアンは自分が守ってあげなきゃと思っていた。もう一台の馬車に残っている親方にも連絡してみると、親方は『床が痛い』と弱音を吐いていた。


『イーアン。来てくれ。俺とお前しかいないんだ』


『一緒にいた方が良いと私も思うのですけれど。誰かに見られたら、やれ下りろだ、身元が何だと、余計にこじれます』


『お前と一緒にいたい』


『不安ですか。この暗さですと、コルステインが来てくれそうですが』


『今、あいつが来たら。俺の体はもう限界だぞ。もう今夜は体が持たない』


 すごい語弊がありそうな言葉だが、笑ってはいけないのでイーアンは大人しく頷く。そして、『オーリンがどうにかベッドを間に合わせるかも』と励ましのメッセージを送っておいた。



 馬車でそんなおチャラけた交信をしている間に。


 施設に入ったドルドレンたち5人は、雨に濡れた服を着た状態で、イライライライラ・・・・手続きだか、何だかが面倒臭い。


 テイワグナはどうも遅れていると理解する。仕事の流れなんて決まっていそうなのに、皆が話していることがちぐはぐ。

 そして地方はどこもそうなのだろうが、仕事が適当過ぎるくせに、どうでも良い場面で手際が悪くもたついて、困ることに、それが重視する対象に絡むことだったりする。

 ドルドレンたちは、冷える体と、仕事の出来ない彼らの様子の両方に苛立った。



 手際の悪い事務の人間とやり取りした、流れのちぐはぐな警護団の5人。

 幾枚かの紙を事務の者から受け取ると、連行した旅人を聴取室へ案内した。自分たちを見下すような目つきの旅人5人。並ぶ椅子に座らせて、ようやく事情聴取開始。だったのが。


「他の連中も呼べ。ここの責任者もだ。そしてハイザンジェルから()()()()()()の書類も併せて用意しろ。お前らだけでどうにかなる内容ではない」


 座ったと同時に、総長と名乗った、黒髪に白い毛がどさっと混じる、灰色の目の男が椅子に仰け反って命令した。

 そんな命令聞けるか!と、警護団側が怒ってみれば、総長は怒りを含んだ目を向けて『お前が何をしているか、誰もが知るだろう』と言う。


「状況が自分に都合良く、ひっくり返ると思うなよ」


 総長は警護団の男を完全に見下して、そう言った。


『自称・貴族の親戚、騎士修道会総長、国王の許可付き団体』に悩む警護団。

 今日はもう、この支部の責任者はいないものの(※帰宅しちゃった)留守を預かる役職の人物を呼び、証拠だ何だの確認を先に行う。『さっきの、王から預かった物品を回収する』出せと命じると、総長は睨んだ。


「触れると思うな。これに触れる人間は各国の王族だけだ」


「そうはいかない。確認が要るんだ」


「印章を捺してやる。それだけでも有難いと思え。捺した印章は俺の名を書き込むから、悪用はさせない」


 警護団の予定・・・『怪しい旅の一団・不法入国者の取締り調査』。その予定が、『ふんぞり返った高位貴族の親戚として振舞う旅人の身元調査』と変化しつつある現状。


 呼ばれて聴取室に入ってきた、夜勤を預かる上司は、何か雰囲気のおかしい事情を聞きながら、こんな厄介な旅人を連行した部下を睨んだ。


 紙に捺された印章は、確認するまでもなく、ハイザンジェル王国から回る通達と同じもの。上司は降って湧いた災難に、どうしてくれるんだとばかりに、()()()()()部下を『ただの旅人かもしれないのに、どこに不審の確証があったんだ』と責めると、部屋から彼を連れて一旦廊下へ出た(※責任転嫁会議)。


 ドルドレンたちは待つ。濡れた衣服が体温を奪う。耐えられる大人と違い、ザッカリアが震えるのを見て不安が募る。


「ザッカリア。もう少しの辛抱だ。責任を取らせるからな。お前が病気になることはない」


 横に座ってガタガタと身を震わせる子供に、ドルドレンはそう言って、彼の肩を抱き寄せた。ザッカリアは背は伸びたものの、まだ筋肉も薄く、贅肉なんて付きやしない細身の子供。

 濡れた髪の毛をドルドレンが手で拭ってやり、子供の震える口元を気の毒そうに見る。『何か温かい飲み物をもらおう』体も冷えていれば、髪も冷たい子供。風邪を引かせるわけにいかない。



 ドルドレンが心配していると、警護団の上司がすぐに戻ってきて『一番近くの貴族荘園に身元保証確認をする』と困ったように伝え、それがキンキート家の一族ということだった。


「連れてきたからには、こちらも曖昧に終わらせられない。身元の保証だけは済ませるが」


「それにどれくらいの時間を使うんだ。この子供は雨の中で引っ張り出されて、体が冷えている。温かい飲み物くらい用意しろ」


「え?ああ、それは。分かった。それはすぐに用意する。だがこの時間から、キンキート家に確認を申し出るから、全員今夜はここに泊まってもらう。早ければ明日の朝」


「何だって?言いがかりで連れて来て、こちらはずぶ濡れで、予定も狂わされた挙句に、お前たちの都合で泊まらせる気か?ふざけるな!」


 怒りが爆発したドルドレンは怒鳴り、椅子を倒して立ち上がる。

 背の高い黒髪の男の気迫に、警護団の上司と部下たちは慌て、剣を抜いた。『座れ!暴力と見做す』座らないと拘束すると、言い返す。


 その言葉に穏やかなフォラヴが怒った。『あなたたちは何て一方的なのですか。いい加減になさい』普段は怒らない妖精の騎士も、ザッカリアの様子が気掛かりなのもあって、大声を出した。


「お前も座れ!立つと、こちらの防衛として拘束」


「好き放題に都合いいことばっか言ってんじゃねぇ」


 オーリンも険しい表情で怒鳴った。『さっきから聞いてりゃ、何なんだ。お前たちの方が犯罪者だろ!』オーリンは立ち上がって机を叩く。その行為に驚いた警護団は、脅すつもりで一人が剣を振り上げる。それを見て、シャンガマックがすぐに剣を抜いた。


「俺が相手をしてやる。お前たちに剣は似合わない」


 漆黒の瞳が怒りを含んで、一方的な相手を睨んだ。シャンガマックも背が高く、雰囲気が厳しいので、警護団の男は、大きな骨のような剣を手にした彼を恐れた。


「キンキート家に確認を取るまでもない態度だ。お前たちのような貴族なんているわけない」


 恐れと一緒に口にした正当化の言葉。それを聞いたドルドレンの、銀色に光った瞳にメラッと憤怒が燃え上がった。



「目に物見せてくれる」


 ドルドレンは笛を掴んだ。並んでいたオーリンと騎士たちはハッとして、その笛の意味を過ぎらせる。一つしかない。『俺たちが誰の加護にいるのか。本物の加護を見せてやる』低い唸り声のように、空間を凍りつかせる総長の声。


 オーリンも笛を出した。シャンガマックも、フォラヴも。震えているザッカリアも笛を取り出し、震える唇に当てて笛を吹いた。


 次々に笛を吹き、その奇妙な音が鳴り響く。『やめろ、何をしているんだ』『誰に合図している』口々に騒いだ警護団が、剣を突きつけた途端。


 暗い雨の夜空が明るく光った。窓の外から、室内よりも明るい光が差し込む。驚いた警護団は一斉に窓を見た。

 明るい窓の外に何かが降りてくる影が映った。そして同時くらいで、玄関の方向から叫び声が上がるのを聞く。慌てて警護団の上司が扉を開けて廊下を見ると、叫び声は恐怖の声と知る。


「何だ?何をした」


 上司は扉を開けたまま、廊下と室内の旅人たちを急いで交互に見た。旅人が答える前に、廊下のすぐそこで『来るな』と怯えた抵抗の声と、『わぁ』の悲痛な声が重なった。上司は焦って暗い廊下を見る。


 彼が振り返った時、廊下は暗さを失い、白い光を放つ人間の姿の影がそこにあった。


「だ。誰だ?何だ」



 近付く白い光の人間は、両腕が以上に長く、背中に翼があり、頭に白い小さな角を生やしていた。


「どうもあなた方が失礼だと。そうした理解で合っていますか?」


 近づいて来たのは背の低い女のような、異形の生き物(※気の毒な言われよう)。上司は震えながら剣を抜く。女は5mほど離れた場所に立ち止まると、困ったような顔をして『それ。使えませんでしょう』と呟いた。


「何だと」


 上司が早くなる息に呑まれそうになるほど怯えて、質問を返すと、女の手がひゅうっと伸び、自分の剣を切り落とした。目を丸くして切られて床に落ちた剣を見つめる上司。


「だ。だ。誰。誰なん。お前、何。何なんだ」


「こういう時。分かりやすい方が良いと、経験上思うのですけれど。そうしますとね」


 女はどうでも良さそうに言うと、突然長い鎌のような腕を横に振って、壁を切り裂いた。上司は腰が抜ける。ひっと引き攣る声を上げ、そのまま床に背中から倒れた。


 女の腕に引き裂かれた、まるで布のように切れた壁は崩れ、崩れた壁の外から、ぬっと雨に濡れた大きな影が現れた。


 それらは見たことのない生き物で、首が長く、白い柔らかな光に包まれ、角が幾つもある、まるで『龍』上司の男は呟きを落とすと、女に視線を移す。

 既に部下も扉の近くでその状況を見ていて、全員が恐れに意識を掴まれ、言葉が何も出てこない。


「そうです。龍です。私たちは龍。私の愛する皆さんを返して下さい。彼らは、私たち龍と共にテイワグナを助けに来たのに」


 女はそう言うと、一頭の龍に腕を伸ばした。濡れた頭をゆっくり差し出した、すっきりした角の龍は、女の伸ばした腕に頭を寄せる。壁の向こうに見える翼は大きく長く、雨と白い光に輝いていた。


「これ以上。彼らに失礼を働くと、もう許すことは出来ません。テイワグナを助けますが、あなた方は罰を受けることになります」


「ば、罰。罰とは」


「お仕置きと尊さの両方です。あなたが何歳か知りませんが・・・あなたへの罰を以って、テイワグナの国民に知らしめるため、あなたを尊い犠牲とします」



 室内で聞いている、ドルドレンたち5人。押さえたくても、顔に嬉しい笑みが上がるのを止められない。


 ――うへ~ イーアン、カッコイイ~!!俺の奥さん、最高だよ~~~っ!!もっと言って~~~


 ドルドレンはニヤニヤ、ニヤニヤ。シャンガマックもフォラヴも笑う顔を見合わせて首を振る。オーリンも苦笑い(※自分龍の民だから)。ザッカリアは震えながらも、助けに来てくれたイーアンの登場に、嬉しくて感じ入っていた。



「犠牲。それは、私の命を」


「どう捉えて頂くかは知りません。でもそこにいる部下の方たちも、同じように犠牲決定。私もあまりそうしたことはしたくありませんが、これ、仕方ありません。ここ大事」


「助けて。助けてくれないのか?あ、彼らを放せば」


「そう。放して下さい。そしてもう、愚かに彼らを困らせないで下さい。あなた方の体裁は、ご自身でどうにかお繕い下さい。

 私が壁を壊したのはすみませんけれど、ここにいるのは龍なので(※立ち位置重視)こうしませんと、ご覧頂けませんでした。

 はい。では以上。答えて下さい。彼らを解放して、今後も迷惑をかけないと誓うか。犠牲になってでも、ご自身の意地を貫くか」


「しかし、キンキート」


「それは答えではありませんね。ショレイヤ」


 名前を呼ばれた龍は首を彼らに向けて、大声で吼えた。上司はその場にひっくり返り、部下は我先に走って逃げた。


 逃げた部下の5人の前に、イーアンは飛んで回り込む。暗い廊下に煌々と白く輝く爪を差し出し『逃げるなんて』と無表情に首を振る。


「やめてくれ。やめろ、ダメだ。頼むから。部下を殺さないでくれ。放す、彼らを放す。手を出さない」


「ふむ。そうですか。では誓いなさい。

 テイワグナの警護団全てに、この話をきちんと伝えて『ハイザンジェル国王の命を受け、魔物退治に来た騎士修道会総長の率いる旅人の動向を、今後決して遮らない』と約束させなさい」


「そんな。それは私の一存では」


「では。知らしめるだけです。あなた方の犠牲を以ってして、龍の加護を受けた彼らを侮辱したらどうなるのかを、私が今」


 やめてくれ。


 白い爪を振り上げた女の、石の仮面のような恐ろしさに上司は屈した。やめてくれ、と何度か口にして、抜けた腰はそのままに、腕を伸ばして女を止めた。


「約束する。どうにかする。望みどおりになるか分からないが、努力する」


「努力。そういう曖昧な言葉で約束するのは宜しくありません。実行しなさい。実行されていないと分かった時、約束を破ったと見做します」


 大きく長く、疲れた息を吐き出し、上司は震える声で何度も頷き『分かった。約束する』と女の顔を見た。


「龍の女が。まさか現れるとは。こんな恐ろしい存在とは」


「ご自分たちを棚に上げて。でもまぁ、お好きなようにどうぞ。無闇に恐れるのは賢いと思えませんけれど」



 そう言うと、『約束しましたからね。守って下さい』女は確認のように繰り返し、てくてく歩いて開け放した扉の前に立った。

 部屋の中を覗きこんで『ドルドレン』と微笑むと、笑顔の5人と目が合って、イーアンも笑って頷く。


「終わりましたよ。さぁ帰りましょう。どこかでお風呂に入らねば」


「イーアン・・・・・ 」


 嬉しいドルドレン。走り寄って、愛妻を抱きしめる。オーリンたちも出てきて、震えるザッカリアにイーアンは上着を掛けてやった。『中で着替えましょう。それまでこれを着て』グィードの皮をかけると『温かい』と子供は疲れた顔にホッとした笑顔を浮かべた。イーアンも頷く。



「行きましょう。ほら、ショレイヤたちも来て下さっています。空に帰す前にお礼を言いましょう」


 廊下に座り倒れた警護団を跨いで。イーアンを先頭に、ドルドレンたち5人は廊下に出て、自分たちの龍の頭を撫で、頬ずりし、感謝して空へ帰した。


 ドルドレンは一度だけ警護団を振り返り、何も言わずに施設を出て行った。

 オーリンは、へたり込んだ警護団をちょっと見てから『龍をバカにすると。次はホントに死ぬぜ』と丁寧に教えてあげてから、先を行く仲間の後を追いかけて出た。

お読み頂き有難うございます。

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