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魔物資源活用機構  作者: Ichen
変化の風
752/2955

752. イヌァエル・テレンで休息・質問

 

 お陰さまでイヌァエル・テレンのイーアン。


 空に入ると、最近は如実に、自分が癒されていると感じるようになった。そして、もう一つ癒しが欲しい。

 おじいちゃんの後を付いて飛び、おじいちゃんの家に着いて、ミンティンを降りてから相談した。


「ファドゥを呼びたいです」


「何で」


 何だそれは、と、振り返りざまに目が据わるビルガメス。イーアンは龍の子がお風呂に入っているのか、それが知りたかった。ビルガメスに言ったところで『風呂って何だ』と終わる気がして、ファドゥ頼りの一言。


「私の習慣ですが、ファドゥに質問なのです」


 面白くなさそうなおじいちゃんは、とりあえず家に入る前で、ファドゥを呼び出す(※優しい)。ちょっと待つとすぐ、銀色の男龍が来て笑顔でイーアンを抱き寄せた。ムスッとするおじいちゃん。


「また外へ行ってしまったから。体はどうしたかと」


「行っただけで何もしていません。有難う。呼び出してごめんなさい。ファドゥに質問がありまして、それで伺いたいのです。龍の子はお風呂に入りますか」


「うん?ふろ。えー・・・それは。ふむ、水で体を・・・というと、水浴び?水浴びならする」


 近い!近いが、水は嫌だ(※温水願う)! 

 うぬぅ。散々海でびしょ濡れ、霧でもびしょ濡れ、気持ち悪いので、どうにか風呂に入りたいイーアン。水が温かいと嬉しいのだけれどと呟いてみる。


「ふむ。そんなに冷たくはないよ。水浴びをするのか。龍の子の水浴び場がある。連れて行ってあげよう」


 冷たくない=水温30度は超えているのであろうか。ここは賭けだと思い、イーアンはおじいちゃんに軽く挨拶。


『体を洗います。洗ったら戻ります』そう言うと、ビルガメスは一緒に行くと言い始めたが、ファドゥはビルガメスを丁寧に止め(※自分が一緒だから大丈夫、と)イーアンを片腕に抱えて、さっさと龍の子の住まいへ飛んだ。



 飛びながら笑うファドゥ。『ビルガメスはいつもイーアンを独り占め』と。イーアンも笑って『彼は私を可愛がって下さいます』そう思う、と答える。


「それにしても独り占めの時間が長い。子供もすぐに生まれたし、嬉しくて仕方ないのだね」


 でもそれを言ったら。イーアンはちょっとそう思って、ファドゥを見る。彼も同じように思ったらしくて、ちらっと見てまたクスッと笑った。『そうだね。私たちも嬉しいよ。それでもビルガメスが一番だ』と続けた。


 二人で笑って話しながら、龍の子の住まいに降り、ファドゥに案内されるまま建物の外を歩き、少し離れた場所にある別塔の扉をくぐった。イーアンびっくり。目を丸くして、目の前の光景に釘付け。


「水浴び場だよ。ここで良ければ」


 龍の子の、男女が関係なく。素っ裸で。広ーいプールのような場所にちゃぷちゃぷ・・・・・ 

 えええ~~~!!!混浴ーーーっ!! 皆さん、イケメン&イケジョなのに!! 気にしなさ過ぎだよ~~~


 そして彼らの肉体美は凄まじい。これ、これ。これって。私、凄く入りにくい。いや、入ってはいけない気がする・・・(※自信0ボディ)。


 固まるイーアンに、ファドゥは心配そうにそっと『イーアン。入っても良いんだよ』と後押しする。

 銀色のファドゥがいるだけで、龍の子の視線は集まっている中。横にいる、ちっこいおばちゃんの自分が、ここで素っ裸で参加・・・・・ うへ~~~ 罰ゲーム~~~ イヤですムリ~~~


 ここはナシと、肩を落としたイーアン。ファドゥにお礼を言い、どこか。川でも良いから、人のいない場所で(※必須条件)水浴び出来ないだろうかと再度相談する。



 ファドゥは、イーアンが水浴び場を気に入らなかったことに少し悲しい。でも、イーアンのお風呂への意志は続いている(※そんな大袈裟でもない)と思えば、どうにか協力してあげようと思った。


 川なんて、とは思うが。あれは本当に龍が(←小型の龍)水浴びするような場所だが・・・そうした場所しか知らないと伝えると、『そこで構わない』と言われた(※イーアン的には、相手が人型じゃなきゃ良い)。


 仕方なし。イーアンを連れて、龍の水浴びをよく見る川へ連れて行く。


 龍の子の住まいから少し離れた川原で、側へ行くと、2頭の翼龍が川にジャブジャブ入っている姿が見えた。

 イーアンは安心する。万が一、流されても龍が助けてくれるだろうし、ここなら脱げる。服も洗える。


 有難く、ファドゥにお礼を言い、自分は入るから、ここまでで充分と伝えた。しかしファドゥは『何かあったら困る』と言い張り、帰らなかった。


 イーアンは彼に『自分が入っている間は見てはいけない』とよくよく注意し(※ペタンコ過ぎて何言われるか分からない)彼が『そうする』と言ってくれたので了解した。少し歩いてファドゥから距離を取り、そこで剣帯や腰袋のベルトを外し、服を着たまま川に入った。



 川の中で、服を少しずつ脱ぎ、洗っては川原に投げる。首に掛けたアオファの冠だけになり、イーアンはようやく、川にザブッと潜って頭を洗った。

 川の温度は思ったよりも温かで、光もある時間なので気持ち良かった。疲れ切っていた体は、どんどん回復してゆく。こんな水浴びなら、しょっちゅう平気かもとも思えた。


 体や顔をよく見て、イーアンはようやく気が付く。怪我をしていないことに。魔物に沢山当たったと思うが、なぜか怪我も痣もなかった。不思議だったが、今は深く考えず、感謝して水浴びに没頭する。


 2頭の龍がこっちを見ているので、イーアンは微笑んで、おいでおいでをする。オレンジ色の龍が側へ来て、イーアンの背中に鼻を擦り付ける。笑うイーアンは、龍を撫でて顔を抱き締めた。

 すると、もう一頭の淡い紫色の龍も来て、イーアンの背中に同じように顔を当てた。振り返って、その龍の顔も抱き締め『気持ちが良いですね』と。温泉気分のご挨拶をする。


 2頭の龍とイーアンは川で遊ぶ。首に掛けた冠だけの、自由な素っ裸状態で、龍を洗ってやっては、洗われて(※口に入れた水をぶしゅーってかけられる)笑いながら龍との時間を楽しんだ。



 ファドゥ。離れた岸で待っていたが、笑い声がし始めてちらっと見た(※約束はしてないから)。そして、じーっと見つめる。


 小さな角の生えた女龍が、水浴びをしながら龍と遊ぶ光景。筋肉の付いた体は、細くてすっきりしていて(←これをペタンコという)『綺麗だ』呟くファドゥは、イーアンがどうしていつも服を着るのか、ちっとも分からなかった。

 男の姿と女の姿を超える形は、男女の別をなくした融合と捉える男龍たちの感覚。服なんて要らないのにと、銀色の男龍は顎に手を当てて眺める。



 見られているとも知らず(※ファドゥの場所まで遠いから)。イーアンは暫く龍と遊んだ後、はーっ、と満喫した息を吐いて、川を上がった。体が濡れているので、先に投げた服を絞って体を拭き、髪を拭いて、また服を絞った。


 それから、丈の長い龍の皮の上着だけを羽織り、前を重ねてベルトを締めて、他の衣服は腕に抱えた。ファドゥを探すと、離れた所に座っていたので、側へ行き待たせたことをお詫びし、一緒にビルガメスの家に戻った。


 ファドゥは戻る間ずっと。『イーアンは服を着ない方が良い』と伝えたかった。でもどう言い出そうかと考えると、言えないままに時間は過ぎた。



 ビルガメスの家に着いてすぐ、日当たりの良い石の床に、イーアンは洗った服を並べて乾かす(※よそ様んち)。

 そんなイーアンを見つめながら、ファドゥは、横に来たビルガメスの物言いたそうな顔を見上げた。


「(ビ)水浴びが長かったな」


「(ファ)川で。水浴びをしてきた」


「(ビ)お前は見たのか」


「(ファ)何を?龍が先にいて、2頭の龍とイーアンは水浴びを」


「(ビ)服。脱いだだろう。見たのか」


 見たとは言えないファドゥ。『離れた場所にいたから』と濁した。視力はめちゃめちゃ良いけれど、離れた場所にいたのは事実。ビルガメスはその答えに、不服そうな溜め息をついた。


「ファドゥ。お前はイーアンに額にも口付けされるし、水浴びも一緒に行くとは」


 そんなことで怒られてもと、ファドゥは笑いそうになったが、そこは黙った。

 ビルガメスの方が、ずっと彼女を独り占めをしている時間が長いのに。それでも少しだけ、これは優越感に浸れるのかと思い、静かに頷いて『そうだね』と答えておいた。ビルガメスは首を振っただけで、それ以上は言わなかった。


 服を並べ終えたイーアンは、自分も日当たりの良い、石の床の上にちょっと横になる。日向ぼっこをしながら。あっさりと転寝に入った。


 ファドゥは側へ寄り、眠ったイーアンの頭を、ちょっと撫でてから帰った。ビルガメスは、赤ちゃんを預けていたので、赤ちゃんを引き取りに行った(←だから龍の子の家に同行しようとしたのに却下された)。



 日向でイーアンは熟睡。爆睡。集中的に眠った。


 戻って説明、この朝。津波が終わった後から記憶が飛んでいたイーアンは、イヌァエル・テレンで目が覚め、どうしたかと慌てたところを、タムズとビルガメスに『龍気の使い過ぎ』と注意を受けた(※頑張ったのに)。


 力の入らない体で聞くしか出来ないイーアンに、おじいちゃんは『萎びるぞ』『しぼむかも』『年を取るのが早いかも』と脅し、イーアンはむくれた。


 じゃーどうすりゃ良かったんですかー 頭の中でぶーたれても、恐怖『しぼむ』の言葉に不安で一杯だったので、おじいちゃんには言い返せないとも分かっている。でも頑張ったのにとも思うと、むくれるのみ。


 そんなイーアンに、ビルガメスはでこちゅー(※ぶちゅーって)をかまして機嫌を取り(※実際はイーアンがやめてほしくて言うことを聞いただけ)いつも通りに『お前は笑わないと』と無理を言いつけ、笑え笑えと迫った(※笑えば済むと思ってる)。


 已む無し。強張る笑顔で応じ、おじいちゃんの無理に付き合うと、おじいちゃんは満足そうに頷いて『じゃ、俺とお前で行くか』とまた、何やら言い始めた。


 地上に行くのかと訊ねると、タムズが『ドルドレンたちに呼ばれたら行く』と伝えたらしいことを知り、おじいちゃんはタムズではなく、自分が行っても良いと(※好き勝手)思ったようだった。


 タムズはドルドレンに話した手前、『自分が』と困ったように抵抗したが、呆気なく敗退する。


 ビルガメスは赤ちゃんを預け、イーアンと一緒にちょっと出かけると決定した(※おじいちゃん男龍最強のため)。タムズは『彼女はまだ休ませないといけない』とも粘ったけれど、ビルガメス曰く『連れて戻ってくるから』で問答は終了。


 そんなことでイーアンは、ビルガメスとミンティンと一緒に地上へ向かった。


 到着した状況はよく分からなかったが、あの数分で察したものは、ザッカリアと同じような子供たちが危機に直面したらしかったこと、その危機は伴侶たちが解決したこと。そして、誰かの反対を受けていそうな只中、とそのくらいだった。


 子供たちの様子に、ビルガメスが何か気がついて、処分決行した後。

 神殿の子供たちを帰す話を、龍の背で伴侶から聞いた。その場ではイーアンは、続いた出来事への労いを伝えたが、詳しくはまた後でと伴侶にお願いした。


 こうしてイーアンは、子供たちを送り届けた後にイヌァエル・テレンに戻り『次は風呂』となったのだった。



 ビルガメスの家の床でがっちり眠ったイーアンは。

 先に回復する時間も作れたからか、少ない睡眠時間で目が覚めた。


 起きてから、帰るまでにまだ時間がありそうだったので、イーアンは赤ちゃんと遊ぶビルガメスと、少し話をした。

 もしかしたら知っているかもと思うことと、ビルガメス自身に質問の二通り。


 どうしてビルガメスは、タムズの代わりに自分を連れて降りたのか。地上で長時間を龍で過ごせたのか。

 グィードは龍なのに、水に影響していない様子はなぜか。振動もサブパメントゥに与えなかった理由。

 津波を起こした魔物は、なぜ宝を持っていたのか。向こうに見えた大陸は。

 それと、『別の次元』の行き先について。あの人たちは死んだのか。命があるのか。


 おじいちゃんは、この前よりも更に大きくなった赤ちゃんをイーアンに回し、イーアンはビルガメ・ベイベに倒されながら、起き上がっては真面目に話を聞く。

 ベッドに寝そべる男龍は、赤ちゃんがイーアンを窒息させそうになると(※マウント・ポジション他)引っ張って戻し、それを繰り返しながら答えた。



「最初の質問の答えだ。タムズの代わりに動いたのは、行きたかったからだ」


 うぬぅ。さすがおじいちゃん。ワガママ絶好調。そんな理由だったのかと知り、イーアンは頷いた。ビルガメスは彼女の反応を見てから、次の答えへ進む。


「あれだけ長い時間を過ごせるとはな。自分でも面白かったぞ。あれはグィードだ。グィードが龍気を出していたから、長く龍に変われそうだと分かっていた」


 この答えは少々、驚きだった。知っていたから、降りたがったのか。

 イーアンは『龍気もない地上でなぜ』と思っていたが、そこも逆に突っ込まれた。


「お前。分かってなかったんだな。質問した時点で、お前がグィードの龍気を、理解していないことが分かる。

 お前がグィードをサブパメントゥから出して、その後もずっと龍気を出し続けていられたのも。ドルドレンの龍たちが動けた時間が長かったのも。グィードが龍気を出していたからだぞ。

 それにしてもお前たちは使い過ぎたな。空の容器に龍気が流れ込んでも、体に保つことより使ってしまう方へ回されるから」


「え。では。今後も、ビルガメスや男龍はあんなふうに」


「お前はいつまで分からないんだか。困ったヤツだ。グィードが龍気を出したからだ、と言っただろう。

 ただ海にいるだけでは、中間の地の龍気は変わらん。津波を止めるために龍気を発散したから、グィードの影響する範囲は龍気が満ちた。そういう意味だ」


 全く、と眉を寄せられ、イーアンは赤ちゃんの影に隠れた。そうなんだ。言われてみれば、と思い出した。グィードと初めに話した時、グィードの呼応があったのだ。

 え、でも。あれだけデカイなら、私だって龍気くらい分かると思うのに。何でだろう・・・・・


 おじいちゃんはイーアンの角を摘まんで、自分の方に顔を向かせる。


「お前は鈍い。どうも鈍いな。グィードが大き過ぎるのもあるのかも知れないが。もしくは。あまり可能性があると思えないが・・・お前もサブパメントゥの者と似た部分でもあるのだろうか。

 グィードが龍気を出しても、コルステインたちの力を遮らなかったのは、グィード(あれ)だけが、彼らと共存出来る存在だからだ。お前も馴染んで・・・いや。しかしなぁ。考えにくい。女龍のくせに」


 女龍のくせに、と言われたイーアン。鈍い鈍いとも言われ、何も返せず(※自覚あり)。理由は分からないけど、とりあえず頷いておいた。



「それで次だな。なぜグィードが、水や地面に影響しないかの質問だな。その答えは、そういう存在だからだ」


 漠然過ぎて答えじゃないよ~ イーアンは、ベイベに伸されながら『もうちょっと教えてくれ』と頼んだ。ビルガメスは笑いながら、赤ちゃんを引き戻して『本当にお前は知りたがるなぁ』と呟く。


「面白いヤツだ。思い出してみろ。タムズがティグラスの家を造ったことを。あれは、このイヌァエル・テレンでは俺たち全員、出来ないことはない。だがタムズの能力として、際立って優れている力だ。


 彼の場合は授かった力である以上、中間の地でもどこでも、あの力を使える。グィードは言ってみれば、タムズの力そのものの存在だ。

 そこにいるが、同時に違う物質として別の場所にもいる。グィードだけは風変わりではあるかもな」


 何それ・・・・・ 居るのに居ない?別の場所にもいる?

 言われている意味は分かったが、どう捉えたら良いか難しい。イーアンは少し考えたが、これはこういうもの、として、一先ず受け取ることにした。


「さて、次は。津波を起こした魔物か。そいつが宝を持っていた理由と。それは俺は知らん」


 ぐはっ。終わっちゃった。そうなの、と思うのみ。ビルガメスは次の質問である『あの奥の大陸』についても『お前たちがそのうち用事が出来る』と笑って済ませた。



「最後の質問。俺が消した人間の行方だな。どこかにはいるんじゃないのか?」


 ハハハと笑う男龍。イーアンは咳払いし、ビルガメ・ベイベにちゅーっとしてから真顔で、男龍に向き直った。

お読み頂き有難うございます。

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