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魔物資源活用機構  作者: Ichen
空と地下と中間の地
588/2952

588. ミレイオに夢の相談とお皿ちゃん紹介

 

 イーアンとオーリンは地上に戻ってきて、二人は空の上でお別れした。『また連絡するから』オーリンはそう言うと『今日。有難うな』とお礼を短く言った。


「少し考えるよ。ここに来るまで話してくれた、空の上での年の取り方の話とかさ」


 じゃあね、とニコッと笑い、オーリンは東へ飛んで行った。イーアンもちょっとだけ手を振り、ミンティンと一緒に戻る。戻る道で気になっていたことを済まそうと思い、アードキーへ方向を変えた。



 時間はまだ3時前。ミレイオは家にいるだろうか。上まで飛んで、少し考えてから一応行ってみることにし、龍を降りた。


 玄関の前まで行き、叩こうとすると横から人の気配がして、イーアンは振り向いた。ミレイオが家の横から歩いてきて、イーアンを見つけて『あら』と笑った。


「来てたの?ごめんね、外にいたから」


 入んな、と扉を開けてもらい、二人は家に入った。『ミレイオは仕事中でしょうか』それを先に確認すると、ミレイオは『今日はもう終わり。大丈夫よ。ちょっと手を洗ってくるから』待ってて、と長椅子の部屋へ案内された。



 戻ってきたミレイオは、暖炉の火を少し大きくして、イーアンの横に座ってお茶を淹れる。


「どうしたの。あんまりこの時間に来るってないわよね」


「はい。午前から空へ出かけていましたが、今戻りました。ここへ来たのは。この前、夢を。不思議な夢を見たので。それで相談に」


 夢と聞いて、ミレイオの目が見開く。『あんた、また誰かの』その言葉に、イーアンは首を振り、違うと思うことを最初に言う。


「黒い龍が出てきました。黒に近い青さの大きな龍です。海の上にいて、それは次の瞬間、海底へ場面が変わりました」


 イーアンは、夢で見た話を丁寧に細かい部分まで、きちんと伝えた。一人で考えていたけれど、やはりミレイオにも相談したかったと言うと、ミレイオも頷いてお茶を飲む。


「そこ。グィードよ。龍は見たことないけれど、グィードのいる場所だと思われている壁ね、そこよ」


「そうでしたか。そうではないかと思いました。地下のどこなのか。そして探せとは」


「うー・・・それは分からない。私には。探せって言ったって、近くまでのことじゃない雰囲気だし。

 近くまでなら行くことは出来るのよ。でも、続きはどうだろう。あの壁壊すのかしら?要はグィードを()()んでしょ?それって相当よ」


 どう・・・相当なのか、を訊ねると。『だってねぇ。半端なくデカイって噂なんだけど。そんなの出てきたら、今度はどこにしまうのよ』海大荒れでしょ、と刺青パンクは苦笑いする。


「アオファよりも大きい、とは聞いています。でもその、ピンと来なくて」


「そりゃ来ないわよ。そんな大きさの生き物いないんだから。比較がない以上は、想像しても限度があるでしょう。ただデカ過ぎて、一度出てきたら大変じゃないの、って。私は思うけど」


 そうですねとイーアンも頷き、でも最後の言葉が気になることも繰り返し言う。『あの時に聞こえた声は、()()()()と言ったので』どうなのかと思ってと心配するイーアンに、ミレイオは少し考える。


「次の国。一発で終わる、ってことはないんじゃないの。その兆候が見えたら、動けば間に合うっていう。そうは思えない?えー・・・っと。ちょっとお待ち。思い出すから」



 相談に乗りながら、ミレイオは額に手を置いて目を閉じる。ぶつぶつ呟き、時々指が宙に何かを描いている。『あのねぇ』目を開いて、イーアンを見て『地図。分かる?』と確認。イーアンは大体しか分からないと言うと、大体でも良いよ、と話し始めた。


「あのさぁ。ハイザンジェルって、こんなものなの」


 机に指で、ハイザンジェルらしき線を引く。そして横にも、地図の輪郭を引きながら話す。


「ここの国は小さくて、周りの国の方がずっと大きいのよ。何度か地図を見ていれば、知ってると思うけど。こっちがテイワグナとヨライデ、上がアイエラダハッド。この逆側がティヤーね。

 テイワグナが異様に広いんだけど、ヨライデと陸続きで、海も海溝あったかな。海には島がさ、無数にあるわけ。


 この島群よ。島のどこら辺かじゃないかと思う。その辺りの下かなぁ・・・・・ だと思うんだよね、グィードのいそうな場所は。ハイザンジェルからだと距離があるけど、ヨライデ沿いのテイワグナか、ヨライデまで行ければね。船は借りられると思うのよ」



 思い出す、白い棒の光。青い光と赤い光が指し示した、地面に広がった青く光る地図で、ミレイオが指差した部分と近い場所があった。

 そしてもう一つ、思い出す。工房の机の脇にかけてある、綱。ドルドレンと移動した、もう一つの治癒場にあった綱。外は海だった。あの後、何度か治癒場を二人で利用しているが、移動したことがない。


 イーアンがその話をすると、ミレイオは興味深そうに話を聞き、『そこがそう、って可能性もあるわよね』手がかりがないけどと呟いた。


「場所が分からないとね。いざって時に行けないものね。夢のお告げだとしたら、何か兆候が見えた時点で、予断の許さない状況みたいだし。場所が押さえられれば良いのか」


 ミレイオの言葉に、イーアンも考える。『ヨライデの、その海の島々まで。どれくらい日数がかかるのかしら』イーアンは龍と一緒に下見に出かけられないか、と考える。ミレイオが言うには『馬車で何ヶ月』だそうだが。


「私は旅していても、のんびりだったの。道なんかも適当に選んでさ。だから、効率の良い道なんて知らないけど、タンクラッドあたりは知ってるんじゃない?あの人、全部の国、回ってるから」


 タンクラッドにも相談する必要がある、とはイーアンも思っていた。腕輪の件がある。これは彼にも言わないと、夢で見た時のように、肝心な場面で一人というわけに行かない。


「まぁとにかく。グィードが出るとなると。本当に始まったな、って感じだろうね。あんたたちもハイザンジェルから旅立つだろうし」


 そしたら寂しくなるわね~ ミレイオはイーアンを抱え込んで、髪をナデナデする。『早く倒して、早く帰っておいで』1ヶ月くらいで!と、無理難題を言っていた(※馬車で何ヶ月って言ってた矢先)。



 ミレイオは話を変えて、イーアンに今日は何をして過ごしたかを訊く。イーアンは、空へ行って、お皿ちゃんをもらってきた話をし、その後オーリンの案内で、彼ら龍の民の町へ出かけたことを話した。


「これ。板じゃないの。綺麗な板だけど」


「そう見えます。私もそう思いましたが、これが飛ぶのですね」


 ちょっと乗っても良いかと刺青パンクに訊かれ、これ自体はまだどう動くか分からない、と答えると。『少しだけって分かる方法ないの』ねだるパンク。


「例えばですが。その板の上に乗って『浮く』とだけ呟いてみますか」


「え。そうなの。どれどれ」


 好奇心旺盛なミレイオは板を下に置いて『直に踏んで良いの?』と訊ねる。そういうものですと答えて、ミレイオは板の上に乗り『浮いてご覧』と話しかけた。


「 ・・・・・ね。変わらない気がしない?」


 ミレイオ。ちょっと首を傾げる。イーアンは最初と同じことが起こったと知り、微笑んだ。『ミレイオ。板の上に乗ったまま、屈んで下さい。そして板の下に手を入れて下さい』イーアンの言葉にちょっと振り向いて、こう?としゃがみ込み、板が浮いていることにすぐ気が付くミレイオ。


「あっ。浮いてる。板が浮いてるわ」


 嬉しそうに笑顔を向けたミレイオは、これで飛びたくなる。が、イーアンに止められた。『どうしてよ~』背中を押されて、笑うイーアンに降ろされたミレイオは、乗りたいと一生懸命説得に入る。イーアンは丁寧に拒否。最初のこれは、ロゼールが今は乗っているが、加工してあるから使える、と教えた。


「この板の状態ではさすがに。高速で飛びます。ですから、足を固定するベルトなどを付けませんと、これは危険なのです。それがあっても、危険な場合もあります」


「ええ?だって、ドルドレンもあんた(※ここ大事。イーアンが乗れるなら誰でも大丈夫なはず)も乗ったんでしょ?今誰だっけ。あの、ロゼールか。あの子乗ってるって」


「ロゼールの運動神経は、人並み外れて良いのです。勿論、ミレイオも同等くらいだと思いますが、あのロゼールでも、ちゃんと固定ベルトを付けてくれます」


「あんたは?どうだった」


 イーアンは黙る。下を向いて悲しそうな顔をしたので、意地悪な質問をしたと笑ったミレイオは、俯くイーアンを抱き寄せて『ごめんね』と撫でてやった。イーアンが乗りこなせるわけはない。多分落ちたんだわ(※当)。知ってて訊いたんだけど。


「あの。そういう理由ですから、これを加工するまで空を飛ぶのはお待ち下さい」


「そうか。うちでも出来そうだけどね、加工なら。あんたの所よりも、刃物も彫刻刀も揃ってるわよ」


 あ、そうか、とイーアンは顔を上げる。盾を作る人だから、もっと細かい動作をする刃物を持っている。ミレイオは頷いて『これ、材質何なの』と訊いていた。

 イーアンがこれは龍の骨だと教えると、ミレイオは感心したように大振りに頷いて、板を撫でる。


「触った感じはイケそう、うちの工具で。削ったりして良いんでしょ?」


「はい。意思はありますが、加工に問題はないそうです。元々のズボァレィはこれですが、私が見つけたものは、加工済みのものでした。

 それは、楕円で縁が立ち上がり、左右4箇所にベルト幅の孔があり、裏も表もびっしりと彫刻で伝説が彫られていました」


「それも見てみたいわね。ロゼールが持ってるなら、盾を届ける時に見に行こう。・・・ん?それが聖物?」


 ミレイオはイーアンを見て、この前、タンクラッドとドルドレンが来た時に『聖物に描かれた絵にギデオンの話があった』と言われた事を話した。


「その時。あんたが空にそれ・・・聖物を持って行ってるって。もしかして、これの」


「ああ~。そうです。それです。あの時、ルガルバンダも来てくれた時ですね。そう、あの後にロゼールに戻しました。お皿ちゃんは。ズボァレィの名前ですが、お皿ちゃんはロゼールが好きなのです」


「お皿ちゃん。可愛い呼び名ねぇ。あんたあたりが考え付きそう」


 自分が命名した、とイーアンが言うと、ミレイオは頭を撫でて『だと思った』と笑った。それからミレイオは『自分はこれを加工してみたい』とイーアンに申し出た。


「貴重品だって分かってるわよ。でもどうせ加工するなら、私がやっても。おかしなものは作らないし」


 そう言われると、イーアンもそうかなと思う。この人は芸術家なのだ。工具もある。腕もある。

 ミレイオにお皿ちゃんを預けることにし、念のためにと、ロゼールに渡ったお皿ちゃんの形を、絵に描いて渡した。


「この形で、彫刻びっしり。な、わけだ」


「はい。とても古い彫刻ですけれど、大変丁寧に彫られており、欠けも汚れもありません」


 ミレイオは少し考えて、イーアンに明日の予定を聞いた。イーアンは明日は、工房で防具の修理をすると伝える。他の製作も出来たらしたいと言うと、ミレイオは支部に行って、ロゼールの持つお皿ちゃんを見れないかと訊いた。


「見れます。私、お迎えに参ります。何時が良いですか」


「ええっとね。早い方が良いかな。見たら作りたくなるでしょ。だから午前中。8時9時くらいでも」


「分かりました。それではその時間くらいで」



 イーアンとミレイオの明日の約束は決まり、イーアンは帰る時間になる。龍の眠る場所まで歩き、イーアンを龍に乗せてやり(※乗せないとよじ登る⇒見ている方は笑ってしまう)ミレイオは手を振って見送った。

 イーアンも手を振り返し、また明日、と空に響かせて、北西の支部へ帰って行った。

お読み頂き有難うございます。

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