587. オーリンの悩み
町並みはきれいだった。異国情緒は、地上でも味わっているが、また別の雰囲気である。
この蘇った遺跡群のようなそのものが今、眼前に広がり、そこには生きて生活する人々が往来する。その様子をイーアンは楽しんで眺める。
「きれいな町です。とても美しい。歴史があるのでしょうね」
そうオーリンに言うと、オーリンもニッコリ笑って『そうだろ。きれいなんだ、ここ。始祖の龍以降みたいだけど、かなり歴史はあるよ』自分の血がここを選んでるんだ、と穏やかな目で見つめている。
「あなたは、ここが好きなのですね」
「うん。イーアンは?ここは好きか」
「はい。好きです。きっとまた遊びに来ます」
白と黄色の石畳を歩きながら、イーアンはその配置を楽しみ、またここを歩きたいなと思った。オーリンは、そんなイーアンをじっと見つめてから、『暮らすか。ここで』と呟いた。イーアン、振り向くのを止める。前を見たまま、黙った。
「イーアン。聞こえただろ。ここで暮らしても良いんじゃないかな」
「ええーっと。私はもうじき旅に出ますのでね。それにドルド」
「その後だよ。戻ってきてさ。ここからなら、龍の彼らの家も近いし」
イーアンは、言葉を遮ってまで、真面目に言ってそうなオーリンの顔を見るのはどうか、と躊躇したが。オーリンは言葉を選んで続けた。
「俺、思うんだけど。イーアンは龍だろ?地上で最後まで暮らすの、どうなんだろう。俺の友達なら、家ももらえると思うよ。系統は違うにしても、俺たちは地上で出会って、家族みたいなもんじゃんか」
「オーリン。無理ですよ。私はあなたに家族的な印象がありますが、だからと言って、イヌァエル・テレンに生活の場を動かすことは、私は考えないです」
オーリンはここで生活する気なのか、とイーアンが訊ねると、オーリンは、それについて考えていると答える。『だからさ。だったら一緒でも良いかなって。だって本当は、龍族は地上にいないもんなんだぞ』尤もらしい言葉で結んだ。
彼はきっと、この町で暮らしたいのかもな、とイーアンは思う。でも、一人じゃ心細いのだ、まだ。だから誰かが一緒にいてほしいのか。もし地上に、龍族の誰かがもう一人でも居てくれたら、その人と一緒に、とも思うだろう。
「オーリンはこの町に居を移したいのですね」
イーアンが黄色い瞳を覗きこむと、オーリンは小さく頷く。『でもさ。俺が馴染めるか、最後まで居られるのか。それもあるだろ。周りは皆地上なんか知らないし』心配はあるよねと呟いた。
「親御さんとその話をされたのですか」
彼は、親御さんに言われたのが最初だと話した。『ただね。俺も嬉しいには、嬉しいわけだけど・・・ん、まぁ。見れば分かるよ。俺が何を感じたのか』でも別に普通に良い人たちだよ、と付け加え、オーリンはそこからあまり喋らなくなった。
そのまま少し進み、路地を曲がって民家の並びに入ると、細い脇道を通り抜けて、一軒の家の前へ出た。どの家も同じだが、塀の壁は両隣を分けるものではなく、個人宅の周りに張り巡らされており、隙間は道になっていた。
案内された家も同じで、正方形の塀が囲む中に、広い前庭が見え、奥に窓の小さな四角い建物が建っていた。『俺の親の家』そう振り向いたオーリンは、入るのに躊躇う表情のイーアンの手を、がっちり握り(※逃げられると思っている)建物へ進んだ。イーアンは、玄関でご挨拶くらいでも良いのに・・・と思う。
扉を叩く前に戸が開いて、中から30代くらいの女性が出てきた。その人は少し浅黒く、黒髪と黄色い目で、細面の優しそうな笑顔で『お帰りオーリン』と迎えた。
女性は、オーリンを見てからニッコリ笑い、後ろのイーアンを見てちょっと目を丸くしたものの、すぐに微笑んで中へ通した。オーリンに導かれ、少し暗い廊下を歩き、すぐに明るい部屋へ出た。窓は、土の壁を抜いたように厚みがあり、そよ風の入る自然光の明るい室内は広く、大きな長椅子と足の低い平たい装飾机が置かれていた。花等はないが、花のような不思議な絵が、壁の天井をぐるりと描かれていた。
「素敵なお部屋です」
大きな室内を見渡したイーアンが呟くと、女性が来て『あなたは』とイーアンを覗き込む。彼女は、オーリンより少し背が低いくらいで、イーアンよりも20cmくらいは背が高かった。
「私は」
イーアンが彼女を見上げると、彼女は少し笑顔が固まった様子で、目を瞬かせた。『角?』小さな声が、イーアンを見つめた彼女の口からこぼれた。
振り向いたオーリンがイーアンの横に立ち、『彼女はイーアンだ。俺の友達だよ』地上にいた時のね、と微笑む。オーリンは女性の肩に手を置いて『俺の母親なんだ』とイーアンにも紹介した。
このことか、と。イーアンはファドゥの言葉を理解した。最初に言っていた、あの言葉。オーリンよりも親の方が若かったら、とした、あれ。
オーリンのお母さんは、息子に微笑んで『オーリンの友達で、地上から連れてきたのね。ということは、彼女も龍族で』そう言うと、もう一度イーアンを見た。その目はしっかりと、何かを見つけたような目だった。
「イーアン。あなたは一体」
「母さん。イーアンはついこの前、俺と空に来たばかりだ。まだ数えるほどしか」
「ねぇ、オーリン。この人、だって」
「そうだよ。イーアンは龍だ。でも本人は最近、龍になったから、何もかもが初めてだ。何も知らないよ」
お母さんは笑顔を保とうとしていると分かる。でも、戸惑ってもいる。イーアンはどうして良いのか分からないので、俯いた。そして帰りたくなった。
「あのう。オーリン、私はそろそろ戻ろうと思います」
「今、来たんだぜ。まだ座ってもないのに。何で戻るんだよ」
「私が居ることは、私が受け取る感じですと、きっと不自然なのではないでしょうか。ご迷惑をかける気はないのです」
イーアンはちょっとずつ、後ろに下がり、すこしずつ廊下にはみ出る。オーリンは母親をちらっと見てから、イーアンの肩を掴んで『迷惑じゃないよ。そんなこと言うな』と困ったように言う。
「母さんがヘンな言い方するから。イーアンが萎縮しただろ」
「だって。龍って。彼女は女でしょ?女の龍なんて。男龍でさえ、こっちには来ないのに」
イーアン。申し訳なくなる。何かあるのだ、多分。さっきの食堂の話ではないが、龍の子や龍たちと、ここの人たちの間に、自分が知らないものがある。
母親とオーリンが言い合いしているのを見ながら、イーアンはちょっとずつ後ずさり、廊下にそーっと引っ込んだ。
そして扉に向かって、ささっと走ろうとし、すぐに誰かにぶつかる。『おおっ』男の人の声が上から響き、イーアンの両肩をその人は掴んだ。
急いで謝ったイーアンがすり抜けようとすると、男の人は『君は。龍の子じゃないな。龍の子の女かと思ったら』意外そうな声を上げて、小さな肩を掴んだまま、暗がりの廊下でその顔を覗き込んだ。
「おや、まさか。女龍じゃないだろうな。でもそうだな?君が女龍か」
「あの。あのう。もうお暇しますので」
「え。いつ来たんだ。今じゃないのか。オーリンの声がしたから来たんだよ」
イーアンは、この人がお父さんと知る。オーリンはママ似であるとも思った。お父さんはオーリンよりも若く見えるが、スウィーニーのようにがっちりしていて、年齢が若くても威風堂々といった感じ。声も厚みがあって穏やかだった。
「オーリン。何で彼女が帰るんだ」
「知らないよ、遠慮してるんだろ」
老けた息子さんと若い父母の組み合わせが、とても印象的。親子は、そんな胸中複雑な思いを抱くイーアンの来訪を話し合う。
どうも、話を聞いていると、お母さんは単に驚いているだけのようだった。お父さんは、意外といった感覚の方が驚きより強いらしく、珍しいお客さん程度の受け入れ具合である。オーリンはイーアンを呼んで、椅子に座るように促す。お父さんに背中を押されて、イーアンは白くふんわりした長椅子に座った。
居心地への困惑は消えず、状況も見えないので、自分がどう振舞って良いのか難しく思えた。大人しくして、様子を見て帰ろうと決める。落ち着かなさそうな顔のイーアンを見て、お父さんは話しかけた。
「オーリンの友達というけれど。君も地上で過ごしたのかな」
「はい。違う世界から来ました。数ヶ月前に、こちらの世界で生活が始まりました」
「そうか。どのくらい違う世界だったのか分からないが、君はこの世界も空のことも、知らないことの方が多いね」
そう思いますと答えるイーアンに、お父さんは頷く。オーリンは二人を眺め、ちょっと黙っていることしたらしかった。お母さんはお茶を運んできて、茶器を机に置いた。
「オーリンと同じだとすると。このお茶も最初は違和感があるかしら」
出されたお茶は透明で、イーアンは特別何も思わなかった。お茶の色があるかないかは、あまり気にならなかった。オーリンのお母さんは、これは、落ちた木の葉を集めたお茶だと教えてくれた。その木は『女の木』で、あの始祖の龍の昔話の木だった。
お茶は柔らかな花のような香りと、味わい甘く、美味しいとイーアンは微笑む。お母さんもぎこちなく微笑み返した。お父さんは話を再開する。
「悪く取らないでほしいし、これを男龍たちに伝えてほしくもないのだけど。
龍の民と彼らが鉢合わせることは、まず、ないんだよ。力の差もあれば、形態が異なるから、住み分けは自然とこうなった。
だからね、妻が驚いたのは、イーアンが来たことが困るわけではなく、有り得なかったことが起こったからなんだよ。龍が来たなんて知ったら、誰もが何が起こったかと思うだろう」
「来ない。生活が異なるからでしょうか」
「うーん。それについては何とも。私たちは、龍の子までは関わりが出来ることもあるが、男龍たちはもう別次元の存在のような感じで見ているから、気にもしない。あちらも気にしていないと思う。彼らがどう生活しているか、私は知らないね。多分、龍の民は知らないんじゃないかな」
そんなに距離があるの、とイーアンは驚いた。関係に距離が開いている。同じ空にいるのに、これはとても意外だった。もっと、自由奔放のような印象だったが。
意外な事実でも知ったかのような女龍の反応に、お母さんはじっと見つめて『イーアンは。そうしたことを、誰からも聞いていないの?』と伺うように質問した。
「いいえ、知りません。違う話題でした。私には用事があり、その内容だけを会話しているのが大体です。彼らの生活については、私も思うにほぼ知らないのでは。会話している時は、会話主体で・・・食事もないですから」
「そうなの。女龍が来る時は、大きな異変の時と。そんな話は知っているの。でもまさか、自分の息子が関わっているなんて思わなかった。話を聞いて、女龍の手伝いに出るなんて大丈夫なのかと、心配したけれど」
そういうとお母さんは、クスッと笑顔になり、そのままケラケラ笑う。さっきまで、不審者を見る目つきだったお母さんは、馴染みの近所と話していたように、屈託なく笑った。すると、お父さんもつられて豪快に笑い始めた。イーアンは固まる。横でオーリンも笑っていた。
「本当だよ、妻の言うとおりだ。ついこの前、空にオーリンの魂の気配を感じ、私たちは居ても立ってもいられなくなった。でも違ったらどうしよう、私たちを望んでいなかったらどうしよう・・・いろいろ気になって動けなかった。
それがその日のうちに、ガルホブラフと一緒に彼は来て。これが最近なのに。翌日に結婚すると騒ぎ始めて、それはもう終わったけど。今度は友達だと言って、大役のお相手の女龍を、遊びに連れてきたんだから」
アーッハッハッハ・・・大きなお父さんは体を揺らして大笑い。そんなに面白かったのかと思ったが、きっと笑うと全開なのだ。そうだった。ここの人たちはこんな感じだったと思い出す。
そしてもう一つ、知った事実。あの日の翌日に、結婚宣言していたオーリン。イーアンもそれを思うと、ちょっと笑ってしまった。運命の相手なら、即、結婚しても良いだろうが、撤回したということは、本当に舞い上がっていたのかも知れなかった。
この後、オーリンの父母とオーリンを交えて会話は続き、イーアンは幾つかの情報を得た。その情報は、自分たちの旅に関わることではなかったが、『龍族の間にも、区別の意識が大きいこと』という意味では貴重な話だった。
お母さんは何度か、『イーアンは地上で育ったから、話しやすいのかも』と言っていた。男龍たちをどう見ているのか、それはお父さんもお母さんも言わなかったが、それは接触がないから分からないのだと思う。
イメージが先に立っていて、男龍とも女龍とも喋るなんて、考えたことがない。そういう事かも知れなかった。
30分くらい話をして、イーアンはそろそろ戻るとオーリンに言う。オーリンは料理の話を出したが、イーアンは『次回があれば、またその時』と断った。彼の父母は、彼が行方不明の息子だったから、大喜びだし大歓迎だろうけれど、その友達にまでそれがあるかと言えば、イーアンとしては、ないように思う。
渋るオーリンに微笑んで、イーアンはお父さんたちに挨拶をした。それから立ち上がって、お茶のお礼を言い、突然の訪問を受け入れてもらったことへの感謝を伝えて、扉を開ける。『有難うございました』イーアンがそう言うと、お父さんたちは『また来て』と言ってくれた。オーリンも父母を抱き締めてから、イーアンと外に出る。
見送ってくれる両親に手を振りながら、オーリンは笑顔を浮かべて遠ざかる。
「オーリンはご実家に居ても良かったのです。私は戻りますけれど」
「いいよ。仕事もあるし。今日は戻るんだろ?男龍のところは行かないで」
「そうですね。質問したいことはあっても、それが今現在。必要かと訊かれてしまえば、分からないことばかりです。今日のところは戻ります」
オーリンも頷いて、イーアンの横を歩きながら、二人は石畳の広場へ向かう。オーリンは少し黙った後に訊ねた。
「その。どうだった?俺の親」
「良い方たちです。あなたもそう仰っていました。私も同感です」
「っていうかな。ほら、見た目」
イーアンは言いにくい。恐らく、自分よりも10歳以上若く見える両親のことを、他人の口から聞きたいのだ。イーアンが答えられないで、言葉を探していると、オーリンは黒髪をかき上げて『分かるよ』と呟く。
「イーアンと俺って。同じくらいだろ、年が。だけどあの人たちは、ここで生活しているから。見た目が総長とかさ、俺の友達にも30代半ばのいるけど、そのくらいに見えると思わない?騎士たちもその年代多いだろ」
「北西はそうですね。年齢層が若いというか。他の支部に比べて私たちくらいや、それ以上の年齢の方は少ないです」
「だろ。どうだった?脱線するけど、イーアンは最初に北西の支部に来て。北西だよね?」
「はい。ドルドレンが保護して下さったので、私はそのまま、北西支部でお世話になっています。
どうだったか。そう言われますと。最初の日は、本当に沈むことが多かったか。ドルドレンが守って下さったから、どうにかなったようなもので」
アハハハと笑うイーアンに、オーリンは苦笑いする。きっと年齢でいろいろあったのかな、と見当を付けた。
「その目つき。正しいですよ、きっと。ご想像通りかもです。未だに思いますし、これは今後消えないでしょうけれど、中年なのです。私は。中年女性。それもね、最初の事実は年齢以前に、顔。顔で指摘されましたので。顔なんてどうにもなりません。これは困りました」
笑いながら話すイーアンの横で、オーリンは小さく相槌を打って同情した。『その。顔ってさ。言われなかったことあるか?』聞きにくいけれど、訊いてみると、あっさり頷かれる。『あるの?』オーリンが驚くと、驚かれたことに笑ったイーアンは言う。
「あなたは何も言いませんでしたよ。それにタンクラッドも。驚きもしなかったし・・・見て分かるではありませんか。顔に注意が向いたかどうか。顔見たから言葉がなくなったな、とか。観察されているな、とか。そうしたことを感じないで済んだ方々は、数えれば結構いるかもしれませんね」
それとね、とイーアンは微笑む。『はっきりと差別もあります。顔を見た途端、笑われるの。分かりやすいくらい、私を嫌いって分かるのです。後ろで囁かれたり、二度見されたり。顔をしかめられることもあったし、名前なんて言おうものなら、あっさり門前払いとか。一緒にいるドルドレンはありで、私は無視とかです。そんなこともあります』極端ですよ、とイーアンは言う。
「よく。暮らせたね。嫌だっただろ」
「それはもう。嫌ですよ。嫌じゃないわけありません。誰だって、中身をよく知りもしないうちに差別されて、頭ごなしに決め付けられたら嫌でしょう。でも、行く当てもない私に何が出来ますか」
その時その時で対応するだけです・・・イーアンが少し寂しそうに笑うのを見て、オーリンはイーアンの頭をぽんぽん叩いた。
「俺もさ。親の家に行って。差別はないけど、親が喜ぶだろ?でも、最初に顔を見て言われたのが『地上に居たから』だった。
俺を見るなり・・・老けてる顔だろ、絶対。親はさ、近所にも俺が戻ってきたって、連れて行ってくれたわけ。だけど、反応は皆同じで、俺も『あーどうも』って感じ。どうしたら良いか分かんなくて」
「オーリンはでも。その後、お好きな方が」
「ん、まぁそう。その、それもさ。彼女が俺が大人に見えるって。それが気に入ったみたいで、俺は知り合いいないから、気に入られた上に誉められたら、そっちに気が向くだろ。そういうこと」
そこで言葉を切ったオーリンに、イーアンは続きを聞く気になれなかった。
きっと相手の彼女は、それで×××な関係になったものの。結婚しても良い、ってなったものの。でも。そこまで好きではなかったのかも。想像すると、何とも言えない。オーリンも苦笑いの顔で止まっていた。
「俺さ。龍の民だったら、お互い似てるし、結婚できる気がしたんだけど。
・・・・・この町も好きだし、ここに住みたいけど。でも、俺だけ異質っていうか。そんなで、ここに居られるのかなぁって何度も思う。イーアンは、支部に住んでいるけど、それだっていろいろあったわけだろ?」
広場の円形の長椅子に腰掛け、オーリンは横を叩く。イーアンも腰を下ろして、話を聞いた。道行く人はイーアンを時々振り返るのを、イーアンは気にしないでおいた。
「地上とここ。どっちに今後住みたいかって話なら、俺はこっちだと思う。でも心配は消えない」
「そうですね。立場が変わると、取り巻く状況も変化します。それもまた、一つの変化だと思うことは出来ます」
そう思えもすることを言うと、オーリンもゆっくり頷きながら『うん』と、小さな声を落とした。
「変化は。それまでにない感覚を齎すし、なかった経験をします。だから抵抗が大きいものです。それに慣れるまで、苦しいばかりではないと思います」
二人はもう少しこの話を続けてから、オーリンがガルホブラフを呼んで、町から離れた場所へイーアンを乗せて連れて行って降ろした。イーアンはそこからミンティンを呼び、二人は地上へ帰った。二人とも、境遇も違えば内容も違うが、どこか同感し続けるものを感じ、何となくこの話をし続けていた。
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