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魔物資源活用機構  作者: Ichen
空と地下と中間の地
586/2950

586. 龍の民の町へ

 

 ファドゥとの時間は瞬く間に過ぎる。


 イーアンはそろそろ待ち合わせの時間と思い、ファドゥにお暇を告げた。『昼以降は、龍の民の町へ行きます』楽しみですと言うと、銀色の彼はとても寂しそうに俯く(※分かりやすい落胆振り)。


「そうか。私とはいられないのか」


「また来ます。夜も連絡します」


 ファドゥは『3日に一度は会え』なんて脅迫はしない(※誰のことかは伏せる)ので、うん・・・と頷くのみ。健気なファドゥにイーアンは微笑む。『大丈夫です。連絡はします。元気を出して下さい』ね、と覗き込むと、金色の瞳に少し憂いを湛え、微笑み返してくれた。


「約束は出来ないと思う。でもすぐが良い。またすぐ。ダメだろうか」


「いいえ。そのようにします。空にはよく来ていますが、男龍に質問しているため、なかなかこちらまで来れず。今度から、ファドゥの家に行きたいから早く出る、と伝えます」


 そう言うと、銀色の彼もニコッと笑う。『私のために。男龍に強気でいてくれるイーアン』ありがとう、と抱き締めた。イーアンも抱き返して『早めに来ますのでね』と背中をポンポン叩いた。


 今日はおでこちゅーがなかったが、最後にはあった。でこちゅーを長々食らい、イーアンは少し目が据わったものの、これは彼なりに頑張っているステップだと認め、うん、と頷く。


「イーアン。私にも」


 ぬうっ。そうか。止むを得ません。屈むファドゥの額にかかる髪をどけて、額にちゅーっとしてあげる。ファドゥは嬉しそうに微笑み、『有難う。母を思う』とお礼を言った。何て健気なのとは思うものの。


「ではね。私は行きます。今夜連絡します」


 ファドゥ、もう一度イーアンをしっかり抱き締めて、『連絡を待っている』と名残惜しそうに呟いた。本当にズィーリーがいてくれたら、とイーアンは可哀相になる。あまりにもママっ子で(※ファドゥ推定年齢ウン百歳)。


 そして銀色の龍に変わったファドゥに乗せてもらい、イーアンは一枚岩の出入り口に降りた。降りたところで、ファドゥはもう一度ぎゅーーーっと抱き締め(※イーアン、おえって言う)『早く。会えるように』そう控え目に伝えた(※親方なら『早くしろ、分かったな、明日朝来い』)。



 イーアンはファドゥにお礼を言って、さよならした。そして一枚岩の外に出る。オーリンの姿はなく、時間が曖昧なこの場所で、イーアンはどっちなのかを考えた。遅かったか、まだ早いのか。


「分かりません。イヌァエル・テレンは誰も時間を気にしません。何となく分かっていて下さるけれど」


 何時なのかしら、とイーアンは呟く。多分、お昼前。オーリンの珠は熱も持たず、光ってもいなかった。イーアンは珠を取り出し、オーリンを呼んでみた。


『お。もう良いの?』


 応答したオーリンの言葉から、早い時間と知った。『一枚岩の外にいます。時間が分からず』イーアンがそこまで伝えると、オーリンは『いいよ。すぐ行く』と答え、通信は切れた。


「私は早かったのですね。何時か分からないと、ちょっと気になりますね」


 腕時計がほしいな、とイーアンは思った。腕時計はどうやって作るのか、それは分からないので、時計を今度分解してみようとか、あれこれ頭の中で計画を立てていると、オーリンが来た。


「早い。なぜ彼は早いのか」


 あっという間に来た気がする。目の前にガルホブラフが降り、背中のオーリンが笑顔で片腕を伸ばした。『待った?』デートの第一声、二弾。イーアンは真顔で首を振り『全く問題ない』と答えた。


「あなたに連絡してから、とても早く到着されました。そのように思えます」


「うん?俺、だって、町にいたもん。龍の民の町。だからじゃないの」


 前に乗せてもらって、オーリンが腕を回し、オーリン・シートベルトががっちり固まったところで浮上。ガルホブラフの様な翼龍は、イーアンは掴まる所がなくてヒヤヒヤする。ひたすらオーリンの腕を鷲掴みするのみ。


 怖がるイーアンを気にせず。オーリンは楽しそうに一人あれこれ話す。


「なぁ。まだ昼前なんだけど。一緒に食事しよう。ここ、金要らないんだよ」


「え。お店屋さんはあるのですか。無銭飲食とは」


「やめろよ、聞こえが悪いな。金の存在、ないんだ」


 笑うオーリンは、驚くイーアンに教える。『町はさ。地上に近いんだよ。どうしてか・・・何となくなんだろうね。飲食店もある。金がないから、入って食べて飲んで出るだけ』気楽だろ、と笑う。


「それ。お店の意味はどこに」


「それは満足なんじゃないの。誰かの場所になるとかさ、満足感」


 んまー、何て素敵な感覚なの・・・イーアン驚く。ボランティア精神炸裂である。そんな炸裂町に行くのか、と思うと、これは自分のような廃れた感覚は気を引き締めねば、と覚悟した(?)。


「もうちょっと、真っ直ぐ行くとさ。あるんだよ。俺、あの店ならイーアン大丈夫だと思うんだ」


「食べてからのお楽しみと。やや心配はあるのですが」


 眼下に海を見つめ、その先に陸地と見える半島を眺めながら、イーアンは呟く。オーリンはイーアンを肩越しに覗き込み『心配すんな。俺だって、そんなヘンなもの美味いと思わない』だろ?と訊いた。


「そうですね。あなたの腸詰を頂いてから、もう他の腸詰が食べられなくなるかと思うほど、夢に見ます。あなたの味覚は信頼しています」


 イーアンの答えにオーリンは大笑いした。『そんなかよ。また食べさせてやる』嬉しそうに約束してもらい、イーアンも腸詰確保に喜んだ。



 二人で料理について話しているうち、下方には人工物が見え始め、すぐに建物が現れた。それはまるで。


「遺跡のようです。モヘンジョダロの遺跡のようだわ」


 天井がない。外壁と、恐らく階下があるのだろう、下に続く階段が見える。そして町並みは整然として、真ん中にコアのような円形の広場が見えた。町全体を見れば『メスカルティタンを上空から見たのと似ています』こんな形はどこから、とイーアンは不思議だった。


「さっきからどこかの地名か、名前か?イーアンの世界か」


「はい。私のいた世界のとても古い時代の文明と。形が、何と言いましょうね。昔なので損壊もありますが、雰囲気が現在に見れる状態からでも、ここは似通うのです。オーリン、町の名は」


「龍の民の町の名前。ズメル・ウマン・トットゥオラスゥ。でも覚えられないだろ」


「ええ。自分の身の程を、改めて知りました」



 ハハハと二人で笑って、とりあえずガルホブラフを降ろせる場所へ向かう。『ちょっと歩くけれど、町も見れるから』龍を降ろし、二人は広場に立つ。ガルホブラフはどこかへ戻って行った。


「イーアン。こっちだ」


 手招きされて、後をついて行く。周囲に人がたくさんいて、地上の町とあまり違うように思えない。イーアンを見る人も少ない。ちょっと目が合うことはあるにしても、ジロジロ見られることはなかった。これはイーアンにとって、とても助かることだった。


「どう。普通じゃないか」


 オーリンは町並みをちょっと顔を動かして見て、そう訊いた。イーアンも『同じように思う』と答える。オーリンが振り向いて『君は目立ってるけどね』とニヤッと笑った。イーアンは意外に思って答える。


「私が目立つ。そうでしょうか。地上よりも、皆さんは見ないでいて下さいます」


「自分じゃ分からないのかな。龍気が凄まじい。君といるだけで、俺の感覚まで変わりそうだ」


 眉根を寄せるイーアンは、静かに首を振った。自分を見ている黄色い目に『そんなはずは』と呟いた。何も警戒していないし、感情の何が昂ぶってもいなかった。オーリンはイーアンの肩を組んで歩く。


「分かんないのか。俺たちと全然違うぜ。でもそれはイーアンには普通ってこと」


「知りません。本当に、普通に。支部にいるのと変わりません。何がどうすれば、目立ちませんか」


 オーリンはイーアンの顔を見て笑い、角をちょっと片手で突く。『これかな。これ、隠せば。でもあんまり効果はないけど』体から出てるものを抑えられないだろう、と弓職人は笑う。


「嬉しいんだ、俺はね。俺は楽しくて仕方ない。君が龍だなんて、ここにいる誰も思わないよ。でも俺は、稀代の女龍と一緒にいるんだ」


 オーリンの言葉に、イーアンはちょっと止まる。『オーリン。私をそうした気持ちで連れて』呟く言葉に、オーリンがハッとした。『違う、そうじゃない。ちょっと自慢ってだけだ。俺の友達がそうだった、って。それだけ』困ったように言うオーリンに、イーアンは悩んだ。


「私は。自分でも龍気がどの程度か知りません。でも、あなたは知っていて連れて来たのですか」


「そうだけど、いや。そうじゃなくて。龍になる前、初めの時から。俺は君と一緒にここに来たかった。それ本当だよ」


 戸惑うオーリンの目に、イーアンは少し悩んだものの。小さく息を吐いて、頷いた。きっと。オーリンの性格上。そうした部分はあるのだと思う。『分かりました』と答えて、イーアンはオーリンに背中を押されるまま、店へ歩いた。


 次にここへ来る時は、帽子でも作っておこうと決めて。上着にある龍の頭のフードじゃ、これ見よがしで使えないと思った。オーリンは一生懸命、戸惑うイーアンの機嫌を取ることに徹していた。



「イーアン、ほら。そこだよ。普通に美味しいから」


 肩を組んでいた腕を解き、オーリンはイーアンの手を引っ張る。手を掴むことありませんでしょう・・・イーアンは冷めた目で弓職人を見るが、オーリンは気にしないで引っ張り、こじんまりした、窓の大きな店に入った。


「こんにちは。2人だ」


 何度か来ているのか、オーリンは扉を開けて人を見つけるなり、笑顔で人数を伝える。店員なのか、黒い髪の男性は『ああ、オーリン』と笑顔で返して、窓に近い角の席を手で示した。『あそこ、空いたからどうぞ』そう言って、さっと後ろのイーアンを見た。その目は少し見開かれ、オーリンに『この人は』と尋ねる。


「ん、彼女は俺の友達だ。気にしないで」


「そうか。この前のあの子と全然違うな」


 余計なこと言うなよ、と怒るオーリン。突然本気で怒るので、見ている方が驚くが、よくあることなのか、店員はちょっと笑って往なした。『凄い友達見つけたな』と苦笑いして、店の奥に引っ込む。


 オーリンに手を引かれ、イーアンは窓際の角の席に座る。向かいにオーリンが座り、『ごめんな』とちょっと笑って呟いた。


「あのさ。ホントに。イーアンの龍気って、思うに。俺が思う以上に、っていうか。皆、気が付くみたいで。

 龍の民の町に、龍の子も、龍なんて絶対来ないからさ。それで」


 そうなのかと思うイーアン。差別とは違うだろうが、ファドゥも、男龍の中にいることに躊躇っていたのを思い出す。彼はルガルバンダが親だから、まだそれでも関係は近いのかも知れない。

 察するに、力の差が歴然。そんなのイヤだなと、イーアンはちょっと思った。


「そう。そういう感じがあるのですか。では私は、あまり歓迎されませんね」


「そんなこと言うなよ。俺はそんなこと、思ってないよ。だから。大丈夫だよ、ほら、見ないから。単に滅多に見ないってだけで」


「オーリン。これから。・・・・・あの、ここは良いです。お食事を頂きましょう。ですが、その後はどちらへ向かうのですか。私はあまり、馴染めません場所にいる気がして」


「イーアン」


 オーリンが手を伸ばして、机の上に置いたイーアンの手に重ねた。『誰もヘンに思わないよ。俺が一緒だし、俺の家族に会わせたい。それが済んだら、出ても良い。嫌な思いなんかさせないから」


 黄色い目で必死に訴えてくるオーリンに、イーアンは目を反らした。


 嫌な思いをさせるかどうか、それはその言葉を発する人には分からないものなのだ。当人じゃないのだから。理屈ではなく、感覚で判断することを引き受けるのは約束できない類のものだ。


「お願いがあります。もし私が嫌だと思ったら。私は戻っても良いですか。ファドゥか、ミンティンか。もしかしたら男龍の誰かにお願いするかもしれませんが」


「えっ。あ、ああ。分かった。良いよ、それでも」


 複雑な胸中のイーアン。この世界に来てから、顔つきがいないというだけで、何度も見られたり、人によっては笑ったり身分まで蔑む発言をする人がいた。単に、見たことのない骨格の顔、というだけ。

 そんな程度のことで、その人を突然撥ねつけるなんて、イーアンには信じられない行為だったが。そういう人もいる、とは知っている。どこの世界でもいる輩ではあるのだ。


 だけど。それがまさか、龍になった自分もまた、空の上の町においても同じように扱われるとは。どこまで差別区別が付いて回るのかなぁと・・・大袈裟に思わないようにしていても、正直困る。



 笑顔になれないイーアンは、オーリンと会話も進まず、オーリンを見て喋ることも出来なくなる。一度意識すると、周囲が何となく目を向けるのが分かる。

 気配は感じないでいられれば、それで済む。注意が向くと、気配を敏感に察知する能力が効果絶大。この場合のイーアンにはきつかった。


「どうぞ。昼はどこも、こんな料理です」


 ふと頭上から声がかかり、先ほどの男性が給仕をして盆を机に置いた。置かれた皿は3皿で、鮮やかな色の野菜のようなものと、肉料理に似た何かに、派手な色のソースのかかるもの、小さく包んだ餃子に似た食べ物の汁物だった。


「有難うございます」


 イーアンは見上げてお礼を言う。男性はちょっとイーアンを見つめ、『口に合うと良いけれど』と僅かに口端に笑みを持たせた。『あのう。あなたはもしかして、その角は』言いにくそうに訊ねる男性に、イーアンが答えようとした矢先、オーリンが彼の腕をちょっと叩いた。


「彼女を詮索するな。友達だ」


 イラついたオーリンに、男性は頷いて、イーアンに少し会釈してから下がった。『食べよう、ほら。見た目は普通じゃないか』オーリンはイーアンに笑顔を向け、取り皿によそい始めた。


「これさ。ファドゥの家で最初に食べた、あれと殆ど同じなんだ。だけど調理方法がね、少し違う。色なんかも工夫してて。日にち置いて色素の変化を起こしたりとかさ、そういう具合」


 食べな、と皿を押し付けて、オーリンは自分の皿にもよそい、イーアンをちらちら見ながら作り笑いで食べ始めた。イーアンも意地を張る気はないので、諦めて微笑み、一緒にご馳走になる。


 ここで違いを見つける。龍の民の町は、食器がある。いや、ファドゥの家もあったけれど、龍の民の町はカトラリーがあると知った。匙と、突き匙。二つがちゃんと揃っている。これは嬉しかった。


『あら。近い』イーアンは一口食べて、少し意表を突かれたように小声で言う。味わいが違和感ナシ。さっとオーリンと目が合い、オーリンはにこーっと笑う。『な。大丈夫じゃないか?』これ、好きだと思うよ、と小さな餃子みたいな汁物を示す。


 そうなの?イーアンは汁物を口に入れる。金色に澄んだ汁物をちょっと飲んで、イーアンは驚く。『これは美味しいです』良いお味、ともう一口食べて、何の香りだろうと思い巡らせる。


「ほらな。美味しいって言うと思ったんだ。これ、膜だぞ。龍の膜を焼いてから茹でるんだ。その汁物なんだよ。包み物は膜の薄い部分だって。中身も刻んだやつだよ。同じ材料なのに、違う食材みたいだろ」



 イーアン、思い出す。大豆だ。これは日本においての、偉大なる大豆の存在と等しいのだと。醤油で味噌で、豆腐で油揚げで納豆で・・・そう、偉大な大豆食品よ。


 ある夕食、ふと気がつけば、ほぼ大豆だったと知った時の、その衝撃たるや如何なるものか。味噌汁は豆腐と油揚げ、納豆に醤油、がんもどきにモヤシの餡かけ。そして食前に枝豆のおつまみ。大豆率が滅法高いっ!!これはベジタリアンの知人宅での夕食だったが、あの大豆っぷり・・・恐れ入った感動を思い出す。


 いや~・・・別世界でもあったか。この大豆的存在=膜。

 首を振り振り、脱帽だ~と呟きつつ、美味しく頂くイーアンを、オーリンは何やら面白そうに観察して笑っていた。


「美味い?」


「はい。美味しいです。素晴らしい創意工夫。是非、いつか。料理を作るところを拝見したいものです」


 しかし家庭料理も、そのような手間隙かけて作るのか。これはお店だからか。イーアンは言った側から、少し考えたが、すぐにオーリンの黄色い目が輝いた。


「うち。うちで、俺の親が作れるんだ。作ってもらって、直に見せてもらえば良い」


 ぬはぁっ。そう来たかオーリン。イーアンはビビって目を丸くする。


 親御さんに初対面で『料理を見せて下さい』って、彼女でもない自分が突然お願いするものなのか。そりゃいくら何でも、立場が『突撃!隣の○ごはん~(Byヨネ○ケさん)』くらいでもないと、ちょっと引かれるのではないのか。


 イーアンが固まっていると、オーリンは一人でわくわくし始めた様子で『俺の親はさ。俺がずっと行方不明だったから、大事にしてくれるんだよ。だから俺が友達連れてきたら、絶対喜ぶ』料理も出してくれるよ・・・と。


 今、食事の最中ですよ、と思う心配なイーアンの眼差しなど、どこ吹く風。ご実家の親御さんの喜び具合を、オーリンは一生懸命イーアンに話し続ける。さすが龍の民。相手の反応等、自分が高揚すると気にもしない。変なところで感心している場合ではなかった、と我に返り、イーアンは咳払いする。


「オーリン。私は工程を見てみたいと思いますが。今こうして美味しく食事を頂いています。ここでお腹一杯ですので、お母さんにお手間を取らせる気はありません」


 悪しからずね、と微笑むと。オーリンはとっても悲しそうに、つり目の目尻を下げ『行こうよ。行かないって言うのかよ』そりゃないよ、と駄々を捏ね始めた。



 いいえ、行きますけれど。でも料理までは、とイーアンが言うと、オーリンはイーアンの手に手を重ね、『大丈夫だよ。俺が一緒だよ』と頓珍漢な答えを笑顔で出した。何が大丈夫なのか。

 この手、要りませんでしたでしょう、ぼやくイーアンは、オーリンの手を見つめて眉を寄せる。弓職人は聞こえない振りで、がっちり握り締め、もう一度『俺が一緒だから。親も気に入ると思う』と。



 どう考えてもおかしい、その表現と苦笑いするイーアンに、オーリンは嬉しそうに頷く(※思い込み)。そして二人は完食した後、町の広場の向こう・・・オーリンのご両親のいるお宅へ歩いた。

お読み頂き有難うございます。

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