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魔物資源活用機構  作者: Ichen
空と地下と中間の地
562/2950

562. 情報お持ち帰り

 

 親方とドルドレンが、ミレイオの家でお話し中。ミレイオは、用事が済んだなら帰れ、とぼやいていた。

もうちょっと居る、と親方が言い(※総長と相談する場所確保)思うことを総長と話していると、総長がふと、腰袋を見た。


「ちょっと待て、タンクラッド。イーアンだ」


 袋から光が漏れていることに気がつき、ドルドレンは珠を取り出す。初めてそれを見るミレイオは、ふんわり光を放つ小さな珠をじっと見つめた。


 ドルドレンが珠を握って、何やら頷きながら、時々ちょっと考えたりしている様子に、ミレイオはタンクラッドを見て説明を促した。『総長はイーアンと交信している』短く伝えると、ミレイオは目を丸くした。


「頭の中で話し合う。同じ色の珠を持つと、それが出来るんだ。イーアンは今、自分がどこにいるか伝えているのかもしれない」


「あんたも?そういうの持ってるの?」


 あるな、と自分の腰袋をぽんと叩いた。『俺もイーアンと繋がる』ニヤッと笑った剣職人に、ミレイオは目をすっと細めて『私も欲しい』と呟く。剣職人は小さく首を振って『用がある者しか持てない』と答えた。


 あんたたちばっかり、と抗議し始めたミレイオの声を遮り、交信を終えたドルドレンがタンクラッドに話しかける。


「イーアンも用事が終わった。タンクラッドに牙を渡したいらしく、今俺たちがどこに居るのかを訊ねられた。ミレイオの家に居ると答えたら、直にこの上の空まで来るそうだ」


「えっ。来るの?」


 ドルドレンはその意味が誰を示すかを知っているので、すまなそうに頭を掻いて『イーアンと龍だけだ』と答えた。聞いてはいないけれど、ミンティンと二人だろうなと思うので、期待させないようにそう伝える。

 ミレイオは落胆。明らかに残念そうな顔で『あ。そうなの』うん、でもイーアンでもね、と不服そうに納得していた。



「ミンティンは、この下の場所にしか降りられないだろう。降りてここまで歩かせるのも何だから。迎えに出ておくか。俺たちもそろそろ、帰るとして」


「そうだな。あ、剣。イオライセオダに取りに行かないと」


 ドルドレンがサージの工房からの連絡を話すと、親方も頷いた。『この前、もう出来るとは言っていたから。このまま一緒にイオライセオダへ』という流れになる。


 そして二人は『帰ります』のご挨拶をして(※自己都合で即退出)ミレイオに玄関まで送られた。


 二人が外へ出て、笛を吹こうとすると、(おもむろ)に空が明るくなった。『早いな。もう来たのか』ドルドレンは光の空を見つめて微笑む。『ミンティンが近くまで来たら、俺たちも見えるだろう。来てから呼ぶか』親方に言われ、ドルドレンも同意。龍が近づくのを待つが、すぐに何か違うと知る。


「おお。来たか」


 目を細めて、フフンと笑った総長に、ミレイオとタンクラッドも目を凝らす。『あれ、ミンティンだけか?』親方はミンティン登場時の明かりよりも、光が強い気がして首を傾げた。


 真上まで来た青い龍の背中が白く輝く様子に、ミレイオは何か心がときめく。『もしかして』期待度がガンガン上がっていく、そこへ。

 ミンティンの上から、白い光に包まれる二つの輝く影が降りてきた。『あああああっっ!!!(※ミレイオ笑顔で両手をお祈り型に組む)』『二人?』親方も白い影を見て、眉を寄せた。



「ドルドレン。戻りました」


 イーアンは、微笑むビルガメスの腕に腰掛けている状態で降りてくる(※ショーリ・スタイル)。横のもう一人は顔が笑っていない。


「あ。あいつだ。俺からイーアンを奪ったヤツ」


 ドルドレンは、さっと表情が変わる。そんなドルドレンを見下ろすルガルバンダが、腕組みしながら首を傾げた。『この男だって分からないぞ。全く』何か因縁の言葉を呟き、イーアンを見た。イーアンは笑顔で首を振って『大丈夫です』と答えた。


 ビルガメスは腕に乗せたイーアンを、ドルドレンの側に渡す。ドルドレンはイーアンを受け取ってお礼を言った。『有難う。この髪をもらって、俺は守られている』すぐにそのお礼を伝えると、ビルガメスはニコッと笑った。


「ドルドレン。お前は大丈夫そうだな。しっかりな」


 うん?何の話やらと目を丸くするドルドレンに、ビルガメスはルガルバンダを振り返って笑った。『万が一の時は。俺たちが連れて帰るという話をしていた』ハハハと笑う美しい男龍に、ルガルバンダは目を反らす。


 ミレイオは驚愕。驚愕の最中で言葉が出てこない。ビルガメスだけでも衝撃だったのに、真横にいる男龍は過去最高のヒット。はーはー息切れしながら、その姿を焼き付けるように見つめる。瞬きが惜しくてたまらない!!タンクラッドは友人の傾向に引き、大股で一歩ずれて距離を持った。


「こ。この、この、人。誰なの、イーアン」


 カミカミしながらイーアンに訊ねるミレイオに、イーアンは示された指の方を見て『彼はルガルバンダ。彼も男龍の一人です』と答えた。


「俺のものだと思っていたのに。気が付いたら、ビルガメスが」


「お前はしつこい」


 ルガルバンダは言いかけて、ビルガメスに笑って止められた。ルガルバンダは、ふーっと嫌そうな顔で息を吐いて、ちらっとタンクラッドに視線を向ける。

 いきなり自分を見られて驚く親方。こいつがイーアンを攫った男龍・・・・・ イーアンの態度から、もう問題ない様子だが。そんなことを思っていると、相手は降りてきて、タンクラッドの前に立った。


「お前か。時の剣を持つ男は。手を出せ」


 自分よりも1m以上、大きい男龍に見下ろされ、親方はその目を見ながら、言われたとおりにゆっくり手を差し出した。


「これが龍の牙。笛を作れ。後2つだ」


 ルガルバンダの手から白い牙がコロコロと落ち、親方の手の平に溢れたので、急いで両手で受け止めた。ルガルバンダは少し顔を寄せて、親方をじっと金色の目で見つめた。親方、ドキドキ中(※普通に照れる)。


「まだ。この男の方が、俺は信用出来そうに見えるがな。ドルドレンより。お前、名前は」


「う。俺はタンクラッドだ」


 ふうん、とルガルバンダは両手で髪をかき上げて、4本の角にちょっと前髪を引っ掛け、もう少し背を屈めてから、親方の顎に指を添えて、よく見るために顔を近づけた。親方ドキドキドキドキ中(※ここまで来ると少し顔が赤い)。


「タンクラッド。以前の()()()もこんなだったな。俺はお前を祝福してやろう」


 そう言って、ルガルバンダは親方の顎に添えた指をそのままに、その額に唇を付けた。『お前の全てが常に、龍を見ているように』唇を付けたまま囁き、赤くなって目を見開く親方から離れた。親方硬直。


 ミレイオはその胸を撃ち抜く現場に、興奮で倒れそうだった。そして自分にはなぜ祝福がないのか、心の底から悔しかった(※『むきーっ』って言ってる)。



「ルガルバンダが祝福か。ハハハ、珍しいこともあるもんだ。見張り役かな」


 愉快そうに笑うビルガメスは、ドルドレンの頭をちょっと撫でて、自分を見る灰色の瞳に頷く。


「お前がイーアンを、ちゃんと大事にすれば良いだけのことだ。イーアンは龍だから、扱うのは人間よりも難しいかもしれない。だが、彼女が一度交わした約束と強烈な想いは、決して人間のように歪みはしない。それを覚えておけ」


 じゃあな、とイーアンの角をくりっとしてから、イーアンの額にもキスをしたビルガメスは、ミンティンの元へ戻る。

 ルガルバンダも、ちょっとイーアンとドルドレンを見て、そのまま上に戻る。戻りかけ、振り返って『そこにいる。お前。サブパメントゥの者よ。お前も力を貸してやれ』そう言って再び上昇した。


 ミレイオはその言葉に固まる。『私のこと。分かってたんだ』自己紹介しなかったのに、とミレイオは思った。見抜いていたのかと思うと、ルガルバンダが格好良くてたまらなく、(とろ)けそうになった。

 ミンティンと男龍2人は、そのまま天へ帰っていった。ドルドレンとタンクラッドは顔を見合わせて、それぞれ笛を吹き、自分たちの龍を呼ぶ。藍色の龍と燻し黄金の龍が来て、その背中に乗った。


 ミレイオが、ふらつき過ぎて心配にはなるものの。『また』と声をかけてお別れした。力の抜けるパンクはうんうん頷きながら、ひらひらと手を振り返して、ヨロヨロして家に入った。



 3人は、イオライセオダの空の上にすぐ着いた。それから、親方が一緒に行くと言ってくれて、サージの工房の裏庭へ飛ぶ。裏庭に出ていたダビが、空に浮かぶ2頭の龍を発見しビビッた。


「ダビ。俺だ」


「え? 総長?ここに降りる気ですか」


 上から降り注いだ総長の声に、ダビはさらに驚く。『降りる』と答えられて、慌てて遮る。


「ちょっと待って下さい。親父さん呼びます。ダメですよ、人の敷地なんだから」


 常識的に止められ、総長は仕方なし待つ。タンクラッドも下を覗きこみながら、慌しく出てきたサージを見つめ『おい、サージ。俺だ、タンクラッドだ。剣をよこせ』と単刀直入に用件を伝えた。


「何だと?タンクラッドか。空いてるところに降りろ。物壊すなよ」


「大丈夫だろう。ちょっと待ってろ」


 答えて親方は自分の龍に『だとさ。丁寧にな』と命じる。龍も親方をチラッと見て『やってやるよ』くらいの顔を向けた(※お互いエラそうで生意気)。


 垂直に降りてきた龍に、どーんと跨る親方を見て、ダビは引く。『タンクラッドさんまで龍とは』何がどうなったんだと呟くダビに、サージも困惑気味に『あいつはエラそうにしてるから、龍も手に入ったのかも』と答えた。


「総長。サージの裏庭は広い。その辺に降りろ。物壊すなよ」


 やれやれ、とイーアンを見て笑うドルドレン。イーアンも笑いながら、二人は龍を降ろす。ダビを見て、イーアンは手を振った。『新しい人生何より』イーアンの言葉に、ダビはちょっと笑って『裏庭で会うとは思わなかった』と頷いた。


 見慣れない龍にあれこれ訊かれながら、親方もドルドレンも剣を引き取る。それから革袋にしっかり包んで、親方の龍に乗せた。


「代金は後で渡すから」


 総長の言葉に、サージも了解して、サージとダビ、セルメが裏庭に出て、飛び立つ龍を見送った。『騎士修道会って、龍に乗るんだな』ぼそっとセルメに言われ、ダビは首を振って否定した。『馬です、普通』あの人たちだけでしょ、と呟いた。



 2頭の龍は夕方の空を北西支部へ向かう。『タンクラッド。一日付き合わせたな。剣を降ろしたら、支部で食事を摂ると良い』ドルドレンが誘うと、親方も頷いて『そうするか。今日は動いたから』と笑顔を向けた。


 イーアンの知らない数時間で、この2人の距離がうーんと近づいた気がして、イーアンの萌えは高まる。善き哉、善き哉・・・・・ 素敵だわ~と一人嬉しく思いながら、イーアンはホワホワしていた。


 そんなホワ・イーアンを、腕の内に抱えたドルドレンは。ウィアドの時と同じような騎龍の状態に、ちょっと満足していた。

 ミンティンは大きいので、それぞれが背鰭の間に挟まるような具合に乗る。でもこの藍色の龍は、馬の背を思い出すくらいの距離。馬よりは全然大きいが、ミンティンよりはずっと小さい。このくらいが丁度良いなと、笑顔だった。


 親方も自分の龍に乗りながら、考え事。食事の誘いに乗ったのは、イーアンが空で得た情報を知りたかったから。お皿ちゃんを持って帰って来たから、情報を元にまた預かるかもしれない。謎々が紐解かれていることに、心が躍る親方だった。



 夕方。北西支部に着いた3人は、正面玄関の前に降りて龍を空に帰した。剣を広間に運び、総長は隊長たちを呼んで『必要分を抜いたら、他の支部に回す』と伝えた。


「ポドリック。鎧、受け取れたか」


 そこに置いたけど、と総長が言うと、満足そうにポドリックは頷いて礼を言った。ブラスケッドもようやく新しい鎧に変わり、鎧を待っていた騎士の全員がもう大丈夫と聞いた。


 剣も披露され、素晴らしい剣だと皆が喜んでいた。ただ、前回に持ち込まれた剣で大多数が受け取れたので、余った数は多かった。総長はこれを次の支部へ回すと伝えた。


 それからタンクラッドに、夕食の時間まで工房で、と案内する。ブラスケッドは、友達の剣職人が出入りする頻度にちょっと口端を上げて見つめた。タンクラッドはちらっと見ただけ。『泊まってっても良いぞ』片目の騎士に誘われたが、タンクラッドは首をちょっと傾げて、答えずに立ち去った。



 工房に入って、イーアンは火を熾す。帰ってきたイーアンに用があると言って、ヘイズがすぐに入ってきた。『あの。最近イーアンが厨房に入らないので、あの食材を使っても良いか聞きたくて』そう言われて、イーアンは先ず謝り、大急ぎで『使って下さい』と答えた。


「どうしましょう、もう夕食の支度終わっていますね?」


「はい。でも古くなると良くないと思うので、もし使って良いなら。干物は私が揚げようかと」


 ひえ~素敵~! 今夜はお願いして良いか、と。来客もいる理由を話すと、ヘイズは何度も笑顔で頷いて『大丈夫です。彼のためにも、私はあれを揚げたいと思って』と答えてくれた。良い人ヘイズに心から感謝し、今夜の揚げ物をお願いした。


 イーアンがヘイズにお礼を言って、扉を閉めると、ドルドレンは執務室へちょっと行って来ると言ってすぐに出た。


 イーアンとタンクラッドが工房に残り、タンクラッドはイーアンに促す。


「お前。お皿ちゃんはどうだった」


 机に置かれた白いお皿ちゃんを見て、親方が謎の答えを求めたので、イーアンはお皿ちゃんの側に寄って、その絵を見せた。『はい。ドルドレンにも後で説明しますが。これは馬車の民の持ち物ではありません』それを先に伝えた。

お読み頂き有難うございます。

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