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魔物資源活用機構  作者: Ichen
空と地下と中間の地
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528. 魔物製の剣と魔物製の盾

 

「オークロイの鎧もそろそろ取りに行かないといけません。もう10日近く経ちました」


 ミレイオの家の坂下で龍を降りたイーアンは、親方に言う。『オークロイ。あの親子か』以前自分が運んだ時は袋で下げた、と教える。『ミンティンに積んでな』な、と龍に言うと、ミンティンは不満そうに頷いていた。


 ミンティンを待たせることにし、そこで眠ってもらう。二人はミレイオの家に歩く。雪も融け始めたのか、今日はイーアンにも無事な道(※雪があるとコケる)。


 玄関の扉を叩くと返事がして、ミレイオが開けるなり『あら。男付き』と真顔で言う。


「何だ。その言い方は。イーアンにとんでもないことしやがって」


「あ~ 見張りってこと。バッカねぇ」


 アハハハと笑うミレイオは、イーアンの背中に手を添えて中へ入れる。『コイツにまで喋んなくても良いのに』神経質でしょ?と鳶色の瞳を覗きこんで笑う。


「あなたが私に教えてくれた、と話したかったのです。でも違うことだけが彼の脳裏に残ったようです」


「しょうがないわよ。タンクラッドはやらしいから」


「やらしくないっ」


 ちらっとミレイオは剣職人を見る。『何よ。やらしいわよ、あんた。私はこの子に手を出すことないけど、あんた出しそうって分かるもの』見りゃ分かるっつーの、と吐き捨てられ、親方は黙った。


「おいで、イーアン。持ってくんでしょ?今日包んであるから、一緒に運んであげる」


「ミレイオ。タンクラッドが一緒に支部へ運んで下さるって」


「あん?タンクラッドォ?いい、いい。私がついてくから。イオライセオダで降ろしなさい」


「お前が決めるなっ」


 煩いわねぇ、と鬱陶しそうにミレイオは剣職人を見る。包んで持ち手だけ出した盾を、ひょいひょいと4つ持ってから、イーアンに最後の一つを渡す。


「ほら。あんた要らない」


「ミレイオが決めることじゃない。俺だって剣があるんだ」


 はぁ?だるそうなミレイオ。背中に2本の剣を見た後、舌打ちして『メンドい』と一言落としてから、玄関に盾を運んだ。


「ねぇ。ちょっと、あんたのこれ。上着どうした。この前より酷くなったじゃないの。穴?焼けたの?」


 イーアンはイオライの魔物退治で酸がかかったことを話す。『作り直さないといけません、春だけど』ちょっとしょんぼりして、上着を見つめる。

 ミレイオはそんなイーアンを見て、可哀相に思う。忙しくて直す暇もない。でもこの上着が好きなんだろうなと分かる。ボロッてなっても、着てしまう服はある。


「ちょっとお待ち。ここで待っておいで」


 ミレイオは二人を玄関で待たせて、すぐに戻ってきた。手にミレイオの服を持っている。『これ。ちょっと大きいかな、でも。丈はそんなでもないから、着なさい』イーアンの上着を脱がせて、自分の上着をかける。


 ミレイオの趣味、と分かる上着。黒い革のぴったりした上に、腰から下が広がる。凄い量の鋲が打ってある。使うのかどうか分からないベルトも、肩から背中にかけてくっ付いている。


「あ。似合うじゃない。あんた白い印象あるけど、格好イイわよ。肩もそんな大きく見えないし、これ小さめだから。これ着て良いわよ。で、こっちの。あんたの白いの、私が直してあげる」


「え。でも。私が魔物退治すると上着が傷みます。それに直すって、自分で」


 ミレイオはイーアンの肩を組んで頬にキスする。タンクラッドが睨む。『いいのよ。それはあげる。白のこれ、私っぽく直しても良いなら、時間もあるし直しておく。どう?』ニコッとミレイオに微笑まれ、イーアンは嬉しい。ミレイオのセンスは好きなので是非にと思い、うん、と頷いてお願いした。


「よし。じゃ、これ預かる。それじゃ行きましょ。盾、一個持って。私これ4つ持つから。ほら、あんた。ボケッとしてないで扉開けてよ」


 突然命令され、悔しそうに扉を開ける剣職人の横を、ミレイオとイーアンは通る。扉を閉め、鍵をかけろと渡されて、タンクラッドは嫌々従った。



 龍に乗る時、イーアンを抱えてさっさとタンクラッドは前に座る。ミレイオがじーっと見てから大袈裟な溜め息をついて、後ろに乗った。『やらしい』背中から嫌味を受けるタンクラッド。


「嫌なら見るな。これは俺とイーアンの決まりで了承済みなんだ」


 そうだよな、と確認をする剣職人に、イーアンは苦笑いして頷く。その顔を見れないミレイオは『絶対。無理やりでしょ』と鋭い一言を刺す。『イーアンがそんな状態で良いわけないもの』やだやだ、50近くなったおっさんが・・・ミレイオはぶつぶつと聞こえるように、支部に着くまでタンクラッドを否定し続けた。


 気がおかしくなりそうなタンクラッド。イーアンに回した腕をぐっと絞って、その髪に顔を突っ伏す。『ツライ』ぼそっと落とした声に、イーアンもちょっと笑いそうになるが我慢。ミレイオの毒舌は止まらないので、やんわり頷いておいた。


 充分に痛めつけてから、ミレイオは到着した支部に下りる。剣職人もぐったりして、イーアンを抱えて降りた。『苦しい。心が苦しい』青ざめる親方に、イーアンも同情するが。ミレイオの指摘はそれほど間違えてもいない気もして、どう言って良いのか分からなかった。



「おいで。やらしいおっさんは放っておいて。私の方がまだ安全よって、全然安全だわよ」


 ほれ、と手を繋がれ、タンクラッドから引き離されたイーアンは、今日もギンギラギンでさりげないパンクに手を引かれて支部に入る。元気を失った足取りのタンクラッドは、後から付いてきた。


 広間へ行くと誰もいない。『皆どこなの?ドルドレンは?』ミレイオは盾を置いてイーアンに訊く。ドルドレンを呼んでくる、とイーアンが言うと、ミレイオは一緒に行くと言ってついてきた。タンクラッドは疲れ切っているので、広間の椅子で待つことにした。


 執務室まで来て、イーアンは扉を叩く。それから名乗って開けると、嬉しそうなドルドレンが立ち上がる。


「ドルドレン。盾持ってきたわよ」


 愛妻の後ろから、ギラギラした金属光沢のパンクが出てきて、ドルドレンは固まる。執務の皆さんも固まる。


「おい。挨拶しろ」 「おはようミレイオ」


「そうよ。ちゃんと挨拶はしなさい。おいで、ドルドレン。盾見なさい」


 えっ ドルドレンはイヤ。こんな時こそ『えっと、仕事中だから』といつも煩い執務の騎士を振り向くと『あ、やっておきます』と送り出された(※執務の皆さんにも恐怖)。


 嫌がる仔猫のようなドルドレンの襟首を掴んで、ミレイオはイーアンと手を繋ぎながら広間へ行く。イーアンは伴侶がミレイオを苦手とするのが、ちょっと気の毒。ミレイオは良い人だし、もう少し理解できたらと思う。


 広間に入ると、ぐったりと机に突っ伏したタンクラッドがいた。『タンクラッド。具合悪いのか』剣が背中に2本あるのを見て、ザッカリアの剣を運んだと気がついたが、声をかけても剣職人は小さく頷くだけ。


「自覚があるんじゃないの。イーアンをさ、龍に乗る時。股の上に乗せるのよ、コイツ。だからやらしいヤツって言ってやったら、これだもの。ほら、起きなさい。ドルドレン連れてきたわよ」


 人格否定されたのか、と若干同情する総長。でも股の上は確かにやめろ、と毎回思うから。これはこれで良かったのだと思うことにした。

 それと。ミレイオにもちょっと思うことありのドルドレン。たどたどしく訊ねる。


「聞きにくいが。詳細は聞いたが。悪く取らないでほしいが」


「何よ。長いわよ前置き」


「そのう。この前、イーアンの前で脱いだと。内容は知っているが。教えるというか、だが、その、他に方法はなかったのかと・・・・・ 」


 じっと灰色の瞳を見るパンク。耐えられず、逸らす総長。怒らないでーっ 叱らないでーっ ドルドレンは心の声で叫ぶ。イーアンは伴侶の背中に手を置いて、そっと撫でた。


「ない。私の方法ってあるもの。だけど別に変なことしてないでしょ。驚かせただけで。そんなこと心配してるの?」


 私を誰だと思ってるのよ、ミレイオ様よ、とパンクは頭を振った。『バカね。手を出すなら、とっくに出してるわよ。この子はそうじゃないの、そういうふうに扱いたくないの。分かりなさい、それくらい』困ったように笑うミレイオ様。


「ほら。脱線ばっかしてないで、仕事見なさいって。イーアン開けて。盾出すわよ」


 イーアンとミレイオは屈んで、盾を包む革を取り除く。


 ドルドレン。さっきから、イーアンの上着が気になるのでそれもちょっと訊いた。『ミレイオが羽毛上着を直して下さるのです。これを代わりに着なさいって。頂きました』嬉しそうな愛妻に、ドルドレンも頷く。愛妻、さらにワイルド街道まっしぐら。いかつい上着に、最強の道を打破する勢いがついた気がした。


 そうして登場した盾に、ドルドレンも目を丸くして、背を屈めて間近で見る。『何だこの盾。こんなの普通の職人に出来るか?』急いでミレイオを見ると、ミレイオは『さて』と可笑しそうに笑みを浮かべて首を傾げた。


「出来るんじゃないの?作り方は結構、分かりやすい説明付きで回すつもりよ。複製を作るくらいなら、普通の職人でも出来ると思うけど。ただ、これまでの盾とは違うからねぇ、受け入れればの話ね」


「一つ、値段。どれくらいする?」


「うーん。私が作ったこれ5つは、あんたたちの盾の3倍って感じで良いわよ。材料はそっち持ちだし。だけど、普通に盾職人の工房に複製作らせるなら、1,5倍くらいにしといたら。原型は私のものだもの。そのくらいはね」


 分かった、とドルドレンも了解する。3倍程度の金額でこれが買えるのかと思うと、それも凄いと思う。タンクラッドの剣だって、オークロイの鎧だって、それが最低限で済んでいるから。これを一般に卸すとなると、差はつけないといけないな、と感じた。オーリンの弓もここに加わると考えたら、とんでもないことになってる・・・ドルドレンは笑ってしまった。


「凄い。素晴らしい」


 盾を見て、触って、手に持ち、ドルドレンは笑いながらその素晴らしさに感服した。盾を置いてから、ミレイオに笑顔を向け、両腕を広げた。ミレイオは意外そうに笑みを浮かべて、抱き寄せた。


「有難う。こんな素晴らしい盾を作ってくれて」


「ドルドレンもちゃんとこうしてお礼出来るのね。イイコ、イイコ」


 抱き締めたミレイオに誉められて、ドルドレンも笑った。ちょっと顔を離して、二人は目を見て笑う。


 イーアン、心がやばい。パンクな彼もありっ! ひょえ~ 写真欲しい~っ ミレイオ、カメラ作って~(※旅に出る前に)パンクと総長の構図がっ 構図っ 絶対こんなのもう見れないっ


 二人の抱擁にうんうん呻いて悩むイーアン。タンクラッドがちょっと心配そうにイーアンを伺い『大丈夫か』と小声で体調を訊く。顔を両手で押さえて、はーはー息切れしながら頷くイーアン。


「体調が良くないのか。ちょっと外、出るか(※自分が出たい)」


 新鮮な空気が必要だな、とちょっと聞こえるように言いながら、タンクラッドはさっと総長とミレイオを見て、そそくさイーアンの背中を押して、広間を抜けて玄関外へ出た。


「逃げたわね」 「うむ。息が詰まりそうだったのだろう」


 抱擁を解き、ドルドレンは改めて握手をしてミレイオにお礼を言う。ミレイオはドルドレンの首に手を引っ掛けて引き寄せ、額にちゅーっ・・・(※イーアン見逃す)ドルドレンはちょっと照れた(※厨房担当はガン見で見ていた)。


「イイコね。ドルドレンも。ちょっと外、行くか。盾一つ持っておいで」


 ミレイオはそう言うと、盾をドルドレンに選ばせて、一緒に外へ出る。玄関外で、タンクラッドが青空の下で息を吹き返していた。気配で振り向いて、嫌そうな顔をする。


「ドルドレン。盾を貸して」


 言われて渡すドルドレン。盾の持ち手に肘から上をぐっと突っ込んだミレイオは、すたすたとタンクラッドのところへ行き、『あんたの魔物製の剣。見せておやり』と盾を剣職人に向けた。イーアン驚く。ドルドレンも驚いて、ささっとイーアンに走り寄って連れ去る。


「何だ。お前の盾に亀裂でも入れたいのか」


「あんたの剣が刃毀れしても良いけど」


 剣職人はちょっと総長とイーアンを見て、鼻をちょいちょいっと擦ってから、ザッカリアの剣を出した。


「うお。あれか。ザッカリアの剣は」


 ドルドレンは陽光の下にぎらつく新しい剣に見入る。イーアンはドルドレンに肩を抱き寄せられ、じっと二人を見つめる。『これ。他の方も見たいのではありませんか』伴侶に呟くと、ドルドレンもハッとして、『見せよう』とイーアンを見て頷いた。


「待ってくれ。部下を連れてくる、あいつらにも見せてやりたい」


「何?」 「あん?」


 二人の職人が振り向いたので、ドルドレンは待ったをかけてから、急いで裏庭へ行く。それから勉強部屋に走って、ザッカリアを呼び、小脇に抱えて連れて帰った。『お前の剣だぞ』ザッカリアを下ろすと、子供は大喜びで最前列へ走った。


 ドルドレンが戻ると、既に玄関が埋まっている。部下たちがわぁわぁ言いながら詰め掛けていた。『討ち合いか?』クローハルがドルドレンに訊く。『違う。それぞれの性能だ』それを見れる、と伝えた。


「何だか。大袈裟になったわねぇ」 


「お前がおかしなこと言うからだろう」


「減らず口。もう良いでしょ、おいで」


「知らないぞ。寸止めは俺の剣にないからな」


「あんたみたいな自惚れ坊主が一番ムカつくのよ。おいで、タンクラッド」


 ミレイオはニヤッと笑って、盾のないほうの腕を前に出し、ちょいちょいと指で招く。タンクラッドもニタッと笑う。『後悔するなよ』その一言と共に、片手に持ったザッカリアの剣を盾目掛けて横から斬り込んだ。


 ッッガアッ!!と削れた音がして、盾を払うミレイオ。『刃毀れ、大丈夫ぅ?』笑いながら盾を持ち直して肩を回した。タンクラッドはちょっと面白くなさそう。


「刃毀れなんかあるわけないだろ。俺の剣だぞ。そっちこそどうなんだ。削れただろ」


「期待し過ぎよ。表面走っただけでしょ。もう一回やってみな」


 タンクラッドの構えが突きに変わって、踏み込みと一緒にガンッと盾を真正面から突く。足をざっと広げて、正面で受け止めたミレイオ。『力だけはあるのよね、あんた』でもムリね、と口端を上げる。


「そんなものなの。私も行くわよ」


 そう言ったミレイオは盾をぐるっと回して、タンクラッドの腹を打つ。『ぐおっ』腹を横から打たれたタンクラッドは、ぎっと歯を噛みしめて、剣をミレイオに振り下ろす。『バカ』笑ったミレイオが即行、自分と剣の間に盾を滑り込ませた。


 振り落とした剣が盾の表面を流れ、その流れと一緒にミレイオが後ろを取り、盾の縁で剣職人の背中を打とうとする。急いで剣を背に回して、向きを変えたタンクラッドは盾を止める。


「うう~ 良いんじゃないの、今のは」


 剣で止まった盾を壁に、ミレイオは踏み込み、タンクラッドの腕を片手で握って捻る。タンクラッドの剣を持つ手が勢い良く、ミレイオの頭に横から振られ、ミレイオは体を反らしてそれを避け、捻った手首を持ったまま、盾のある腕でタンクラッドの頭を打った。


「うわっ」


「どうした坊主」


 頭を打たれてよろめいたタンクラッド。ぐらっと来たのを堪えて、ミレイオに駆け出す。『やる気か、ミレイオ!』ずがんっと剣を下から振り上げる。盾を真下に向けた腕で、剣を止めたミレイオはその腕にヒョイと乗る。


「やる気じゃなかったの?」


 盾持つ腕の上にしゃがみこみ、ミレイオはタンクラッドの顔の間近に顔を寄せて笑った。その瞬間ぐらっと盾が揺れ、『おおっと』ミレイオは慌てて降りる。剣が吹っ飛んできて、急いで盾をかざした。


「知らないぞ。本気だと」


 タンクラッドは首を振って、剣を両手に持った。『本気だって言ってるじゃないの』ニヤッと笑うミレイオに、狙いを定めて剣を連続で突き出した。ミレイオも遊ぶ余裕が消え『おおおっ』突き出される切っ先にバランスをとりながら、盾で捌き続ける。



 ギャラリーは歓声も出せず。目の前で繰り広げられる、職人同士の武器と防具の勢いに釘付け。


「た。盾、盾って。ああやって使うのか」


「初めて見た。あんな使い方すると、盾が武器になってる。騎士修道会の使い方と違う」


「剣が凄い。こんな真正面から突き続けて、剣がぶれもしない、(しな)りもしない。なのに何ともないなんて」


「あの人たちって。職人なんだろ?」


 二人を見つめるギャラリーは、職人の強さに驚愕する。勿論、後ろで見ている、ミレイオと同じ50代のコーニスとパドリックも眉を寄せて見守る。


「(パ)あんな動き。どうして出来るの」


「(コ)その道の人だから・・・じゃないの。私はムリ」


「(パ)普通の人なのに。でも騎士の私もムリ」


「(コ)戦い方が、うちの部下よりイケてる気がする。でも私よりも動けてる気もする」


「(パ)私あれやったらすぐ、剣で首飛ぶと思う。一回目で死ぬ恐れが」


「(コ)ジョズリンさんだって47って聞いたよ。何で、天は二物以上を与えるのか」


 ブラスケッドもニヤニヤしながら見ていた。『あいつなぁ。もったいないな。何で職人になんかなったんだか』動きが良いよなと横のポドリックに言う。振られたポドリックも苦笑いする。『あんなの部下にしたら、こっちが言うこと聞かなきゃいけないだろ。職人で何よりだ』信じられない、と呟いた。


 イーアンもドルドレンも唖然として見つめるのみ。尋常じゃない強さだと見せ付けられる。横でベルが、タンクラッドを応援していた(※そっちの扉が開いてる人)。


 ロゼールもヘイズたちと一緒に見ていて、盾を見つめる。あれ。あんなふうに使うなら。もしかして、自分も動けるかも、と初めて武器を欲しいと思った。そんなロゼールの横顔を見て、フォラヴはそっと教える。


「ミレイオに相談したらどう?私も相談しましたよ。武器らしくない武器も、あの方は素晴らしい才能で作ってしまう」


 フォラヴに言われ、ロゼールも頷いた。『うん。後で・・・帰る前に聞いてみるよ。相談』お皿ちゃんと一緒に動いて、盾もあれば。そんなことを思うロゼールは、ミレイオの盾の使い方に心を奪われていた。



 こうして。二人の職人が戦い続けて、ミレイオが『熱い』と上着を脱ぎ、タンクラッドもふーっと息を吐いて、剣と上着を脱いだところで、総長が止めた。


「有難う。凄かった。もう充分だ。滅多に見れない素晴らしい動きを披露してもらえた。部下も勉強になった」


 総長が部下を振り向くと、拍手が沸いた。拍手を合図に、ミレイオは盾を持ったまま、上着を肩に引っ掛ける。タンクラッドも上着と剣を持ち『疲れた』と苦笑い。ミレイオも『あー久しぶり』と首を回していた。


 拍手の中、二人の職人は広間へ促されて入る。昼食を一緒に食べてほしいと願われて、二人は目を見合って笑った。

お読み頂き有難うございます。

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