498. イーアン攫われる
「ふざけるな。イーアンは俺の妻だ。どこの誰か知らんが帰れ」
「バカを言うな、ドルドレン。お前は太陽の民、馬車の一族。精霊に愛された旅する人間。お前の先祖はズィーリーを奪った。もういいだろう。この中間の地の主たる人間が、聖なる仕事を二度も受け取った。それで充分のはずだ。イーアンは俺の相手だ。彼女は俺のために来た」
ドルドレンの怒りは一気に燃え上がる。コイツの話している意味も分からない。自分がどこの誰でも関係ない。イーアンがどこの誰でも関係ない。俺の妻だ。彼女の夫は俺だ。
「渡さん。とんだ勘違いだ。精霊が俺たちに約束させた。俺たちは決して離れてはいけないと。愛し合って助け合って先へ進めと。例え精霊がそれを託さなくても、俺たちはそうする。断じてお前の相手などではない」
ドルドレンの震える怒りの声を聞きながら、男の龍は面白くなさそうに目を細めて腕を伸ばす。ドルドレンの力が抜け、びっくりしたドルドレンは急いで腕に必死に力を入れようと焦るが、どうにもならない。
そして背後では扉を叩かれ、自分とイーアンを呼ぶ仲間の声が聞こえる。『総長』『イーアン、大丈夫』『総長どうしたんですか』『ドルドレン、ここを開けろ』叫ばれる声に答えることも出来ない自分は、首を掴まれているような苦しさにいる。
イーアンは震える体のまま、すっと伸ばされた男の腕に引き取られた。見ている前でイーアンを奪う男に、ドルドレンの自由になる灰色の瞳だけが過去にないほどの怒りに満ちてぎらつく。
「お前と。俺と。比べる方が愚か・・・・ お前は所詮、人の子だ。それなりに優秀な人の子とは言ってもな。坊主。俺が何百年、この女龍を待ち侘びたか。想像もつかないだろう。ズィーリーをお前たち太陽の民に奪われた時。俺がどれほど。どんなに。愛した女を失う痛みに耐えたのか。
今度はお前の番かな。しかし仕返しをしたくてじゃない。俺の番だと言うだけのことだ。彼女がいてこそ、俺と彼女の子供が生まれる。ズィーリーも素晴らしかったが、イーアンはそれ以上だ。あの一瞬で俺に届くほどの気力を放った」
あれがなかったら気にしていなかったかもな、と少し笑った男の龍は、腕に抱いた震えるイーアンを優しく揺らす。『そっくりだ。しかし、ズィーリーよりも・・・フフ。この髪。この顔。この体。俺の知っている全てが生きて再び。傷だらけの顔、イーアンは逞しいのか。何て小さい。こんなに軽くて。あれほどの力を出す。あれ以上も』嬉しそうに独り言を言い続け、そっとイーアンの頭に口付けた。
ドルドレンは体が動かない。自分の怒りの戦慄に汗が吹き出る。ドルドレンは息を荒くし、目を凝らすしか出来ない無力さを恥じる。これほどの差があるなんて―― 悔しさにどうにもならない。助けたいのに体が動かない。
男の龍はイーアンを見つめてから、ゆっくりと窓を離れる。それからドルドレンに微笑んだ。
「旅か。彼女なしでは勝てるのかどうか怪しいもんだ。イーアンは最強だぞ。ふむ。俺と彼女で話し合ってやろう。オリチェルザムに、この中間の地を潰されても面倒だからな。だがやっと逢えたんだ。今日はもらう」
からかっているのか。男の龍は太く逞しい腕にイーアンを包み込んで、光に再び閉ざされ、その強大な光は勢いを上げたと同時に、僅か数秒で流れ星のように空に消えて行った。
ドルドレンの力が戻る。ドルドレンは窓を掴んで吼えた。返せ、イーアン、と何度も叫ぶ。夜空に吼えて吼えて、たまらずに、壁を殴って寝台をひっくり返した。があああと吼えた声に、扉の向こうで開けようとした部下が静まった。
「イーアン!!俺のイーアンを返せ!!!」
ドルドレンは涙も出なかった。怒りが自分を支配する。扉の向こうから『ドルドレン』と仲間の声が再び響いた。心臓の鼓動が体を突き破りそうな勢いで動いている。ドルドレンは鍵を開けて扉を押した。
「ドルドレン。イーアンは」
クローハルが真っ先に部屋を見渡した。ハルテッドがすぐに入って『イーアン、イーアン、どこ』と探す。ザッカリアが奥に立っているのを見つけたドルドレンは。すぐにザッカリアに近づいて肩を掴んだ
「ザッカリア、見えるか。イーアンが連れて行かれた。教えてくれ」
揺らされて怖がるザッカリアに、ギアッチが急いで総長の腕を掴んだ。『落ち着きなさい。話を聞かせて』ギアッチも既に彼女がいないことを知っていた。ずっとザッカリアが教えてくれていたことが、すぐに現実になってしまった。
息の荒い総長を、フォラヴが側に来て見つめる。空色の澄んだ瞳で哀れみを湛え、総長の腕に手を置いた。
「話して下さい。取り戻しましょう」
「そのために俺は。ここにいる。約束を果たす」
シャンガマックが側に来て、総長の背中に手を当てた。その顔は静かだったが、憤怒に満ちていた。『もう一人。力になれる人がいます。タンクラッドさんと会いましょう』冷静に、しかし冷たい感情で漆黒の瞳を総長に向けた。無駄な時間はないと教えるように。
総長は怒りと冷静さを必死に並べる。どうにもならない怒りを宥めながら、すぐにイーアンを取り戻す方法を理解しようと感情の手綱を取り始めた。
「イーアンの。イーアンの腰袋にタンクラッドを呼ぶ珠が」
それを聞いたシャンガマックはすぐに隣の部屋に走る。そして腰袋の中の珠を5つ、取り出してすぐに顔を上げて大声で聞く。『どれだ、総長』さっとそちらを見たドルドレンはすぐに近寄り、イーアンとタンクラッドの交信する珠を捜す。
「俺も見たことがないのだ。だが、俺の珠がこれだろ。それで。二つ同じ色があるのは、違う。これは・・・もしかして目の色か。そうするとこれはオーリン。タンクラッドの目はイーアンと同じ。琥珀色のこれか。これが恐らく」
すぐに琥珀色の珠を握り締め、ドルドレンは必死に呼ぶ。一秒でも惜しい。涙が突き上げる。泣かないように耐えながら、タンクラッドを呼ぶ。応答が出た。
『イーアンか?違うな。誰だ』
『タンクラッド。イーアンが攫われた』
『なんだと、総長か。どこだ。今お前はどこだ』
『支部に』
そこから先は応答が消えた。珠の色の光が沈むのを、ドルドレンとシャンガマックが見つめる。シャンガマックは総長に訊いた。『タンクラッドさんは』ドルドレンは頷いて『彼はここへ来る』と答えた。
それからものの12~3分で(←ミンティン:時速240㎞)髪と睫に霜をつけた親方が支部に入ってきた。背中に時の剣を背負い、武装した鬼のタンクラッドが、北西の支部に怒鳴りながら上がりこんだ。
「総長。バカ野郎。この役立たずめ!何を暢気にこんな場所でうろついてるんだ。オーリンを呼び出せ、オーリンを呼ぶんだ!」
怒りで歯軋りをするタンクラッドは、総長にずかずかと近づいて肩を容赦なく押す。『聞こえたか。腑抜けになってる暇なんてないぞ。オーリンを呼べ』同じように怒りに燃えている総長は、タンクラッドの胸倉を掴んで言い返す。
「こいつ。何も知らないくせに」
「何も知らない俺に指図されて悔しいなら、正解を知っている自分がなぜ実行しない。なぜ俺を呼んだ」
胸倉にある総長の手首を握り、ぐっと絞って真上に引き上げる、鬼の顔に歪む親方。背中の剣を片手であっという間に引き抜いて、総長の首の横に当てた。部下はさっと下がり、剣を持つものは引き抜く。総長は怒りと空しさで荒い息を繰り返す。
「死にたくなかったら。生きてイーアンに会いたかったら、今すぐ動け。
俺へのくだらない悔しさに時間を使うほど、俺たちに余裕はないはずだ。まだ続けるなら邪魔なだけだ、今すぐ死んでしまえ」
俺はイーアンを助ける、そう吐き捨てた親方は、さっと剣をしまった。そして振り向いて、シャンガマックの姿を見つけて怒鳴る。『早くしろ。相手は空の上だ。こうなるんじゃないかと思ったんだ。おい、オーリンだ』突っ立ってないで動け!!と叫ぶ。
シャンガマックはイーアンの腰袋を探り、弓職人と思える黄色い珠を取り出した。ザッカリアは目を凝らし空間を見る。今こそ、自分が旅の仲間となる最初の試練と知って、奪われた母・イーアンを捜した。
*****
体の震えが静まりつつあるイーアンは。閉じていた目を少しずつ開けては、呼吸を整えて、自分を包む腕と胸に顔を寄せていた。
ドルドレンだと思い込んでいた相手が、実は全く違うと気が付いたのは、意識が利くようになって数秒後だった。
温もりの温度。抱き締める腕の形に、感覚的に違うと気付いて目を開けた。ハッとして見上げると、自分を見下ろす男の人がいた。眉の上、額から2本の大きな捻れた角が生え、そのすぐ後ろからも角が出ている、大きな男の人が、自分を腕に抱えて微笑み続けている。
驚いて、急いで降りようとするが、ぐっと締められた。『誰なのです。あなたは誰』イーアンが怯えて叫ぶと、その男は静かに目を閉じて、両腕に抱いたイーアンを丁寧に胸に抱き寄せた。
「俺か。俺はずっとお前を待っていた。いつ出逢えるかも分からず、悠久の時間を耐えた男だ。お前の本当の相手、龍のルガルバンダ。呼んでくれ、俺の名を。ルガルバンダとその声で」
「ルガルバンダ。お聞かせ下さい。私はなぜここに」
ルガルバンダは、愛しいズィーリィーの化身に頬を当てようとしたが、イーアンは仰け反り、両手で彼を止めた。
「なぜだ。俺を愛していないのか」
「どなたと思い違われていますか。私はイーアン。もしやかつての、ズィーリーを重ねていらっしゃいますか。間違いです。お止め下さい」
「ドルドレンから折角、取り戻したのに。ようやく会えたというのに。何と冷たい」
ドルドレンから引き離されたと知って、ぎっと睨むイーアン。男の逞しい胸を、両手で思い切りドンッと突き放す。『お離し下さい。私はイーアン。誰の代わりでもありません』歯を噛みしめ、敵意丸出しのイーアンに、反射的に腕の力をこめたルガルバンダは少なからず驚いた。
「知ってる。イーアンだと分かってるぞ。なぜ怒るんだ。ズィーリーは俺を愛した。お前も」
「何を仰っていますか。別人ですよ。そっくりだろうが何だろうが、私はイーアン。私は、ドルドレンが名付けたイーアン。その他の誰でもない。降ろしなさい、この腕を解いて」
「ズィーリーは俺を受け入れた。イーアン。俺を覚えていないのか」
「知るか、離せっ!」
思いっきり腕を突いて、手首の痛みも気にしないイーアンは吼えて下に落ちる。慌てるルガルバンダは腕を伸ばしてイーアンを掴んだ。『何をする、まだ空中だぞ!死ぬぞ、その体では』言い聞かせるように叫ぶと、イーアンはそれでも、男龍の腕を渾身の力で握り締める。
「離せっ。私はドルドレンのもとへ帰る!名乗った所で、勘違いしてるヤロウの腕にいると思うな!」
ふざけやがって!と怒鳴り、思いっきり両足でルガルバンダの胴体を蹴るイーアン。『私をドルドレンに戻せ!』男の龍は目を丸くする。何という猛々しさ。その体から放つ龍気の凄まじい勢いに、一瞬圧される。
「地上に落ちるぞ!死んでは」
「死んだほうがマシだ!!お前を呪って、ドルドレンの側に意地でも生きてやるっ!!」
クソ野郎、とイーアンは目一杯体を捻って、蹴りを男の頭に打ち込む。すぐに止められて握られる足首の痛みに歯を食いしばった。『殺すなら殺せ。お前なんかに良いようにされる私ではない』睨みつけて足首の骨折間際の痛みに叫ぶ。
ルガルバンダは大きな息をついて、掴む手の力をイーアンが逃げない程度に留め、足首を掴んだままイーアンをぶら下げて、そのまま上昇した。
「降ろせ!今すぐ降ろせ!!このクソ野郎、殺してやる」
吼え猛る荒ぶる女龍にルガルバンダは何も言えない。呆れてというか・・・これほどまでとは、というか。
殺されそうだろうが、体を壊される痛みだろうが、何も躊躇わずに罵倒し、攻撃して逃げようとする勢い。何という激しい気性だろう。
彼女は多分、本当に怖れていない。もしこのまま地上に落下しても『本望だ』と叫ぶ。それが分かるだけに、ルガルバンダは苦笑いする。
「全く。とんでもない女が来たもんだ。ズィーリーはここまでじゃなかった」
「知るか!私は私だっ。勝手に比べて好き勝手言うんじゃねぇっ」
このままドルドレンに戻したほうが良いのか(※ちょっと諦めモード)。少しルガルバンダは考えた。が、止めた。やはりもう少し知りたい。これが最強と誰もが認める女龍だと思うと、もうちょっと手懐けたい気持もあった。
会話をすると激しくなりそうなので、ルガルバンダは苦笑いしながら、イーアンの片足を掴んでぶら下げ、自分の根城へ戻った。大人しいわけもなく。ぎゃあぎゃあ喚きながら、隙を突いては蹴りを入れてくるイーアンに、仕舞いにはルガルバンダも大笑いしてしまった。
「よくこんな女が外の世界で生きられたもんだな。全く、これほどとは。まぁ」
「うるせえっ!!嫌なら離せ、この人攫いっ 恥知らずめ!誰が好きでこんなとこまで来たと思ってやがる。頼んでねぇぞ!降ろせ、帰せ」
「こら」
暴れ続ける猛獣イーアンに笑うルガルバンダは、足を持つ手を引き上げて、顔の高さまで逆さ吊りのイーアンを持ち上げた。
「いい加減に黙れ。今のお前が敵う俺じゃないぞ。もう着いてしまった。諦めろ、俺の家だ」
「勝手に連れてきてふざけんなっ お前に指図される覚えはねぇっ!」
掴まれた足が抜けそうなくらいの勢いで、イーアンは体を全力で捻って顔に蹴りを入れようとする(※めげない)。笑うルガルバンダは、吹っ飛んでくる足を止めて、困ったように顔を近づけた。
「分かったよ。お前はズィーリーじゃない。彼女も戦士だったが、こんなに荒ぶってはいなかった。こんな女、初めて見た。お前は別人だな、イーアン」
「さっきからずっと言ってんだろ。今更繰り返して何になる。早くドルドレンの元へ戻せっ」
「何という荒々しさよ。これはさすがに、龍になっても変わるまい。龍に変わる方法を未修得で何よりだ」
殺されかねんとルガルバンダは苦笑い。大荒れのイーアンにどう話をしようかと考えつつ、家にとにかく入れる。
離せ、帰せ、と喚き続けるのも押さえなければ。黙らないと、他の男の龍が来る恐れもある。これだけ暴れて、ぐんぐんと気が増えていると。
「もう気づかれたかもな」
「なんだと」
イーアン、直感的に黙る。『気づかれた』とこの男は言った。こいつの顔つきから、望んでいない誰かが来るのか。ということは。チャンスかもしれない。それに――
急いでイーアンは聞こえていた言葉を整理する。ここから逃げるチャンスが来るなら、私に出来ることは。
さっき『龍に変わる方法を未修得』と、ルガルバンダは言ったのだ。そして思い出す。自分が変われることを。
さっと、いる場所を見渡すイーアン。大きな白い建物の中にいるが、開放的で窓等ない。壁に柱で、神殿さながらの印象の建造物。ここは空の上。イヌァエル・テレンだろう、ということは。
次々に思い出すことが繋がる。この男が来た反応で、部屋にいた自分の体が熱くなったのかもと思えば・・・こいつがいる時点で、こいつの気も私は使えるのでは。場所も龍気が満ちている。
もう一つ、体が気が付く。本能が気がついたのか、他の大きな気も、自分の近くに迫っているような・・・なら。ファドゥが教えてくれたように、イメージして。私が龍の世界の自分を受け入れれば、もしかして!
宙吊りのまま、急に黙って自分を見つめるイーアンに、ルガルバンダはちょっと笑って見ていたが、ふと気がつく。イーアンの目つきが違う。『しまった』彼女が何かを企んだと気がついて、男龍は迂闊だった自分に舌打ちする。が、遅かった。
あっという間に、自分の体や、周囲に張り巡らせていた龍気が震え始め、振動が激しくなる。『ダメだ、やめろ』イーアンが白く光始めて、慌てたルガルバンダは、掴んだ足首に力を入れようとして、腕ごと弾き飛ばされた。
凄まじい速さでイーアンの体が、見る見るうちに真っ白く光り、膨れ上がっていく。振動が振動を呼び、イーアンの龍状態は家を壊す。壊して尚も体は巨大化し、呼応する気を全て吸収する龍が立ちはだかる。
「こんな。こんな。何だ、これは。ズィーリーはこんなではなかった」
ぐーっと上に伸ばした首が、突然、真下にいるルガルバンダに向けられ、かーっと口を開けて牙を剥いた。動けないルガルバンダ。驚きと畏怖で、目の前に現れた女龍に魅入る。
その様子を離れた場所から見ている者も、その場で止まった。『誰だ。あれがそうか』一人の男が呟く。横にいるもう一人の男も、少し間を置いて『それしか思いつかないだろう。あれが女龍だ』ぼんやりとした声で答えた。
「俺の。俺たちの気を使っている。吸われて戻され、増やされて減らされる。使い倒されそうだ」
後ろにいた男も、自分たちの状態の思わしくなさを言葉にする。その横にいた男は頷く。『ズィーリーと似ていると聞いたが。どうも違うな。食い殺されそう』ちょっと笑ったその男の顔に、他の男もつられて笑う。
「ルガルバンダは最初の犠牲者か。ハハハ、もうちょっと我慢できたら良かったのに」
「どうする。行くか。あの女龍に自己紹介したら、次の瞬間、胃袋行きかもしれないが」
はーっはっはっはっは・・・・・ 愉快そうに笑う全員。食わなくても良いのに食いそうだな、と笑う(※多分イーアンは食べる)。
「いや。行こう、俺はあの女龍を見たい」
白赤に体を輝かせた男が笑みを浮かべて、イーアンとルガルバンダのいる場所へ滑り出す。真っ直ぐに頭から伸びた10本の角と、背骨に沿って突き出る、ミンティンの棘のような鰭を持った男は『面白い』と呟いて向かう。
「そうか。取られる量も凄まじいが、戻ってくる量の気も漲る熱さ。これは行く価値がある」
銀色がかった赤銅色の体の男も向かう。額から縦に2本の反り返る角を持ち、体の側面に輝く鱗を並べた男。背中に畳んだ大きな翼、それを広げて飛んだ。
この際だから、と次の男龍も向かい、もう一人の男龍も、首を振って笑いながらついて行った。彼らの前で、仲間のルガルバンダが、イーアンに上半身丸ごと噛み付かれていた。
お読み頂き有難うございます。




