444. 騎士修道会本部で相談
「さあ。では行かないと」
イーアンの一言に、ドルドレンは愛妻(※未婚)を見つめる。『どこへ』答えは分かるが、訊くドルドレン。
「王都です。本部は王都ですね」
「倒れてから3日目で、もう約束を破るのか。イーアン」
イーアンはえへっと笑った。ドルドレンはコロッとやられた。『ダメだよ~』困るドルドレンはイーアンを抱き締める。
「遠征が近いのです。皆さんが安心して使えるよう、購入したと言えるよう動かないと。借り物ではなく、ちゃんと買ったものとしてミレイオの盾を渡さなければ」
「でも。これで具合が悪くなったらどうするんだ」
「なりません。ドルドレンと一緒に、皆さんのため、このハイザンジェルのため、この世界のために動くのですもの。具合が悪くなるわけありません」
私はそのために来たんだから大丈夫よ・・・イーアンは微笑む。ドルドレンはぎゅーっと抱き締めて『ああ、心配だ』と悲しんだ。伴侶の心配を宥めて、イーアンは急ごうと促す。着替えなければいけないから、一緒に寝室へ行ってもらった。
イーアンが着替えを選んでいる間、ドルドレンは質問。
「ミレイオは、高くつくから後で良いと言っていた。今すぐじゃなくても。ミレイオだって、今日払わせるような、そんなこと毛頭考えていないだろう」
「もちろんです。あの方は優しいです。でも。作品です、あの方の場合は。タンクラッドやオーリンも近い存在ですから作品を作りますが、ミレイオは本当に芸術家です。盾職人を名乗っていますけれど、私には分かります。
そんな方の作品を受け取るに当たり、こちらの求める想いの証明を、その場でお見せ出来ないのはいけません。芸術家の仕事は業務だけではなく、精神と探求の表れです。もしすぐにお支払いが難しくても、お渡しできる状況は整えておかねば」
イーアンの言いたいことは何となく分かるが。ドルドレンは、そこまでしなくても良いような気がしていた。
とはいえ。愛妻(※未婚)は、こうなると止まらないのも知っている。具合も心配だし、すぐに終わるよう、そして彼女が嫌な思いをしないで良いよう、付き合うことにした。着替えるイーアンを見守りながら、ドルドレンはいろいろと思う・・・が。
「その格好で行くの」
「はい。これと青い布。と、羽毛です」
「どうしたのそれ」
「作りました。余った部分をちょっとずつ、使って」
着替えている最中から、何か見たことない服だと思っていたドルドレンは、立ち上がったイーアンを見て、呼吸が止まりそうになった。
イーアンは自分を見つめる伴侶にちょっと笑って、髪をぎゅっと後ろへまとめた。ぐるぐるっと革紐を巻いて結び、そこに一本の串を刺した。その串は彫刻した骨だった。そして冠を被る。
「行きましょう。本部」
ドルドレンはイーアンに腕を伸ばし、引き寄せて、じっと見つめて溜め息をついてキスをした。
『イーアンは。どんどん自分らしくなる。この世界が本当の君が生きる舞台か。そうなんだね』と微笑んだ。
イーアンもニッコリ笑って頷く。『私もそう思います』そう答えて、伴侶と一緒に広間へ向かう。ドルドレンも支度。鎧と剣を着けて、白銀の羽毛クロークを羽織った。
「ドルドレンがその格好に変わりますと。もう無敵どころか、この世界の支配者のようです」
「どんな見た目なんだ」
イーアンのメロメロ視線で誉められて、ドルドレンは愛妻を抱き寄せて笑う。『支配者は遠慮する』メロるイーアンを撫でてから(※貼り付いて離れない)一緒に届いたばかりの剣と鎧を少し包んだ。
「思えば。イーアンは鎧じゃなくて良いのか」
「私の場合は、『製作者』の形で伺った方が良いと思いました。私の鎧も魔物製で素晴らしい作品ですが、私は騎士ではありませんから、本部へはこの格好で」
そうか、と納得するドルドレン。そして包んだ荷物を持って庭の外へ出る。眠る多頭龍アオファに『王都に行きたい』とお願いすると、アオファは目を覚まし、首が一本伸ばされて、ドルドレンとイーアンはその額に乗って浮かび上がった。
二人はアオファと一緒に王都へ向かう。ミンティンよりもずっと大きいので思っているより早く着く。飛び立って少し話していると、もう下方の森の向こうに王都の影が見えてきた。
「アオファは大き過ぎるが。どこに降ろすんだ」
「外ですよ。壁の外じゃないと大騒ぎです」
「外でも大騒ぎだ」
どうしましょう、と今更言う愛妻を、ドルドレンは見つめる。考えているのかと思った・・・考えていなかったのか。仕方ないから、門番に説明することにした。
「イーアン。アオファと一緒にいなさい。俺が門番に事情を伝えて、決して攻撃しないように言うから」
「お手数をお掛けします。でもどうかしら。待たせるのは離れた草原でも良いような」
「ここは往来があるから。どの道、大騒ぎだ。だったら王都の壁沿いにでも、許可を取って居させる方が良いだろう。商人や旅人が来ない、王都の裏とかに」
そうかー、と頷くイーアン。とにかく攻撃されでもしたら大変なので、自分が待機して、もし人が出てきたら、アオファは良い仔であることをちゃんと話すことにした。
「じゃあ。ちょっと待っていなさい」
城壁の近くまで進んだアオファの頭をゆっくり下げてもらい、ドルドレンは結構な高さから飛び降りた。真似したら全身骨折だと思うイーアンは(※運動神経ほぼナシ)伴侶の身体能力に惚れ惚れして、手を振ってお見送り。
城壁の内側では既に騒がれている様子。もの凄い大きいから、確かに、目には付くかも知れない(※化け物状態)。『ちょっと浮かびましょう。矢を掛けられてはいけません』アオファに何の影響もなさそうだけれど、アオファの機嫌が悪くなるのも困るので、矢が届かない位置まで上昇する。
「アオファを初めて見たら。さすがに驚くでしょうね、誰でも。私も驚いたもの」
お前は立派ですからねぇと笑うイーアンに、アオファの別の首が伸びてきて、そーっとそーっと、ベロッと舐めた。『うおっ』の一言と共に倒れるイーアン。パワーギアがなかったら落ちていた。
「今度は落ちても大丈夫な場所でね。ここは危ないから、やめましょうね。でも有難うね」
多頭龍のその他6本の頭が全部イーアンに向けられて、倒れた姿を見つめていた。『心配したの?大丈夫よ』ヨダレで全身がずぶ濡れになったイーアンは、立ち上がりながら微笑む。上着の羽毛が変な照り輝き方をしていた。
「イーアン!!」
ヨダレずぶ濡れイーアンを呼ぶ声が聞こえ、イーアンが下を見ると伴侶が手を振っていた。『大丈夫でしょうか~』伴侶に答えを求める。伴侶は手招きして、降りて来いと合図。はーい、と返事をしてアオファを下に降ろす。
「イーアン。一応は理解してもらえたようだから。手を出さないようにと・・・どうした。なせ濡れている」
「アオファが舐めてくれました。でもまあ、濡れたのは上着だけですので脱ぎましょう」
髪の乱れをちょっと直して、イーアンは羽毛上着を脱いで丸めた。青い布はかけているので寒くはない。ドルドレンは、アオファに舐められると大変なことになると覚えた。
城壁の門番が何人か出てきて、アオファを見上げて驚いていた。『これ。これ味方なのか』目を丸くして訊ねられて、ドルドレンもイーアンも頷いた。
「大人しいですけれど、騒いだり、矢をかけたりしないで下さい。聖獣です」
分かったと頷く門番たちは、王城にも知らせに行っているからと教えてくれた。『貴族にも伝えておきます。彼らは好奇心が強いから、ちゃんと言っておかないと』それを聞いて、二人は早く用を済ませようと決めた。
アオファに待機してもらい、荷物を持って本部へ向かう二人は、人混みをかき分けて小走りで急ぐ。ドルドレンはちらちらとイーアンを見て心配そうだった。
「具合は」
「大丈夫です」
「目立つ」
「あなたは仕方ありません」
ドルドレンはもの凄く人目を引く。顔も良いし背も高いし、白銀の羽毛のクロークから覗く、青く透き通る鎧を纏う姿は、女性でなくても魅入ってしまうほど魅力的だった。でもドルドレンは、イーアンの方が心配だった。
「俺じゃない」
「私は、獣みたいに見えていると思いますよ」
ハハハと短く笑って、人目を無視しながら急ぐイーアン。『それも中年ですから。私が人目を引くとしたら、奇妙以外はないでしょうね』そう言い切る愛妻(※未婚)を見つめ、横を走りながらドルドレンは悲しくなる。
――どうして俺の奥さんは、自分をよく知らないんだろう。そう思う。
イーアンがもし、まだ俺と出逢っていなくて、こんな姿で目の前に現れたらと思うと。俺は間違いなく、逃がしたくないと思ったはずだ。
確かに普通の女性の格好ではないけれど、何とも彼女らしい、彼女の持つ魅力が溢れる姿と感じる。こんなに魅惑的なのに、本人は『中年』とか『獣』と、笑って終わらせてしまうなんて。
誰もが好む格好ではないし、誰もに好かれる女性ではないけれど。見る人が見れば、絶対に心を奪われる。ドルドレンにはそれが痛いほど分かっている。何度もそうした男の目を見た(※身近でジゴロ・最近イケメン職人)。本当に龍の子なんだろうと、まじまじ見つめてしまう。
ドルドレンの心配をよそに、イーアンは目の前に見えてきた建物を見つけ、伴侶を見上げて『あれですか』と訊ねる。もう間近に来ていたと気が付いて、ドルドレンはイーアンの手を握った。
「そうだ。行こう」
建物の前に到着し、息を整えてから、ドルドレンはイーアンの手をしっかり握って中へ入る。扉をくぐってすぐ、3人の騎士が出てきて『総長』と驚いた。そして横を見て『あ。もしかしてイーアンですか』と笑顔を向けた。イーアンはちょっとはにかんでお辞儀する。
「久しぶりだな。本部のジジイに相談に来た。いるか」
「います。どうぞ」
案内されて、総長とイーアンは石造りの建物の中を歩き、大きな天窓のある一つの部屋に通された。二人はそこで待つ。外には大樹が茂り、斜めの屋根に嵌められた天窓に、青い空と葉の付いた枝が揺れていた。
「冬なのに。葉がありますね」
「あれはそういう木だ。騎士修道会の本部が、枯れることがないようにと願掛けに植えられている」
部屋は広く、長い机が真ん中に置かれていて、毛足の短い絨毯が敷かれていた。暖炉に火が入っていて、壁には幾つかの鎧が掛けてあった。
ドルドレンに促されて、イーアンは椅子に掛ける。持ってきた鎧と剣を下に置き、ドルドレンも横に座った。
「ミレイオの盾。幾らくらいだと思う?」
「ドルドレンの年収くらいは」
「俺の年収。そんなに高くないから、盾はもっとするだろうな」
そう言えば聞いたこともなかったので、幾らなのと訊いてみると、ドルドレンは机に指で数字を書き、イーアンを見て頷いた。『頑張っているわりには少ないだろう?』伴侶の困ったような言い方に、イーアンも唸る。
「騎士修道会は税金ですか」
一応ねと伴侶は答える。国民が減ったから、給料も減ったとぼやいていた。自分が幾らくらいの給料か、全く知らないイーアンは、比べようもなかったが。あまり給与の話を続けないほうが良い気もした。
「総長。急だな。どうした」
突然扉が開き、騎士と分かる男の人が一人、笑顔で部屋へ入ってきた。後からすぐに、以前イーアンの工房に来た年配の男性が一人入ってきて、イーアンを見るなりギョッとした顔をした。
「お。お前がなぜここに。それになんだ、その格好は。場所をわきまえ」
「それ以上言うと、この場で死ぬぞ」
立ち上がったドルドレンが年配の男に剣を抜いた。『ヘディン・ケンロー。今日の用事を聞け。金を出せ』伴侶の重く冷たい、そして言い間違いに、全員がびくっとする。イーアンは急いで『ドルドレン。お金を借りるのです』と小さい声で訂正した。
「そうか。そうだったな。つい頭に来て、単刀直入に告げたが」
「突然来て何を言うかと思えば。金を出せとか、金を借りるとか。ここは銀行じゃないぞ」
「ケンロー。とりあえず話を聞こう、同席するぞ。総長」
騎士の男性は50代くらいのしっかりした体躯で、クローハルのような青灰色の髪の毛を短くして、青い目をしていた。強そうな顔つきで、背も180そこそこあり、拳も大きい。彼は、この閉じこもった環境にいるのが不思議な雰囲気だった。
イーアンはその人を見て、本当はどこかの支部の隊長なのではないかと思った。すぐにでも戦いに出そうな印象。普段着なのか、チュニックとズボンで、剣だけは下げている。何とも場違いに見えた。
そんなイーアンの観察に気が付いていたのか、彼はイーアンに顔を向けた。そして品定めするわけでもなく、ジロジロ見るわけでもなく、たださっと座る姿だけに視線を走らせ、ぴたっと鳶色の瞳を見据えた。
「君はイーアンか。北西の工房の。俺はネル・ヴィダルという。本部の警護長だ」
「イーアンです。北西支部で工房を持たせて頂いています」
ヴィダルはちょっと微笑んですぐ、総長に視線を移す。年配男性ケンローは、ムスッとして腕を組んで機嫌が悪そうにしていた。
「急に来たということは。何かどうしても急ぎなんだな。さっきの用件だと金絡みで」
「手短かに言おう。後、数日で援護遠征が入る予測だ。しかしこの前のイオライ戦で、北西の支部の盾は壊滅的な状況だ。
昨日と今朝。鎧と剣は卸してもらえたが、盾はない。これまでの業者に、在庫があるかどうかも分からないし、例えあっても発注してこの3日以内に届くか分からない。
この話を、製作委託したばかりの盾職人に伝えたところ、自分の工房にある盾を売ってもいい、と言ってくれた。数は30。だが、規格外の強度を誇る盾ばかりで高額だ。とても北西の年間予算で賄える額ではない。だが、命が掛かっている」
「それで相談か。幾らだ」
「凡そ500,000ワパン」
バカなことを言うな!とケンローが怒鳴った。
「盾ごときにどんな金額だ。それもたかが30程度の数に、500,000ワパンだと?ふっかけられるにも程があるだろう。交渉して、せめて桁を減らしてから相談に来い」
ちょっと考えて、ヴィダルもその金額に眉を寄せる。
「それは。盾にかける金額ではないな。どんな盾か知らないが。部隊長一人雇える金額だ。だが総長が、そんなことも考えないで、ここへ来るとは思えない。よほどだな」
「盾も大したものだと分かっているが。部下の命が最優先だ。援護遠征で魔物相手に、装備不十分では行かせられない」
盾に無駄はないことと、それだけの出費を覚悟しても騎士の命を守ることを、ドルドレンは正論として言い切る。
無理だ、話にならないとケンローは立ち上がって、イーアンを睨みつけた。『どうせ、この女が焚きつけたんだろう』図々しい女め、と吐き捨てた時、ドルドレンが椅子を倒して立ち上がった。イーアンは急いで止めて、ドルドレンを座らせる。
「イーアン」
「大丈夫です」
イーアンは怒りに震える伴侶を制し、ケンローを真っ直ぐ見る。けっと馬鹿にして顔を背ける男に、イーアンは立ち上がって話しかけた。立ち上がった姿に、机を挟んで座っているヴィダルが目を見開く。ケンローも『わ』と声を漏らした。
「私にもお話をさせて下さい。私のお給料の予算があると思います。まずそれを動かせないでしょうか。それと、ここに持ちました鎧と剣を見て頂きたいのです」
ドルドレンに手伝ってもらい、イーアンは鎧と剣を机に並べた。ヴィダルは腰を浮かせて驚き、ケンローもビックリして鎧に眉を寄せた。
「これは。こんな鎧、見たことないぞ。あれか、親子で工房を営む鎧工房のか?」
ケンローが総長に訊く。無礼な男を睨みつける灰色の瞳は答えない。睨まれて目を逸らし、ケンローは剣に意識が向いた。『この剣は。なぜ黒いんだ。なんだこの威圧感は』言いながら声が震えている。
ヴィダルがそっと剣に手を伸ばし、イーアンと総長を見て『持っても良いだろうか』と許可を求めた。イーアンは頷き、どれでも、と促す。
黒緋色の剣を持ったヴィダルは、ゆっくりと自分の目の前に刃を寄せて見つめた。『信じられない。こんなの初めて見た』血が彷彿とするよと、静かだが、騎士らしい喜び方をする。
「これは、イーアンが委託した工房で作ってもらったものだ。最初にイーアンが作り、持ち込んで委託先工房で量産してもらう。その最初の鎧と剣だ」
「ということは。これはもしや、魔物の」
「そうだ。俺たちとイーアンで倒し続けた魔物を、イーアンは一人で回収し、支部の工房で武器や防具に変えた。俺が今ここに着けてきた鎧も、魔物製だ。剣もな。この羽毛の上着も、イーアンが倒してイーアンが作った。
こうして生まれた多くの魔物製の道具が、今ここに職人に協力してもらって存在する。今度は盾と弓が出来るだろう。その盾を待つ期間、今回の盾を揃えて凌ぎたいのだ」
「そんな。こんな女に」
ケンローがイーアンを見て呟いた途端、真横のヴィダルが、ケンローの顔を目一杯の力で殴った。驚く総長とイーアン。ケンローは悲鳴を上げて顔を押さえ、床に転がりまわる。
「いい加減にしろ。お前など魔物に殺されて来い。節穴にも限度がある」
不愉快だと言い捨て、ヴィダルはケンローの襟首を掴んで引きずり、扉を開けて廊下へ放った。扉を閉めてから、二人に向き直り『失礼したな』と謝った。
「500,000ワパン。盾30枚に使いたいと言うのか。自分の給料を差し出して。それで足りない分は」
「私を置いて下さるなら、今後のお給料も。でもその前に私の購入ではなく、修道会での購入に名を変えて頂きたいのです。項目をどうされるか、私には分かりません。でも予算があるのは承知ですので」
「自分の給料で支払いを続ける約束で、盾を北西の騎士たちに使わせたいと」
そうですとイーアンは頷く。もしこれでも無理なら、ドルドレンは自分の貯めている金も使おうと思っていた(※家建てたいけど)。二人は、ヴィダルをじっと見て答えを待つ。ヴィダルはちょっと笑った。
「良い話だ。良いじゃないか。騎士は女性を守るものだが、女性が騎士を守りに回るとは」
「いつもだ。イーアンはいつも俺たちを守る」
「総長、法務のやつにも話の分かる者はいる。急ぎだと言うなら、今すぐ話していくと良い。ケンローはただの飾りだ。実際の権限はないに等しい。あんなのに何の判断も出来ない。
法務のゾーリアスに言えば、きっと都合してくれるだろう。今年からゾーリアスは会計の長だから」
ドルドレンはやっと、少しホッとした。イーアンを見るとイーアンも見上げて微笑んだ。『これからじゃあ、ゾーリアスに会いたい』総長の願いに、ヴィダルは頷いて、呼んで来てくれると部屋を出て行った。
お読み頂き有難うございます。




