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魔物資源活用機構  作者: Ichen
剣職人
297/2944

297. 良質の材料

 

「これはこれは」


 イーアンはミンティンの背で、目の前の光景に驚いていた。ミンティンはどうってことなさそうに、首をゆらゆらしている。



 フェイドリッドとさよならした後。イーアンはアラゴブレーへ飛んだ。アジーズの馬車の落ちた谷と、アラゴブレーの森の温泉地帯を確認したかった。次の『友達』のヒントがあるかもしれないと思ったからだった。


 距離的には、この場所から、光の示した西の山脈の奥はとても離れている。だがそれは人間の距離感だ。もしそれが、()()を通る生き物なら。オカルトは知識程度にしか記憶しないイーアンだが、レイラインと呼ばれるものを思い出していた。


 タンクラッドの示してくれた、地図を走る直線。それは間違いなく、レイラインそのものだ。他の国にも通じている可能性があるが、他国はまだ手付かずなので、身近な範囲ハイザンジェルでそれを見ると。


「ここもそうよ」


 アジーズの魔物退治の時、一旦南西の支部から戻った工房で、居合わせたダビが昔の地図を見て『火山』の言葉を出した。それを思い出す。



 先に谷を見て、硫黄の量が増えた気がして、谷をある程度行き来してみた後、アラゴブレーの森に寄った。温泉が湧いていた所はそのまま湯が流れていて、先の崖から真っ逆さまに下方に流れる川に落ちている。


 他にも少しずつお湯が流れている森の様子が見えて、冬の朝に湯気が立ち上る様子を確認したイーアン。龍が魔物を倒した場所へ最後に寄ると、ここで驚いた。



「ミンティンの威力は素晴らしいわね」


 目の前にある、彫刻のような姿を見つめる。白い霜に包まれた魔物に、龍を降りて近づくイーアン。あの時倒したそのまま、魔物は佇んでいた。一歩も動いていないし、何も変わっていなかった。


 ミンティンが警戒していないということは、これらは生きていない。死んでいるのだと分かる。イーアンは剣を抜いて、霜の降りた魔物の体から霜を削いだ。


 削げた所の殻をよく見ると、あのギラギラした光沢は変わっていない。近くで見て分かったが、甲状の殻にはまばらに毛が生えていたようで、毛穴の突起が僅かに盛り上がっている。体の節は重なり合っていて、一つずつ外そうと思えば出来そうな様子だった。


「取れるかしら」


 独り言を落とし、イーアンは大きな魔物の腹部分に屈む。継ぎ目のような場所があり、切っ先でその部分の霜を落としてみると、切っ先が引っかかった。少し力をこめたら、剣が強くて、食い込んで殻の継ぎ目を切った。


「これ。殻は丈夫なんだわ。内側は死んでしまっているけれど」



 イーアンは昆虫化石を思い出していた。化石と言うにはあまりにも生々しい、美しい光沢を保ったまま、はるか数万年前の氷河時代の泥炭から現れたものを、何度か見たことがある。さっき死んだように、艶やかで鮮やかな玉虫色の輝き、コガネムシの光沢は、黒い土に鏤められた宝石のごとく輝く。昔、何度か地層を調べていて、泥炭を取り出した時に見た。


「あれと同じなのね。この殻は強すぎるくらいに強いけれど、中身は温度の変化についていけなかった」


 思う所を呟きながら、イーアンは屈みこんで殻の付け根に剣を当てて切り続ける。剣の長さが不利な部分は白いナイフに変えて、繋がっている場所を切り離す。


 中身の体がボロボロと崩れて土くれのように落ちてくるのを見て、やはり魔物だからと理解する。そう言えば、と自分の着けている手袋を見る。これに使った魔物の歯も、かなり長い日数を持ち堪えていた。歯茎などが壊れているのに、歯は大丈夫だった。



「これは使える。きっと使える」


 ミンティンに見張り番をお願いして(※そこに座ってるだけ)、イーアンはせっせと魔物の殻を切り離した。硬くてなかなか手が入らない場所はそのままにして、ナイフで切れる所は頑張って切り離した。


「ミンティン。ちょっと手伝って下さい。これをね、傷つけないように剥がしたいのよ」


 龍はじっと凍った魔物を見てから、イーアンが説明する殻を大きな口に(くわ)え、ゆっくり引き上げる。魔物の体が浮かんだので、ミンティンは前足を置いて、殻を引っ張った。殻は軋む音を立て、ボリッと取れた。


「お前は何でも出来るのね!とても助かるわ」


 イーアンが喜んで誉めたので、ミンティンも得意そうに、次々に同じことを繰り返した。おかげで魔物3頭分の殻が外れた。もう一頭の殻は、ミンティンに噛み砕かれたものだったので、それは除外した。



「熱に強いかどうかはわからないけれど。ミンティンのあの白い凍結する息でも破損しないのだから。寒さには強そう」


 剥がした殻は結構な大きさで全部で15枚。大きな一枚は馬車をすっぽり覆うくらいの屋根のよう。重くはなさそうだけれど、とにかく大きくて嵩張る。


「さて。これをどう持って行きましょうか」


 うーん、と考えて、南西の支部に綱を借りることに決めたイーアンは、ミンティンに乗って南西支部へ向かった。



 南西支部に1~2分で着いて、午前中は皆さんがどこかなと龍で近くに下りると、すぐに騎士が現れた。


「イーアンじゃありませんか。龍が来たからもしかしてと思ったら」


 名前は覚えていないけれど、一緒に森へ行った騎士の一人だと思い出し、朝の挨拶をしてから用件を伝えた。騎士は不思議そうな顔をして『綱。綱ですか、ちょっとお待ちを』と探しに行ってくれた。


 少し待っていると、向こうから数人の声が聞こえてきて、ステファニクとウキンと先ほどの騎士がやって来た。


「突然ですね。イーアン。この前はありがとうございました。今日はどうしましたか」


「おはようございます。こちらこそ楽しい時間を有難うございました。今日は、すぐそこで回収していましたので、持ち帰るための綱をお借りしたくて参りました」


「イーアンはお一人ですか」


 そうです、と頷くと、ステファニクが微笑んでイーアンの格好をさっと見渡し『またあなたは勇ましいなぁ』と笑った。


「回収と言うと、近くに魔物が現れましたか」


 笑顔を向けながらも、警戒の目つきで外に視線を走らせる統括に、イーアンは慌ててそうではないことを教えた。話を聞いた3人は納得してくれて、すぐに部下に言いつけて綱を持ってきてくれた。


「有難うございます。これで運んだら返却に来ます」


「一人で大丈夫ですか。誰かが一緒に行った方が良くありませんか」


 それは助かるけれど、どうしようと思うイーアンはちょっと答えに戸惑った。向こうから剣隊長のサトルトゥム(※230話の人)が来て、イーアンを見つけて挨拶した。彼は話を聞いて、すぐに一緒に行きたいと言ったので、彼が同行する事になった。


「龍ですぐです。乗って下さい」


 とりあえずミンティンに先に乗せてもらったイーアンは、サトルトゥムに、自分の後ろに乗るようにお願いする。サトルトゥムは楽しそうな表情で、ささっと龍の体を駆け上がって後ろに座った。


「回収が済んだら、彼を送りますから」


 楽しそうなサトルトゥムが仲間に手を振って、イーアンの合図で龍はアラゴブレーの奥へ飛んだ。あっさり森に到着し、その移動の早さに感心するサトルトゥムと龍を降りて、死んだ魔物の側へ行く。


「魔物を恐れない人とは聞いていましたが。本当にそうなんですね」


 外されている魔物の殻を見て、サトルトゥムは複雑そうな笑みを浮かべながら、自分の仕事に取り掛かった。長い綱を使って何個か一つセットにし、殻をまとめる。


「綱は切ってもいいですよ。また買いますからね」


 サトルトゥムが、遠慮しないようにとイーアンに笑顔で教えて、自分で一度縄を切って見せた。イーアンも有難くそれに倣って、殻をまとめた後に剣で縄を切る。白い剣に目を留めたサトルトゥムが、それも魔物で作ったのかと聞くので、これはイオライセオダの剣職人が作ってくれたと答えた。


「魔物の皮を使っていますが、これを作ったのはその人です」


「この前のイオライセオダの報告書を読んだので、イーアンの活躍は知っています。その顔の傷もそうですね。魔物のその、白い剣で倒したのですか」


 そうですと短く答えて微笑むイーアンは、あまりこの話しを長引かせたくなくて剣を鞘に戻した。


「私もそうした剣を携える日が近いですね、きっと」


 微笑むサトルトゥムが、年末に持参した黒い剣にも関心を強く持っていたのを思い、イーアンも微笑みで頷いた。『頑張ります』一言答えて、最後の殻を縛った。


「有難うございました。おかげで手間もなくすぐに終わりました」


 イーアンがお礼を言うと、サトルトゥムは『貴重な体験です』と笑顔で握手してくれた。二人は龍に乗り、まとめた殻の紐の端を、龍に(くわ)えてもらって南西支部に戻る。

 サトルトゥムを降ろし、もう一度お礼を言ってから、イーアンは龍と一緒に北西の支部へ戻った。



 戻ってきた時間は朝10時前。裏庭は演習で使っていたので、そこよりも横の辺り、イーアンの工房近くで降ろしてもらって、殻もそこに置いてもらった。ミンティンにお礼を言って空へ帰し、殻をどうやって分けようかと外で悩むイーアン。


 こんな時はドルドレン。仕事の邪魔をしてしまうかしら、と心配はあるものの、ささっと執務室へ行ってドルドレンを見つける。ぱっと嬉しそうな顔になった総長は、執務の騎士が止める間もなくイーアンに駆け寄り、抱き締めてすりすりと頬ずりで愛情を伝えた。


「お帰りイーアン」 「ただいま帰りました」


 それでね、とイーアンは表に持ってきた物のお手伝いを頼む。ドルドレンはきょとんとした顔でイーアンを見下ろし『何を持ってきたって?』と聞き返した。


「アジーズのほら。魔物をミンティンが倒したでしょう。あれをね、殻だけ剥いで持って帰りました」


 それを聞いた総長はちょっと困った顔をしたが、何か自己納得したようで、咳払いを一つしてから了解してくれた。イーアンに連れられて、ドルドレンは裏庭口から外へ出る。工房の前に、意味が分からない大きさの、ぎらつく光を放つ半円形の殻がどかどか置いてあった。



 ――やはりそうか。こんなものを持ち込むとは。やると知ってるけど、あの時のこいつらを諦めていなかったか。一人で行かせるモンじゃないな。お土産の質と量が企画破壊過ぎる。


 うちの奥さん(※未婚)はどうしてこう、欲しいものが突拍子もないのだろう。これでは常人の男には、誕生日の贈り物など出来ないではないか。何欲しい?魔物の体よ、って会話にならんだろう。真面目に取りに出かけたら、男の命が危ない。まぁそれは良いとして。

 どうすりゃいいんだ。このでかさ。この量。どう見たって、仕舞う所ないだろう、これ。外に出しとくわけにも行かないし。俺にどうしろと言うんだ、横でニコニコしてるけど。この奥さんは。



「うむ。かなりあるのだな」


「そうなのです。もう一頭いたけれど、それはミンティンが噛んで割れていたので、ここにあるのは3頭分です」


「どうやって取ったの」


「はい。お腹の接合部分と言いましょうか。そこから、繋がっている部分を切りました。取れないところは、ミンティンにお願いして引き剥がしてもらいました」



 ――引き剥がす。 あれから結構経つから、きっと内臓などはもう土や灰のように変わっていただろうが。でも引き剥がすかね。これ。何で剥がそうと思えるのか。その前に何で触ろうと思えるのか。いつもだけど、抵抗がなさ過ぎる。

 これくらい、俺の朝のアソコも抵抗なく触ってくれたら良いんだけど(※不純)。なぜ俺の股間は触りたがらず、魔物の腹をまさぐれるんだ。俺のは夜しか触ってくれないのに(※どうでもいいこと)。



「ドルドレン」


 黙りこくる旦那(※未婚)にイーアンは声をかける。これをちょっと切り分けて、と言うのだが。

 じっと見上げる鳶色の瞳を見つめ返し。ドルドレンは少し屈んで、ちゅーっとキスをしておく。即座にぐいっと押し退けられて『誰か見てたら困るでしょう』と愛妻(※未婚)に叱られた。


「ふむ。切り分けるのか。これ、上手い具合に切れるんだろうか」


「ソカでも切れたし、ドルドレンの長剣でも刺せたのですから。きっと鋭い刃で、力をこめれば切れるのではないかしら」


 とりあえずやってみよう、と言うことで。ドルドレンは自分の剣を取りに行き、戻ってきて切れるか試す。イーアンが綱を解いてバラしたので、一枚の殻を真っ二つにするつもりで、剣を振ると。

 刃が当たる衝撃で、ちょっと砕ける部分があるものの、殻は切れた。切れたと言うか割れたと言うか。


「イーアン。切れないことはないが。あまりきれいに切れる気がしない。厚さがある箇所は少なからず、めり込んでから剣が入るから、続きの薄い部分は同じ力を受けて、先に割れる」


殻だけだと中身がない分、浮いているから、衝撃を受け止める()になる部分もないとドルドレンは説明する。力の衝撃で、薄い部分は砕けやすいだろうという。



「本当。厚い部分だけ使うというのも勿体ないですから、薄い部分もきれいに切れると良いですね」


 二人はちょっと悩む。ドルドレンとしてはあまり気乗りしないが、あの時、ソカでスパスパ切っていたハイルに頼んだほうが、もしかすると切り口もきれいで割れることもないのか、と提案した。



「あの。そうかも知れませんけれど。でも」


 言いにくそうな雰囲気で愛妻が困った顔になる。どうしたのかと訊いてみれば、昨日彼らに怒ってしまったから、と言う。


「昨日の夜。イーアンは彼らとの話の最中でこじれた、と言っていたが。それのことか」


 でもハルテッドは気にする性格じゃないから、恐らく忘れているだろう・・・そうドルドレンは言い、とりあえず自分が呼んであげようと裏庭へ探しに行った。



 ドルドレンはハルテッドを見つけ出し、ポドリックに事情を話して少しの間、彼を借りる。ハルテッドはドルドレンに用事を聞いた。


「イーアンに?手伝うの」


「アジーズの時の、魔物の殻を持ってきたのだ。大きいため切り分けようにも、剣では力の入り方が均一ではない。ソカのほうが切断に向いていると判断した。で、お前だ」


「 ・・・・・ふうん」


「どうした。嫌なのか」


「そうじゃねーんだけど。昨日。イーアン怒らせちゃったから、あんま会うのヤかなって」


「何だ?何があった。俺がお前を呼ぶと言ったら、イーアンも同じように困っていた」


「んとさぁ。ドルに言うのも何なんだけど。ほら、剣職人の人いるじゃん。その話で」


 言いにくそうに髪をがしゃがしゃ掻きながら、ハイルは話し始める。黙って聞いていると。どうやらイーアンに、タンクラッド相手に『菓子を作る・料理を作る』とした行為を止めるよう、ベルと二人で諭したようだった(※よく言ったと心の中で誉める)。



「なぜその話になった。その前になぜお前たちがそこにいた」


「お前、デラキソスの道順知りたがってたろ。だからベルが戻ってきたから、午後に工房行ったんだよ。そしたらもう行ってきたって言ってさ。その後、お茶と菓子くれたんだよ。

 机にベルの槍があって、それその人が作ったって言われて。よく会うのかって俺が訊いたら、菓子も届けたとか料理してるとか言うからさ。勘違いされるんじゃないの、って」


「で。イーアンが怒った」


「いや。実は俺たちには怒ってないと思う。ダビがきて、何かダビが職人のことで喋ってたら、火がついた。『いい加減にしなさい』ってイーアンが剣を抜いてさ」


「け。剣?剣を抜いたのか、イーアンは」


 うん、と頷くハイル。子供が言いわけするように目が落ち着かない。ドルドレンは驚いて、話の続きを促した。


「何だっけあの人。名前忘れた。剣職人がカッコイイからか、ってダビが最後に言ったんだよ。

 ダビは、その人が、イーアンを口説いたり撫でたりされてるの嫌そうで、でもイーアンは職人はそんな人じゃないって言い続けるから、ダビが買い言葉みたいな。それ言ったらイーアンが怒鳴って剣を抜いて」


「切ったのか?(※切ったらとっくに惨劇)」


「違う。剣の仕組みを見せてくれた。怒ってたけど。あれ、柄のとこにナイフが入るんだよ。それを作ってくれた気持ちも知らないで、って。めちゃくちゃ怖かった。あんなに怒るなんて」


 ダビはどうした、と訊くと、知らないとハルテッドは下を向いて答えた。自分とベルは急いで逃げたからと。こいつららしい、と思いつつ。ドルドレンは、そんなことがあったのかと内心びっくりしていた。



「お前はそれで会いにくいのか。イーアンに」


 腰に携えたイーアンのソカを見ながら、ドルドレンは訊く。ハルテッドは目を反らしたまま、何も答えない。良いから手伝え、と溜め息をついたドルドレンはハルテッドの背中を押して、工房の前に連れて行った。嫌そうでもハルテッドは渋々、足も重く歩いた。



 工房の前で待っていたイーアンは、ハルテッドの姿を見ると、すまなそうな顔で歩み寄った。ハルテッドもイーアンを見るのに躊躇って、近づくと謝った。


「ごめんね。あんな怒らせて」


「いいえ。私もすみませんでした。あなた方から見て不安に思うことを、気をつけていない私も良くありません。剣まで出して驚かせて、本当に・・・感情的に動いて反省しています」


 ハルテッドは首を振って『違うよ、俺たちが悪いんだよ。ごめんね。もう言わないから』とソカを解いた。


 目の前の大きな殻を見てから、話をそっちに移して『これどう切れば良いの』とイーアンに訊ねる。2m四方くらいに分けたいことを伝えると、ハルテッドは離れているように二人に伝えて、ソカを操り、事も無げにそれをこなしてくれた。


 多少の欠けは出るものの、しなる本体に埋め込まれた刃の技か、剣で切るよりも曲面はきれいに切られた。イーアンは喜んで、ハルテッドにお礼を言い、また工房に遊びに来てねとお願いした。


「ありがとう。ベルにも伝えておく。お菓子、本当に美味しかった」


 ハルテッドはちょっと心の荷が軽くなった様子で、いつものようにニッコリ微笑んで演習に戻っていった。ドルドレンはその後姿を見送り、イーアンを手伝って殻を工房の中に運んだ。物は多いが広い工房なので、とりあえず空いている場所に殻を立てかけて重ねた。その量はかなりの量だった。



「これを拭いて汚れを落としたら、オークロイに相談してみます。あちらに運べるかも知れません」


 鎧にしたいのかと分かったドルドレンは、それが良いと頷いた。



 イーアンはこのまま作業に入ると言うので、ドルドレンも執務室へ戻った。ドルドレンはいろいろと思う所ある時間を過ごし、執務の騎士にびしばし駄目出しされてやり直す、非効率的な午前を送った。


お読み頂き有難うございます。

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