281. 南の蝙蝠軍・後半
分担して急いだだけあって、夕方までにスコープは16個作れた。ダビは、まだまだ集光板があるから、部品を各支部でもらってくれたら、もっと作っておけると話していた。
「南で今日、これを試してみて。それで破損マスクがあったら聞いてみましょう」
イーアンはそう言いながら、地下から骨の粉を運んで床に置く。オークロイからもらった『カラナ』の粉と、この骨の粉を、洞窟12箇所用に配分する。イオライのガス石も12缶分、用意する。
「イーアン」 「はあい」 「今日何するんですか」 「退治よ」 「じゃなくてです」 「ん?」
ダビに目を向けると、じっと見ている。『魔物退治ですよ』他にはない、とイーアンは答える。
「あなた、戦うんです?鎧着てるけれど」
ああ、とイーアンは気がつく。『いいえ。一応これを着ておきますが』そう言って、ほぼ戦わないだろうと教えた。最初に襲撃用道具で魔物に損傷を与えてから、残った魔物は騎士にお任せすると話す。
「ドルドレンは私と一緒です。龍じゃないと行けない場所は、私とドルドレン担当です。ドルドレンがまず動くし、ミンティンもいるから、私はほぼ何もしないでしょうね」
「あ、そう。なら良いですけど。それ以上怪我されると仕事できませんよ」
それって自分のため・・・とイーアンは内心思うものの。ダビがそこまで思える、のめり込み方をしてることは嬉しいので、怪我を増やさないと約束した。
「ダビが手伝ってくれたから、これだけの準備も間に合いました。私はダビに頼ってばかりね。この前の数日間、嫌ってくらい、それを身にしみて理解しました。何も進まないんだもの」
ハハハと笑ったイーアンは、シャンガマックの脛当の準備と、パワーギアの取り組みを見せる。ダビが説明を求めると、イーアンは『明日以降にゆっくり』と、今日は時間がないことを教えた。
「分かりました。明日以降ね。明日朝来ますから」
ダビはちょっと笑って嬉しそうだった。仲直りは大事だなと思うイーアンも微笑んだ。
ダビに手伝ってもらって、工房の窓際に全部荷物を移してから、イーアンは連れて行く騎士のところへ向かう。ダビにまた明日と挨拶してから、トゥートリクスやハルテッドを探すと、彼らは広間にいて鎧を着けていた。
「二人ずつ一緒に行きましょう」
彼らに近づき歩きながら、イーアンが声をかけると、全員イーアンの鎧を見て驚いた。トゥートリクスが大きな目をもっと大きく開いて、『それどうしたんですか。カッコイイ!!』と子供丸出しの無邪気な笑顔でイーアンの側に駆け寄った。
「鎧工房で作って下さいました。私があまりに怪我だらけだからって」
その一言で、トゥートリクスは鎧からイーアンの顔に目を移した。二度目の驚きは悲しそうな顔だったので、イーアンは慌てて『大丈夫です。右の肩だけはちょっと触れないですけれど』と繕った。
「イーアン。鎧がすごい。でも怪我もすごい。何した」
女装済みハルテッドがイーアンの顔にそっと触れて、オレンジ色の瞳で心配そうに覗き込む。イーアンは、今話すのもと思って、昨日ちょっと魔物退治にとだけ伝え、詳しいことは後で話すと約束する。
痛々しい顔の切り傷に、ベルもビッカーテも眉根を寄せる。ベルがちょっと、上着の赤い毛皮の焼け焦げに気がついたが、イーアンをちらっと見ると、イーアンが困ったように微笑んだので何も言わずにおいた。
最初にトゥートリクスとビッカーテを龍で連れて行き、その後兄弟を乗せて行くことに決まる。荷物はドルドレンと一緒に最後に運ぶことにして、それを決めるとドルドレンが広間へ来た。
運び順を伝えて、イーアンは龍を呼び、まず最初の二人を乗せる。トゥートリクスは一度乗ってるので、覚悟を決めて跨る。ビッカーテは不安一杯の面持ちでとりあえず乗る。イーアンもミンティンに定位置へ運んでもらって跨り、南の支部へ出発。
龍はそれほど速度を出さなかったが、20分ほどで到着した。彼らを降ろして、龍とイーアンは再び北西支部へ戻る。トゥートリクスは大人しかったが、ビッカーテはわぁわぁ言っていたから、兄弟はどうかなと心配が募った。
戻る道は、早く飛んでもらって10分以内で帰った。これは龍がかなり速度を上げたが、イーアンをがっちり背鰭で巻いて飛んでくれたので、振り落とされることなく無事であった(※じゃないと困る)。
表で待っていたベルとハルテッドも龍に乗せると、再び南へ向かう。ベルは少し怖がっていたが、ハルテッドは楽しんでいた。性格が出るなぁとイーアンは思う。ハルテッドが楽しんでいるから、イーアンもちょっと気持ちが楽だった。
「すごいね。初めてだよ、こんなの。もっと速くなるの」
「お前ね。自分だけが乗ってるんじゃないんだから、そういうこと言うんじゃないよ」
ハルテッドのワクワク感が『速度上げてコール』をするが、兄は止める。弟の機嫌を取りながら止める。
「うるせぇなぁ。ベルは落ちたら拾うから気にしないで、もっと速く飛ぼうよ」
「何てこと言うんだよ。落ちたら拾う、って。犬の糞じゃないんだぞ。仮にも、お前をガキの時から守ってきた、お兄ちゃんに」
「気持ちワリィ。お兄ちゃんとか言うんじゃねーよ。勝手に落ちてろよ、糞みたいなもんだろ」
イーアンは笑ってしまって、どうとも答えられないけれど、咳払いしてハルテッドに振り向く。
「もう少し速くても大丈夫そうですか」
ハルテッドがオレンジ色の瞳をキラキラさせて『大丈夫、速く速くして』と、美人な笑顔で頼む。お兄ちゃんがげんなりしているのが気になるが、イーアンはミンティンに『もう少しだけ速くして』と頼んだ。
あっさり南支部へ到着。『もう少し』はあまり効果のない言葉だった。ベルがぐったりして降り、地面の良さを土を撫でて感謝していた。ハルテッドはもう一回乗りたいと騒いでいた。
「帰り、ハルテッドは龍で帰りましょう。他の方は馬車でと話が出てるのですけれど」
「一緒に帰る。龍が良い。私、龍に乗って帰る」
遊園地で楽しんだようなハルテッドの喜びように、イーアンも微笑む。ベルに気の毒なことをしたと思ったが、ベルはイーアンの言葉に迷わず馬車を選んだ。
3度目、イーアンと龍は北西の支部へ向かい、ドルドレンと荷物と一緒に南へ向かった。日は既に山にかかり、今日最後の太陽の光を投げていた。
オークロイの工房に寄って剣と鞘を受け取り、丁度ぴったりな木型に収まった剣を腰に下げる。オークロイが、気をつけて行けと無事を祈る中、二人はお礼を言って近いうちにまた、と挨拶し、南の支部へ移動した。
荷物を下ろして、南支部の玄関に荷物を置き、イーアンとドルドレンは広間へ行く。ビッカーテがちょっと酔ったらしく、トゥートリクスに付き添われて吐いていると聞き、イーアンは申し訳ない気持ちだった。
「龍の飛行も、体質に合う合わないがあるのだろう。誰も空を飛ぶなんて体験しないから」
苦笑するドルドレンに慰められて、イーアンも頷く。ハルテッドだけは喜んでいたことを伝えると、ドルドレンは『ああ、まあ。あれはそういうヤツだ』と何か認めるように呟いた。
広間で待つ、遠征に出る全員の顔合わせをして、地図と道順の確認をする。その後、イーアンは持ってきた荷物の説明をしながら、一緒に表へ一度出てもらうように促した。何をするのか、小さい規模で実際に見せる、と言って。
表へ出る時、イーアンの鎧が目に付いた面々は、凄い鎧だと群がっていた。南の隊長のベレンとラジャンニもイーアンの鎧に触ったり、関係ない髪の毛に触ったりしていた(※ドルドレンに叩かれて終わる)。
シャンガマックは、自分の鎧とお揃いであると気が付き、満足そうに微笑んでいた。自分の鎧はイーアンが作り、イーアンの鎧は職人が作っている。その差はもちろんあるのだろうが、でもシャンガマックだけの、たった一つの鎧だった。
褐色の騎士の微笑を見て、ドルドレンは不愉快だった。自分も、白い鎧でお揃いが良いとひしひし思った。それを小声でイーアンに打ち明けると、イーアンはニコリと笑った。『今後は、この皮の鎧が増えますから。お揃いだらけですよ』言われてみればそうかと気がつき、何となく気持ちが治まった甘っ子ドルドレンだった。
表の広い場所へ出て、使用する水をもらったイーアンは、同行する騎士60数名全員に見えるように囲んでもらう。が、ちょっと危ないから離れて見ているよう注意をする。
「私が持ってきた、この袋。これは12袋あります。それと、ここに缶があります。これも12個。それぞれ一箇所ずつに一つずつ使います。あちらで水を汲む壷をこれ、この瓶としましょう」
見えるように皆に道具を紹介しながら、使い方の説明に移る。
「私が持っている小さな袋。これです。ここには、皆さんに渡す袋と同じ粉が入っています。そして、この小さな石。これも、この中に5個ずつ入っています。私はこれから、1つだけを使用します。
よく見ていて下さい。水を汲んだ瓶があります。この瓶を壷と仮定して下さい。ここに、袋の中身を全部移します。そうしたら、すぐに離れて下さい」
イーアンが袋の中身を空けて、イーアンが離れた。少しすると、瓶の中の水がボコボコ言い始め、煙が立ち上る。もうもうと煙が立ち、泡立つ振動で中身の水が瓶から撥ねだす。
「これは大変熱い状態です。ここに煙が立っているのは見えますね。ではね、ここからちょっと大変ですよ。火を着けます。火をつけたと同時に、この石を放って下さい」
はい、行きますよと、のんびりした調子で、イーアンが火をつけた棒切れをひょいと瓶の上に向かって投げると、ボワッと火炎が沸く。そこへ間髪入れずに石を放った途端、もの凄い火柱と真横へ飛び散る炎が噴出した。
ウワッと騎士全員が叫んで、慌てて後ろへ一気に下がる。わぁわぁ言う騎士たちの目が丸くなって、目の前の火事に仰天している。
「まあ。大した威力だこと」
真っ先に走って逃げて、遠くからしみじみ感想を言うイーアン。
『こういうことですのでね。これを洞窟の入り口で行います。実際は、これの5倍と思って頂けますと丁度良いでしょう』分かりましたか~と、先生のように遠くから声をかけるイーアンに、小刻みに頷いて騎士たちは了解した。
ドルドレン以下、ドルドレンの隊の部下は唖然とするものの。この展開に多少慣れているので、小さく頷きつつ、これは魔物死ぬなと近くなる未来を予想した。
ハルテッドも何となく知ってはいたが、ワッと燃え上がった火を見ると『うわ、こえぇ!!』と美女にあるまじき発声で驚いた。ベルも目をむいて炎を見つめる。『あの人、何なんだ』何者?と苦笑いしていた。
一行の興奮が落ち着いたので、それぞれ支度に取り掛かる。10の班に分かれた班長に、イーアンは改めて道具を紹介し、使い方をもう一度教えて、火を放ったら即、石を5つ全部放り込むことが大切であることを口酸っぱく伝えた。
「これで逃げ出す魔物がいたら、矢を放って落として下さい。それでも生きていたら、剣の方が斬って」
それでね、とイーアンは夜目の利く人の確認をする。各班に一人ずつはいると分かったが、スコープを渡し、頭にかけてもらってスコープ越しの風景を見てもらう。既に辺りは夕日も消えて暗くなる時。
「これ。何ですか、何で。あ、人間だけ?明るく見える」
東南の騎士隊長の一人がスコープ越しに、周囲をくるくる見渡して驚いている。他のスコープを着けた者たちもびっくりして、同じように首を回して周りを見始める。その行為に、他の者は何があるのかと関心を示す。
「それは熱に対して・・・だと思うのですが、明るく反応して見えているみたいです。ですから高温で燃える洞窟を見ないようにして下さい。洞窟の外に飛び出る魔物を、それで見つけられると思います。」
「本当だ。さっきの火を見ると明る過ぎて真っ白で見えない。これ、大量の火を見ないほうが良いかも」
どうぞ気をつけて、とイーアンは注意した。夜目の利く人が少ない班に、もう一つずつ渡し、ドルドレンにも一つ渡した。
「とりあえず、これがあれば夜でも見えるな」
ドルドレンが装着してニコッと笑うと、イーアンが萌え萌えしながら赤くなって悶えていた。『ドルドレンたら。あなたはカッコ良過ぎます』萌えるイーアンに笑いながら、ドルドレンは抱き寄せる。タンクラッドも似合っていたが、ドルドレンは世界一似合うとイーアンは拝む。
タンクラッドの名をこの場面で聞いて、イーアンのメロメロを想像し、一瞬仏頂面になったが。ドルドレンは世界一・・・ と言われたので、許す旦那(※心が広い)。
準備が終わったので、いざ出発。外は既に夜の暗さ。夜は始まったばかり。それぞれが向かう先へ分かれて進んだ。
イーアンとドルドレンは龍に二つ分の壷と材料を積んでから、上空へ行き、それぞれの洞窟の入り口側に降りて、材料を置く。近くの川で壷に水を汲んで、ドルドレンに持ってもらい、そっと龍に押し上げてもらいながら背に乗り、岩棚の洞窟2箇所に運んだ。
龍には待機してもらって、二人は洞窟の入り口近くで様子を見た。
「ドルドレン。中に魔物は」
「いる。もうびっしりいる。すごい数だな。眠っている感じではない」
「では火矢。あ、火矢どうしましょう。忘れていました」
「ぬ。そうか。誰か一人連れてくるか」
ということで。イーアンは、近くの洞窟にいる騎士を探しに行き、弓引きを一人貸してもらった。
南東の騎士で『ドラゴスラフ・フィオフです。お役に立ちますように』と挨拶してくれた。暗い中だが、若くてしっかりした感じの人と分かる。彼を龍の背に乗せて、一緒に洞窟まで戻った。
「フィオフさん。私がお願いしたら火矢を放って下さい」
分かりましたと頷き、小さな油の缶に火をつけるフィオフ。フィオフに待機してもらい、ドルドレンとイーアンは洞窟の入り口へ壷をずらす。
「静かにな。動く気配はない。かなり警戒しているようだが、襲ってこないな」
イーアンもなぜかは分からなかったが、多分、この魔物は夜に目があまり使えないのではと思った。死体を見て、目が大きいことと前に付いていたことから、視力に頼る飛び方に感じた。
洞窟の入り口まで壷を押し込んだ時、中から2頭飛び出してきた。ドルドレンが即、剣を抜いて斬り、魔物2頭は落ちる。その反動で中が一気にけたたましく騒ぎ始めた。
急いでイーアンは袋の中身を壷に空け、ドルドレンとフィオフのもとへ走る。ボコボコと音を立てて反応が始まると、魔物がどんどん飛び出してきた。
「イーアン、火を放て」
ドルドレンは飛び出てきた魔物を跳躍で斬り、イーアンに叫ぶ。すぐにフィオフは火矢を放ち、洞窟が一気に炎に包まれる。直後、イーアンも持っていた石を投げ込んだ。
ボンッと大きな音がして炎が噴出す。出てきた魔物はドルドレンが次々に切り捨て、フィオフも狙って矢を放つ。イーアンはフィオフの側で見守るのみ。業火を上げる洞窟が落ち着くまで、スコープなしでも見えるくらいに、炎に包まれた魔物が飛び、それらは一頭残らず片付けられた。
「次へ行こう。この騒ぎで魔物が警戒を増すかもしれない」
ドルドレンは粗方片付いた洞窟と、倒した魔物の状況を見て、イーアンとフィオフを促した。ミンティンと一緒にフィオフとドルドレン、イーアンの3人は次の洞窟へ向かった。
次の洞窟でも同じように水を運び、中をスコープで確認する。少し離れた場所だったからか、落ち着きのない鳴き声がするものの、中の魔物は群れをなして動かなかった。
ここでも同じように水を入り口へ運び、袋の中身を投入してからフィオフに火矢をお願いし、イーアンが石をなげる。繰り返す地獄の業火の勢いは凄まじく、中から飛び出してくる魔物は数十頭に上った。
ドルドレンがばんばん跳んで、斬った魔物を踏み場に蹴って跳ね上がり、ずっと空中にいるような状態で燃える魔物を斬り捨て続ける。クロークが舞い、群青色の鎧は業火の明かりに星のように煌く。超人技を繰り広げるドルドレンに、イーアンは見惚れ続けた。
気がつけば、魔物は消えて、炎の残りがくすぶるのみとなっていた。
着地したドルドレンが戻ってきて、フィオフとイーアンに周囲を調べるように言って、他に何もないと分かったので戻ることにした。壷は翌日に回収と思ったが、洞窟の中を見ると、炎の温度が上がりすぎて壷は割れていた。
「戻ろう。他の連中でまだ戦っている所は加勢しよう」
3人は龍に乗って、別の洞窟を見に行く。空から見ると、所々が赤々と燃える炎を見せていた。人の姿と声がする場所に降り、フィオフを帰してから、加勢する必要のある場所はドルドレンが入った。
自分の近くに来た魔物は斬ろうと思っていたが、イーアンが手を出すこともなく騎士の皆さんは戦ってくれて、充分安全だった。
ハルテッドとベルの兄弟がいる場所も行ったが、兄弟の仲が悪いような良いような、不思議なタッグを組んで非常に貴重な戦力と化していた。ベルが戦う場面を初めて見たが、ベルはハルテッドと違って長い槍を使うので、槍を使って跳んでは魔物を刺して振り落とすような、曲芸さながらの戦い方だった。
ソカを振るうハルテッドは、ベルが高く飛んだ時に落とす魔物を、ソカで捕らえて刻んだ。ドルドレンは彼らの勘が良いと話していたが、何か見えないものを見る力に恵まれていそうな雰囲気があった。
「ベルはああして戦うのですね」
「そうだ。普段は槍を持たない。長いものがあれば良いのだ。棒でも何でも。南の支部に偶々、槍があったのだろう」
途中、ハルテッドのソカが当たりそうになって、ベルが『あぶねぇ』『殺す気か』と叫んでいた。それに対し、弟は『死にたくなきゃ避けろ』『うるせえバカどけ』と口答えしていた。後から支部に戻って、ベルが『ちょっと切られた』と切れた服にぼやいていた。
12箇所の洞窟全てを見て回って、ドルドレンはイーアンに南の支部に戻ろうと言った。イーアンは龍を南の支部に向けた。
二人が到着してから、少しずつ各班が戻ってきた。洞窟で片付けるものがある場合などは、片付けてから戻ったようで、全員が揃う頃には既に9時近くなっていた。
馬を繋いで中へ戻り、鎧を外す全員に、ドルドレンは労いの言葉をかける。南の隊長たちも声をかけて、今日の負傷者は4人のみと発表した。火傷らしく、落ちた魔物が当たったということだった。ベルは、自分も弟にやられて負傷したと呟いていた。
「今日はこの時間だから明日。遠征報告会議をしようと思う。明日の朝、良いか」
ベレンがドルドレンに相談し、ドルドレンは了承した。ハルテッドは泊まっていくことになり、イーアンとドルドレンは北西支部に戻ると伝えた。皆とても嫌がっていたが(※総長は帰っても良いと言われた)イーアンは怪我をしているので、一旦帰宅が通った。
9時半頃、二人は北西支部へ龍と一緒に戻った。




