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魔物資源活用機構  作者: Ichen
剣職人
267/2944

267. ダビを囲む会

 

 それから数日間。


 ダビは一切、イーアンの工房に近づかないまま、過ぎた。イーアンもダビを呼ばなかった。


 イーアンが工房にいるのは、外の演習で知ることが出来たが、裏庭演習は2度だけで、後は合同実戦演習が年始めから連続して、壁の外ばかりだった。里帰りや家族と過ごした者たちも戻ったので、久しぶりに騎馬隊も揃い、合同実戦演習は忙しかった。


 ダビが総長を見る時は、大体ポドリック隊長やザッカリアと一緒で、誰かと話している時以外は、合同の敵役になるため、せっせと跳んでいた(?)。

 知らない間に、なぜかディドンが自分の隊に加わっていて、後から移動紹介があった。新年の移動は珍しくないが、ディドンがなぜこっちに来たのか。ダビは知らないままだった(←結成『イーアン純愛組』メンバー)。


 新年の移動といえば、ポドリック隊から一人抜けた(ディドンはポドリックの隊)ということで、ハルテッドがポドリック隊に移った。ベルが既にいるため兄弟が揃ったことになる。

 この理由は、クローハルがハルテッドを嫌がったかららしい。精神衛生上とか(※女好きだから。女紛いは生理的にイヤ)。


 ドルドレンの隊は増えたが、クローハルの隊はこれで8人になってしまったので、今月中に別の支部から2人来るのを、クローハルの所に回す話だった。



 イーアンを怒らせた翌々日は、誰かがイーアンの龍の話をしていた。その日の朝に出かけたような話で、方角はイオライセオダの方だった。


『最近ちょくちょく龍で出かけるけど、不思議と一般の人が騒がないもんだね』


『この前、王都の親戚が言ってたけれど。龍が飛ぶのは、国が守られ始めた兆しって。王からお触れが』


『王様か。この前来た、あれか。じゃ、王が言うなら納得するかもな』


『多分、国中にそれは流布しただろう。王都が情報源なら、2~3日もすれば田舎にも聞こえる』


 そんな会話を聞いて、ダビは納得した。それならもう龍がどこへ現れても危険どころか、大歓迎だろうなと。イーアンはそれの使い手みたいになってるから、きっとイーアンも受け入れられる速度は早い。そもそも龍はイーアンなしで飛ぶのだろうか・・・・・


 そこまで考えて、ダビはイーアンが、タンクラッドの工房に出かけたことに意識を戻した。すぐに気を紛らわして、演習に没頭した。次週の休み、ボジェナの工房へ出かける。その時は普通にしようと決めた。


 この日の夕方、青い龍が裏庭に降りたのを見たが、ほぼ半日向こうにいたのかと思ったら、何だか不快だった。自分の居場所が消えていくような、奇妙な不安が浮かび上がる。



 また暫く日にちが経った頃。ようやく休みの前日になる。

 洗濯当番も(この前のツケで)一週間早めに回ってきたので、そつなく淡々とこなし、馬乗りで馬上戦の演習をし、久しぶりに大弓で飛距離の更新をした。そんなことをしてると、一日はあっさり夜になる。


 だがなぜか、休みまでが長く感じた。一週間くらいの間を、長く感じるなんて。初めてかもしれなかった。


 夕食を終えて自分の工房に戻る。作業台の上を見れば、イーアンに渡す金属部品が沢山。こんなに使うのかと思うくらい積み上がっている。重なる紙の束は、試作の提案図。その横には、タンクラッドがダビへ・・・とくれた砥石。



「あ。いけない。俺、誰にも休みになったら出かけるって話してなかった」


 休み前日夜に気がつき、慌てて執務室へ行く。まだ執務の騎士が居るかなと思ったら、いたので安心。2週間分の大積みの書類に埋もれて、ひーひー言いながら『新年は超過残業だ』と嘆く騎士たちに、自分の休みを組んであるか尋ねると、どうでも良さそうに見上げられて『好きに休んで』と放られる。


 もう一人の騎士が勘良く察し、パッと顔を上げて『イオライセオダの契約金だったら、気にしないで大丈夫』とダビに言った。総長に話しを聞いて、既にイーアンに持たせたと言う。


「龍でお使いなんて、楽ですよ。私達が動かなくて良いし、最速ですからねぇ。今後も是非活用ですよ」


 これまで自分たちで出かけていたお金の業務は、行って戻るのに数日かかる上に、その間の仕事も溜まるしで、執務の騎士たちは龍の存在は本当に楽だと喜んでいた。が、喜び束の間で、すぐ筆記作業に集中した。



 お使いイーアン。龍に乗れるイーアンは、お使い用。まるで犬だなとダビは思った。その瞬間、自分を苦しめた『ワンちゃん』の文字が浮かび、頭を振って忘れることにした。


 自工房に戻る間。明日のイオライセオダのことを、イーアンに頼まないといけないことに悩んだ。もっと早く言えれば良かったのだが、何となく言いにくかった。


 工房に入ると、何人か来ていて、剣の研ぎ直しをお願いされた。その場で研いでやり、弓の火入れがどうとか言うのは預かった。


「明日使うかもしれない。今日中に出来る?」


 コーニス隊のメルドロンが少し気がかりそうに聞いた。同じ隊のヤン・バシクワと、パドリック隊のイゴル・シシュマンは、ダビに代わりの弓を持ってるかを訊ねた。


 研ぎなおした剣の持ち主の、クローハル隊マクス・ムルビカと、ディディエ・ゴウェインは、剣の握りの革の交換と、鞘が削れるから補修したいことを伝える。


「同じ重さじゃないけれど弓はあるよ。ヤンとイゴルの使う形は、少し軽くて良いなら、そこにあるのを持っていって良いよ。

 明日は出かけるから、メルドロンの弓は今日中には調整できないと思う。時間がかかる。

 ムルビカの握りの革は、イーアンに聞いた方が良い。ゴウェインの鞘の補修は、私でも出来るだろうけれど明日以降だ」


 ダビが答えると、メルドロンは少し残念そうに『角度が変だけど、明後日まで気をつけて使うよ』と頷いた。ヤンとイゴルは壁にかかった弓を見て、幾つか手に取ってからそれぞれ借りるという。


 ムルビカはイーアンを探すというので『イーアンは多分、明日イオライセオダへ』と言いかけて止めた。ゴウェインはふと思い出した様子でダビを見る。


「そういえば、魔物製の剣を作ったんだってな。イオライセオダの職人に頼んで」


 その話題を避けようと思ったダビは、ゴウェインを見ないで頷き、はぐらかすように鞘を調べる。


「その鞘。魔物の革で作れないのかな。イーアンが変なの作ったことあっただろう。見たことがあるんだ。隊長が話していて、工房前で少しだけ見せてもらった。凄い色してて、初めて見る鞘だった」


 ダビは、あの白い剣の鞘のことだとすぐ分かった。


 あれは魔物の針を包む皮で、それを別の魔物の黒い内皮で編んだと伝えた。木型は自分が作ったから、出来ないことはないんじゃないかと答えると、ゴウェインは危険性についても訊ねた。


「それはないでしょ。あったら使ってないですから。皆、よくそういうの質問するみたいですが、イーアンも言うけど、危険だったらそもそも加工できないよねって。

 あの鞘に関しては、イーアンから聞いてるのは炎に焼かれても強いし、イオライの黒い体液の魔物の酸にも強かったと」



 それを聞いたゴウェインの隣のムルビカも欲しがった。メルドロンも、そうした弓の入れ物があれば安心なのに、と話に乗る。


 これからダビと一緒に、イーアンの所に行って、予約したらどうだろう?とムルビカが言い始めたので、ダビは気まずくて断った。断るなんて思ってなかった彼らは、ダビに何かあるのかと質問してくる。


 問い詰めれば問い詰めるほど、なにやらダビがやらかしたらしいことを知り『ちょっと待ってろ』とゴウェインが突然いなくなった。



 数分後。なぜかクローハルとブラスケッドが来た。クローハルを掴まえたら、ブラスケッドが面白がって付いてきたという。



「なんだ。何かと思えばダビか、どうした」


 ブラスケッドは意外そうな顔をしてダビを見る。『お前は呼ばれてないだろ』クローハルがぺしっと落とす。

 嫌なのが来たな、とダビは内心困った。クローハルが何で必要なのか。その上ブラスケッド付き。この二人は『煩い人たち』としか認識していないダビ。


「ほらダビ。イーアンとこじれたら、この人以外に()()を思いつかない。総長に言ったら、即殺されるだろうし」


「何だ?イーアンとこじれた?誰が、え、ダビか?」


 クローハルが複雑そうな顔でダビを見る。こじれる印象もなければ、それで悩む印象もない、目の前の男は無機質極まりない人物と誰もが思う。その顔は今、困ったように言葉を探している。


 ブラスケッドも『へえ』と眉を上げて驚いて、さっと作業部屋を見渡し、何も言わずに出て行った。


 もともと倉庫なので広さはあり、暖炉はなしでも窯があるから『とりあえず』とか何とか言いつつ、隊長に椅子を勧めて、作業台の横に座らせる部下2名。弓部隊の3人も暇な様子で、作業台の横にある台に適当に座る。


「いいですから。別にそんな話すことないし」


「いや。イーアンが絡んでるなら。俺は確実にそこにいる(?)。お前そう言えば、ここのところ全然工房行ってないだろ。一週間演習で、午前から午後までお前を見るなんて、まずなかったからな」


「彼女は忙しかったから。俺は関係ないですよ」


 クローハルは気がつく。こいつ、自分のこと『私』って言わなかったっけ。素が出てきたのか・・・・・

 じゃあやっぱり取り巻き組かも。ふーん・・・この男がねぇ。


「ダビの話聞いたんですけど、意見が通じなかったとかで喋るの避けてるって」


 ムルビカが暴露。ゴウェインもうんうん頷く。弓部隊の3人も『ダビらしくない』『結構悩んだっぽい』と感想までつける。自分から何かを言うと自爆しそうで、ダビは黙った。胡桃色の瞳が、気だるそうに自分に向けられる。


「何した。お前がイーアンに意見って、物作ってるのに聞いてもらえないようなこと言ったのか」


「隊長に関係ありませんから。全然」


 ばっさり斬り捨てるダビに、クローハルが眉根を寄せる。『関係あるって言ってるだろ。イーアン絡みだ』俺にも影響出たらどうするんだ(※とっくに出てる)とぼやく。


「そんな。クローハル隊長に影響ないですよ。どっちかといえば、イーアンが自覚ないから、イーアンの話ですし」


「何だと?彼女の自覚?それ、物作り関係ないだろ」


「ありますよ。委託先の工房の職人に触られても普通なんですよ?平気な顔して普通。総長ならまだしも、他の、あったばかりの仕事先の人に触られて、笑ってられるっておかしいでしょ。人が見たら、そういう人物だと誤解するって言おうとしたら、怒ったんですよ、イーアンが」


 クローハルの目に怒りが宿る。部下は椅子を放し、半径1mに座り直す。


「触る?職人が?イーアンは平気なのか」


「でしょ。だから言ったんですよ。そんなの他所の人が見たら、仕事先なのに変に思われかねないって思ったから。そしたらイーアンは『あの人は自然体だから、あまり傷つけないように回避するつもり』とか悠長なこと言うんで」


「 ・・・・・そういう人物か。それで?」


「イーアンは自分はワンちゃんみたいな扱いだろうって変なこと言うので、じゃあワンちゃんだと言われたら自分でも誰でも、イーアン触れるのかって訊いたら」


「ダビがそんなこと訊いたのか」


「え?ダビがイーアン触る?」


「そこじゃないでしょ。そういうことかって訊いたわけですよ。そしたら怒ってそれきりです」


 いらつきが戻ってしまったダビは、ふーっと大きく息を吐き出す。ブラスケッドが戻ってきて、なぜか酒と10個くらいの容器を手にしていた。作業台にそれを並べ、『要所は聞いた』と頷きながら酒を注ぐ。


「ブラスケッド隊長まで止めて下さいよ。ここで酒飲まないで下さい。吐かれたらヤです」


「誰か吐きそうになったら追い出すから。とにかく飲め」


「飲めば解決って話ではないですよ。明日は俺、イーアンの龍でイオライセオダの剣工房行くんですから。それまでに話しないと」


「その職人の所行くのか?」


 クローハルがちらっと見て酒を飲む。ダビも溜め息をついて酒を飲む(?)。『俺が行く工房はそっちじゃなくて、剣を最初から作らせてくれる話のほうで』とボロッと言い、慌てて口を押さえた。


「ダビが剣を作るのか。まあ、それはいつかありそうだと思ったから、良かっただろ」


 ブラスケッドは事も無げに流す。他の連中も頷いて酒を飲む。もう既に飲み会。クローハルは飲みながらダビをじっと見つめ、ちょっと首を傾げた。


「イーアンの自覚が足りないって言うけど。相手の職人が真面目なんだろ?自然体で触るって腹は立つが、イーアンが対処しようとしてる、って言うなら、放っておけば良いだろう。

 聞いてみりゃ、イーアンの態度や性格から、今までだってそんな変わんないんだし」


「変わるでしょ。仕事先ですよ。お触り有の女の人みたいじゃ」


「おい、何て言い方するんだ。お前、一番近くにいてイーアンのことそんなふうに言えるのか」


 ブラスケッドが怒った。クローハルも目つきが変わる。『酷い言いザマだな。こんなに世話になってて、それでそんな見方で彼女にケチつけたのか』自分はどうなんだ、とクローハルが苦々しげに言う。


「俺は喋ったこと、ほぼないけど。イーアンってそんなふうな人に見えないよ。勘違いされないんじゃないかな」


 弓部隊のヤンが言う。この前、ウドーラの遠征で見たイーアンは、そんな尻軽みたいな印象じゃなくて、徹底して戦う強い人にしか思えなかった、と。


「知ってる人だったら、イーアンはいつもニコニコしてるし、別に職人に触られてるからって変に見ないと思うけど。触るってどんな?」


 メルドロンもコーニス隊でウドーラに行ってるので、イーアンの印象からそれほどベタベタ触れない気がした。メルドロンの質問は大事だ、とクローハルが重ねる。


「髪撫でたり。顔ちょっと触ったりとか。背中押して歩かせるとか」


 何だか嫌な空気に押されるダビは、ぼそぼそ呟くように弁解じみて答える。酒をちゅーっと飲んで、目を逸らす。ブラスケッドは口を開けて呆れた様子。クローハルも同じような顔でダビを見つめる。


「顔ちょっと触るって、それはまぁ見たら二度見するかもしれないけど。髪撫でるとか、背中を押すとか。それくらいは・・・ちょっと待てよ。その職人、背はどのくらいだ」


 総長と同じくらい、とダビは答える。酒をちゅーっと飲む。もう何を言っても、責められる気しかしなかった。ブラスケッドが髪を撫でつけて『それは』と頭を振る。


「そりゃあるだろ」 「あるよ。俺だってする」


 いやお前は触りすぎ、とブラスケッドがクローハルに注意する。ダビはよく分からないので、不審げに二人の隊長を見る。他の騎士は何となく分かるらしい。黙って小刻みに相槌を打ち、酒を飲んで顔を見合わせてる。



「イーアンは背が高いわけじゃない。職人がドルドレンと同じくらいの身長だったら、四六時中、彼女の頭の天辺しか見えないんだ。顔見れてないだろ。手を伸ばしたら、丁度頭があるわけで」


 ブラスケッドもクローハルも背が高い。ドルドレンが一番背があるが、二人とも少し低いくらいで、イーアンは小さく見えている。ダビは彼らよりは背が低いので、イーアンは頭一個も違わない。


「でも。ブラスケッド隊長はイーアンの顔、触ったりしないでしょう」


「それをやると、俺まで警戒枠に入れられるからしないだけだ。俺は安全に、近くにいられるようにしてるだけで」


「計画的だな」


「お前みたいに、何が何でも触ろうって思ってないんだよ」


 隊長同士が言い合うのを聞きながら、段々、ダビは居心地が悪くなってきた。自分の工房なのに何でだろと思う。他の騎士も同情気味にダビを見ている。


「何となく分かった。お前は仕事の話があるからってことで、そうしたこれまでのイーアンの状態に、自覚がないと言い始めたんだな。

 でもそれはイーアンが一番分かってる部分だろう。人目があるなら気をつけようって。でもあの性格じゃ拒絶なんかするわけないんだ。それで試行錯誤してる時、お前に言われて、自分が何も考えてないみたいに思われた、と怒ったんだ」


「さすが隊長」 「女のことは早い」 「やっぱり女性問題はこの人が解決する」 「部下にもこれくらいの理解が欲しい」 「読みが半端ない」


 変な方向で部下に絶賛されるクローハル。やんや、やんやと拍手されてクローハルも小気味良さそうに(※単純)ニヤつきながら酒を注ぎ足して呷った。


 ブラスケッドはすでに寛いで靴まで脱いでる。酒を飲みながら『早めに謝った方がいいぞ』と笑ってる。



 結局。ぐうの音も出ない状況に追い込まれたダビは、気まずさも苦しさも思い遣ってもらうことなく、クローハルに引きずられながら、イーアンの寝室(総長付き)に連れて行かれ、仏頂面の総長(←やらしいことする寸前だった)に面会を頼む。


 寝巻きに、部屋用の毛皮の靴と、青い布を羽織ったイーアンがいそいそ出てくる。


 ちらっと扉の隙間をドルドレン越しに見て、クローハルのいやらしい目つきに驚いて総長の影に引っ込む。


「おいで。可愛いよ、こっちで見せてくれ」


「その言い方が嫌悪されてるって分かりますか」


 冷淡に切り捨てるダビの声で、イーアンがまたひょこっと出てきた(チンアナゴ状態)。『ダビ』小さな声でイーアンが名前を呼ぶ。ダビはクローハルを押しのけて(後ろで『おい』とか叫んでる)イーアンを見る。


「あの。明日、剣を作りに行く約束を親父さんとしてて」


「その前に言うことがあるだろ」


 クローハルがダビを見下ろして促す。ドルドレンにがっちり守られたイーアンは二人を見つめる。言い難そうに目を伏せるダビが咳払いをして、口を開いた。


「悪いこと言いました。一方的に決め付けて」


「そうそう」


 クローハルに満足そうに認められるダビ。なぜダビとクローハルが一緒なのか掴めないまま、ドルドレンとイーアンは顔を見合わせる。


「分かりました。明日、朝食が済んだら契約金を運ぶので、一緒にイオライセオダに行きましょう」


 イーアンが普通にそう言うと、ダビはイーアンを見つめる。いつもの笑顔でイーアンは自分を見ていた。『すみませんでした。お願いします』ダビはそう言って、会釈して戻る。クローハルがイーアンに挨拶して、面会終了。



「お世話かけました」


 工房に戻る間、ダビはクローハルに礼を言った。クローハルは『別に』と鼻で笑った。


「お前は女慣れしてないから分からないんだ。イーアンは普通の女じゃない」


「そんなの知ってますよ」


「お前の言う『知ってる」は、俺の言う『知らない』だ。あーあ。ドルドレンどっかで気絶しないかな」


 早くさらいたい、と不穏な望みを無邪気に言う隊長に、ダビは苦笑いした。

 この人も自分と同じ立場なのかもしれない。そんなことを思いながら、少し心の中がすっきりしたダビだった。工房に入ると宴会になってる(つまみまである)ため、仕方なし0時まで付き合った。



お読み頂き有難うございます。


ブックマークして下さった方がいらっしゃいました。凄く嬉しいです!!有難うございます!!

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