266. 愛犬イーアン
ドルドレンとイーアンの中一日はあっという間に過ぎる。
朝から工房⇒イーアンが何か作る⇒夜はいちゃいちゃ。遠征もなければ、呼び出しもない場合、これに尽きる。ここに細かいことが加わるが、それも毎度のようにほぼ似たり寄ったり。
執務室が稼動するまではもう少し日にちあるが、騎士たちで里帰りや家族と過ごした者はもう殆ど戻ってきていた。イーアンがタンクラッドの工房に行く日から、合同演習が始まるそうで、ドルドレンは嫌がっていた。
イーアンは、目玉の続きを終えた前日の午後に、早めに風呂に入ってお菓子を作って、また土産にと包んでいた。妙に楽しそうに見えて、ドルドレンはぶーぶー文句を言っていたが、あまり言っていたら、口を利いてくれなくなり、慌てて機嫌を取った。
石の種類を教えてもらうの、とか何とか。別にここで石溶かすわけじゃないんだし、とぼやくと睨まれた。
なぜか長居する気満々の様子で、ディアンタ本の鉱石の本や、『宝物』棒、新作・目玉商品(←名前どおり)だとか、何だかんだ。えらく荷物に入れるので、早く帰るようにドルドレンが言うと、向こうでお昼食べるかもと言い始めた。
さすがに、それはどうなんだ、と愛妻(※未婚)を叱る。今度は愛妻がぶーたれた。石の勉強したら、すぐお昼になっちゃうのにと、怒る、怒る。少ししか勉強できないなら、毎日行っても良いのか、とまで脅される始末。
結局、宥めて落ち着かせ。やっとこさ夜に行き着き、さっきのことは水に流して~といちゃつきつつ、どうにか安心して、気持ちの良い快感の夜を過ごすことが出来た。2時間でも充分楽しい、イーアンに指導されるという大変素敵な授業を受けた。
しかし朝は無情にもやって来て、早く起きたイーアンはきちんと着替えて、せっせと支度をし始め、朝食を食べるや否や、あっさり龍を呼んで荷物を担いで龍に乗る。
「それでは夕方前には戻ります」
るんるんしながら、青い龍と一緒に飛んで行ってしまった愛妻(※未婚)を見送る総長。妖精の騎士が、冬の朝の風のようにひらりとやって来て、ぼんやり空を見つめる総長の肩に手を置く。
「イーアンは、材料に非常に強い関心を示すので。もう少し手を打っておかないと、職人に取られちゃいますよ」
朝一で迫力の睨みを利かせるドルドレンに、妖精の騎士はひららと踵を返してコロコロ笑う。『手を離さないようにって言ったじゃありませんか・・・』職人に取られる前に、私が守りますけれどね・・・・・
ハハハハハ・・・風のように消えていくフォラヴの笑い声に、ドルドレンは唸るしかなかった。
いつものように20分程度で、イオライセオダに着いたイーアン。龍を見る人もちらほら出てきたかな、と思うが、まだ何も言われないので普通に壁向こうに降りて、龍を空に帰した。
町の中に入って、10分歩かないうちに通りの向こうにいる背の高い男を見つけた。近づいてみると(←遠目が利かない)タンクラッドだった。タンクラッドが先にイーアンを見つけ、嬉しそうに歩み寄ってきた。
「おはよう、イーアン」 「おはようございます」
食事は?と聞かれて、済ませてきたと答えると、家の中に入りながら『自分はこれからで』と言う。
「お邪魔ではないですか。もう少ししてから来ても」
荷物を下ろしかけたイーアンが見上げると、タンクラッドは微笑んで首を振る。『ここにいてくれ』そう言って、台所に入った。荷物を置いて、青い布と上着を椅子に掛けてから、イーアンも台所へ行くと、職人はこれから食事を作るところだった。
「見てるか」
「はい。何を作られるの」
簡単なものだよと笑うタンクラッドは、野菜と塩漬けの肉を出して、ブレズと少し違う形の焼き生地を皿に置く。『ちょっと火を入れて炒めて、そんなもんだ』職人が笑顔で火をつける。イーアンはちょっと考えて、好き嫌いはあるのか訊ねる。
「特にない。何でも食べる」
「私が作っても良いですか」
「イーアンが?今から」
何でも宜しかったらと念を押すと、タンクラッドは満面の笑みで場所をどいた。調理に必要な器具の場所を見せてから、材料と普段食べる量を簡単に説明してくれた。
イーアンは今日、石を割ったり触ると思って、汚れても目立ちにくい服にしていた。それでも美しい刺繍が入ったり、身体にぴたりと付くような仕立てでチュニックとは違うのだが、でも料理くらい何てことない。
水の多そうな野菜を選んで、脂と塩をもらい、イーアンは5種類くらいの野菜を一口大に切って、一種類ずつ炒め、都度塩を振りながら、最後に一番水が出る野菜を入れて蓋をした。
塩漬け肉は薄く切って、少し切り込みを入れて焼いてから、薄切りにした生の野菜と一緒に、焼き生地の中に挟んでおく。
タンクラッドは嬉しそうに横で見ている。野菜が煮えてから、蓋を取って少し水分を飛ばし、鍋の底から木ベラで返して、皿によそり、タンクラッドの朝食を机に運んだ。
お茶を淹れるから、どうぞ食べてと促して、イーアンは二人分のお茶を淹れる。
椅子に座ると、タンクラッドはイーアンに礼を言って、朝食を暫く見つめてから食べ始めた。一口食べて、ふっと目を開いてイーアンを見る。美味しいんだわと分かって、イーアンも微笑んだ
「イーアン。とても美味しい。同じ材料なのにこんなに違うのか」
「誰かが作ってくれると、何でも美味しく感じるものです」
ハハハと笑うイーアンに、タンクラッドはニッコリ笑って、静かに食事を進める。大事そうに食べて、野菜が生きてると不思議な誉め方をしながら、肉の入った焼き生地を齧り、満足そうに唸った。
「お菓子を焼きました。お茶の時にと思って」
小さなクッキーの間に、焦げたような甘い香りのクリームを挟んだ、可愛い菓子を箱に詰めてきた。朝食を食べながら、職人はその可愛らしい菓子を見て、イーアンを見て。
「お前がいると、いつもの朝が違う朝になる」
大きな手をそっと伸ばして、イーアンの髪を撫でる。よしよし、という感じの撫で方で、微笑みも、よしよし、な感じ。撫でられ方がやらしくないので、イーアンも慣れた。タンクラッドの愛情表現は多分、ナデナデなのだ。
職人は精悍な顔をずっと緩ませっぱなしで食事を終えて、毎日食べたいと冗談を言って(※意外と本気)食器を下げる。自分で作ったからと、職人を座らせて、イーアンは食器を洗った。
朝食を作ったのは、遠征の食事を思い出したからだった。いつもの食事が変わると、それだけでちょっと気持ちが変わる。人はほんの少しのことでも気分が良くなったりする。食事は大事なのだ、とイーアンは思う。
椅子に戻ってお茶を飲むと、タンクラッドはイーアンを優しく見つめて満足そうにしていた。そして椅子を寄せて、真横に並び、イーアンの頭を撫でながら話す(※完全ワンちゃん)。
「山へ行って。イーアンがくれた牙を肌身離さず持ち歩いた。お前と一緒にいるみたいで、夜も朝も幸せだった」
ほら、と見せてくれたのは。鎖で繋がった龍の牙。タンクラッドの日焼けした身体、逞しい首からその胸に鎖で下がる白い牙がある。シャツを開けて見せてくれた。職人らしからぬ強そうな体つきと筋肉に、イーアンは少し赤くなる。
「とてもよく似合っています。ご無事で良かった」
ちょっと恥ずかしくなって目を伏せると、それには気がついたようで(←大方鈍い)タンクラッドは照れたイーアンを撫でて顔を上に向かせる。『女に見せる場所ではないか』すまない、と微笑んだ。
話を変えて、イーアンは今日、自分が持ってきた物を最初に話した。これらを後で見せたいから、先に石を知りたいと言うと職人は頷く。
「聞いておくが。今日はどれくらいいる。昼か」
「一応、夕方前に戻れたら問題ないです」
「そうか。それでは一緒に昼も食べれるな。おいで」
職人は立ち上がって、イーアンを工房へ連れて行く。イーアンの背中に手を当てるのは、毎度のことになり、イーアンはこれにも慣れた。
工房の中にいくらかの塊が置いてあり、それらは本当は外に置いておくものだとタンクラッドは話した。もっとあるが、それは裏庭と言う。
工房の床に置かれた石を見つめるイーアンは、この石があの剣になるのかと考えた。ここの鍛冶の仕事はちゃんと見たことがない。親父さんの所よりも、タンクラッドの工房は遥かにマニアックな設備だった。こだわりだと分かる。
タンクラッドが教えてくれる、イオライで取れる鉱石の話を聞き、目の前にある石を見ながら質問する。沢山に見えて、熱すると分解して不要なものと分かれることや、溶かしたら少しずつ含まれている金属を取り出すことを教わる。
イーアンはちょっと待ってもらって、紙とペンとインク、持ってきた本を出した。『ディアンタの本です』鉱石の本をタンクラッドに見せて、自分は字が読めないと教えると、少し驚いた顔をして、すぐにページを捲って調べてくれた。
職人が食い入るように本を見ている間、イーアンは教えてもらったことを急いで書き付ける。その字を見てタンクラッドの眉が寄るが、一秒後には理解した様子で『それはイーアンの文字だな』と頷いた。
「私はこれから、ここの文字を読めるようになりたくて。ドルドレンが教えてくれて、ギアッチという元教師も教えてくれて。でもほら。こんな中年ですから、なかなかね。そんなの言っててはいけないんだけど」
書き付けながら、目の前の石の塊を絵に描くイーアン。絵を見て止まるタンクラッド。
「そうだ。お前の絵は。凄い絵だと思ったのだ。俺が預かったあの・・・総長の剣の絵。あれをイーアンが描いたと聞いて。お前は一体何を生業にしていた。ものづくりの前は、絵を描いたのか」
イーアンはニコッと笑った。その笑顔は寂しく悲しみを堪えた笑顔だった。タンクラッドはそれ以上聞けなかった。イーアンも何度か瞬きして、少し泣きそうになるのを堪えたようで、そのまま笑顔の口元を崩さない、違和感が残った。
「ごめんなさい。あの。過去が、あまり話せる良い思い出ばかりでは」
なくて、と続けようとして、涙が溢れる。急いで俯いて背中を職人に向け、イーアンは懸命に涙を拭く。
絵が上手に描けるのは。それしか出来なかったから。上手いと誉められるだけなら、それは嬉しい。でもどうして、何でと聞かれたら。芋づる式に記憶が引っ張られてしまった。
それを売るために生活のために自分も売ったことはある。若い時のわずかな1、2回だが、嫌な記憶でもう思い出したくない。絵は好きだが、描けるのは好きだけど。それ以上は思い出したくない。
自分の過去は傷だらけ。そんなの、気にしていないはずだと思っていても。こんなに真面目に生きている人に、自分みたいなのが関わって良いのだろうかと思ったら、凄くいけない気がした。
タンクラッドはイーアンが泣いたのを見て、驚いて立ち上がる。
「どうした。言わなくて良い。イーアン、どうした」
こっちを向かない背中にタンクラッドは抱き締める。職人は戸惑いながら気がついた。彼女に過去を聞いてはいけないことを。それだけは確かだ、と分かった時。タンクラッドはイーアンをぎゅっと抱き締めて慰める。
「悪かった。知らなかったが、傷つけたな。もう聞かない。お前は今のお前で良い。そのままで良い」
背中から抱き締めて、その顔を手探りで撫でる。涙が指に手の平に伝う。可哀相になって、タンクラッドが前に回りこむ。前から抱き締めて、頭を撫でる。自分の胸に頭を当てて、せっせと頭を撫でた。
「イーアン。泣かないで。お前が泣くなんて。ごめんな。本当に気がつかなくて、ごめんな」
大丈夫かな、と思って。ちょっと体を離してイーアンの顎に手を添えて、少し上を向かせようとしたが、俯いて力が入っている。顔を見せたくないのだろうと分かって、屈みこんで顔を見た。睫が涙に濡れて、鳶色の瞳が水を湛えた泉のようになっていた。
見ている前でぽろぽろ涙が宝石のように落ちる。頬を撫でて、目元の涙を拭ってやる。可哀相で、でもなぜか可愛い。タンクラッドは涙のイーアンを励まして慰めて、どうにか涙を止めようとする。
ひっくひっくしながら、鼻をすするイーアンはどうにか涙を止めて、真っ赤な目で職人を見つめて謝った。
小刻みに身体が震えているので、タンクラッドは抱き寄せる。撫でて、今のイーアンで良い、といい続けるしか出来なかった。
「すみません。お世話かけました」
イーアンは俯いてタンクラッドからそっと体を離して、謝る。
「謝るな。そんなこと考えなくて良い。大丈夫か。石はいつでも教えられるから、今日は戻っても」
あまり言いたくなくても、タンクラッドはイーアンを総長の元に帰した方が良い気がして、そう言うと、イーアンは頭を振って『いえ。まだ聞かなければいけないことが』と答えた。
「石の話と。お前の荷物だな」
はい、と答えるイーアン。『私の弱点は過去かも』そう苦しそうに笑う姿に、職人の心が傾く。同じくらいの年だから、いろんなことを越えてきただろう。イーアンは全く想像もつかない場所から来たのかもしれない。
イーアンを座らせて、頭を抱き寄せて胸につけてやる。イーアンが逃げようとするのをそっと押さえて、撫でるタンクラッド。
「お前を幸せにするのは、間違いなく総長だろうが。お前の苦しみを聞かずとも、分かち合うことは俺にも出来る」
それぐらいはさせてくれ、とタンクラッドはイーアンを撫でた。『これは黙っておけ。隠し事とは違う。弟子を励ましているだけだ』イーアンの頭を撫でながら、親方はそう言った。
イーアンの細い背中を撫でながら、自分の心を満たすほど大きな存在のその身体は、こんなに小さいのかとタンクラッドは思う。イーアンの持ってきた本を見て、彼女を見て、自分は彼女にもっと早く会えていたらきっと、と。
しかし運命は違う。影から支える役割を押し付けてきた。
抱き寄せても、ちょっとした隙に身体を離そうとするイーアンの。その・・・律儀さに。
タンクラッドは苦笑しながら力を弱めて、顔を見てみる。恥ずかしそうに目を逸らすイーアンに、濡れた睫を指で拭ってやる。
額に額を付けて、その苦しみを半分受け取る職人。少ししてから、額を離して、頭を抱き寄せて撫でる。本当は口付けしたい気持ちもあるが、それはしたら嫌われるだろうと思って止めた。
「大丈夫か」 「はい」
イーアンを撫でながら、石の話を続け、絵を描こうが字を書こうが、タンクラッドはそれを見守った。石の話が終わった後、荷袋から不思議な白い棒と、奇妙な目円盤を出したので、その話題になった。
イーアンとタンクラッドの話は休憩することなく続く。
昼になって、イーアンがまた何か作るというので、材料を教えて何でも使えと職人は促す。イーアンは、台所に椅子を持ってきて、職人に座って見ててもらう。
好きに作って良いと言われたので、いつもの昼食用の材料を聞いてから、それを参考に作り始めた。
塩漬けの肉を細かく叩いて荒挽肉にして、芋をすりおろした。脂を熱した鉄の鍋に芋を6つの円形に入れて、その上に肉を置いて、上からすりおろした芋で閉じた。他の野菜と豆を煮て、使って良いといわれた香辛料でしっかり香りをつける。芋のほうは裏返して両面を焼いて、完成。少し多めに作って、夜も食べれるくらいの量にした。
皿によそって机に運び、二人で昼食。
見た目にも嬉しそうなタンクラッド。泣くとすぐ腫れる、ぽたっとした目元のイーアン。食べ始めてタンクラッドが匙を置く。驚いてイーアンが彼を見ると。
「これ以上食べたら。お前を帰せなくなりそうだ」
困った顔でそれを言う職人に、イーアンはちょっと笑った。『なんてことを』と言うと、タンクラッドはイーアンの頬に手を添えて『お前は俺を一人で居させない気か』と笑った。
「食べて下さい。美味しいって言って下さってるのですね」
「それ以外の何だ。毎日食べたい。毎食。辛くなるだろう、お前がいないと」
「今は初めてお食べになってるから。毎回これかもしれませんよ」
「毎食これでも良い。俺は飽きない」
諦めたように溜め息をつき、タンクラッドは笑みを顔に残したまま、食事を続ける。一口ずつ味わいながら、丁寧にきれいに食べてくれて。台所を見てからイーアンを見つめる。
「まだ残ってるな」
「はい。でもそれは夕食の分です」
「もし今食べたら。夕食用に作ってもらえるか」
ハハハと笑ったイーアンは、頷いて、『多めに作ります』と了解した。ニッコリ笑った職人は皿を手に台所へ行って、全部よそって戻ってきた。
「お前がいると、食欲がわく。イーアンは料理が上手だ」
そう誉められて悪い気はしない。イーアンはお礼を言って、とても嬉しいと伝えた。
「毎日来てほしいと思うくらいだ。でもそんなことしたら、総長に何を言われるやら」
一緒になって笑ったが、イーアンは男の一人暮らしを考えた。料理を保存する冷蔵庫の存在がない世界。冬だから地下室に入れておけばどうにかなるけれど。
暫く考えて、日持ちするものだけでも作れたらと思う。忙しい職人が手を煩わせなくても、小腹に入れられる食べ物。
「私。支部に戻ったら、ちょっと試しに作ってみます」
何を?と思って訊ねる職人に、イーアンは思うところを話す。出来立てが美味しい料理もあるけれど、そうではなくていつでも食べれるものを作ったら・・・・・
「イオライに行くと聞いて、私何か保存食をと思ったのです。日が間に合いませんでしたが。何かそうしたものを、お菓子でも良いのだけど。ここに残していけたら。お仕事が少し楽になるかしらって」
「俺のために。俺の仕事のために食事を?」
「はい。私も作っていますから分かるのです。私は極端で、食べなくても何日も作り続けるところがあるのですけれど、誰かが作っておいてくれたらなって思った時は数え切れなくて」
ズボラで恥ずかしいと笑うイーアンに、タンクラッドは、自分と似ていると思って嬉しくなった。
「イーアンの保存食。脂の固まりでも俺は喜ぶだろう」
それを聞いたイーアンは大笑いした。さすがにそれはしない、と笑って、タンクラッドも笑った。笑いながら、不思議な棒の読み方や、その内容、異様な目玉試作品の話題で午後は流れた。
タンクラッドの胸中。イーアンが、たとえ自分の妻になることがなくても。側にいつもいてほしい、その気持ちが高まる。いろんな過去を抱えているだろうが、それらも全部がイーアン。それで良い。
目が覚めたらそこに居て、美味しい食事を笑顔で出して、剣を作る時も側にいて、茶を飲む時も一緒に菓子を食べて。独り言を言う時、側で頷いて。出かける時も一緒で、眠る時も、夜中に目が覚めてもそこにいて。いつも撫でて。いつも抱き締めて。嬉しかったら飛びついてくれて。しょげてたら慰めて。
決してそれ以上がなくても、それでも。手に、その温もりやふさふさした毛を感じたい。垂れ目で可愛い目で見上げてほしい。いつも笑っていてほしい(※これらは全てワンちゃんで完璧こなせる)。
大事な存在を見つけた職人タンクラッド47歳。総長の保護を適度に往なして、仕事に専念させるイーアンに育てようと決めた。
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