2576. 本島北10日間 ~㉒『神殿潰し3』クフムと手記・前座マリハディー神殿
※今回長くなり、7000文字少しあります。分けると全体が長引いてしまうために、こうなりました。どうぞお時間のある時にでも。
この午前。ガヤービャンの宿では―――
フォラヴが部屋に籠り、親方が近所の工房へ出かけ、徹夜したオーリンとミレイオが寝ている時間。オーリンの隣の部屋で、クフムは読み続ける手記に指を挟み、返して戻しを繰り返しながら、眉根を寄せていた。
「気になるんだよな。ここ」
何度読み返しても、違和感がある箇所。二重の意味を持つ言葉で構成される文が、飛び飛びのページに、三回出てくる。
最初に、一緒に読んでくれたシャンガマックは『通じる方の意味』を強調して、皆に伝えようと言っていたが、クフムはここがどうしても忘れられなかった。
シャンガマックも、別の意味を持つ言葉と分かっていそうだが、彼は皆に説明するため、全体の流れを通し、変ではない訳し方を勧めた。
「でも・・・手記は、ギビニワ司祭の直筆ではなくて、『思っていたことの記憶』を捏造・・・じゃなかった、再現って話だったし。
『ギビニワ司祭が本音で考えていたこと』と捉えて読み直すと、うーむ。やっぱり違ってくる」
精霊に捏造なんて言ったら、何されるか分からないな、と独り言に注意しながら、クフムは寄った眉根をさらに近づけ、手記のページに指を置いて首を捻ねる。
「キンキート氏殺害の経緯から最後まで、一冊の物語風に仕上がってるけれど。もっと面倒なことに、彼は首を突っ込んでいる感じがする。
司祭は元々、薬調合に関心があって、ヨライデに渡ったのかもしれない。でも、王国軍の死霊使いに会って、『作り方を教えてもらうため頼んだ』のではなく、『作るように頼まれて教わった』としたら?
それで、死霊を作るようになった・・・のが冒頭、として。
主題・キンキート氏の一件。目障りな彼を殺害し、死霊で操った。んだけど・・・キンキート氏のことも、別の見方だと、ギビニワ司祭の『目標』の一目盛りでしかなかったんじゃないか?
それに最後がどうしても、引っ掛かる。『頼まれた』とすれば。死霊増加で強化する、神殿のためになるから・・・ここの『神殿』と訳してた箇所、直訳は『国を握る者』。神殿の名詞とは別だ。
シャンガマックは、『神殿そのものを示す』と言い、文に合わせて訳した。でも、『国を握る』限られた少数、の意味が強い。そう考えると、デネアティン・サーラの頂点か、この流れだとヨライデ国王」
ふーっと息を吐いて、窓を開けに立つ。開けた窓から風が入り、青空が目に入る。
「イーアンは今日、神殿を根こそぎ叩き潰す気なのかな。気づいたことがあれば教えて、と言っていた。自信がなくて伝えそびれてしまった。私が見つけた箇所が、重要じゃなければいいけど」
こんなでは、役に立つなんて思ってもらえないなと、僧侶は首を振ってまた机に戻った。
*****
場所は変わって、マリハディー神殿―――
持ち込まれた僧兵、の死体。
警備隊から死亡届付きで兵士を門に運ばれ、門番の僧侶が対応に戸惑い、司祭に報告。呼ばれた司祭は神官と急いで門へ行き、その光景に愕然とした。
全身を防腐布で巻かれた遺体は、顔の部分だけ布をずらされていた。『そちらの僧兵だろ?本人がそう言っていたようだ』と、警備隊に恐ろしい言葉を告げられる。
―――国境警備隊は、現場へ呼ばれて行っただけ。
ラサンの直接の死因は、断定できていない。通りに倒れたラサンを、人が助けようとして道に寝かせ、話を聞き終わったら、息を引き取った、という。話を聞いたのは旅人で、周囲にも見ていた人はいたため、警備隊に連絡が来て・・・
神官は、死体を前にした『一通り』の口述が、殆ど頭に入らなかった。
肝が冷えるとは、このこと。だが、神官は警備隊に冷静に振舞って、求められた署名をぶっきらぼうに済ませると、彼ら数人を門前払いでさっさと帰して門を閉じた。
振り向いて血走る目を向け、すぐさま僧侶たちに遺体を中へ運ばせる。中になど運びたくないが、外に放置するわけにもいかない。
間違いなくラサンだった。・・・この事態に! 焦りと嫌な汗と、嫌な予感しかない。付け焼刃の冷静さは、水が乾くようにあっという間に干上がる。
しばらく戻っていなかったラサンは、所属こそマリハディー神殿に残してあるが、全国を動き回る兵であり、最後はカーンソウリー島で行方が途絶えた。神殿の告解室で消えた、と。それが。
この男のせいで。 物事が狂い始めた今は、誰もが憎々しい気持ちを持つ。
内の大騒ぎまで時間もかからず。ラサンが死んだ?どうするんだ、あれはこれはと、慌てふためく輩が、眉が付くほど寄った神官と司祭の後ろに、ぞろぞろついてくる。
それには答えず、足早に逃げようとする二人の横では、遺体を運ぶ他の僧侶たちが、揺れるたびに死体頭部から布がずれるのを、見ないように目を背け、神官たちの早足に必死についていく。
神官も司祭も、自分を守るのが先。これにかこつけ、神殿から離れる方向の用事やら思い付きやらを、我先にと口にする。『知らせに行く』『船の準備に時間が掛かる』『数日留守に』・・・・・
互いに押し付け合い、小競り合いは声が大きくなり、相手を罵倒する口喧嘩に変わる。
地下へ運ぶ途中、階段の踊り場で真横の相手に、くるりと互いが向き合い、大声を被せて言い合う。相手の胸に指を突きつけ、あなたが許可したんだ!あなただって保証人になっただろう!と唾を飛ばしてその場から動かない神官と司祭に、遺体を運んでいた僧侶たちは、一旦床に遺体を置く。
地下一階に降りる半地下の踊り場は、明かり取り用で横長の小窓が、地面すれすれにある。地上の状態は、回廊から外れた中庭の端っこ辺り。中庭自体は内玄関に添えられており、信徒が入れる所。女龍もシャンガマックもルオロフも、これをここで聞いていた。
この場所は、マリハディー神殿周囲を包む林の外から小道で繋がる。シャンガマックの千里眼で僧兵が置かれた位置を特定し、『普通に歩いて行ける』と顔を見合わせた三人は、途中誰かに会ったら、倒すかどうしようかと話しながら到着。いたって普通の来客状態で、足を止めた中庭のはずれだった。
擦り付け合い、怒りをぶつけ合い、見苦しさ形振り構わず。顔に掛かった布がずらされた、布巻きの死体を足元に、司祭と神官は怒鳴り散らして互いを責め続ける。
その内容は解説に近いくらい過去を掘り返し、あれもそうだ、これだってそうだった、この時はあんな理由で、あの日だってこう言いだした・・・と、まぁ出るわ出るわ。よその神殿、修道院、サブパメントゥとの会話、ラサンが関り、報告を管理する二人は、『知らない』とは、全く縁遠い関与を覚えている限り、怒鳴り散らしていた。
これを。シャンガマックとルオロフが『神官と司祭』役で同時通訳してくれたため、自分の左右で言い合いを聞いているようなイーアンは、聞きながら苦笑しては首を横に振っていた。
息切れで神官たちの言い合いが止まった時、『殺したくなる』と笑っていない目で呟く女龍。騎士と貴族がピタッと止まり、イーアンは口だけ歪んだ笑みを浮かべて『そろそろ』と不穏な合図を口にした。
「そろそろ」
始めますか―― 右隣のルオロフが言い終わるより早く、女龍の腕が白く光り、それと同時に、キン、と高い音を立てて、窓と窓のある壁が切れた。女龍の片腕は龍の爪。白い鎌のような爪が、地面ごと窓をくり抜き、窓は奥へ落ちる。
落ちるより先に、パッと差し込んだ光に振り向いた多くの顔が驚愕に引きつり、続いて、ガシャ、どさっと自分たちの足元に落ちた、窓と壁の一部に後ずさり、見上げるそこに立つ、木漏れ日を背景にした三人・・・の真ん中、白い刃物と角のある誰かを凝視した。
「誰だ」
「『ウィハニの女』と言ったら、どうする」
イーアンの横、シャンガマックがティヤー語ではっきり伝えた。慄く顔は、どれ一つ動かず、悲鳴が出る手前で金と緑の結界がここを丸ごと包む。
「結界を張った。誰も逃げられん」
「ありがとう、シャンガマック」
褐色の騎士を見上げずに、食い入るようにこちらを見ている僧侶たちを眺め、イーアンは礼を言う。
どういたしましてと呟いた騎士は、気分悪そうに輩を見渡し『俺はどうする?』と次の行動を聞いた。すかさずルオロフが『私も出来ることはします』と添え、女龍は少し考えたが、僧侶の一人が悲鳴を上げたので・・・ 白い鎌をびゅっと伸ばし、爪の先の背中(※片刃の剣でいう峰)に僧侶の服を引っ掛けた。わぁ!とまたも大声を出した男に、女龍は教える。
「坊主、動くと切れる。龍の刃は、風が吹いたって風を切るんだから」
フードを切らないように、器用に持ち上げた、龍の爪。はぁはぁ言いながら、引っ掛けられて襟首を吊られる僧侶は、自分を攻撃した異形の女に『助けて下さい』と震える声で頼んだ。
「助けてもいいけど、叫ばない」
「さ。さけば。叫びません」
「うるさくしない。出来るか?」
出来ます、と懇願した僧侶は、爪を返されて床に落ちる。この拍子でフードの縁が少し切られていたが、僧侶は無傷。
怯え震える身体を抑えられもせず、神官と司祭は結界の間近まで走り下がって、『ウィハニ、なぜ』と共通語で叫んだ。その瞬間、爪は神官の額の横に動き、ひっ、と首をすくめる。
「叫ぶなって」
「わ、わかりました!すみません、叫びません」
「さて。『なぜ』の答えを言うか。その・・・死体の」
長い長い白い龍の爪が、ゆっくり神官から離れて、床に置かれた布巻きの遺体を示した。
「私たちの用事は幾つか、要求は一つ。『カーンソウリー島で、魔物資源活用機構の荷を盗んだ男、そのラサンという僧兵が自供した』話から始める」
*****
イーアンの中性的な声が、そう言った時。誰かが結界に向かって覚悟を決めたように走る。結界は僧侶たちのいる踊り場と階段の上下分を包むのが、見て分かる光の色で仕切られているのに。
通り抜けようと考えたか、一人の僧侶が結界にぶつかる直前、シャンガマックの眉根が寄った。次の瞬間、僧侶ははじき返されて、投げられるように吹っ飛ぶ。バン!と大きな音と共に転がる僧侶。青ざめる司祭と神官、他怖れる僧侶たち。司祭はすぐさま振り返って、『申し訳ありません』とイーアンに謝る。
「俺の結界を馬鹿にして・・・ 」
気を害した騎士の呟きを、横のイーアンの耳が拾い、彼を見た。目が合った騎士に微笑む。
「お父さんがいたら、僧侶は瞬間で消えてしまいましたね」
「そうだな」
「私だと、消えませんけれど。でもあなたの結界を馬鹿にしたことを、許しません」
女龍の言葉に片眉を上げたシャンガマック。微笑んだイーアンは真顔に戻り、翼を二枚出して、わぁわぁ騒ぐ輩の踊り場に降りた。地面を見上げ『そこにいて、私が求めたら品を』と二人に頼むと、真ん前に向き直る。
至近距離、背の高さはイーアンが一番低いけれど。この場の誰より強い龍が、まさに今、自分たちを裁こうとしている恐怖は、そこにいる男全員を平伏させる。皆が膝を床につき、遺体を挟んで女龍を見上げた。
結界にはじかれ転がった僧侶は混乱し、涙目で何か叫びながら、横の僧侶の服を掴む。道連れを嫌がる他の僧侶が彼を引き離すが、怖さが達したその者は大声の懇願が止まらない。イーアンはその僧侶を見て、龍気を放った。ほんのわずかな白い光が、僧侶の額についた途端、僧侶は床に倒れる。
「気絶しただけだから、お前たちも騒ぐな。そして、私の大切な仲間を侮辱してはならない。次は死ぬぞ」
静かな女龍の予告、震える司祭は肩で息をつきながら『もちろんです』と答える。神官はもう殺される覚悟を固めて、声が出てこない。
「おかしな前座はここまで。黙って聞くように。この僧兵、ラサン。マリハディー神殿の僧兵でしょ?」
「いいえ・・・いや、あの、はい」
「嘘はね、死ぬからやめておきな」
いいえと先に言ってしまい、言い直した司祭を神官が睨む。目を瞑って頷いた司祭に構わず、注意だけ済ませてイーアンは続ける。
「私たちの船が、カーンソウリー島の港に入った日。荷下ろしで製品の箱が一つ盗まれた。それはこの死体の男が直接の犯人で、ご丁寧にも盗んだ後に、国境警備隊施設に盗難届を出していた私の仲間に、わざわざ知らせに来た。
まるで誘導のような『現在の荷箱がある場所』を伝えられ、私の仲間は取り返しに出かけ、ラィービー島でこの男と対戦して倒したんだけど・・・仲間は、呼び出された館で殺人が行われたと聞いて、屋内にあると思しき荷箱を直に取り返さず、それは船員たちが押収した。
カーンソウリー島の警備隊に、この死体の男と、荷箱、血塗れの『武器』を運びこんだものの。
なんと神殿はラサンを、あっという間に連れて行ってしまった。『一般信徒だから』と言い張って」
最初の事実を抜粋して、一気に伝える。目を見合わせた司祭と神官の表情に、少し疑問が浮かぶ。
イーアンには彼らが考えることなど、手に取るように分かる。『こちらの推測で喋っている』と言い逃れを思いついた顔つき・・・とりあえず、そのまま『最初の用事』を話し終えた。
―――『ピインダン地区神殿で話すと、改めた日にちを示され、行けば誤魔化されて、話にならなかった』
「ラサンは『民間人で一般信徒』。当の本人は部屋の壁一枚挟んで、離された位置に、顔を隠して座っていた。面会は拒否。嘘もいいところだ、って思わない?」
「・・・私共が、ピインダンにいたわけではないですし・・・確かに僧兵であることを、一般信徒としたのは大きな間違いですが、こう言っては何ですけれども、実際に殺害があったかどう」
「ルオロフ」
「はい」
上から答えた貴族を見上げ、イーアンは彼に『この男に接触されたのはあなた』と、足元の死体を指差して尋ねる。え?と見上げた司祭たちに、ルオロフは冷えた視線を送り『いかにも』の返事。
「その男に、無理やり『ラィービー島』へ行くよう言われ、翌日私が向かうと、その者が待ち構えていた。私が警戒すると、その者が私に攻撃し、私はこれを捕らえ、カーンソウリー沿岸警備隊に引き渡したのだ」
きちっと言い切ったルオロフに、イーアンは軽く手を振って止め、司祭に向き直る。
「有難う。・・・そういうことでね。彼は警備隊に報告書も書いているし、警備隊から、証言提供の許可も得ているんだわな。疑うなら、警備隊も」
「そ。その、いや。ですが、証人と証言があっても、殺害と結びつけるのは」
女龍は司祭の『言い訳』の返事を遮り、再び上に呼び掛ける。横を手繰ったルオロフが地面にしゃがみ込み、打ち合わせの品を女龍にそっと放った。
その影に、ギョッとする僧侶。イーアンはそれを片手に受けて、振り返りざま『これ』と、神官たちの目の前に突き出した。
「ぐ。う、これ」 「あ、む。あの」
「おお。反応する・・・そりゃ知ってるな。あんたらも」
「え?それは。そ、ど、どこで」
司祭の瞼が痙攣する。自分たちを見下す、白い肌の女が怖くて仕方ない。神官は何度も唾を呑み、どうしてこれがあるのかと目が泳ぐ。僧侶たちも観念して顔を伏せたり、ウィハニの女を凝視して凍り付く。
血塗れだったと分かる、汚れた金属の筒。その形は、組み立てた後の銃。銃の先に紐でぶら下がる、黒々した布の袋は、分解した銃を入れる袋・・・ ラサンの所属神殿の者は、当然知っている。
片手に持った銃をくるっと回転させた台尻で、遺体の胴をゴツッと突いたイーアンは『これで、こいつは島の人を殺したんだけどね』淡々と話す。
「嘘ばっか、なわけ。ラサンも、ピインダン地区神殿の連中も。お前たちは反応したから、まぁ良い・・・で。私の用事、その①はこれだ。『認めろ』。お前たちの抱えている僧兵が、ラィービー島で、この武器を使って人を殺したこと。僧兵が、私たちの荷を盗んだこと」
立っていた膝を曲げ、イーアンは片手の銃を杖のようにして、しゃがみ込む。ど真ん前に、ティヤー人の神官と司祭が汗を浮かべており、目が合うと逸らすが、何か答えねばと呻きを漏らすのを眺めた。
「そう・・・あんたたちが管理していても、こいつは人をしこたま殺したわけだから。今更、どこかの貴族が使用人と死んだ程度、って思うだろうけど」
「思いません。そんな」
「そう?じゃー、認めるか。『ラサンは、私たちハイザンジェル王国魔物資源活用機構の荷物を盗んで、貴族をこの武器で殺して、逃げて、神殿も嘘を吐いたけど、実はホントでした』」
答えが出ない二人と、その他十名の僧侶。床に膝付く姿勢で、金と緑の結界に囲まれ、ウィハニの女の『用事』を拷問のように苦しむ。
その様子は、声で返事をしないだけで、認めているに等しい。上で見ているシャンガマックもルオロフも、そう感じるし、イーアンも同じ。だが、これが序の口である。
じーっと見ていた鳶色の瞳は視線を外し、銃を乱暴に離す。石の床に倒れ、ガランと金属音が響いた。ビクッとする神官その他。結界の外には、異変を知った他の僧侶たちが集まり、結界内にまで聞こえないが騒いでいる。
イーアンはまた立ち上がると、一呼吸置いて、鉄槌に正当な理由へ。
「認めた、な。では次だ。この武器の存在は、世界の禁忌だったはず。ラサンが作り出したのは、本人から聞いた。そして神殿がこれを止めるどころか、『聖なる大陸へ行く力』と後押し」
「待ってください!なぜですか?そんなこと、どうして。ラサンが、あなたに話したのですか?ラサンから聞いた、とは」
焦った勢いで思わず口を挟んだ司祭は、ハッとして口を噤むが、イーアンは彼を一瞥し『旅人って誰だと思う?』と低い声で問いかける。え?と聞き返した神官。司祭は、ぼんやり思い出す。『倒れた僧兵は旅人に話して』警備隊が、先ほどそう話していたことを。
驚き過ぎて固まる二人に、小さく頷く女龍が、自ら教える。トン、と親指を自分の胸に当て――
「私だ。『旅人』の表現は、正しい」
お読み頂き有難うございます。




