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魔物資源活用機構  作者: Ichen
烟雲の如し
2539/2961

2539. 『やること』延長と脱退と分担・不可解な僧兵

 

 やることリスト―――



 魔物製品そろそろ補充につき、ロゼールが来るまで製品普及の停止。

 次の国境警備隊で卸す際、それを伝え、しばし本島滞在の報告。


 ラィービー島の盗難殺人事件、証拠集め。

 イライス・キンキート宅訪問時、証拠も揃えて相談。


 オーリンの『偽弾』依頼先、コアリーヂニーの工房訪問。

 両替所情報の、魔物製品製作委託予定の工房訪問。

 魔物材料収集、制作指導の期間。


 僧兵から聴取すること・・・

 サブパメントゥの道具を持つに至った流れ。

 関わったサブパメントゥ、条件や取引の詳細。

 銃と火薬を押さえる以外の、神殿を止める方法。

 残存の知恵と、武器の現状、他行方。


 武器製造室をホーミットが壊して回っているが、他にないかどうかクフムに聞く機会を設ける。



 他、シャンガマックは言わなかったが、個人的に『サネーティのくれた、自分用の地図(※2467話参照)』にある場所の調査。

 精霊の服、と呼んでいる着用中の衣服。この服を作った、精霊とも妖精とも違う種族が、ティヤーにもいると聞いていた(※2410話参照)。

 サネーティの地図には、服の模様に因む地域が示されており、シャンガマックは是非訪れたい。


 それと、シャンガマックとしてはサンキーの工房も、まだ行きたい。

 渡した材料から、強化した古代剣が生み出されていると思うと、秘めたる力がありそうで気になる。

 だがシャンガマックの当初の用件、『ルオロフに剣を持たせたい』は叶っているため・・・本職の職人(タンクラッド)が行こうとしないのに、自分から言い出し難い。



 こんなことを、もやもやと思いつつ―――


 船の食堂で、シャンガマックはイーアンとフォラヴ、それと、漏れなく付き添うイング相手に、これらの優先する順を話し合う。


()()わりに、金銭のやり取りはありませんね」


 フォラヴが何となく突っ込む。予定とは脱線する『言葉の使い方』指摘。これはイーアンが答える。


「無料ですから。魔物製品」


「でも『卸す』と、常に口にしているのはなぜ?」


「フォラヴの素朴な疑問。良いですね。そういうことにしておかないと、変な輩がホイホイ寄ってきて、我も我もとなるからです。タダとなれば、欲しいでしょう」


「ああ、そうした対処で?」


 多分ねと思うイーアンは、頷いておく(※気にしてなかった)。親方やミレイオたちが『卸す』口癖から、定着した気もする(※職人だから)。ここで話を戻し、待っているシャンガマックに、イーアンから質問。



「シャンガマックとお父さんは、まだ地上に居られるのですよね?」


 頷く褐色の騎士は、ついこの前、精霊に『延長』を言い渡されたばかり(※2526話参照)。知らされた時、延長理由を問う者はいなかった。決めるのは精霊の意向で、何で・次はいつ?とはならない。


 やることリストの紙を前に、全く文字を読めないイーアンは、読み上げられた内容に考える。


「延長期間の長短のほどはさておき。とりあえず、お父さんとあなたがいるのであれば、どこへ行くにも私たちは、言葉の問題を回避できます。ルオロフもいるけど、彼は派遣団体ではないので。本来、彼の立ち位置は()()ですし」


「そうだな。ルオロフは前に出さないように、とイーアンは思っているのか?」


「の方が、良くありませんか。ドルドレンが最近まで、ルオロフを機構の用事に付き添わせていましたが、ピインダン地区神殿から状況が変わりました。ルオロフは大貴族であることから、何かあれば神殿に接触を求められそうです。彼も悩んでいたけれど、アイエラダハッドの事情で立場が曖昧になった今、表に出さない配慮が必要に思います」


 彼はとても気にしているでしょ?と眉を寄せるイーアンに、シャンガマックもフォラヴも同意。


「機構の仕事は、シャンガマックが通訳に入るようにして・・・警備隊の用も、工房委託相談も、です。その他の通訳が必要な場面は、二番手のルオロフと決めた場合、自ずと優先順位も定まります。『ルオロフを前に出さない』なら、先に手を付けるのはシャンガマックが動く仕事。

 だけど優先順位と言ったって、相手の都合で同時進行もあるので」


「そう。別行動は常に起こりますね。1にシャンガマックが動く仕事、2にルオロフが動く仕事として、担当もある程度、もう決めておきましょうか」


 話を聞いていたフォラヴが、イーアンの続きを引き取り、予定課題の紙を覗きこむ。



 ―――()()()()()()()()()・・・フォラヴは人数の調整も思う。


 オーリンは、カーンソウリー島前で『船待機と自由に動ける班の必要(※2506話参照)』を話した。当たり前なのだが、いつでも船に残る誰かも必要なのだ。


 出先でいきなり、私が消える―― それも問題だが、船待機で自分だけ残っている場合。余儀なく、妖精の世界へ戻らなければならない事態が訪れたら。

 それを思うと、フォラヴは自分が『船を預かる役』は避けたい。皆の移動と生活を預かる船を、(もぬけ)の殻の危うさに晒すわけにいかないのだ。


 だから、早めに・・・ 機構の用事だけでも、先に済ませてもらえたらと考える。機構の仕事で外に出るなら、自分は頭数で動ける―――



 片手で白金の髪をかき上げたまま、紙の上で止まっている妖精の騎士に、イーアンは『何か思うことありますか』と尋ねる。気にしていそうな柳眉は、どの角度から見ても綺麗だけれど(※そこじゃない)。


「ええ。あります。私は、()()()


「・・・・・ 」


 視線を動かさずに答えたフォラヴに、シャンガマックとイーアンは一瞬、言葉に詰まる。


「フォラヴ。お前は戻る日が分からない、と話していたが」


「その通りです。自分から戻らなければ、強制的に戻される日が来るでしょう」


 だから、とフォラヴは顔を上げる。心配そうな二人を見つめ、白い手袋の指を紙にトンと置く。


「機構の業務で動く時、私をお連れ下さい。出来るだけ、船の番をしなくて済むことを望みます。万が一、私の意思関係なく、戻される時が来たら」


「望まない留守を避けたいんだな?」


 シャンガマックとイーアンは、小さな溜息を落として『それなら』と顔を見合わせる。


 フォラヴの気遣いを無駄にしないよう、日程の調整は相手と擦り合わせもあるが、機構の仕事をとにかく優先的に片付けようと決める。


 オーリンたちが工房へ動く時も、通訳のシャンガマックは勿論、フォラヴも一緒。契約書の扱いは機構の派遣騎士の仕事だから、ロゼールと総長が不在の際は、シャンガマックかフォラヴ。


 イーアンはドルドレンの代わりで、警備隊関係に顔を出す。それと、魔物材料の出荷・・・ロゼールが戻らない期間、ティヤーの工房に運ぶ分と、ハイザンジェルへ輸出する分を気にしないといけない。



「久しぶりに、王様の印章を使うことになりそうです。超、久しぶりかも」


 イーアンはずっと、この手の業務から離れていたと呟き、騎士二人は笑う。ロゼールがコルステインたちの手を借りるようになってから、魔物材料の輸出も製品の輸送も、任せっぱなしだった。


「輸送の手続きは、俺もいるから問題ない。ただティヤーは、地続きがほぼない国だけに・・・ハイザンジェルへの船便もどうなっているか。状況によっては、魔物材料の輸出は無理かもな」


 ちょっと困った感じのシャンガマックに、イーアンもその可能性は高いなと思う。


 で、ちらっと見る。目が合う、青紫。余裕気な瞬きを見上げ、何も言わずに女龍は目で訴えてみる。見下ろすイングは『どうした』と軽く流し、イーアンは頭を横に振った(※何でもない、の意味)。


 お願いするの躊躇っているんだな、と察したシャンガマックたちは、少し笑って咳払い。ダルナに頼むとまた色々あるのは、シャンガマックも承知のこと。



「とりあえず、外出する機構業務には、私を連れて下さい。それで宜しい?」


 苦笑するフォラヴが確認し、イーアンとシャンガマックは了解する。本島に滞在する期間は長そうなので、船も港に預けっぱなしになるだろうが、トゥが出払う日は、別の誰かに任せようと話は決まる。



 小さな会議は終わり。『それじゃ、タンクラッドさんたちにも伝えよう』とシャンガマックが立ち上がった時、通路に足音が聞こえ、ノックと同時でミレイオが扉を開けた。


「着くわよ」


 巡視船と少し前に合流したようで、もう十分もすればガヤービャン地区国境警備隊の入り江と、ミレイオは教えて、シャンガマックとフォラヴはついて行った。



 イングとイーアンは部屋に残り、イングが『籠は』と尋ねたので、イーアンは別の部屋へ連れて行く。


「籠に入れる時、お前は姿を見せたのか」


 不意に、イングから思ってなかったことを言われ、イーアンは彼を見上げ、首を横に振る。多分、見えていなかったのではと答えた。籠に先に布を掛けた状態で、扉を開けて僧兵に向けたから・・・・・


「姿を見せる気がなさそうだな」


「うーん、そういうわけでもないですけれど。ウィハニの女、私のことですが、私に拘っている印象が話中にありました。それで、余計な情報を入れたくないと思うのはあります」


「俺に見せる時も、お前は布の影に居ろ」


 そうしますねと頷いて、二人は籠を置いた部屋に入った。


 僧兵を入れた籠は、船倉の一室の机にあり、念のためにと、イーアンの鱗を籠周りに並べた状態。イングは赤い布を取るように言い、イーアンが布を持ち上げる。


 縮んだ小さい僧兵は起きて顔を向け、イーアンはイングの反応を見る。

 青紫色の人間に似た相手に、僧兵は驚いて何か口にしたが、それは聞き取れず。ダルナはこれを少し眺めてから、布を戻すよう手真似で示し、布が掛かるとイーアンに感じたことを伝えた。


「この男の中に、もう一人いると思うが」



 *****



 僧兵の奇妙な印象に、首を傾げたダルナの言葉。それに目を見開いたイーアン。この話はまたあとで。


 船は、巡視船の迎えに案内されて、ガヤービャン地区国境警備隊の港に入る。


 昼は過ぎており、荷下ろし何のと始めるには中途半端な時刻で・・・というのも、記憶に新しすぎる『盗難事件』はこちらの警備隊にも当然伝わっており、『すぐに発つ予定でなければ、明日にしたい』と警備隊は話した。明日は人数が多く揃えられるので、万が一という事態も防げる。敷地内を歩いて数分先の、施設へ移動するだけであっても。


 念には念を入れて。それで良いんじゃないかと皆も了承し、挨拶に出たイーアンが、総長不在を先に教えて『製品を運び終わるまで、自分がつく』と言うと、警備隊は頼りになると喜んでいた。



 こうしたことで、明日の何時、滞在予定をさっくり話した後、警備隊から宿と食事処のおすすめを聞き、一先ず、皆はお昼に行く。

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