表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物資源活用機構  作者: Ichen
烟雲の如し
2532/2965

2532. 半月間 ~㉟十日まとめ・本島までの四日~地図名称・過ごし方・トゥの意思・太陽の手綱について

 

 旅に出て一年、その祝い以降の出来事―――



 1.ミャクギーで魔物製品を卸した他。ここの神殿で、クフムが僧服を受け取り、ダルナとイーアンを連れてくるよう、追いかける指示を受け、帰り道でサブパメントゥに襲われた。

 魔物製の服のおかげで難を逃れたクフムは船へ戻り、船はミャクギーを半日だけで出港。


 ミャクギー島を出た午後。イーアンは龍気の補充で空へ行き、戻ってきて人助け。魔物に襲われた船を守るという一場面があったが、その後も何もなく。


 2. 翌日にタンクラッドとシャンガマックが、サンキーの工房へ出かけ、持ち込み材料の不思議な物質と、魔物の体から、サンキーが作り出した古代剣――ルオロフの剣を持ち帰った(※2503話参照)。

 剣の試験を、甲板とパッカルハン遺跡で行い、これが合格。見事、古代剣の再現及び強化は成功した。


 3.出発から二日目の、この日はこれ以外なく、翌三日目も静かに船は進むだけだった(※2505話参照)。


 4.出発から三日予定で到着するカーンソウリー島に、翌朝。出発日も含めれば四日だが、国境警備隊の情報どおり、『三日で着』とする。


 カーンソウリー島入港目前で、オーリン他三名で魔物退治。

 退治後、お礼にと海辺を案内された際、オーリンが立ち寄った漁具工房には、先日イーアンが助けた船の乗員が(※息子)いて、『弾製作』の相談を持ち掛けた(※2507話参照)。


 船に戻ると、船は移動しており、同じ島の先の港に停泊。こちらに沿岸警備隊施設があり、港に馬車で来た警備隊員と、魔物製品を分けていたところ、荷が一つ盗まれる。

 探索が長引く予想から、宿へ移動する馬車に、不審な僧侶が話しかけ、それはホーミットが対処したが、片や警備隊施設へ行ったルオロフは、そこで怪しい男に、荷物の情報を齎された(※2509話参照)。


 5.これを誰にも言わず。

 翌朝、ルオロフは手はずを整え、単身で荷物を取り返しに出かける。

 そして、怪しい男と現地で対決し、難なく勝ったルオロフは、この男を帰りの船に連れて行き、現場を見に行った船員によって、殺人があったこと・金属の道具と荷箱回収を成果として、カーンソウリー島へ午前の内に戻った(※2512話参照)。


 しかし、ルオロフが警備隊で報告書を作成している間に、件の男は神殿に引き取られていた。その後にドルドレンも来て、警備隊の事情を聞き、神殿からの手紙を受け取る。

 宿へ戻り、手紙に書かれた地区神殿で応相談とあることから、午後に宿を出て、港を後にした(※2514話参照)。一行は、四日かけて到着する、同じ島南のピインダン地区へ。


 この夜、オーリンが漁具工房に移動を伝えに行くと、『協力する教会へ行け』と情報をもらう。


 6.翌日は、何もなく。船でタンクラッドたちが、ルオロフの剣のため、鞘や柄を作り、一日の終わりに完成(※2516話参照)。


 7. 出港三日目。本島近くなので、船は関所で手続き。オーリンはシャンガマックを連れて、ピインダン地区より手前の、名無しの地域『教会』探し。ここで、宣教師従者のニダと会う。協力者の名をニダと教わっていたので、この若者に『偽弾作り』の相談をすると、夜にまた会う話になった(※2518話参照)。


 夜、教えられた小さな職業訓練所へ出向いたオーリンとシャンガマックは、ここでコアリーヂニーという錘職人と話す。この職人が『偽弾作り』を引き受けるが、また二日後に来るよう言われ、この日は終わる(※2519話参照)。


 8. 翌朝、ピインダン港着予定の日。ルオロフは朝食時に、剣を受け取る(※2519話参照)。

 そして船は港に入り、警備隊の迎えを受けて、イーアンたち四名で神殿へ向かった(※2520話参照)。乗り込む形になったものの、相手の煮え切らない逃れ逃れの態度で、『引き取られた男』と接触は拒否され、イーアンは『話にならないから証拠を集めて、追って連絡する』と切り上げる。


 直後、件の男は、ヨーマイテスたちが捕らえた(※2522話参照)。


 夕方にドルドレンは両替所へ行き、新たな情報『魔物製品製作志願工房』の情報を得る。ルオロフと共に船に戻ると、ラィービー島で殺された貴族の姉、イライス・キンキートが港で待っていた(※2523話参照)。イライスは、弟の死の責任を神殿に求め、荷箱盗難で関わった、ドルドレンたちの協力を仰ぐ。


 9. 翌日は出港せず、イライス・キンキートに合わせて、船はもう一日滞在を延長。

 オーリンはルオロフと共に出かけ、職人コアリーヂニーが、本島の工房に戻ってから、改めて依頼する話をした(※2525話参照)。


 ドルドレンとイーアンは、落ち着きを戻したイライス・キンキートの話から、多くの情報を得る。彼女は、もうじき港に入る船で来る息子と共に、本島の自宅へ戻ることになった。


 シャンガマックは、ファニバスクワンに『地上滞在延長決定』を言い渡される(※2526話参照)。

 獅子は、魔導士に頼んだ代物を受け取り、船へ戻ってクフムを除く全員にこの代物・僧兵の記憶の一部を入れた板を見せた。荷箱盗難から殺人事件の内容で、証拠物にはならないが、参考にする。


 クフムは、着用する僧服に、サブパメントゥの力が掛かっている様子なので、様子見。


 イーアンは僧兵と直に話すことを望み(※2527話参照)声のやり取りで疑問点を探る。会話終了後、同席したエサイと、男が『以前の世界の情報を知っている』その奇妙を話した(※2528話参照)。


 この夜、イーアンはコルステインに呼ばれて、テイワグナの遺跡へ出向く。双頭の龍を掲げる遺跡に、トゥに見せようと考え、タンクラッドとトゥを連れてくるが、トゥは流れで、自身の過去を彼らに伝えることになった。


 ドルドレンは同じ頃、精霊ポルトカリフティグに、『ティヤー馬車の民』が本島の南西へ集う情報を与えられ、彼らが危険な状態にあることも知る。


 10.翌日、イライス・キンキートの息子が乗る船が到着。イライスたちも乗船したので、ドルドレンたちも出港する。イライスにもまた会う約束だが、向かう先が異なるため、アネィヨーハンは本島西へ。



 *****



 目的地の国境警備隊まで、四日。

 本島『ワーシンクー』。ティヤーで一番大きな島である。


 ドルドレンたちが入る港は、最初が『ケトパ港』で、ケトパ港からそのまま船で内に進み、ガヤービャン地区・国境警備隊前まで行く。


 通訳にルオロフとシャンガマック、表に出せないがクフム、この三人がいるおかげで、全く読めない文字だらけの地図と航路、慣れない発音の地名も聞き返せるが、本島の地図はサネーティ―の書き込みも多く、ドルドレン他、一回でなどとても覚えられない。


 海賊の呼ぶ地名と、地図の地名が違うのも、ルオロフが気付いた。


 コアリーヂニーの描いた地図・両替所の情報で、地名と場所が一致していない。もしや、とシャンガマックに相談すると、シャンガマックは共通点を見つけ出し、『彼らの独自の言葉だ』と決定した。


 サンキーの工房がある、ピンレイミ・モアミュー島も海賊の呼び方。ふと思い出し、サネーティ―の地図をもう一度見る。彼は公用地図を参考にした分、ティヤー公用の名称で記したが、地図脇に違う読み名を添えていてくれた。

 コアリーヂニーの工房の住所も、両替所で教わった場所も、照らし合わせて確認が済む。


「サネーティはすごいな!」


 呆れて笑ったシャンガマックが、皆にそれを説明すると、ルオロフは『あの男が?』と胡散臭げだったが(※イーアンも)、他の者は『意外に役に立つ』『実は切れ者』と褒めた。



 そう。サネーティは、意外と使える(?)。


 この時はこれで終わったが、後々、さらに彼に感謝と驚嘆を捧げることになるとは、ルオロフもイーアンも全く想像しなかった。



 *****



 進む日々で、イーアンは魔物退治に出かけたが、他の者は基本的に船から出なかった。シャンガマック親子が、夜になると『仕事』に出るくらい。


 船の移動は、陸地よりずっと動きが少ない。せいぜい甲板と船内の往復で、晴れている日は、日中、馬を甲板に上げるとか。トゥが目立つので、往来の船に声を掛けられた時の相手役で、誰かが出ているとか。

 手洗いは、ミレイオの消滅能力で衛生を保つため、特に清掃の手間もない。風呂も、贅沢を言わない程度なら水を使える部屋があり、二日に一度、水の循環はシュンディーンがやってくれる(※異種族サマサマ)。


 飲み水の浄水も、フォラヴが力を注いで清水に変わる。大きな船だけに、掃除は分担するけれど、これも支部で交代制だった騎士三名は、何にも文句言わずに行う(※ドルドレンも)。


 タンクラッドやオーリンは特に何もすることがなかったのだが、ミレイオに働くよう注意され、船の居心地の為、大工仕事は行った(※職人もサマサマ)。



 ルオロフだけは・・・『クフムの世話』で、この数日間、仕事全般免除されていた具合だが、ルオロフは、働く皆さんを見るたび、申し訳なかった。今更だが、同船してからずっと、それは感じていた。


 大貴族だから、召使いのすることを知らない。掃除も知らない。手伝おうとしても、初心者過ぎてコツがつかめない。ミレイオが洗濯した布を畳むのも、手がおぼつかず、ミレイオに笑って『気にしないで』と言われた。料理も論外。私はこんなに役に立たないのかと悔しくなっても、貴族は貴族。


 オーリンに『お前にも苦手があるんだな』と、笑って肩を叩かれた。人間なんてそんなものだと、達観親方に微笑まれたが、ルオロフは恥ずかしく、情けない。


 役に立たない貴族の自分に出来ることを考え、ルオロフはこの数日で、皆さんのための『ティヤー語会話集』をクフムと作っていた(※指差し会話帳ともいう)。



 *****



 こんな日々だが。クフムがいるので、トゥの話と、太陽の手綱の話に辿り着くまで、少し長かった。

 クフムは、自分の僧服に仕込まれたものを知らない。これを知らせるのも、今は時期ではないと考えた獅子から、『言わないこと』を前提に、皆の動きを求められている。


 度々、クフムを部屋に閉じ込めるのも、クフム自身が気にかけて口にするので、それも良くない。


 トゥはこの状況でも、タンクラッドが求めるなら、他の者に話そうと決めていたが、タンクラッドは熟考し、トゥに『話さないままでいること』を提案した。


 自分と、イーアン、コルステインが知った。それでいい、とタンクラッドは銀のダルナに言った。


 トゥはこれに反論はしなかったし、抵抗もしなかったが、主を見つめて『いつか話す日が来るだろう』とは答える。その必要があるのかを、タンクラッドは問い直したが、トゥは『いつかだ』としか言わなかった。


 その断定はまるで、()()を求めているように聞こえた。



 *****



 トゥの『話さない』情報とは、逆に―――


 ドルドレンは、そうもいかない。太陽の手綱、ティヤーの馬車の民を助けるためには。留守にするのか、それとも近くまで船で行くのか、どちらにせよ、仲間に話すのだ。


 クフムの衣服を通して、もしサブパメントゥの知るところとなったら、馬車の民に何かされる危険もあり、皆に伝えるにはいつが良いだろうと考えていた。



 そしてドルドレンは思いつく。何も()()()()()()()()


 うっかりしていた。自分は人間だから、頭に話しかけてもらう会話をこなしたことはあっても、自らそれを選ぶことは思いつかない。


 連絡珠があるじゃないか。そうだそうだ、と生真面目なドルドレンは、ようやく問題解決。


 イーアンの持つ連絡珠を貸してもらい、俺が一人で皆の分を持って・・・ここで、ルオロフの分がないことに気づく。親方に相談しようと、ドルドレンはタンクラッドに事情を話した。


「俺もそれを思ったがな。ほら、お前たちには言えないと、ちょっと話した、この前の夜の」


「事情があるなら、それは仕方ないのだ。で?」


「脳内会話は、サブパメントゥが横やり入れられそうじゃないか?」


「ぬ」


「関わるサブパメントゥが、段々、一筋縄でいかない相手に変わっている。コルステインたちほどではなくても、(※クフムの)服に仕込まれた話はミレイオも意外そうだったし、ちょっとそっとで」


「そうか・・・ 」


 ドルドレン撃沈。どうしようかと振出しに戻ったが、親方はここで『とりあえず俺に話してみろ』と時間がある今を使うよう言い、ドルドレンは開戦の話からポルトカリフティグの命じたことまで、タンクラッドに教えた。


 タンクラッドは驚き、『ティヤーの馬車の民は何に巻き込まれたんだ』と心配する。悪く取らないでくれた親方に感謝し、ドルドレンも『事情を知りたいから、早く会いに行きたい』胸の内を呟いた。



「ドルドレン。この場合、手分けするか。お前の話を聞いた俺の解釈に間違いがないか、正しければ、俺とお前で一人ずつ時間をもらって話そう。いつ、全体で馬車の民のもとに行くか分からん」


「今思ったのだが、全員が知らなくても良いのかと」


 ドルドレンは、皆に話すつもりだったけれど、親方のようにしっかり理解してくれる誰かがいてくれたら、それで追々話せばよいのかなと考えたが。親方は少し首を傾げた。


「お前が忘れているとは思わんが。馬車の民をよく知らない場合、誤解や先入観は大きく響く。先に事情の前置きがあると違うだろ?」


「何を忘れていると言うのだ」


「まずは、ミニヤ・キナ。テイワグナの、馬車歌四章を持っていた家族の案内。バイラは馬車の民を、テイワグナ人として知っていたが、あの道の選択に怪しんだ。

 アイエラダハッドでは、お前に苦しいだろうが・・・コートカンの一件。勘違いするなよ、俺は責めても根に持ってもいない。だが、真相まで理解するには、あまりにも『馬車の民の独特さ』を俺たちは知らない」


 馬車の民のドルドレンを相手、言い難いことではあっても、親方は『出身者と、外部は感覚も視点も変わる』と改めて押さえる。ドルドレンも、親方の言いたいことは分かるので、ちょっと黙って考えてから頷いた。



「まして。お前だって、ティヤー開戦で彼らが神殿の連中といたことを、俺たちに誤解される不安から話せなかった」


「そうだな。そうだ」


 手分けして、一人ずつにしっかり話を伝えておこうと、タンクラッドは勧める。ドルドレンを想うからこそ、今後の動きに理解が伴う準備として。


 ドルドレンは、彼の気遣いに礼を言って、この後、二人は仲間に一人ずつ時間をもらい、ティヤー馬車の民の現状を話して聞かせた。


 クフム以外、全員の知るところとなったのは、本島に着く一日前。ドルドレンが動き出す時に、間に合う。

お読み頂き有難うございます。

近いうちに、調整のためまたお休みすると思います。最新話でご連絡します。どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ