2386. アイエラダハッド決戦 ~コルステインから報告・異界の精霊とイーアンの空・魔物不在
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
☆前回までの流れ
タンクラッドは、トゥに連れられて『かさまし』の初っ端に出くわしました。トゥの説明では、既に魔物は終わり、長引かせる何者かの思惑で、魔物と異なる敵が出てきた話。トゥは、焦るタンクラッドに『自分たちは計られるだけに留まらない。次に向かう足場を』と先を見越した行動を促しました。トゥの先見の明は・・・思惑通り、古代サブパメントゥの目に留まり、そして『呼び声』が動き出す。
今回は、その続き。コルステインの話から始まります。
〇今日も二回の投稿です。どうぞよろしくお願い致します。
『呼び声』が動いた、と気づいたコルステイン。この時、アイエラダハッドは―― 通常では ――深夜。
サブパメントゥに自分がいる間で良かったと、少し安心した。
コルステインは別件でも注意していたことがあり、あの大陸―― アスクンス・タイネレ ――が近づく日々に、いつ行こうかと秒読みの心境だった。
側まで来たら、大陸を守らなければいけないため、すぐに移動必須。行くのはもう少ししたら、と落ち着かなかった矢先、『呼び声』がサブパメントゥを離れた。
コルステインの知り合い・『スヴァウティヤッシュ』の探す、サブパメントゥは、回復してはいない、と分かる。
動いたら教える約束をしていたので― 『呼び声』の行き先、出る場所まで、思念を辿って捉えてから・・・動いた理由がミレイオに関係ないことも、協力しているダルナに教えてやるため、呼んだ。
目当てのダルナから『呼んだか』と思考が戻り、コルステインは早速、『あの相手』が動き、ミレイオと異なる目的らしく、行き先の方角は・・・と教える。
そして、コルステインはもう一つ。察したことを言っておく。
『あれ(※『呼び声』)。ドルドレン。探す。する。お前。ドルドレン。知る?コルステイン。仲間。ドルドレン。精霊。一緒。する。お前。大丈夫?』
『誰だって?ドルドレン?ここの精霊は、俺に問題ないぞ。なんだ、そいつは精霊と一緒なのか。で、あいつ(※『呼び声』)は、ドルドレンを探してるんだな?分かった』
コルステインの情報を確認したダルナは、了解―― この時間まで一緒に戦っていた女龍に『コルステインからだ。あのサブパメントゥが動いたから、行ってくる』と報告し、女龍が一緒に行きたいと言ったので、それは即、断った。
『龍気がすごくて気付かれる』の理由に、そうかと、女龍は悲しそうに頷き、スヴァウティヤッシュは、その顔を覗き込んで、もう一つ大事な情報を確認。
「『ドルドレン』って、知ってる?」
女龍の目はみるみる丸くなり『ドルドレンがどうしたの!』と黒いダルナに掴みかかった。
*****
スヴァウティヤッシュとコルステインの繋がりを、イーアンがなぜ知ったかというと。
まず、話をこの日の朝まで巻き戻す。
空から降りたイーアンは、朝一番でやってきたスヴァウティヤッシュに、『ミレイオを探る状況は進んでいない』の報告内容で、相手を探った経過中、彼が『コルステインと知り合った』と聞いた。
捕獲対象の相手(※呼び声)が地下の国に入ってしまったことから、スヴァウティヤッシュの『追う動き』は地下の国にも及び、それが目に付いたらしく、コルステイン自ら出て来て、そこで注意を受け、事情を話し、理解を求め・・・ 結果、彼は、ミレイオの件で、コルステインの協力を得て、『やつ(※呼び声)が動き出したら教える』と待機を促された話(※2377話参照)。
これを朝一で聞いたから、スヴァウティヤッシュが『コルステインから連絡~』と言いに来た時、イーアンはすぐ話を聞けた。
昨日。港からヴァレンバル公の館へ行く道で、親方に聞いたザッカリアとミレイオの情報は、『二人ともヤロペウクが預かっている』ことだった。
彼らの体はヤロペウクのもとで管理されている―― これが分かっただけでも、ホッとした。
体は無事。それだけでも。とはいえ、中身も助かってと願うのは止まない。
ミレイオの意識に食い込んだ、あの『言伝(※この名称で、イーアンは『呼び声』を認識)』の呪いを外すには、スヴァウティヤッシュが好機を見つけ動く、その時を待つのみ。
次に更新された情報は、今日の夕方。『ミレイオは依然として蝕まれており、残り時間は不明』――― イングがタンクラッドからの連絡を運び、イーアンは焦った。が、自分に何もできないので、連動を待つ間は祈りながら、ひたすら退治して過ごした。
ザッカリアは完全に生き返った。ただただ、感謝しかない。ミレイオもどうか助かって、と切実な願いを胸に、イーアンの一日は過ぎ、夜が来て、夜も日付を越える頃・・・
待ちに待った、コルステインからの連絡が入ったのが、さっき。
そして、イーアンは―― ドルドレンの名に不安も増えたが ――とにかくスヴァウティヤッシュを送り出した。
*****
三度目の連動が生じるまで『一緒に』と、報告後のスヴァウティヤッシュが提案した朝から。
連動が始まったら、彼らは撤退して安全な場所へ避難、と決まり、イーアンと同じ空で異界の精霊たちは共に戦ってくれていた。
彼らがいることで、保護対象の魔物を見つけ次第、確保して救うまでがスムーズだった。なぜか異界の精霊は、時空の切れ目にも反応しなくて、これも心配が減った。
とはいえ、無敵ではない。うっかりすると龍気攻撃も効いてしまうので、龍気攻撃の際は気を配り、イーアンは皆と力を合わせて戦った一日。
スヴァウティヤッシュを送り出してからも、連動は起こらないので、他の皆もそのまま、あちこちで攻撃を続けている。
もう、そろそろ夜明けの頃。体感はそんな感じだが、彼らは疲れている様子もない。
ダルナは、それぞれの能力が多様で、魔力の消費は調整しているのか、攻撃手段を切り替えて、要領よく動く。こちらの世界の龍に比べると、『龍気切れ』みたいな状態がなさそうで、エネルギーの持ちが良いふうに思う。
まそらの攻撃は、目の前で見るとエネルギーも何も関係ない印象で、非常に静かだった。一度見たことがあったが(※2279話参照)、連発で対処する様は、過激な攻撃とは質の違う恐怖がある。
まそら自体は空中の同じ場所から動かず、青い大きな翼がスーッと広がると、それが攻撃の開始。翼の中で敵は壊れ、崩れ、盛り上がりかけて落ち、そして塵に変わるのだ。
敵がどこに居ようが、どれだけの数だろうが、流動性の相手だろうが、気体状の相手だろうが、まそらの『青』に映った相手は、跡形も残すことなく、分解された。
これを、まそら自身は『完璧ではない』と話したが、その意味は、『出どころまでは、自分たちが壊せない』根源未接触的な意味で、しかし出て来たものに対しては完璧・・・とイーアンは、凄まじい能力に感謝した。
仲良くなったのはまそらなので、まそらが側にいるが、他の異界の精霊も、不思議な歪みや物質を出しては、それを落とした一帯を止めてしまうとか、潰してしまうとか、絶句するような想像の付かない攻撃を繰り広げる。
視覚的に驚いたのは、巨人。
異界の精霊で巨人なんて、そこらに居たら目立ちそうなものだが、普段は縮小サイズらしく、いきなり巨大化して雲をつく背の、古い時代に生きた戦士が現れ、仰天するイーアンの横で、一歩踏み出し・・・べしゃっと地面が潰されたのを見た時は、固まった。あの下に、人間がいたら、町があったら、と思った。
横のまそらは、凝視している女龍に『敵に回ってしまった巨人もいた』と教え、それは幾つかの町を潰した後、自分たち側のダルナが見つけて倒したそうだった。
余談だが・・・タンクラッドの見た、潰された町(※2385話参照)もこうした形で破壊されて、こうした一つ一つの奇怪な現象による壊滅までは、イーアンたちに想像も及ばないところ。
赤目の天使ブラフスはこの場におらず、彼は自我を持つ魔物を守るため、北部の一画で、どんどん送り込まれる魔物を、他の精霊と守っていた。
こんな形で協力してくれるなんて、とイーアンは大きな出会いの意味を感じる。
「私たち。旅の仲間は、この決戦で個別に背負う目的で、強制的に引き離されているのかも。私はアイエラダハッドで、異界の精霊と会い、絆を育てている気がしてならない」
―――今の、環境と魔物の状況。
現在地は、国の北部で、極北と中部の間辺り。大きな山脈と太陽の位置から見て、山脈の西側にいる。
ここから見渡すと、北の空より南側の空の方が、異時空の穴・・・亀裂が多く見える。亀裂は、セロファンのリボンでも垂れ下がるように、きらきらと光を撥ねるので、分かりやすい。
イーアンは、異時空の切れ目を閉ざせるので、咆哮で壊して閉じている。
空から地上まで丸ごと、異時空の亀裂が大きくなった状態で包まれると、時間も混ざり合って、その一帯だけ夜、そこだけ夕方、朝、とおかしなことになっており、閉じれば、広い範囲に合わせた背景色に戻る具合。
異時空、異時空といっても、今回は別の世界が混入する感じではなく、単に時間が異なるだけのような。
魔物も、通路として繋がったそこを通っている印象がない。そして、思ったのが、『魔物はまだいるのだろうか』の疑問。
―――テイワグナ決戦では、切れ目という切れ目から、魔物が出ていた。魔物の王が送り込む、他の魔性も通路を使いたい放題だったのが・・・ ここは全然、それがない。
そして、大地に人がいない。人里はあっても、『精霊に守られている・もしくは魔物に倒されてしまった』理由か・・・本当に全く見かけなくなった。広範囲を動いているが、今日は人っ子一人見ない。
「人もいないし、魔物も違うようなのばかり。決戦二日目でこの状態。もう終わるのだろか。どうなんだろう」
二度の『白い筒』の威力は広範囲に渡ったが、アイエラダハッドの国土何万㎞を埋めるほどではない。異種族たちの応戦が、開始初っ端から集中的だったし、私が空で休んでいる間に一気に終わりに近づいたか・・・・・
こう考えていた時、龍気の波に気付く――― 曖昧で不安定な時間の乱れる中で、朝になるな、と思っていたところ。
書庫へ行った日、国のどの辺りに遺跡があるのか調べたので、南から北に向けて連動がずれて行く印象から、次はこの方面と予測したのが当たる。近くで、発動が始まった。
「イーアン。そろそろ戻る」
龍気の波を感じたダルナの一頭が近づいてきて、、挨拶してお別れ。彼に続くように、これまでずっと同じ空にいてくれた、異界の精霊たちが集まり、挨拶を短く戻ってゆく。イーアンもそれぞれにお礼を言い、『二つ大きいのが見えたら、その間と近くには、決して行かないで』と注意した。
「まそら。来て下さって、有難うございました」
最後に側に来た青い翼に、イーアンは頭を垂れる。まそらはそっと近寄って、イーアンの手を握ると、大きく鮮やかな両翼を広げた。左右に青空を抱えるような青い翼の内側、ふわっと映った風景に、イーアンは眉根を寄せる。
ぼこぼこ黒っぽいものが空中から垂れ落ちては、土に入り、地下から浮かび上がる血管のような網目に吸い込まれて消える。異様な・・・災いを感じる風景。もういないと思った魔物の第二弾か、それとも別の敵か。
「これは、魔物なのでしょうか?まそら」
「違う。魔物を探している、古い種類の・・・あれ」
あれ、と言われて古代種のこと、と気づいたイーアンは、もしかして古代種が増えているのかと訊ねると、まそらは『そう思う』と答えた。
堕天使がこれを見せた理由は、『魔物はもう消えていて、後から出てくるのは、人間に憑りついた古代種か、残った魔物と混ざった古代種の、延長のような敵』と教えたかったよう。
驚く女龍に、『だから』とまそらは言う。
自我を持つ魔物を集めて回った方が良い、と。逃げ延びている場合、餌食にされる。イーアンも盲点。びっくりして、頷く。
「そうですよ、大変。急がないと捕まってしまう。分かりました。白い筒の対処が終わったら、私は急いで回ります」
「私も、これから集める」
イーアンは、まそらの貴重な情報に感謝して『白い筒が終わったらですよ』と最後に注意し送り出す。
それから、龍気の密度が上がる連動へ急いだ。が、途中でまた、別のダルナに捉まる。前方に、ふわっと現れた白い雲のような巨体。
「フェルルフィヨバルじゃありませんか」
「シャンガマックからの質問だ。『龍の攻撃は、いつ終わるか』」
お読み頂き有難うございます。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します!一緒に馬車の旅を続けて頂けますように!
今日も、二回投稿です。どうぞよろしくお願い致します。
それで、ですね・・・ワタクシ、なんだか風邪引いたみたいで熱出まして、オツムの調子もマズいので(これは元から)、また近い内にちょっとお休み頂くかも知れません。
こんな情けなくて申し訳ありません。休みます時はすぐに最新話でご連絡します。




