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魔物資源活用機構  作者: Ichen
アイエラダハッド最後の魔物戦
2376/2964

2376. アイエラダハッド魔物決戦 ~ヒューネリンガ合流②ドルドレンから『檻』の話・魔導士からの戦況情報

☆前回までの流れ

ヒューネリンガの町で、キトラの示唆『檻』を伝えに来たドルドレンは、タンクラッドたちと合流。隊商軍から装備の特性による『今の魔物は、魔物の要素が少なく感じる』聞き逃せない報告も受け、その後、館で互いの話を共有する時間。

今回も引き続き、話し合いの場から始まります。

〇明日も一日二回投稿です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

「何があった」


 総長の返答『フォラヴは生きている』その一言が曖昧で、タンクラッドがすぐ続きを促す。


 一呼吸置いて、ドルドレンは自分がフォラヴを発見した時の状態から、治癒場のリチアリに出会うまで、驚く二人に静かに伝えると、『フォラヴは今回、参戦しないだろう』とも添えた。オーリンが頭を振りながら『倒される?』と聞き直す。



「マジかよ。()()()()()だと?彼は結構、強くなったじゃないか。相手は」


「相手は、『サブパメントゥと人間混じりの魔物』だったと思うが。現場の名残で、ポルトカリフティグはそう教えてくれた。フォラヴも、多分そうだ、とは話していたが、彼自身、気配曖昧な相手に、その正体を掴んでいなかった」


 ただ、死体が操られていたのでは、とフォラヴは言ったので、ドルドレンも『死体を使う敵は多い』と仲間に教えた。自分も、高確率で動く死体を倒している。これを聞き、タンクラッドたちは眉根を寄せた。


「俺もオーリンも、手加減はしないが。見て分かる死体でもないと、迷うこともありそうだな」


「まさに、フォラヴはそうだったと思う」


 溜息を吐き、ドルドレンはもう一つの話に切り替える。それは、キトラが教えてくれたこと。ポルトカリフティグに話したところ、『仲間に言いなさい』と、ドルドレンを送り出した理由。



「『古代檻』について、教えなければ」


「・・・シャンガマックたちが閉じ込められた、あれのことか」


 食事を終えたオーリンが、手を拭きながら聞き返す。また何かが閉ざされた?と言いたげな目に、ドルドレンは『ああ』と、忘れていたそれも思い出した。オーリンの言う檻は、シャンガマック親子の禁忌で入った檻のこと。


「あれも『檻』か・・・いや、同種か分からないのだが。俺が今から話すのは、シャンガマックがテイワグナ決戦で使った魔法というか、()である(※1691話参照)」


 フォラヴと分かれた後、精霊のキトラが『アイエラダハッドにある檻』を使うように教えた。


 種族の分だけ種類があるが、サブパメントゥの檻だけは、使()()()()必要かどうか考えるように・・・と注意があった。



「キトラがこれを教えた理由は、龍の力が地上を壊すから、と。地上自体が危うい異時空亀裂だらけで、こちらも動きに難儀する。逃げる輩を捕まえるに、『檻』を使う一網打尽が早い・・・この解釈で、正しいと思う。

 檻を立ち上げると、その種類の檻が全土に出る。シャンガマックは、テイワグナで使ったそれを『古代檻』『龍の檻』と呼んでいた。

 詳しくは彼に聞けると良いのだが、彼はいないし・・・もし、お前たちが、シュンディーンやセンダラに会う時があれば、それを伝えて対処を」


「シュンディーンはな。あれは親の元へ行ってるから、戻るか分からんぞ。センダラは、会っても話を聞かないだろう」


 他の仲間に伝えてくれと言う総長に、タンクラッドは目を逸らして首を傾げる。魔法を使える者限定の話で、自分たちは関係ない。ドルドレンも勿論、魔法は使えないので関係なし。

 イーアンは使えるようになったが、そもそも『龍の力側の、女龍』に伝える意味はない。


 場に静かな空気が流れ、三者は目を見合わせて、ドルドレンが『俺が伝えるのは、これくらいだ』と話を終え、『ザッカリアとミレイオはどうなったか』を質問した。それとイーアンはどこに?と、最初の質問に続けたところで―――



「おい。今、ザッカリアと()()()()と言ったな。何の話だ」


 不意に、嗄れ声が三人の耳に入る。この声は、と窓に振り向いた三人の目に、窓向こうに浮かぶ緋色が映った。




「来てみれば、何てザマだ。まさかミレイオも、おめおめやられたって言うのか?」


 窓を開けた途端、翻った布は男の姿に変わり、部屋に入ってきて三人を睨んだ。ミレイオが倒れたことを知らない様子の魔導士に、タンクラッドから話をする。ミレイオが彼を慕うのと同じように、彼もまたミレイオに、特別世話を焼いていると感じていたので、魔導士が怒るのも無理はない。


「ミレイオが倒れた状況を、知らないんだ」


 ミレイオ、生死の境目・・・その前に魔導士に会いに行ったと言うと、漆黒の目が一層、きつく光った。


()()会いに出て?その後だと」


「そうだ。ミレイオがあんたに会えたかどうかも、こっちは知らない。戻らないと気にしていたら、ヤロペウクが助けたらしく彼を連れて」


「・・・俺は、ミレイオの報告を聞いている。やられたなら、その帰りだ(※2360話参照)」


 苦々し気に口の中で呟く魔導士は、静かな怒りを発しており、黙った三人は、彼が話すのを待つ。魔導士は舌打ちし、一旦外を振り向いてから『ミレイオは』と内容を教える。


 彼は、『ザッカリアの死・ヤロペウクの預かり・センダラの自由攻撃・龍族が動くこと・精霊の指輪で人間が減ったこと』を魔導士に報告していた。


 ザッカリアは蘇生の可能性があり、それが今日と言っていたから、魔導士は一向に結果を知らせないミレイオに会いに来た。


 これも、既に幾らか探した後らしく、ミレイオがどこへ行ったか、調べても魔方陣にさえ映らないので、タンクラッドたちが移動した先に、わざわざ聞きに来た様子。



「ヤロペウクは。何て言ってたんだ」


 鋭い視線を投げる魔導士に、タンクラッドは小さく首を横に振り、『問題山積みだ』と前置きしてから、ヤロペウクの助言、ミレイオに掛けられた呪い―― サブパメントゥによるもの ――の話と、呪いを外す方法、それと、ミレイオが生き延びた場合、死んでしまった場合の違いが出ることを教えた。


「サブパメントゥが、ミレイオを」


 呟いた魔導士に、今度はドルドレンが話をする。続きがあり、フォラヴが対処して『シーリャ』という精霊の力で、ミレイオの魂の繋ぎ止めは叶った・・・そこまで教えると、多少、尖っていた魔導士の雰囲気が和らいだ。


「精霊が()()()んだな?」


「そう言っていた。フォラヴはシーリャに直に頼み、直に結果を告げられている。聞いたままを、俺も話している。つまり、どこにいるか分からないにしても、ミレイオは精霊に命を繋がれ、死んではいないはずである」


「分かった」


 ふーっと息を吐いた魔導士は、黒髪をかき上げ、数秒考えたようだが、自分を見ている男三人に顔を向けると、『俺も教えておいてやろう』と話を変える。


「の、前に。上の、()()は何だ。ダルナだろうが、ここにいる意味は」


「あ。あれは俺のダルナだ(?)。銀色の、二つ首だろう」


「タンクラッドのダルナ?なら、いいが。俺に探りを入れたが、こっちの質問に答えないから、お前らに用でもありそうだと思った」


「・・・うむ。そうだな。『俺に用』だが、あれは俺から離れないから・・・上で待たせている」


 言い難そうな親方に、魔導士は何となく察しをつける。

 双頭のダルナが、時の剣を持つ男から離れない―― 魂になった魔導士に反応し、攻撃はしなかったが、辿り着く前に調べられた印象があったのは、()()()()を、あのダルナが知ってるのかもしれない。


『銀のダルナ』をドルドレンは知らないのでピンとこないが、話は変わり、魔導士は『()()()、後でもう一度聞かせろ』と先に命じてから、アイエラダハッドの現状を三人に伝えた。



 魔導士の話は、的確な要点を続け、受ける質問を一言で捌き、自分の質問も彼らに投げ、答えを確認して―――



「あっという間に、全員情報共有だ」


 魔導士の把握していた戦況と、ドルドレンの『古代檻』までが完了し、ドルドレンが褒める。


 魔導士はちらっと勇者を見て『暇がない』と嫌味を言い、それからタンクラッドとオーリンを見て、下を指差し『お前らは、決戦中もここが中心、だな?』と再確認。頷く二人に頷き返し、『それなら』と、共有の続きは指示に変わる。



「さっきも言ったが、北部は西も東も、守りが()()だ。北部に回れるやつは、一人でも行け。

 タンクラッドとオーリン。ここを拠点に据えたとなれば、お前たちは毎回こっちに戻れ。ヤロペウクが、ザッカリアなり、ミレイオなりの話を、()()()()()場所を定めておいた方がいい。

 ん?北は、ドルドレンが行くか。なら、そうしろ。俺も見ているが、お前は精霊と移動するんだったな・・・・・


 フォラヴが出ないのは、あいつの使命上、『何かの鍵』かもしれん。何もないかも知れないが、決戦中に極北へ移動する可能性もある。それも覚えておくようにな。

 俺の子孫(※シャンガマック)と獅子は、中部から北上していた。何頭かのダルナが、あの二人と組んだし、放っておけ。ドルドレンの持ち込み情報『檻』は、あいつらと、あとはセンダラか。俺が伝えてやる」



 古代檻――― これに、魔導士は反応した。やけに細部まで、ドルドレンが聞いた話を確認した。


 魔法使いだからか、としか三人は思わないが、バニザットにはそれ以上の意味を持つ。とりあえず、魔導士経由で、シャンガマック親子・センダラへ連絡。



「あとは、ダルナだ。異界の精霊は、東西南北全てにいる。姿を見せなくても、何かしらの力は働いている。

 あいつらが『貢献』目的で動いている限り、味方と同様だ。ただ、これもさっき言ったが、残党サブパメントゥの『出どころ』や、この世界の条件まで、あれらは触れられない。

 これも忘れるな。異界の精霊が何を倒したところで、()()()は残ってる、ってことだ。出どころ(残り物)は見つけ次第、潰せ。


 もう一つ、だ。イーアンたち龍が、白い筒を打ち上げると、足場も空間も破壊する。龍族は、ある程度()()たらやめるだろう。

 終わって、すぐさま龍気が引くわけでもない。龍気が比較的及んでいない地帯を、サブパメントゥや魔物が動く。


 それを止めるのが、精霊キトラの示唆、『檻の準備』だな。話が出たってことは、恐らく『檻』が最後の決め手になる。初っ端から使わないのは、世界の事情があるからだ。深入りするなよ。

 お前たちは、『檻が立ち上がる』まで膝をつくな。もし誰も使わないとなれば、俺が知った以上、ギリギリで俺が対処してやってもいい。

 だが()()()()()()()。俺が手を出す前に、お前らの仲間が状況を見て『檻』を使うか、さもなくば、魔物()()()()()()



 手伝うのか、手伝わないのか。どっちなの、とドルドレンは疑問を顔に出すが、魔導士に怒られそうなので言えない。とどのつまりは、『龍族の白い柱の続き→何かしらの檻』で決戦を切り抜ける、で作戦決定なのは理解したが。肝心の『決め手執行』が誰の判断か分からない。


 横を見ると、タンクラッドとオーリンも胸中は同じなのか、似た様な表情をしている。魔導士は、三人を一瞥すると『じゃあな』の声と共に緑の風になって、窓の隙間を抜けて消えた。



「『知恵の話』には、()()()()()()な」


 窓を閉めながら、ぼそっと呟いたオーリンが振り向く。魔導士が『残存の知恵』について情報を聞いた割に、ちょっとも指示に入っていなかったこと。


 暖炉の炎が映る黄色い瞳は、変じゃないか?と仲間を見たが・・・ オーリンたちが、解るわけもない。


 魔導士にとって、『知恵の名残』よりも―― 『檻』が、精霊の示唆で確実に出る方が、ずっと重要だとは。

お読み頂き有難うございます。

明日も二回投稿です。時間は未定です。どうぞよろしくお願いいたします。


決戦という割に、アイエラダハッド編は大人しい場面が続いています。ちょっと物足りないかも知れませんが、いろんなことを詰め込んで進めるので、どうぞご理解頂けますように・・・

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