表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物資源活用機構  作者: Ichen
混合種と過去の坩堝
1510/2965

1510. 新しい情報①② ~龍の殻・馬車の民

☆前回までの流れ

町の中、用で来ていたギールッフの職人たちと偶然に出会い、また、イーアンは地元の魔物状況を調べた後。午後の予定である「パヴェル邸」に向かう時間、道すがらに話す様々な情報・・・

 

 食事処の客が減った、食事屋も休憩に入る頃。



 旅の馬車と、ギールッフの彼らの馬車は動き出した。ギールッフの職人たちは、普通の宿を取っているようで、市場の上の層に進む。


 離れて行く彼らに手を振り、『また明日!』と挨拶して道を分かれた、旅の一行。次はパヴェルの屋敷へ向かう。


 貴族の屋敷は、町の最下層。とても広い丘の裾野一帯を占める。


 ()()()()()のバイラが、ぎこちない微笑みで『間違えようがないですね』と振り向いたので、御者台のドルドレンとイーアンも、()()()()()笑顔を返す。

 旅の一行は、緩やかな下り坂の続き、徐々に整備の行き届いた、広々した道へ入った。



【新しい情報】―― その①『龍の殻』 ――



 食事処から、パヴェルの別邸へ向かう、この間。


 イーアンはドルドレンに、ギールッフの職人に話した理由や、地元の子供の情報で調べたことを、詳しく伝えた。一通り、聞いたドルドレンは、一人、忙しかった奥さんを労う。



 聞かせてもらった最初は、シャンガマックとホーミットについて。


「ドルドレン以外には、『始祖の龍のお告げ』であることを言いませんでした。それは」


「分かっている。それを言えば、皆は更なる詳細の確認を求める。男龍に。だろう?」


 はい、と答えるイーアン。でもそれは、男龍に伝えることでもないと判断しているので、ドルドレンも理解していた。


「でもホーミットには話したんだな」


「彼には正直に・・・男龍は、ホーミットの力に気が付いている様子だから。もしもこれから白い筒が発生したら、一緒に動いているホーミットは疑われます」


 ドルドレンとしても、推測していた範囲の話なので、この話題についてもっと聞きたかったが、イーアンは『それが理由で彼にはちゃんと伝えて、彼に疑惑が行かないようにした』と言ったのでこれも了解した。


 イーアンなりに、ホーミットを守ろうとしたんだと分かる。なので、話を変えた。



「イーアンがイェライドたちに、急に『もうすぐ、テイワグナは魔物が消えるだろう』と伝えた時は、彼らに教えてしまうのか、と驚いたが」


「いずれにしたって、()()()()()()()は来るのです。終わるってことは、次の国に出るわけでしょう?

 そうしたら、魔物製品を作れるようになった彼らに、ハイザンジェルの工房同様、3つめの国へ輸出を、お願いすることになるんですもの」


「ガーレニーは、()()()同行したがっていたな(※イヤ)」


 ハハハと笑うイーアンは、『鎖帷子が入用なら』と条件を出して、私たちで間に合わない分野であれば、同行も頼むかも・・・と。


「でも。馬車に乗せるかどうかとなれば、人数の制限あります。その辺の解決が出来ればの話でしょうね」ニッコリ笑って、そう言った(※常に業務的)。



 目の据わるドルドレン。


 ()()()というのもあるし、『イーアン()き』が多いのは仕方ないが、好かれているのに(※本人あんま分かってない)()()()()()のはどうなの、と思う。


 『条件が適えば、まぁ良いでしょう』くらいの、奥さんの度量にも参る。この人、こういうところ、気にしないんだよなぁ、と悩む旦那。

 いつも目線が『仕事』だから・・・仕事優先で役に立つと判断すると、了承してしまうイーアン。


 旦那が悩んでいる横で(←ガーレニーが来る心配)イーアンは話を進める。



「私が『魔物が終わる日も近い』と確信したのは、さっき話した()()()に会ったからです。あの仔に会わなかったら、男龍に何か知っているか、訊きに行こうかと思っていました」


 そう言うとイーアンは、空を見つめて『ただ・・・男龍も予言はするけれど、時間は曖昧なのですよね』呟きながら小さく頷く。


「夢でも始祖の龍は、『もうじき』って。お伝えしたように、『もうじき』しか、分からないわけですよ。

 でも私たちの・・・私も人間的感覚としてもらって。人間の『もうじき』と、龍族の『もうじき』。これ全然違います」


 ドルドレンもそれは思う。人間以外の存在は、時間の流れがあってもなくても関係ない印象。男龍たちと話した時、毎回そうした感覚は受けた。

 彼らの『今』は、本当に極端なくらい()()だったりするのに、『もうすぐ』の言葉には、物事の発生に()()()()がある。


 同感だと答えたドルドレンに、イーアンも『でしょ?』と困った顔をした。


「だからね。その曖昧さに焦って、ヘマしたり。逆に『まだかも』と構えて、慌てる羽目になったり。そういうの、私は嫌ですから、どうにか・・・正確さのある、日数の残りを知りたかったのです。

 近いうちに、男龍が何か知っているか、聞きに行こうかと思っていました。例え曖昧でも、聞き出せたら情報には違いないわけですし。と思っていたら」


「何だっけ。名前」


「モドゥロバージェ。素敵なお名前ですよ。()()()ちゃんです」


 うん、と頷くイーアンに、ドルドレンもニコッと笑って『カッコイイ名前である』と褒めた。トワォも良い名前だよ、と続けると、イーアンはしっかり頷く。


「勿論です。あの仔も、海チック(?)な良いお名前。モドゥロバージェは、地下っぽい感じ」


 何か判別するものがあるのか。イーアンは名前の質を褒めてから、改めて『龍の殻ちゃんは、ちゃんとお話し出来る仔です』と自慢げに教える。


「あの仔は、私の龍気を感じて現れ、女龍と知って、嬉しそうに自己紹介してくれて。それから、龍気が()()()()()()()()増えているか。いろいろ、ぜーんぶ」


「うん。さっき教えてくれた。モドゥロバージェが、魔物退治をするに至った理由」



 ――先ほどの話。ドルドレンに教えてくれた『イーアンと、龍の殻の出会い』。


 この町の祭に使う、舞台裏に似た、地下の洞穴の奥。


 魔物が棲んでいる、と聞いたイーアンが、横穴を見つけて入り、翼で飛んで進んでいたところ。奥から大きな影が出て来て、それはどことなく龍に似ている姿だったと言う。


 危険な気がせず、イーアンが話しかけたところ、相手はすぐに『龍?』と訊ねて、イーアンが頷くと喜んだ。相手が()()()と知ったイーアンは驚いた。


 龍の殻は、『少し前、この辺りに龍気が流れた』と、自分がいる理由を伝える。


 時期的にそれが、どうもインクパーナの一件の頃と近いと分かり、それも訊ねると、龍の殻は『そっちも行った』と言う。ここは通りすがりで、『自分が通った時に魔物がいた。でも通過した』・・・と。


 つまり、モドゥロバージェは意識して倒したわけではなく、通りすがりに倒した自然体。


 イーアンが感じた『龍の殻』の質は、海の仔・トワォと違って、龍気を()にしている様子。

 かと言って、イーアンのような龍相手に吸い取るわけでもない。龍気を体にまぶして、本来の能力の足しにしているのかも、とイーアンは話した。


 なくても生存していられる。だが、あると滅法、身に着けた龍気の質が高くなる。

『本来の能力+龍気』は、『濃厚で強烈な龍気』の被膜のように、『龍の殻』たる、彼らを守る・・・らしく。


 イーアン曰く、『だから、()()()って名付けられたのかも』としみじみ話し、あの龍気の密度で触れたら、大方の魔物は倒せると思う・・・ことも、感心していた――



「そうです。インクパーナで動いた龍気を辿って、モドゥロバージェは移動したでしょ?で、これからまた()()()()()()()を教えてくれたの。だからあの仔は、この場所から移動していないのですよ」


「それが・・・もうじき、と見当を付ける理由か」


「はい。あの仔が移動しないのは、()()()()()からです。龍気が爆発的に増えるのを感じ取っているのですね。

 アギルナンなどもそうだったらしいです。地名はあの仔に分かりませんから、ある程度、察しを付けての判断ですけれど」


「そうだったのか・・・それでイオライセオダも」


「みたいですよ。でもあの仔じゃなく、別の『()()()()()()』ですって」


 イーアンは、気に入ると『ちゃん』付けする。よっぽど可愛かったのだろう。

 しかしイーアンの()()()()()は、一般と異なるので、ドルドレンは相手の可愛さが分からないものの、とりあえず了解した(※皿も『お皿ちゃん』扱い)。


 とにかく。龍気が爆発的に増えるのが秒読みであれば・・・それが『最初の』合図。


 そして、イーアンが龍の殻・モドゥロバージェに次を訊ねれば、次までの予測―― この場合、日数の見当 ――も立つ、ということらしい。



【新しい情報】―― その②『馬車の民』 ――



 御者台で二人が話し合っている間。

 聞こえる距離を進んでいるバイラだったが、その胸中はざわめき、一つのことに鷲掴みにされていた。



「俺が見た、あの馬車・・・やっぱりそうだったのか」


 昼食の時に、ギールッフの職人たちが何気なく振った『そう言えば、馬車の民がさ』の話題。


 総長が『ハイザンジェルの馬車の民』と知って、昨日、テイワグナの馬車の民とすれ違った、そのことを教えてくれたのだ。


 その場にいた自分たちは全員、ビックリして、どこで?と質問したら、道の方向から『ギールッフじゃないな』と彼らは顔を見合わせて頷いた。

 恐らく、ここからもう少し西へ向かうだろうと言う。脇道を進んでいく馬車の列を見たので、行き先は『ニカファン』じゃないのか、と誰かが呟いた。


 ニカファン。インクパーナ方面。岩場ばかりの場所を選ぶ、馬車の民が行きそうな地域。

 水が少ないけれど、彼らは周回しているから、きっと水の伝う岩場を知っているのだろうと、バイラは思った。


 この情報により、総長たちの顔が一気に明るくなった。バイラは沈んだ。馬車の雰囲気をさらっと聞いた限り、嫌でも思い出した過去のあの夜。


「ああああああ」


 顔を俯かせて、心の傷に眉を寄せる警護団員。ふと顔を傾けると、話を中断して心配そうな目で見ている夫婦(※総長&女龍)。


「あ、いえ。何でもないです」


 繕う笑顔。二人も分かっているように、強張った笑顔で『それなら別に』と返してくれた。



 この時間、荷台でもちょっと変わった情報を受け取って、段々口数が少なくなる親方がいた。


 ただ、親方の場合は、()()()()()()()の口数の減り方ではなく・・・・・


「ふーむ。オーリン。行けないと知っても、行きたくなる」


「ハハハ。そう言うと思った。でも、ちょっとこればっかりはな。難しいぜ」


()()見に行く分には、平気そうにも思うがな」


 オーリンの『あのさ、覚えてる?』の一言から始まった話。


 それは、龍の民の町に遺る『初代・時の剣を持つ男』の地上絵の話。親方は、胸を掻き乱される・・・前世の記憶に漲っていた。

お読み頂き有難うございます。

ブックマークを頂きました!有難うございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ