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魔物資源活用機構  作者: Ichen
混合種と過去の坩堝
1476/2965

1476. 別行動:二人の魔物退治 ~遺跡による魔物確認へ

☆別行動のシャンガマックとヨーマイテスの話です。

 

「何だったの?」


「いや・・・男龍とか言っていたな。しかし、内容はお前に言えない」



 ベッド(※箱)で寝そべるシャンガマックは、イーアンから来た連絡を教えない父を、じっと見つめる。まだ、獅子の姿になっていないヨーマイテスは、息子の視線を受け止めては目を逸らす(※ビームが強過ぎる)。


「俺に言えないこと。そうか。分かった。でも()()()()()知っているのか」


「うん?」


 息子の言い方が、少し気になり、ヨーマイテスは寝転がったまま顔を向ける。

 隣でうつ伏せになっている息子は、父の顔を見て『()()()()()知っているんだろう?』と・・・何となく、機嫌が良くない様子。


「知らない。あいつは理由を知らないと言っていた」


「そうなのか?じゃ、本当に()()というだけ」


 息子が確認する部分が、ヨーマイテスには理解し難い。そうだ、と頷くと、息子はちょっと笑みを浮かべて『なら』と、話を終えた。が、気になる父は、今のは何かおかしいぞと、説明を求めた。


 少し黙った息子は『イーアンが知っていて、俺が知らないこと。それは少し嫌だった』と正直に伝えた。



「これまで、いくらもそんなことあっただろう。相手がイーアンじゃなくても」


「あったかも。でも、今は何か嫌だった」


「何でだ。内容に心配でもあるのか」


 息子の様子が変だが、その意味が全く分からないので、ヨーマイテスは彼が何かを勘付いたかと懸念した。


 イーアンも理由を告げられていない、その『神殿へ近づくな』の連絡は、間違いなく『ガドゥグ・ィッダン分裂遺跡』――

 ヨーマイテス(自分)が近づいたら、あの連動を引き起こす・・・とは、息子に決して言えない。



 勘付かれて説明するのも悩むこと。いつもなら、息子は『言えないことは言わなくても』と流してくれるのだが、今回は何か違うのか、と思ったら。


 息子はうつ伏せにしていた体を横に向け、ヨーマイテスの首に片腕をかけると、よいしょと抱きつく。


 嬉しい父。だが、理由が分からない。どうしたのか、と貼り付いた息子の顔をちょっと押して見る。目が合って、漆黒の瞳がじーーーっと見つめ返す(※ウン百才から見れば34才はヒヨコ=カワイイ)。


「どうした。カワイ・・・いや、何だ。どうしたんだ」


「上手く言えない。多分、俺の()()()()だ」


「お前の。やきもち。誰に?イーアンにか?」


 そう、と頷く、素直な息子。ヨーマイテスは、心から息子が大好きだと思った(※よくある現象)。


 ヨーマイテスは、よっこらせと自分の胸の上に引き上げて、大人しく抱きつく息子の背中を撫でながら『()()()()に妬くな(※失礼)』と少し笑った。


 仲の良い二人は、この後、ちょっと見つめ合って、どちらともなくハハハと笑い(※清い)『そうか』『そうだ』の言葉を交わして、このまま眠った(?)。


 シャンガマックの子供返り。甘える心は、時々、びよんと頭を(もた)げる。


 そうしたことは、別行動に入ってから、度々あり、その都度ヨーマイテスは、人間の感覚がよく分からないので確認し、シャンガマックはちゃんと答え、こうして事なきを得ることを繰り返していた。




 そして翌朝。


 ヨーマイテスは、息子の情緒不安定な甘えっぷりに、()()()考えた対策を取ることにする。


 カワイイから、気持ち的には別に構わないのだが。

 甘え方が極端になると、抱きついたまま降りないとか(※動きにくい)獅子の(たてがみ)に埋もれて寝てしまうとか(※昼寝)、ちょくちょく修正してやらないと、動きにムラが出る。


 なので、ヨーマイテスが取る対策は、息子が夢中になることへ導き、彼の状態を自立に持ってゆく。


 息子が好きなものは、非常に分かりやすい。遺跡・遺物・不思議そうな物事・戦闘・魔法・動物・植物。

 この中から、ヨーマイテスは『本日の()()に使えるもの』を選び、それに沿って行動することで、息子が自分から喜んで動き出すように仕向けていた(※扱い楽)。



 こうしたことで、今日は―― 『ガドゥグ・ィッダン分裂遺跡』とは違う、過去の魔物退治の彫刻がある遺跡行き、決定。



 ファニバスクワンの絵を、使う魔法の範囲に取り込んだバニザットは、元から、戦闘向きの能力が高いため、実戦で覚えさせると、瞬く間に自分の力を伸ばし始めた。


 魔法陣で練習させていた時より、外で連れ出した方が、あっという間に成長するため、ヨーマイテスも驚いた。


 過去のバニザットにはまだ追いつかないが、それにしたって、息子の魔法の向上には目を見張る。魔物退治を率先して行うようになった、最近。


 かなりの数を退治している、と二人はよく話す。昨晩のイーアンから来た連絡にも、また次の展開を感じるため、ヨーマイテスはここらで『魔物の状態を情報で知ろうか』と考えた。


 出発して、魔物がいれば退治するし、遺跡に到着して調べる時間は、息子にも自分にも役に立つ。

 遺跡をそこまで詳しく覚えていないから、ヨーマイテスもこれはこれで、息子と一緒に楽しめるだろうと思った。



 朝食を済ませ、いつも通りに騎士が剣を腰に帯びたのを見て『今日は遺跡へ』と伝えると、思った通り喜び、獅子の背中にひらっと跨る。


調()()()、って感じだな。移動中、倒せる魔物がいれば倒す」


「そうしよう」


 機嫌の良い息子の返事に、フフッと笑って、獅子はさっさと洞窟を出発した。




 *****




 影の中を伝い、息子を乗せて向かう『陸の孤島』。道中、移動する魔物の群れを見つけて、獅子と騎士は、魔物も親玉も、何ら苦労することなく手あたり次第、倒し続ける。


 光の中へ出られないヨーマイテスが、担当する影。影を気にせず動けるシャンガマックが、担当する光。


 シャンガマックは剣も振るうし、魔法も使う。その場で飛んだり跳ねたり程度なら、騎士の時と同じ。足元の土の下から、獅子の声が聞こえ、地面に足を付けている魔物が消える。


 当然、シャンガマックに影響はないので(※あっても困る)、思う存分、地上に見える魔物に魔法を振るう。


 大顎の剣に魔法を乗せて、精霊の礫を降らせ、もう片手で宙に円陣を描き、ファニバスクワンの絵から得た水の力で、自分を囲む周囲の全てから水を集めて、魔物の体を封じ潰す。


 父の両腕にある精霊の力。強弱を操りながら、地下を動く父が側に来た時に、増加した力で結界を作り、結界に入れた魔物の全てを塵に変え・・・・・



 こんな具合で、体力を自慢するだけあるシャンガマックは、楽しむようにガンガン戦う。父の強さは圧倒的だが、影ばかりとも限らない地域では、自分の出番が増えるため、勇んで飛び込んでゆく。


 ヨーマイテスとしても、自分が気にせずとも、息子が光の中の魔物は倒すため、それは放置。


 危なかったら守ってやろうと思うものの、注意すべきは『力尽きるまで動き続ける』()()()な一面で、息子はガクッと来るまで夢中で気が付かない(※のんびりした性格だから)。


「あれ?」


 の一声と共に、カクリと膝を落とすのを、度々見たヨーマイテスは、その都度ビックリして息子を止めて戻らせ、残党は自分が片付けるような感じ。


 精神的に良くないからやめてくれ、と頼んではいるが、息子は『エヘヘ』で済んでしまう(※父もその笑顔で済んでしまう)。


 ただ、ここまで長引くことは、しょっちゅうでもない。数は多いが、地上と地下の上下から攻撃する二人にとって、山一つ分くらいを埋めるような大群でもなければ、時間の長さは問題ない。



 今日もこうして戦い進み、遺跡に到着するまでに、2種類の魔物群を退治した二人。


『陸の孤島』とはよく言ったもので、ヨーマイテスが最後に影から上がった時、その風景にシャンガマックは目を丸くした。


「ここ。どうやって入るんだ」


 驚いて呟いた息子を振り向き『()()()()()入るだけだ』とちょっと笑う獅子。


 シャンガマックの目の前に広がる風景。不思議な地形で、テイワグナのどこなのか、位置が分からないけれど、かなり山脈に近い場所であるとは思う。


 地続きではあるが、刳り貫かれたような周囲の谷を越え、この場所へ。そしてここは、空が見えない。いや、見えるのだが、屋根の様に岩が覆っている。


 言ってみれば、キノコ型の場所で、キノコの生えている周辺が、全体的に環状に谷なのだ。そして谷の向こう、つまり、この場所の手前部分は平地を遠くに臨む、山の斜面。

 一つの山ではなく、幾つもの山が取り囲んだ中に、この遺跡はあった。


 キノコの傘の下に居る具合で、そのキノコの軸に当たる部分が遺跡。誰がどうやってどうして?と首を捻る、圧巻な訪問地に、シャンガマックは笑い出した。



「お前が好きそうだと思ったんだ」


「有難う。好きだよ。ヨーマイテスの気持ちが嬉しい。いつも考えてくれて有難う」


 凄い場所だ、と感動に笑う息子の横を歩く獅子は、(たてがみ)を撫でる騎士を見て、顔をちょっと押し付けた。


 シャンガマックは、父のこの行為に、少し困っている・・・これは。どうも父が気に入った『鼻ちゅー』の催促(※恥ずかしい)。


 しないと怒るから、催促されると恥ずかしいなぁと思いつつ、獅子の広い鼻に口付けて、恥ずかしさで笑ってしまう。そうすると、獅子はいつも『何がおかしい』と嫌そうに言う(※頭の中は筒抜けでも)。



 仲良し良好の二人は、緊張感もなく、暗い(ひな)びた遺跡の中へ。


 不思議な場所の、不思議な遺跡。遥か前に、サブパメントゥが造った場所で、ヨーマイテスが前回の旅で体験した時間が刻まれている。


 ヨーマイテスの話を元に造られた遺跡は、ズィーリー時代の話を綴ってある場所でもあった。


「記憶に残っている分は、お前にも話しているな」


「ん?何が」


 暗い場所は見えにくいシャンガマック。父の声に振り向いたが、自分を包む大きな通路の絵まで見えていない。

 獅子は青白い火の玉を出してやり、それを松明代わりに浮かべると、自分の背中に手を置く息子に言う。


「見えるか。あの段」


「あそこ・・・あれ。え?獅子だ。もしかしてヨーマイテス?」


 ここがどんな遺跡かを、まだ聞いていない騎士は、じっと見つめた先の絵から視線を獅子に動かし、訊ねた。獅子の碧の瞳が、もの言いたげに向けられ、シャンガマックは急いでもう一度絵を確認。


「これ、そうだ。そうだよね。ヨーマイテスじゃないか。こっちに魔法使いみたいな・・・まさか、俺の先祖か」


 ワッと顔が明るくなるシャンガマックは壁に駆け寄り、獅子は少し笑って側へ行くと、絵の段の下にある、幅の狭い段に並ぶ文字のような絵を説明してやった。


「・・・こういうことだ。俺の記憶から抜けることはないが、俺にとって気にならないことは、思い出すものでもない。だが、そうした中には、今になって使えそうな情報もあるだろ?

 だから今日は、ここで情報収集だ。俺が放置した、過去の記録」


『を相手にな』と続ける前に、息子が抱きついて、獅子は黙る。感動した息子は、大きな獅子の顔を抱き締めて、『素晴らしい』『嬉しい』『有難う』を何度も言った。



 嬉しいヨーマイテスも、尻尾を振って喜ぶが。


 嬉し過ぎたか、息子はここからべったりくっ付いて、背中から降りなくなる(※連れて来たのに本末転倒)。

 仕方なし。息子を乗せた獅子は、聞かれる度に説明しながら、乗り物状態で遺跡の奥へ進む羽目になった。

お読み頂き有難うございます。

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