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魔物資源活用機構  作者: Ichen
泡沫の示唆
1425/2968

1425. 女龍の一日 ~北西支部・王様再会

 

 テイワグナを馬車で進む旅の一行が、山道を下って、大きな町ダマーラ・カロに入ったその日。

 話は、同日のハイザンジェル王国、北西支部の朝に戻る。



 王様に呼ばれて、一人里帰り(?)したイーアンは、朝のハイザンジェルに到着し、その姿を堂々晒して(※忘れてた)クローハルたちに驚かれた後。


 ロゼールに迎えられて、数か月ぶりに、懐かしい支部の広間に通された。


 厨房に入っていたヘイズが出てきて、他の者にもビックリされたが、開き直ったイーアンと、まるで気にもしないロゼールの態度に、皆も早々受け入れた(※イーアンはそういう人、って感じの認識)。


 後から入ったクローハルも、しげしげと、改めてイーアンを眺めて苦笑いすると『君は()()()()()だったんだな』と、自分を見上げたイーアンに伝えた。


 イーアンは『自分もこうなるとは思わなかった』と正直に答え、皆が『イーアンらしい』と笑った後、早い朝食をロゼールに出されて、ちらほら朝食に集まる騎士たちに、見られるごとに一々驚かれながらも、イーアンは朝の挨拶と共に、再会を楽しみ、久しい支部の朝食を頂く。


 気がつけば、平和になった支部のほとんどの騎士が、早い朝の時間にイーアン見たさ(←既に珍獣)集まり、朝から宴会のような賑やかさ。


 懐かしいオシーンも来て『エライことになったな』と笑い、長い尻尾を撫でていた。

 勿論、アティクやトゥートリクス、スウィーニー、ギアッチとテイワグナ大津波で引き取った子供2人、部隊長も、側に来ては、あれこれ褒めたり笑ったりして、イーアンの変わり果てた姿(※失礼)と、変わらない笑顔に喜んだ。


 取り巻く皆の中には、非常に懐かしい、伝説大好きなアエドック・リオルダンや、ニアブ・ノーシュ(※初期登場の彼ら)もいたが、彼らはもう、本物の御伽噺が始まったことを見せつける『イーアン』その人に、話しかけることさえせず、離れた場所で見つめるだけ。



 皆に歓迎されているイーアンは、嬉しいのでサービスもする。

 尻尾は出しっぱなし(※龍気少なめ使用)だし、角も撫で放題。途中、長い角を珍しがったアティクに引っ張られかけたが、睨んで終えた。


「泊って行くんですか?部屋はあるから」


 真横で喜ぶ、トゥートリクスに、イーアンは笑顔で首を傾げ『今日中には戻るかも』と言い難そうに伝える。


「工房を見たら。集めた魔物材料の管理はしているが、確認するのも良いだろう」


 アティクに工房の鍵を渡され、お礼を言って、扉の鍵を見つめる。出発前に、彼に任せた工房の管理。どうなっているだろう、と思えば、確認していくべきである。


 裏庭口から出て、すぐの()()()の管理も、ブローガンとロゼールが守ってくれているので(※剣隊長たちから)それも見たい。

 ブローガンは、家の鍵をイーアンに渡すと『何度か水回りや床を見に行っているが、どこも傷んでいないですよ』と教えてくれた。草むしりもしているから、庭はきれい、とも。



 時間がないなぁと思いつつ、広間にかかる時計を見て、朝の6時半と知り、美味しかった朝食とお菓子のお礼をすると、イーアンは、出来るだけ早く、いろんな場所を確認しておこうと立ち上がった。


「イーアン。随分と立派になっちゃって!」


 後から声をかけたのは、執務の騎士。わぁ!と声を上げて喜んだイーアンは、驚いても笑顔で迎えてくれた3人に、遅れて挨拶する。


「来ていると聞いたから。急いで資料をまとめました。()()()()()()戻ってもらえますか」


 さすが、執務の騎士たちよ―― 

 私が居ると知っても、すぐに会いに来なかったのは、貴重な機会に仕事をさせるためだったか(←伴侶に)・・・一分も無駄にしない彼らの動きに、イーアンは心から感動する。


 有難く、封筒の入った包み一式(※多過ぎてはみ出てる)をサグマンから受け取ると、すかさず、気の利くスーリサムが『これに入れて』と肩掛けカバンをくれた(※用意周到)。


「旅はまだまだ続くでしょうが。いつか、この支部に戻ってくれたとして」


「戻りますよ。そのために頑張っています」


「はい。分かっていますが・・・その姿で『厨房のおばさん』に(←朝昼晩料理作るバイト)」


「仕方ありません。好きでこうなったんじゃないのです。いきなり、こんななっちゃって。

 厨房のおばさんで置いて下さるなら、角は仕舞えませんが、尻尾は消せますので、この姿でお料理お手伝い。火の元、安全」


 尻尾、フサフサしていますもんねぇ・・・執務の騎士も笑いながら、イーアンが左右にゆったり振る、長い長い白い尻尾を見つめる(※5mくらいあるから厨房で邪魔)。



 こんな朗らかな時間も終えて、7時前。ハッとしたイーアンはワタワタしながら、まずは工房へ。


 わらわらと後に続く『イーアンがいるうちは一緒に』の騎士たち(※ロゼール・トゥートリクス・ギアッチ他)も一緒に工房へ行き、懐かしさに満たされつつ、イーアンはあれこれ確認する。


『全く問題ない状態を、維持してくれてありがとう』心からのお礼を、頭を下げてアティクに伝え、工房の管理を引き続きお願いした。


 次はおうち。ぞろぞろと団体様で我が家へ行き、鍵を開けて中へ入るが、それは限られた人だけ(※トゥートリクスと、ギアッチと子供たちは許可された)。


 ロゼールとブローガンが『台所の金属は錆を落としている』と見せてくれ、家の中のあちこち見て回ってから、ホッとしたイーアンはおうちを出る。

 大切な我が家にまた鍵をかけると、気にしてくれる彼らに、感謝と共に鍵を渡した。



「さて。行きますよ。次は王都。王様に会いに行きます」


「あ、帰りは?イーアン、帰りはそのままですか」


「はい。そのままテイワグナへ」


「あの。コルステインたちと俺が探しに行った、()()()()()()ですが」


 イーアンはここでハッとした。話しかけたロゼールは『厨房担当だから動けないけれど』と困ったように言うが、自分がコルステインたちと取りに行った宝―― 海の水 ――のことを気にしている、と分かった。


「あれ。どうなりましたか?」


「そうですよ!ロゼールにも・・・あなたは、コルステインとはあの後に会いましたか」


 質問するイーアン。海の水は分離して、もう使える。そもそも、コルステインは、過去のメーウィックと同じように扱おうと、ロゼールのためにあの水を取りに行った。


 サブパメントゥの古代の海・・・しかし、『グィードが守る』とされているその水は、地上の宝として遺されているものを入手する方が早く、それで・・・・・



「いえ。コルステインたちは、シャンガマックのお父さんの一件で、連絡してくれましたが(※1390話後半参照)。その後は特に何もなくて」


 ロゼールもどうしようかと思っている様子に、イーアンは『帰りは一緒にテイワグナに』と提案。厨房担当の夕食用意が終わったら、そのくらいに出発して、夜の間にテイワグナへ――


 横にいたブローガンは、それを聞いて『大事なことだろう。明日の朝は他の誰かを頼むから、昼前に戻ってくれたら』と言ってくれた。


 ということで。


 イーアン、ハイザンジェルからの帰り道は、ロゼールも連れ帰ることに決まり、彼は、テイワグナで『海の水』を実施したら、とんぼ返りでハイザンジェルへ(※そして戻ると昼飯作りが待つ)。



 こうして、イーアンは北西支部を後にする。騎士の皆さんに見送られ、ロゼールに『夕方ね』と約束し、翼を出して浮上。


 下で、やんや、やんやと、拍手が起こり、女龍は笑って手を振り振り、帰国の目的である『龍図』のため、王都へ飛んだ。



 途中。イーアンはちょっと考えて、またミンティンを呼んだ。自分一人でブイブイ飛ぶには、滞在時間が見えてこないうちは心配もある。


「さっきも、尻尾出し過ぎました(※皆が喜ぶから)。お空に戻って回復する暇もなさそうですから、ここはミンティン」


 笛を吹いて待っていると、すぐに空はフワーと白く光り、王都前の上空で青い龍がやって来た。

 イーアンはお礼を言って『龍気が心配だから』と理由を伝えると、そら当然~くらいの頷き方で、ミンティンは首を背中に向けた。


「お前は気前が良いです。有難うね」


 すまないねぇ・・・と、おばあちゃんのようにお礼を言って、イーアンは青い龍に乗せてもらう。翼を畳み、変化したのは『角&色白(※ちょっと色が違う)』程度に収め、いざ出発。



「王様がですね。()()()()みたいのを、くれるそうなんですよ」


 王様の名前が出たので、青い龍は王様の住まい(※王城の部屋)に向かう。あっという間の距離だったが、イーアンはその間に『支部でね』と嬉しそうに、先ほどまでのことを話した。


「皆が元気でしたよ」 「久しぶりの食事が美味しかった」 「ロゼールのお菓子は板についてね」 「尻尾は人気でした」 「工房もちゃんと管理されていて」 「おうちもそのまんま」 「この荷物は、サグマンたちが持たせたの」 「帰りは支部に寄って、ロゼールを連れて帰ります」など・・・・・


 ふーん、と聞いていた青い龍。眼下に入った王都の上で停まると、背中の女龍に顔を向けた。


「あら。もう着いた。有難うございます。でも帰らないで下さい。前みたいに、バルコニーに降りましょう・・・一緒にいてもらった方が良いのか」


 ちょっと考えていると、離れていても『龍がいる』の騒ぎ始める声が聞こえて来た。


 様子を見て、もうちょっと騒ぎが増えたら・・・と待っていると、王城の王様の部屋よりも少し離れたところで『イーアン』と名を呼ぶ声がしたので、そちらを見ると。


「あれ。フェイドリッド?(※遠目利かない)」


 声はそれっぽい、と呟くイーアンに、青い龍は頷くこともせずに降下(※龍には見えている)。


 王城の裏、以前に食事に招かれた際、龍たちが降りた庭があり、そこに数人いるのが見えた。青い龍はゆったりと近づき、わぁわぁ騒ぐ人々が逃げるのも構わず、一人待っている王様の前にドーンと降りる。



「イーアン!来てくれたか」


「おはようございます。フェイドリッド」


「お・・・おお・・・その姿。何と神々しいか。既に人ではなく、龍の一族そのもの」


『既に人ではない』の部分が、どーしても慣れないイーアン。ちょっと目が据わったが、うん、と頷いて龍を下りた。青い龍は、イーアンが何も言わないので、そのままそこに立つ。


 近づいた王様は、芝生の上にいる大きな青い龍と、その横に立った姿の変わったイーアンを見つめ、浮かぶ笑顔も控えめに、何度か瞬きすると『美しい』と唾を飲んだ。


「私が生きているうちに。こんなに素晴らしい光景を目の前にするとは」


「そんなに褒めないで下さい。何も出ません(※フツーに返す)」


「ハハハ。そなたは、いつもそうだ。私が相手で緊張したのも最初だけ。普通に話しかけ、普通に答える。さて、遥々、隣国から戻ったのだ。少しは()()()()


 出た!と思うイーアン。 この人たち(←王様系)の『少しはゆっくり』は異様に時間が掛かると学んだ。急いで『そんなにゆっくり出来ない』とはっきり告げると、王様は困ったように笑った。



裏庭(ここ)に出ていたのは幸運だった。今日は午後から、ここで茶会がある。準備の確認に呼ばれて、出ていただけだが、イーアン。あれを見ると良い。都合も良い具合に、茶が出ている」


「あら。すごいリハーサルのよう」


「リハーサ・・・?何と?」


 何でもありません、と流して、イーアンは王様の指差した、裏庭に不自然なテーブルセットを見た。


 ちゃんと、お茶の用意も整っている様子。品の良い細長いテーブルには、不要なほどの装飾と、不要なほどの煌めき。主張が強いお菓子もあれば、宝石がギッシリ嵌った()()()()まである。

 午後から本番・・・しかし。この()()があるということは、午前は何をするつもりだったのか(※午前から流れ込む)。


 この人たちの時間に付き合っていたら、ある意味、時空が乱れる異界入り同然。


 イーアンは、王様の『茶でも飲もう』を警戒しながら受け入れると、龍に待機を願い、王様と一緒にお茶を飲む(※王様が淹れた)。少しの間、旅路の状況や、皆の健康、テイワグナの魔物の様子など、会話に上った後。王様は、横に立つ女龍にニコリと笑い、静かな声で訊ねた。



「手紙を書いて、総長に宛てた。そなたに()()は届けられただろうか」


 陽光を眩しく撥ね返す、王様のキラキラ服から目を逸らしつつ、イーアンは自分が聞いた内容―― 龍図 ――について答える。王様は満足そう頷いて、空いた茶器に、新たに茶を注いだ。

お読み頂き有難うございます。

今週の土曜日と日曜日は、朝一度の投稿です。

仕事の都合上、今後、一日1度の投稿が増えると思います。その都度ご連絡しますので、どうぞ宜しくお願い致します。


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