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魔物資源活用機構  作者: Ichen
泡沫の示唆
1419/2965

1419. 往復イーアン・ザッカリアお泊り・龍の島の疑問・聖獣の予測

 

 残されたザッカリアが、皆に『続きを聞かせて』とせがまれるのを、頑張って断って過ぎた、夕食後。



 上空のイヌァエル・テレンでも、ビルガメス相手にイーアンは話を続けていた。

 男龍は『自分が迎えに行った頃合いが丁度良かった』と満足そうで、ザッカリアが口止めした終点に、ニコリと笑って頷いた。


「まぁまぁだ。ザッカリア。あいつも連れて来てやれば良かったかな。褒めてやったら、自信も付くだろう」


「お気持ちは嬉しいですが、彼まで連れて来たら。馬車の人数が心配ですから」


 イーアンの無表情(※『やめなさいって』の顔)制止なんて気にもせず、ビルガメスは腕組みしたまま、家の外を眺めて『ふむ、いつがいいかな』と笑みを湛えたまま呟く(※聞いてない)。


 少しの間、何やら考えていたらしい男龍は、自分を疑わしそうに見続ける女龍に顔を向けると、『連絡するぞ』と微笑んだ。イーアン、嫌な予感。


「何をです」


「良いから、あの珠出せ(※強引)。ドルドレンと繋がるんだろう」


「繋がりますけれど。その言い方は私が話すようには聞こえません」


「早く出す(※命令)」


 渋々、心の中で舌打ちして、強引で何も教えてくれないおじいちゃんに、イーアンは伴侶に使う珠を渡す。『ドルドレンに繋がりますからね』と言うと、珠を見慣れているビルガメスは『そうだな』と答えて、即、目を瞑った。


 一体、伴侶に何を言うのやら、と思っていたら、連絡はあっという間に終わった様子で、ビルガメスは大きな手の平に乗る珠を、イーアンに戻した。


「そんな顔して。俺を悪く思うような顔だぞ」


「思っていません。でも何も仰らないから」


「ザッカリアに聞くなよと、言ってやっただけだ。ザッカリアが黙ることを選んだ、その理由は正しい。ドルドレンたちの好奇心は、()()()()()を判断できない。『受け取った限りが、その時の必要量』だ。

 それ以上は、持て余す。時が満ちなければ、手に入れたものも、誤解と歪曲に続くだけだ」


 ビルガメスの、ちょっと長めの返事に、イーアンは自分にも言われていると理解し(※当)うん、と頷いただけで黙っておいた(※おじいちゃん、こっち見てる)。



「どれ。ミューチェズ、こっちへ来い。よしよし。お前も人の姿で、随分と長く過ごせるようになったものだ」


「長い。平気」


「そうだな。遊び相手が来るからな。楽しみにしていろ。ザッカリアは覚えているか?」


 男龍親子の会話に、え?!と声に出したイーアン。ビルガメスは息子に笑顔。ミューチェズは『ザッカリア。ザッカリア。どこ』ときょろきょろする。


「まだだ。まぁすぐに来るだろう」


「ちょっと、ちょっと、待って下さい。すぐって。私の話を聞いていら」


「心配するな、イーアン。問題ない」


 えええええ~~~ 何が問題ないんだよ~~~ いつもこの人たち強引だよ~~~~


 ケロッとした顔で、美しさに輪をかける微笑みを向けたビルガメスに、イーアンは目をむいて首を振る。


 ダメだ、と言ったはずだ!と、座っていた腰を浮かせるが、ビルガメスは夜空の外に顔を向け『そろそろ、アオファの鱗でも取りに行くと良い』なんて、平然と流す。


「取りに行きますが。そりゃ、もう。早めに受け取った方が」


「ドルドレンに聞いたが、明日は出かけるんだろう。朝早くに」


「ザッカリアの話が済んでから、次の話をして下さい」


「だからな。お前はどうしてそう、ちょっと聞き過ぎだぞ(?)」


 分かんないですよっ!! 喚く女龍に笑うビルガメスは、髪を振り乱して『ザッカリアまで呼ばないで』『アオファの鱗は後でも取りに行ける』わぁわぁ騒ぐイーアンに『こら』と一言(※叱る)。



「お前が今から、アオファに鱗を貰いに行く。聖別したら、ドルドレンに届けろ。戻る前にザッカリアを連れて来ればいい。夜は一緒だ。どうせ、夜はコルステインがいるんだ。人数なんて意味もない」


「朝はどうするのですか。ザッカリアがいないまま、馬車を出すのですか」


「お前なぁ。ザッカリアだって、ソスルコと()()()()龍気が増えるんだぞ。ドルドレンたちもオーリンも、龍を呼ぶんだし。一頭でも少ない方が、あの小さいの(←赤ちゃん)に都合が良いだろうに」


 良くないですよっ!! それは屁理屈でしょう! ビルガメスはいつもそうやって・・・・・!


 イーアンはキーキー怒るが、ミューチェズがとっても心配そうな顔を向けたので、ハッとする(※母が怒っている図)。

 それを見たビルガメスも、悲しそうな顔をして(※作る)『お前の母は、()()()()()怒るな』と感想を述べた(※他人事)。



 この後、イーアンは、仏頂面で龍の島に向かい(※『早く行け』と言われた)ビルガメスの無理やりを覆すことが出来ないまま、アオファの鱗を受け取り、その足でミンティンと一緒に地上へ戻ると、もう寝ようとしたところの伴侶に、声をかけて鱗を渡し、かくかくしかじか・・・・・


 事情を説明する奥さんが、しこたま機嫌が悪いと知ったドルドレン。


 なぜか奥さんは、前側が濡れているようにも見える。クロークに包んだ鱗を、荷台の大袋に移しながら、話を聞いたが。

 何の苦労があったのか、皆まで聞かずとも、気の毒な奥さんを抱き寄せて『お疲れ様なのだ』と慰めた。


「ビルガメスから、ザッカリアを()()()()()()()とは聞いていた」


 だから驚いていはいない、と教えると、余計に機嫌の悪くなった奥さんに慌てた(※『何ですって』と)。


 二人が話していると、イーアンが戻ったことを知ったザッカリアは出て来る。彼は準備も万端。


 すっかり出発する気満々で、笑顔でミンティンに乗る子供に、目の据わったイーアンはドルドレンに『じゃー行ってきます(※ふくれる)』の挨拶をし、伴侶に見送られて夜空へ上がって行った。



「イーアンも我慢強い。彼女の心配や気配りは全体に渡るから・・・せっかく、常に皆のことを考えて動こうとするのに、意見を無視されては、イーアンは苦しいだろう。

 ビルガメスはイーアンに強いから・・・(※親方も)空で彼にやられ、地上でタンクラッドにやられ。

 しかし、タンクラッドには怒ればどうにかなるが、『男龍は怒っても訊いてくれない』と話していたし、きっと、不満がたまる一方である」


 奥さんが可哀相に思うものの。これも、彼女の宿命(※ここは違うかも)と首を振り振り、ドルドレンは、彼女の機嫌が直ることを祈って、寝床に戻った。



 この夜。

 イーアンに連れて行ってもらったザッカリアは、ビルガメスの家で、頑張って起きていたミューチェズに喜んで、少しだけ遊ぶ。


 眠そうなミューチェズに遠慮して、ビルガメスに『一緒に寝て良い?』と訊ねると、ビルガメスは許可してくれた。

 そして、ミューチェズとザッカリアは、大きなベッドに横になるとすぐに眠ってしまった。


「私・・・4()()()寝るところないでしょう、これ」


「そうだな。ミューチェズは寝ている間、何度も龍になるから(※大→小→大→小を繰り返す)」


「ビルガメスは、どうなさるんですか」


 俺はベッドだ、と普通に言うおじいちゃん。そして、文句たらたらのイーアンに笑って、長椅子をベッドに寄せてやり『お前はここ』と(※最初に比べると扱い雑)。


「怒るな。俺が横になる大きさじゃないだろう(←長椅子)」


 尤もな指摘なのに、何かとっても()()()()()が押し寄せるイーアン。


 くっそ~!と思いつつも、クロークを外して、腰袋を枕に長椅子に横になると、クロークを引っ被って『寝ます』のぶっきらぼうな一言を挨拶に、さっさと眠りに就いた。



 ――が。眠りも浅く、イーアンが目を閉じたまま思い出すのは、先ほどの龍の島。


 鱗を取りに出かけた時のこと。

 暗い中でも龍は光るので、大きなアオファの側へ行くと、そこら中が見渡せるくらいに、ほんわりと白む風景。

 ふと、支部にいた時や、イオライで見た時は、光っていなかったような・・・と、今更ながら思いつつ。それもまた、事情があるんだろうと(※考えない)それはさておき、アオファに話しかけて鱗を貰った。


 アオファの指の前で待っていたイーアンは、大きな多頭龍の近くに、何頭かの龍が寄り添うのをぼんやりと眺め、あることに気がついた。


 そこに、ソスルコはいなかったけれど。ソスルコと似たような形や、模様の龍はいないこと。


 見える範囲にいないだけで、たくさんの龍がいるわけだし、どこかには似ている龍もいそうだが、しかし見当たらないことには、初めて違和感を覚えた。

 少し斑がある、少し色の種類がある。そうした龍はいるのに、はっきりと特徴的な模様が、全身に及ぶ龍がいない。それにソスルコのような形、四本足で翼がない龍も。


 アオファの鱗は用意され、イーアンはお礼を言ってそれを聖別し、クロークに包むと、アオファの頭の側へ飛んで『お前たちはどうして、足が四本なのかしら?』と訊ねた。

 当然だが、アオファはよく分からない質問に答えることはなく、ベロンと舐められて終わった(※イーアンよだれが付く→今は乾いた)。



 ソスルコはそもそも・・・どうしてザッカリアと同化できるのだろう・・・・・


 ティグラスの乗るピレサーも不思議な龍だが、あれもまた、似た龍は見たことがない。男龍たちはそれについて、何一つ言わない。


 不思議だなと思う、それ以上には進めないけれど。気になって仕方ないイーアン。

 明日は早いんだから寝なければと、小さな溜息をついて、ゆっくりと夢に引き込まれて眠った。



 イーアンが眠ったことに気がついた大きな男龍は、ちょっとだけ口端を上げて、自分も眠ることにする。



 ――オーリンがいれば、大丈夫だろう。ルガルバンダから聞いている。


 赤ん坊は精霊の子。サブパメントゥの海を潜って、精霊の力とサブパメントゥの両方の質を備えている。話によれば、ファニバスクワンの元へ戻り、その後、アンガコックチャックに倣う様子。


 そのアンガコックチャックが貸した聖獣は、オーリンが呼べる。好都合だろうな、とビルガメスは鼻で笑う。


 龍気が強過ぎなければ、あの聖獣も呼べば来る。オーリンとガルホブラフに問題がなさそうなら、赤ん坊には上手い具合に良い状況。


 龍の世話しかする気もない男龍(自分たち)が。精霊のことまで考えてやるのかと思えば、おかしな気もする。


 横に眠る、大きな子供の龍の姿と、寄り添うザッカリアをちらと見て、二人の頭を撫でてやると、ビルガメスも再び目を閉じた。



「『空の司』に命じられたザッカリア。ティグラスは人間のままだが、お前はその次を見る存在」


 囁くように教えて、誰も聞いていなかった宝石のような言葉の後、ビルガメスも静かに眠り始めた。

お読み頂き有難うございます。

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