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魔物資源活用機構  作者: Ichen
新たな脅威の調べ
1273/2964

1273. タンクラッドと龍の関係・テイワグナ馬車歌分析~初回

 

 イーアンのおでこに、親方がおでこを付けている場面。ドルドレンは夕食に呼ぶために来て、それを見て大声を上げた(※『何やってんだ』←普通こうなる)。



 タンクラッドはちらっとだけ見ると『勘違いするな』の第一声。

 イーアンも、うっかりペースに乗せられていたので、ハッとして(※遅い)『そうでした。ボケっとしていました(※事実)』と反省。


 謝っている割には落ち着いている奥さんに、眉間にシワを寄せたドルドレンはわぁわぁ騒ぎ、それは仕方ないと思いつつ、イーアンはタンクラッドにまず『食事へどうぞ』と、馬車を出るように促す。


 親方はちょっと笑うと、怒る総長を見て『そんなに凄いことではないと思う』なんて、気軽に言って出て行った。

 残ったドルドレンは、奥さんを睨み『どうしてああなるの』と質問。それは尤も・・・イーアンは伴侶を呼び、少しだけ教えることにした。


「イーアン。俺は確かにもう、君にやきもちも妬かなくなったが」


「ドルドレン、嫌な気持ちにさせて申し訳ありません。私が落ち着いて受け入れていたのは、うっかりペースに乗ったことと、もう一つ、理由があります」


 何やら理由が二つもあると分かり、ドルドレンは訝しそうに目を細めながら『言いなさい』聞いてあげるから、とそこに座った。



「これ。本当は。誰に言うつもりもありませんでした。もしもこの先、必要な時が来れば、きっと分かると思ったのです」


「何なの」


「あのね。『タンクラッドと私たちの関係』です。彼は、龍の民の、()()()な存在でした」


「え」


「いえ。父親・・・で良いのかな。悲しくも、でもこれも運命だったのかと、そんな風に思う話です」


 イーアンは静かに話し始め、聞いているドルドレンはすぐに引き込まれて、話が終わる数分後には怒りもなくなっていた。

 イーアンが、親方の額を付けられても動じていない理由に、そんな理解が加わっていたとは。


「じゃあ。ミレイオも」


「そうだと思います。ミレイオに関しては、あなたが察した今と同じで、私も『そうかも』と思っている範囲なのですが。()()()()だろうと思います」


「始祖の龍。本当に、彼を愛していたのだ。最初の勇者がバカ過ぎて」


「最初の勇者のバカさ加減は、関係ないかもですが(※やんわり否定)本当に、時の剣を持つ男のことが、大切だったのでしょうね。

 覚えていますか?ザッカリアが以前、ミレイオと私を見て『妹だから似ていたのか。良かったね、逢えて』と言った日を(※618話参照)。あれは私の工房に、旅の仲間が集まった日です」


 ハッとするドルドレン。思い出して『覚えている。皆で、旅の馬車を買う話を』と言うと、女龍は頷く。


「テイワグナ地震の直前。私たちが馬車の荷台で話していた時も、やはりザッカリアは『ミレイオは空の土。イーアンは魂をもらったからお姉さんに逢えた』と言いました。

 もう一つ、彼はその後に話してくれています。オーリンと私のことを。

 オーリンと私は『2個同じ。だから仲良し。龍で一緒。ミレイオとイーアンが龍の民の』ここまで教えているのです」


「その2個。つまり、龍族の意味が一つ。もう一つは、『()()()()()()()()を持っていた姉妹が、龍の民の始まり」と」


「そうです。複雑ですけれど。つまり私は」


「最初の時の剣を持つ男・・・彼の、子供たち」


 伴侶の呟きに、灰色の瞳を見つめて『だから。お父さん的な面もあるのかと思って』とイーアンは微笑んだ。


「何てことだ。君はただ、女龍として前世から続く、彼の愛の対象と言うだけではなく」


「ミレイオの『空の土』と表現された、その土が『なぜミレイオに』までは、分からないですが」


「ミレイオは会いたかったのだ。何が何でも、生まれ変わって、また。魂が宿ったから、例え生まれも体もサブパメントゥという、対照的な世界であったとしても、君に会えた」



 始祖の龍の部屋で、知ったこと。

 イーアンはドルドレンに、『まだ誰にも言わないで』と頼んだ。ドルドレンも頷いて『言わない』と目元を拭う。


 優しいドルドレンは胸を打たれる。最初の時代、この世界の龍の話は、想像もつかないほど劇的で壮大な話が溢れる。


「イーアン、話してくれて有難う。それは本来、俺のような人間が知って良い話には思えない」


「いいえ。嫌な思いばかりさせて済まなくて。でも、ようやく全部に納得が行ったのです。それなら、タンクラッド()の感情や動きも分かる、と。そして、私が彼を警戒しなかったことも」


「あのね。後で話したいのだが。今回、アンブレイが歌った馬車歌の3部にも、分かりにくい箇所があったのだ。今、その話を聞いてから『もしや』と思った。上手く理解出来そうな気がする」


 思いがけず、イーアンも目を丸くして訊き返す。『馬車歌に?』この話が?と伴侶に迫った時、ザッカリアが来て『食事だよ』と教えた。


 ドルドレンとイーアンは、ハッとして『この話は寝る前にでも』と一旦終え、二人は焚火の側へ行き、夕食を食べた。




 馬車歌の話は、二人が就寝時間に入ってから、ぽつりぽつりと始まった。


「本当はね。魔族の情報のまとめを話し合いたかったのだ。でも、今、忘れないうちに馬車歌の解釈も相談したい。魔族は明日にでも」


 そう話す、ドルドレンが体を拭き終えて、着替えた後。イーアンとベッドに座り、最初にジャスールが歌った『創世の歌』その一ヶ所と、後日、彼の家族に直に聴いた『創世の歌』全て、それからアンブレイに聴いたばかりの『三章』の概要を、改めて、大まかに話す。


 最初の歌である、創世の内容は、この世界が生まれた後に、司る存在と魔物の王がいる話から動き出し、始祖の龍が連れてこられて空を創り、龍族が生まれ、始祖の龍が地上を滅ぼすところと、その後に登場する太陽の家族―― 勇者 ――が、魔物退治で始祖の龍の力を願って、一緒に旅立つところまで。


「で。ここまでで、既にタンクラッドの存在が出ているのだ」


「はい。何だっけ。始祖の龍を助けているような(くだり)がありますよね」


「そうなのだ。でもね。『時の剣』が、なーんか()()()()のだ。タンクラッドの『時の剣の状態』と、少し違う気がする。このモヤッとした状態は、まだ理解に繋がらない」


 ふむふむ、頷くイーアンは、先を促す。ドルドレンは次に、『アンブレイの歌』と言い、三章の内容の難しい部分を伝える。


「アンブレイたちの持つ『三章』は、さっきも話した通り、勇者が離れて、始祖の龍が空に戻る。

 ジャスールの話だと、テイワグナの馬車の家族は5つの歌を分担している(※1080話参照)から、俺が思うに、4と5の歌は、きっとズィーリーたちのことだ」


「長いですよね。私がそう思うだけなのか。比重が初期に向いているような。1~3が始祖の龍、4、5がズィーリーとは」


「そう思うだろう?俺もそう思った。だけど同じ馬車歌ではないにしても、もしかしたら動いている可能性もある。

 何のことかと言うと、ハイザンジェルの馬車歌は、俺たち一族・・・イヤだけど『ダヴァート』の男が基本的に引き継いでいる。例外もあるけど。とにかく、他の馬車の家族がいないハイザンジェルでは、俺たちしか、歌を知らない。

 その歌の内容に、ゼーデアータどころか、始祖の龍の欠片も出ないのだ。(もっぱ)らギデオンとズィーリーである。しかもギデオンがイイ人っぽくなっているという、嘘と偽りの歌」


 ここまで言うと、自虐の念なのか(※子孫で真面目)苦しみ始めるドルドレン。イーアンは彼の背中を撫でて『あなたじゃない』と必死に支える。



「うぐぅ。傷口が開く(←心の)。毎度開いては身が持たん。

 いや、何。ここで倒れるわけにいかない(?)。そう、何が言いたいかと言うとね。ハイザンジェル版が、ズィーリーたちの旅を詳しく歌うことで、分かれたのではないかと」


「えー、それは。後年に、ということ?ズィーリーたちの旅が終わってから、ハイザンジェルの馬車の家族に、彼女たちの時代の分だけが渡ったような」


 そう、と頷く伴侶は『そう思えば、テイワグナに残る()()()()()が少なくても、変ではない』と言う。


 それもふむふむ、理解をしながら、イーアンは質問。


「アンブレイたちの三章ですが、それは世界の話なのですか。始祖の龍と、勇者・・・それぞれの最後までを、歌う印象がありますが、間にいくつも妖精とか精霊の言葉もありますよね。サブパメントゥの話もある」


「ある。だから、三章はきっと『倒したから、世界が平和になりましたとさ』なのだ。後日談含め」


「んまー。意外に俗世的。いや、文学的。あら違うか。何て表現するのかしら」


「でね(※脱線傾向流す)。思うに、これ。絶対、初代勇者とか、彼の仲間が遺した歌だ。勇者が()()()()されていないから」


 ドルドレンはやけにこだわるので、そこはそうとして、とイーアンは了解し(※こっちも流す)脱線気味な自分たちの話をちょいちょい修正して、疑問をさっと入れる。



「ドルドレン。私、実は疑問がありますのよ」


「うん。言ってみなさい」


「始祖の龍が手伝った時点で、()()()()()()()()()()さ、ないような」


 え?と首を傾げる伴侶に、イーアンは始祖の龍の部屋で見た、彼女の歴史を思い浮かべながら『勇者、ほとんど出番なかった』と暴露する。

 ドルドレンの目が丸くなる。口も半開きで、少し衝撃を受けている様子なので、ちょっとちゅーっとしてあげて、意識を戻す(※戻る)。


「ああ、びっくりした。そんな・・・いや、可能性は高いにしても。まさか本当に、そんな役立たずとは」


「あのですね。役立たずではないですよ。〆は、彼じゃないとダメだから」


「そら、そうなのだ! 〆まで動かなかったら、伝説に出て来る意味もない。というか、精霊に役目をもらった理由が分からん」


 動揺と衝撃で目を瞑って、現実逃避をする伴侶を宥めて、『でも本当のこと』とイーアンは苦笑い。


「始祖の龍は、思うに。私たちが想像したことのない力の持ち主です。本気で強い人でした。龍だけど。

 彼女が動くということは、破壊と消滅を意味します。龍族(私たち)は、それをするために存在しています」


「おお、イーアン。俺の奥さんが、破壊と消滅の最強なんて。カッコイイけど、おっかなさが倍増どころではない」


 落ち着いて、と笑う奥さんに、ドルドレンも頭を押さえて笑いながら(※飽和寸前)『始祖の龍が強過ぎるのは分かっている』と答える。イーアンは頷いて、先を続ける。


「『破壊と消滅』だけをね。抜粋すると、何だか恐ろしいだけになってしまうけれど。

 これは大事です。破壊しないと生まれません。消滅がないと始まらない。終の始末を担う存在は、始まりを渡すためにいるのです」


 つまりね、と奥さんは言う。


「始祖の龍は、勇者と一緒に旅に出ましたが、彼が動き回るよりも多くの魔物を倒し続けました。

 勿論、対象は魔物だけですから、見境なくではありません。とはいえ、今の私たち、また、ズィーリーたちなんてもっと。とてもじゃないけれど、比べ物にならない速度でした」


「魔物退治完了が」


 そう、と首を縦に振ったイーアンを、じーっと見つめて『もしかして、今のイーアンも出来るの』と訊ねると『まだそこまでではない』と瞬間で返事が戻った(※女龍、学習中)。



「そうか・・・では、二章の内容が気になるな。そんなにあっさり終わっているなら、何で分けたのだろう」


 二人は不思議に思う。でも答えは出ないので、この疑問は『二章』を持つ、馬車の家族と会うまで、保留することになり、『三章』の話を進める。


「うむ。では三章の内容に戻る。

 俺が、夕食前に君に教えてもらった話で、あれ?と思う部分があったのだ。それこそ『時の剣を持つ男~その後』みたいな話だよ」


 ドルドレンはそう言うと、少し考えてから、見上げる奥さんの白い角をナデナデしつつ、『彼はね』と歌に残るままに伝えることにした。

お読み頂き有難うございます。


本日は、朝1回の投稿です。夕方の投稿がありません。


年末年始は、投稿が一日1回の日が度々あります。

ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します。

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