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魔物資源活用機構  作者: Ichen
新たな脅威の調べ
1256/2964

1256. 別行動:未熟の意味・老魔法使いの立札

投稿予約の日付を間違えていました!

本日の朝に出すはずだった回です。申し訳ありませんでした!!

 

 シャンガマックは『気が付いたこと』と『どうやっても解決したい』こと、その二つを父に訊ねる。



「魔族。()()()()()気がする。そうだろうか」


 気が付いたこと―― 最近、奇妙だと思った魔物は、皆、()()だった。

 人型で、崩れていたり、(かたど)るだけであったり。これまでの、人間っぽい魔物は、また違う。ハイザンジェルや、テイワグナの始めの頃の魔物は『人が混ざった、別の動物』ばかりだ。


「そうかも知れないぞ。見分けるには、その()()も良いかもな。時間をかけないで倒す、と」


「ふーむ・・・なぁ、ヨーマイテス。成体については、もう何が何でも、早く倒すしかないのは分かったが。

『種』は、どうすれば良いんだろう。別の次元に押し込むにしたって、その次元が、どこにあるか分からないのに」



 もう一つの質問は、『どうやっても解決したい』こと。種の扱いだった。


 胡坐に乗せた息子を抱え、大男は『道具だろうな』と答える。騎士の目が見開いて、答えを知っていそうな父に、無言で続きを頼む(※仔犬ビーム)。父はもったいぶることも出来ず、あっさり白状した。



「さっきの、過去のバニザットの話だ。最後にあっただろ。『()()()()は諸刃の剣』。あれだよ」


「写しの壁。剣かと思った」


「言葉通りならな。だがこの場合は、ちょっと違う気がする。『写しの壁』の一つ前の文は、魔族の世界への通路だった。この写しの壁が、通路なのかも知れないぞ」



 ヨーマイテスの話に、シャンガマックはごくっと唾を飲む。その通路がもしも、道具なら――


 大男は息子に『過去のバニザットは、何らかの形で行き来したんだ。だから、種もそこにある。あいつが封じた以上、攻撃と変わらない。種は出てこないだろうが、この種をどうやって持ってきたか』遺された説明から考えてみろ、と言った。



 既に、日が落ちた外。暗くなる部屋の中で、シャンガマックは『写しの壁』という道具がどこにあるか、探したいと思う。


 ヨーマイテスは立ち上がり、息子に帰るように促して、二人は部屋を後にする。身を変えた獅子は、闇の中を走り出してすぐ、シャンガマックに告げた。


「さて。バニザット。ここから先は、お前の仲間に訊いた方が早いだろう。

 ()()()()なら、少なからず俺たちよりも、知っていそうなもんだ。言わない理由も含めて、一番『魔族』に近い種族に話してもらわんとな」


 父の言葉に、シャンガマックは『フォラヴ』と目を見開く。父は頷き『知っているのは、()()()()』と答えた。



 サブパメントゥの中を通り抜ける間、シャンガマックの頭の中は、友達のことでいっぱいになった。


 彼は、馬車で移動している。魔族のような相手を何度かに渡って知り、それに対して、どう行動しているのだろう・・・・・

 今回は、本当に魔族そのものが現れた。フォラヴは、総長たちに知っていることを話しただろうか。自分が知っている範囲でも伝え、皆に少しでも、知識を増やそうとしただろうか。


「いや。フォラヴは()()()


「何か言ったか」


 呟きを拾った父に、何でもないと答えて『後で話すよ』と言うと、獅子は了解して走り続ける。


 シャンガマックの気持ちは、穏やかではなかった。フォラヴとの付き合いは長い。彼の性格は知っているつもりだ。

 フォラヴは自分のことを、ほとんど話さない。誰が相手でも、それは変わらなかった。イーアンが支部に来て、彼もイーアンを好んだが(※自分も)、恐らく彼女にも話していないと思う。


 俺は話したな、とちょっと思い出すシャンガマック。

 イーアンが来て、自分の故郷の料理の話から始まり、占星術のことや植物の話をした。部族のことも、時間のある時は話していたし、今思い出せば、自分は結構、打ち明けていた気がした(※正直者だから)。


 彼女は年上だし、怒りに包まれなければ(※重要)本当にいつもニコニコして、誰にでも優しいから、話やすい人なのだ。口も堅いし、思慮深いのも、話しやすさに輪をかける。


 そんなイーアンが相手でも、フォラヴはきっと、話していないと分かる。話しやすい誰かがいたって喋らない男が、総長たちにいきなり、自分の過去に基づく話をするわけがない――



「バニザット」


「ん?」


 考えていたら名前を呼ばれ、騎士は、どうしたのかと獅子を見る(※真っ暗だけど)。


「お前は今。何を考えている(※父は勘が良い)」


 フォラヴのことだよ、と答えると、獅子はちらっと顔を横に向け、またすぐ前を向いてから『もう着くぞ』と伝えた(※後で問いただすつもり)。



 息子のお昼を抜いたことを、気にしていたヨーマイテス。


 到着するなり、魔法陣に息子を下ろし、『ここで待て』と獅子の姿で森へ消えた。シャンガマックは、とっぷり日も暮れた夜の始まり、一人、魔法陣に座り、父の親切に感謝して待つ。


「俺の先祖は本当にすごい人だった」


 うーん、と夜空を見上げて、偉大な先祖の存在に思い馳せる。ヨーマイテスが読んでくれた、立札・・・その内容を、書いておきたいなと思うが、悲しいかな。ペンもインクもない(※紙も)。


先祖()は、本物の恐れ知らずだ。そして、本物の、最高に強い魔法使いだ」


 俺はいつ、そうなれるんだろ・・・呟いて失笑する褐色の騎士は、ごろんと大の字に、魔法陣に体を倒した。

 小さな澄んだ光を灯す星空を見つめ、フォラヴが何を知っているのかを想像する。


 何も知らないことはないだろう。知っていて、だが黙り続ける。その心境も、あの男の優しさから考えれば苦しそうに思う。彼はどうしているのかなと、友達の現状が気になった。



 ヨーマイテスが戻り、寝転がっている息子に驚いたが、シャンガマックはすぐに体を起こして『大丈夫』と安心させると、フォラヴのことを考えていたと伝えた。


 父が持ってきてくれた肉を焼いている間、フォラヴの性格、フォラヴについて知っていること、そして彼自身が、この前のアギルナンでようやく、自分の世界を知ったらしい話をすると、獅子は炎から肉を出して答える。


「食べろ。焼けている・・・どうも、今回の旅の仲間は、()()()()()()()だった気さえしてくるな」


 ちらっと見た息子に、獅子は丁寧に『お前じゃない』と言うと、疑わしそうな息子の口に、爪に引っ掛けた肉を押し込んだ。

 もぐもぐする息子の、勘繰るような目つきに笑って『お前じゃないぞ』フォラヴの話だと教える。



「未熟な状態の者が必要とするのは、『成長』だ。成長には『理解』が伴う。理解は『得るもの』があってこそだ。

 言いたいことは分かるか?成長したやつらには要らない『得る』こと。今回、未熟な状態で集められた仲間は、『得る』ことで多くの謎を、これまで()()()()()()()()()()()()()へ引っ張り出している」



 父の言葉に、シャンガマックはぼんやりとした意識から、徐々にその意味を感じ始める。獅子の碧の目は、息子を見つめ『そういうことだ』と頷いた。


「お前は違うにしても(※強調)、フォラヴに限らず、皆そうじゃないか。

 ドルドレンは強いし、理解もあるし、これまでの勇者の真逆だが、肝心の()()()が常に遅い。

 イーアンだって、予想外の暴れ馬だ。女龍は猛々しさがあるものだが、ありゃ、ただの暴れん坊だろ。すぐ怒るから、学びも遠のく。頭が悪い(※男龍に聞こえるとヤバいから小声)」


「悪くないよ。頭は良いと思う」


 困った顔で訂正する息子を、じろっと見た獅子は『頭が良ければ、短気な反応なんかしないぞ』と言い返す。


「嘘みたいな速さで強くなる分、龍族からすれば大歓迎だろうが。始祖の龍の話が、現実に起こりかねないと思える。あれ(※イーアン)も、あの性質上、まだ未熟な状態だろ(※決定)。

 ザッカリアなんか子供だ。子供で参加している。しかも本人さえ、自分のことを知らないときた。タンクラッドは・・・ヘルレンドフの時も、あんな感じだったからな。あいつは未熟に思わんが。

 だが、分かるだろ?何が何でも、()()()()()()()でもあるような、旅の仲間の揃い方だ」


 シャンガマックは、父の言いたいことが何となく分かる。自分も未熟(そう)だろうな、と思うが、父が一生懸命、気遣うのが伝わるので、そこは言わないでおく。


「ヨーマイテスの感じたこと。それに沿って、続けると。

 何かの理由で出て来た魔族に、フォラヴが対応することが、まるで魔族を・・・この世界に知らしめるために必要と」


「俺はそう思う。フォラヴが探る。あいつは未熟だから、探って『得る』んだ。その過程で、魔族の存在を、俺たちが知る意味もあるんだろうと思う」


 誰の采配だろうなと、獅子は少し笑って、口を開けた。騎士は答えられず、肉を切り分けると獅子に食べさせる。



「バニザット。さっきの、老人のバニザットの忠告。ちゃんと覚えているか」


「うん?いや。覚えていると思うけれど、丸ごととは」


「今から復唱する。覚えろ。そして伝えるんだ。ドルドレンたちに」


 え?と訊ね返す息子に、獅子は『フォラヴに伝わるように、だ』と続ける。ドルドレンからフォラヴへ。


「そうでもしなきゃ、あの(なま)(ちろ)いのが動かないぞ」


「そんな言い方しないでくれ。肌が白いのは、日に焼けない体質だからだ(※本当)」


 息子に注意されて、獅子は黙った。シャンガマックは苦笑いして、獅子にまた食べさせると、自分が思い出せることをまず伝えてから、それから父に復唱を頼む。獅子は肉を飲み込み、最初から教える。




【老魔法使いの立札】内容――


 石の続きを求めて進む時。命を奪われる条件は、成長した相手のみ。石を持つ相手に奪われることはない。

 成長した相手は、龍気・精霊・妖精の気に抵抗を持つ。妖精においては別の理由あり。成長した肉体は、時として肉を持たず、どの状態も不安定で、崩すに難くない。

 相手が死ぬ前に石を生む。生む前に消し去ると、そこで終わる。

 その正体、悪意の思念と魔法の産物。形を取ると現れるが、単体。繁殖は死ぬ頃に行い、石を残して本体は死ぬ。

 この相手の在るべき世界は妖精に関わり、そこより動くことはない。しかし、道が現れる場合に動きは生じ、閉ざすに道を探すより外なし。

 道は形状に定まりはなく、写しの壁は諸刃の剣となり得る。一度閉ざせば使えず、別の道を探すのみ。

 石は相手の在るべき世界に順じ、別の世界で葬ることは叶わず。成長した相手はどの世界でも葬るに難くない。

 石を封じるに、写しの壁を使い、相手の世界へ戻すのみ。写しの壁は妖精の血で封じられる――




「書きたい」


「覚えるんだ。俺が覚えている間に」


「書かないと忘れそうだ(※弱気)」


 困った顔を向ける息子に、獅子はうーんと唸り、何か考えてやると言っておいた(※甘)。


 この後、シャンガマックは食事を終えて、父と一緒に風呂へ向かい、温泉の中で解釈を進める。


 この注意書きの最初にある、『命を奪われる条件』の部分は、過去のバニザットが、父・ヨーマイテスに宛てたとすれば、『サブパメントゥだったら、無事』と解釈出来る。


 人間は、()()()()命を奪われたのを知ったばかりだ。種が取り憑けないのが、サブパメントゥ・・・これは多分、はっきりした。


 そして種は、『写しの壁を使って戻すしかない』このことも、父が推測するように『道具』の一つなのであれば、一刻も早く探すのみ。

 それしか手がない、と先祖の魔法使いが言うなら、そうなんだろう。



「ああ」


 バシャッと顔に湯をかけて、眉を寄せるシャンガマック。

 魔物だけでも、テイワグナは今もどこかで誰かが犠牲になっているというのに、その上、意味の分からない魔族まで出て来たなんて。


 そんな息子に、(たてがみ)を洗ってもらうヨーマイテス(※獅子)は、『風呂が終わったら、ドルドレンに伝える』と言った。


「お前が悩む話じゃない。これは()()()()()()()()()()話だ」



 そして二人は、風呂から上がって洞窟へ戻り、連絡珠でドルドレンを呼び、この内容についてはヨーマイテスが直に聞かせた。


 ドルドレンは大急ぎで書き取り、何度も確認して、ヨーマイテスが『それで良い』と認めた後、連絡を終えてすぐさま、フォラヴに伝えに行った。



「寝るぞ。お前の手を離れた」


「気になるけれどね」


 良いから寝ろ、と獅子はベッドに息子を寝かせ、(たてがみ)に寄りかからせる。

 シャンガマックは、フカフカの獅子の鬣に埋もれて、フォラヴが辛そうな顔をしているのを想像し、彼が苦しまないように祈りながら、眠りに就いた。

本日、朝の回の予定でした。一日ズレで予約してしまっていたことに、たった今気が付きました(PM19時半)。ご迷惑をお掛けしました!今日も、お読み頂き有難うございます!

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