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魔物資源活用機構  作者: Ichen
新たな脅威の調べ
1242/2964

1242. 留守中の情報収集時間

 

 次の工房へ行く間に、イーアンは自分の話はまずおいて、皆の状況を知りたがった。


 ドルドレンはイーアンと一緒にいたかったけれど、自分はいつでも(※夜)一緒なんだからと、ちょっと我慢して『荷台でロゼールと話しておいで』と、皆のいる後ろへ送り出し、御者台一人。


 この間に―― バイラと駐在団員が横に付いてくれたので、手綱片手に業務に勤しむことにした(※サグマンの持たせた仕事忘れてた)。



 荷台では、オーリンとイーアン、ロゼール、フォラヴとザッカリアの5人。寝台馬車の御者に、どうしてかミレイオとタンクラッドが並んでいて、馬車は久しぶりに人数多め。


「お前は後ろでも良いんだぞ」


「私、前の荷台乗れないんだもの。満員だから。()()()()()()じゃないのよ」


 ミレイオは場所を譲るために、後ろの馬車の御者台にいる、と親方にぼやく。親方も仕方なし、一緒。御者台なら、前の荷台の会話に加われると思ってだったが、()()()()()()だと発言に気を遣う(※面倒)。


「お前もイーアンと話したかっただろうが」


「仕方ないでしょ。あの子たちの方が話したいでしょうし」


 若いのに譲る中年は、つまらないので笑顔も出てこない。前を進む馬車の荷台、5人仲良く話しているのを眺めるだけ。親方もミレイオも、『オーリンはそこじゃなくても良いような』と思っていた(※オーリン中年)。



 荷台は、そんな中年二人のもの言いたげ眼差し関係なく、キャッキャ、キャッキャ、楽しく過ごす。


「そうでしたか。では私が空に上がって、その日」


 イーアン、ロゼールの来た急な事情を知り、オーリンを見て『あなたの行動が奇想天外』と笑う。オーリンも笑って『俺もこうなるとは思わなかったよ』と答えた。


「あっという間に決まりました。大急ぎで、世話になっている工房へ飛んで、用事を済ませたんです。

 それからオーリンと一緒に、龍でここまで来ました。龍だから、こんなに運べたんですよ」


「ミンティンくらいの大きさだと、もっと運べます(※ミンティン運搬用の意識)。次回はミンティンに頼みましょう。今回は、ガルホブラフが頑張って下さいました。有難いことです。

 しかし、見事!嬉しいですね、こんなに素晴らしい武器や防具が」


「後で、バイラさんに見せてもらって下さい。鎖帷子は、サンジェイさんが作ってくれたんですよ!魔物製の鎖です。あれは、テイワグナの防具だし、ここでも見せたら通じますよ!」


 イーアンが一番驚いたのは、頼む前に動いてくれたグジュラ防具工房の、職人・サンジェイ。テイワグナ出身だとは知っていたが、まさか鎖帷子をこさえてくれたなんて!と、ビックリした。


 次に驚いたのが、オーリンが自慢げに見せた、仲間の作った弓。テイワグナ郷土資料館の歴史の弓を再現させたという、意表を突いたその行動に、イーアンはオーリンを褒め称えた(※『オーリン、クール』)。

 (やじり)はダビだと言うし、剣はサージの工房で要領を得て作り始めたことに、感無量。



 それから、ロゼールはお菓子を出して『一週間前だけど、大丈夫かな』と気にしながら、自分が焼いたケーキをイーアンに食べてもらう。


「大丈夫です。私は()()()()()()


「イーアン、その表現おかしいぞ。ロゼールからしたら、ロゼールが傷つく。一生懸命作ったのに」


 オーリンの注意に、あ、と頷くイーアンは、不安そうなロゼールに咳払いして言い直す。


「あのですね。この姿。あなた、私を一目見て『変わりましたね!』で済んじゃいましたけれど。肌の色も変わって、角もこんなになって、尻尾も」


 尻尾をぎゅうっと首に巻き付けたまま、シアワセそうにしているザッカリアを見て『尻尾もあるのに』と続け、イーアンはケーキを一切れ食べて『最高においしいです』と笑顔を向ける。


「私、龍ですから」


「はい。見て分かりますよ。どう見たって、もう()()()()()()ですよ」


 笑いたそうなオーリンにイーアンはギラッと睨み、据わった目で『ロゼール。龍はお体丈夫なのです』と真面目に教えた。


「傷つかない、とはそうした意味でした。例え、少し時間が経過している食べ物でも、お腹に影響ありません」


「便利な体ですね~。イーアンは何でも食べるけど、とうとう、そんなになったんですね」


「ぬ。ロゼール。あなたはいつも牧歌的な笑顔を下さいますが、言うことが斬新」


「有難うございます!支部にいた時と、ちょっと見た目は変わったけれど(※ちょっとで済む)イーアン、中身はそのまんまで良かったですよ!」


「むむ。中身は一緒。確かにそうです。なのに、何か気になりますよ(※成長したばっかりなのに)」


「ケーキ、お腹に平気そうなら、もっと食べて下さい(※イーアン流される)。どうぞ、食べて」


 オーリンもフォラヴも可笑しくて仕方ないが、真面目に答え続けるイーアンと、斜めに入ってくるロゼールの会話を邪魔しないよう、笑うのを堪えて黙っていた。



「ゴホン。美味しいケーキ有難うございます。とっても嬉しいです。ところで、魔物の話ですが」


 イーアンは、もう切ることもなくケーキを丸かじりしながら(※『丸ごと食べて良いですよ』って渡された)フォラヴに水をもらいつつ(※詰まる)次の情報へ促す。


 3人の騎士は、まずは虫の出たコリナリ村の話をし、『総長以外はここにいる誰も参戦していない』ことと、シャンガマックとホーミットが来たことを教える。それから、こっちを見ているミレイオ(※聞こえている人)に顔を向ける。


「ミレイオは途中から加わったらしいんです。でも、ミレイオも戦ってはいません」


 後ろのミレイオがちょっと手を振って、イーアンと目が合う。すぐに微笑んでロゼールの言葉に続けた。


「そうなのよ、私は手を出してないの。ドルドレンとシャンガマックで倒したわね」


 実は。間に合っていたし、参戦するつもりだったのよ―― 言いたいことてんこ盛りだけど、ミレイオはとりあえず簡単に肯定し、イーアンはその返答に頷く。


「内容は大体しか知りません。詳しくは総長に」


「分かりました。ドルドレンに後で聞きましょう。それから、他の魔物は」


「それは俺が話せます。フォラヴとザッカリアもそれぞれの位置で戦いました。俺は総長の手伝いをしたので、何が起こったかは見ています」


 ロゼールはムバナの町を出た後、雲の魔物が近づいて来た話をし、フォラヴは雲の上へ、ザッカリアは下へ回って対処したこと、自分は中へ入ったことを言い、驚いているイーアンに『総長もそれで中へ』と済まなそうに笑った。


 イーアンとしては、軽くでも注意をしたかったが(※危険)とりあえず無事だったので、黙って続きを聞く。

 そして、イーアンは驚いた。驚きっぱなしだが、この驚きはまた別の喜びから生じる。


「金属粉」


「そうです。でもこれは、総長もはっきりは分かっていなかったみたいで。タンクラッドさんが、再三、注意してくれました。だから俺たちは今、ここに()()()()()座っています」


「んまー・・・素晴らしい。ドルドレン、ちゃんと覚えていたのね。さすがドルドレン」


「イーアン。そこじゃない。それも大事だが、教育をもう少ししておく方が良いぞ」


 大きな声ではない呟きを、しっかり聞き取る親方(※地獄耳)は、さくっとイーアンの感動を切り捨てて、『知識を固めるべき』と助言。イーアン、無表情で頷く(※伴侶褒めたかった)。


「感動です。でもタンクラッドの意見は尤もです。危険と隣り合わせの知識はいけませんね。これから、その辺りを固め・・・て。あ、ああ、そうですよ!」


 何か思いついたように、ハッとした女龍に、皆は注目する。何かと思えば、イーアンは皆をぐるっと見渡して『ギールッフへ行きます』と言い出した。



「え。ギールッフ?ああ、そうか。イェライド!」


 オーリンが真っ先に反応し、イーアンは大きく頷く。そしてロゼールが持参した、武器防具の箱に視線を当て『ガーレニーも』と呟く。親方の表情がさっと曇った(※イヤ)。


「今日『最初に訪問した、二軒の剣工房は消極的だった』と、聞きました。先ほどの弓工房は、フォラヴが取り次いで下さったすぐ後に、オーリンが続いたから、上手く行ったのです。

 これから向かうのは、また『剣』ですけれど、午後は『防具工房区』ですから、ガーレニーに頼んで、説明して頂くのです」


「イェライドの道具はどう頼る」


 オーリンは、彼に教えたことがどのくらい進んでいるかによるぞ、と言う。


 イーアンもあれから、日が経っていないことは分かっているが、彼らの心意気、その勢いには期待できる。


「イェライドには、道具の進捗状況を訊ねます。イェライドの道具の方が、まだ()()()()()()よりは、扱うのに難しくありません。あちらでもう、製造が始まっていれば、材料を少し・・・買わせて頂けるかも。

 今後、()()()()()()使()()()と思う時が、来ないとも限りません。その時、タンクラッドやミレイオ、私やオーリンがいるかどうかも。いなくても大丈夫なように」


 教えながらでも、万が一に備えて、イェライドの道具製造を頼ろうと、イーアンは言う。


「ここでも買えそうだぞ。イェライドは、材料の状況が分からん」


 親方に言われて、イーアンもそれは承知の上。はい、と答えて『ここで購入()()()()()、それを優先する』と続けた。


 イーアンの表情から、親方はその言葉の意味を理解する。ミレイオも分かった。


()()()()()()()、気前良くないかもしれない、ってことか」


「あの子の方が、私たちより経験あるから(※断られた営業の経験値高いイーアン)」


 工房の廃材でも。突然、訪ねて来た旅人の事情を聞いて、いいよと、譲る職人はいないかも知れないと、そうした意味だと分かったため、御者台の二人は『とりあえずイェライド』『とりあえずギールッフ』に了解した。



 ギールッフの町は復興が始まったばかりなので、材料の入手も大変なのは理解している。だから、買うとしても大丈夫そうな範囲を聞いてから。

 その上で、もし問題なければ範囲内で購入して、それをドルドレンたちの備えとする。


 そして、このスランダハイの町で、もしも話を聞いてくれそうなところに出会えれば、イェライドが既に手掛けている『ギールッフの魔物対策の一つ』として、道具の紹介もしようと、イーアンは考える。


「よし。では私はドルドレンにこの話をして参ります」


 イーアンは、うん、と頷いて、尻尾を仕舞い(※ザッカリア悲しそう)唖然とする皆を置いて、馬車を下り―― かけたが、オーリンに捕まえられて『君は歩いて下りるな』と止められた。


「飛んだら目立ちます」


「動いている馬車から下りたら、転ぶだろ」


 笑ったオーリンがイーアンを片腕に抱えて、一緒に下りてやり、不服そうな女龍と一緒に御者台へ。


 行動が早いのはやっぱりイーアンだ、とロゼールは笑い、フォラヴもザッカリアも『じっとしていない』と一緒に笑ったが。ガーレニーが来るのかと、溜息をついたタンクラッドは、笑えなかった。

お読み頂き有難うございます。

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