表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物資源活用機構  作者: Ichen
精霊たちの在り方
1179/2959

1179. 微震 ~イヌァエル・テレン・龍気の懸念

投稿設定を間違えていました!遅れましたが、今日の朝の分です。ご迷惑をおかけしました!

 

 イヌァエル・テレンの朝は、緩やかに始まり、子供部屋に通い続けるファドゥは、今日もジェーナイと一緒に。



「君も大きくなってきたね。そろそろ頑張るかな」


 自分の子供で、体がぐんぐん大きくなった子に話しかけては、もうじき人の姿になる練習をしようかと、様子を見ている。ジェーナイもお兄ちゃんだから、一緒にお手伝いで回る(※後付いて歩くだけ)。


「ジェーナイ。弟がたくさん出来るよ。皆、毎日大きくなるから」


 可愛いジェーナイを抱っこして、お父さんのファドゥはニコッと笑う。ジェーナイもニコニコしてお父さんにちゅーっとして、高い位置から弟たちを見渡す。


「まだね。皆、名前がないんだ。イーアンが来たら、順番に付けてもらおう(※イーアン大忙し)」


「イーアン。どこ」


「うん?そうだね。最近来ないから・・・もう少しだと思うよ。中間の地にいる・・・って、君に言っても分からないね」


 ハハハと笑ったファドゥに、小さな男龍もハハハと合わせて笑う(※分かってない)。

 ファドゥは窓の外を見て、イーアンを思う。ジェーナイを下ろしてあげると、ジェーナイはとことこ、他の子供たちの側へ行ったので、ファドゥは窓辺へ。



 イーアンはどうしているだろう。


 連動が起きたら、彼女が対処するということで決まり、今回は誰も男龍が行かない。さっき。最初の振動があった。その振動は、間違いなくガドゥグ・ィッダン。龍気を動かす一瞬が大きく、すぐに感じた。


 連動に男龍が向かわないでおこう、と決まった流れは、ルガルバンダが()()場所も理由に大きい。

 ただでさえ、龍気の大きな女龍・イーアンだが、今回はグィードが手伝える場所にあるため、増幅相手としてグィードを呼ぶ。


 ふと思い出す―― ルガルバンダの話だと、ズィーリーは、グィードが苦手だったらしい。


 当時、ファドゥは小さかったので、そうした話はほとんど知らないが、ルガルバンダの覚えている記憶には、母が海の龍と相性が合わずに、苦労した思い出がある。


 母の時代のことで、今回のような『連動』など、ガドゥグ・ィッダンの話は上りもしないので、今回の状況は、やはり時が満ちてきているとしたことなのだろうと、男龍たちは話し合った。


 龍気を増やして、ガドゥグ・ィッダンに応じるには、ミンティンとアオファがいれば、それだけでも充分大丈夫なのだろうけれど。イーアンとグィードのように、()()()()()()というのも、目立った特徴で珍しい。

 これは使うべきとした話になって、結果、グィードが現れる場所付近である『連動』には、イーアン一人で対処する決定がされた。


「それに。彼女の理解・・・・・ 理解か」


 イーアンは、龍気を出し切るまで使ってしまう。全部消えるくらい使うので、何度も倒れた。どんなに教えても、ピンと来ていない様子だし、『分かりました』と言う割には、行動が違う(=分かってない)。


 この前。イーアンを皆で囲んで、延々と教えた時間(※イーアンが帰りたがっていた日々)。彼女はその後、中間の地で、さほど動かないで過ごすことを選んでいた。


 オーリンもいるが、彼は龍の民で、あまり誠実に女龍を支えないため(※バレてる)イーアンは自分の龍気が大きいこともあって、よく独りで行動に移ってしまう。性格もあるだろうが、それが積み重なると、本人も知らないうちに、龍気を削る。


「中間の地で回復するなんて。()()()()()()()なのだから、考えたって出来ないことなんだけれど。彼女は、体力があるうちは『回復した』と思い込む(※おバカちゃんイーアン)」


 これについては、ビルガメスが『分かっていないわけはないと思うが』の前置きを、不思議そうにしながら、一応伝えた。

 するとイーアンは『え』と強張ったので、本当に分かっていなかったのだと思う(※寝れば良くなる、食べれば良くなると、育った昭和の人)。



「私は。『龍の子』の時に・・・彼女と初めて話した、あの日。ちゃんと伝えておいたはず(※490話最後参照)」


 体力と龍気は違うものだけれど、人間の時間が長かったイーアンは、混同しやすいのか。体力は、精気に関わる。精気まで使ってしまったら、龍気が回復するのも時間が掛かる。


 男龍たちは普通のことを普通に、生まれてから一生、そうして過ごすので、龍気と精気の分け方も細かく気にはしていない。

 これは()()()もおなじで、当たり前過ぎて、言葉を入れ替えようが何だろうが、全員理解しているので、特に問題もないこと。


 他の種族を相手に話す時、精気と呼ぶ場合がある。

 龍気も精気も、相手はよく分かっていないから。龍族が龍気を顕著にまとう時は、精気と質が異なることを理解するものの、大体の相手は違いを気にしないから、なのだが。


 しかし、ここまで育っているはずの、イーアンは分からなかった(※困)。


 その分からない部分を、こっちも分かっていないから、これまできちんとした理解に繋がっていないままだったと理解したのが、双方、この前の話。


「でも。あの後は、そう簡単に龍気を出すようなことはしなかったようだし。短い時間に変わるようなことはあっても、注意していたんだと思う。

 この前は、長い時間を龍に変わったようだが(※1162話参照インクパーナ)それでもまぁ・・・昨日は来たようだし」


 昨日は来たが、明け方の魔物には龍気を使っていたから、ファドゥとしては、彼女がどれくらいの龍気を回復したか気になる。



()()を手に入れたようだが、あれもどこまで。イーアンくらいの龍気だと『龍の雫』では、焼け石に水のようにも思う」


 ファドゥは、トワォのことは知らない。でも、男龍たちが関心も示さない、小さな龍の一派『龍の雫』の存在は、母に聞いたことがあった。母は、当時彼女と一緒にいた魔法使いに、その指輪の話を教えてもらったという(※ママっ子だから、細かいことも覚えてる)。


 ふー・・・と溜息をついた銀色の男龍は、窓の外を見つめながら、次の連動の時、自分も行けたら良いなと考える。


「私は。折角、男龍になったのに。何も彼女のために手伝っていない。中間の地に降りたのは僅かしか。

 最初の発動の際に、タムズと一緒に行ったけれど、他は挨拶程度だし(※おうち出来た時)。

 ジェーナイもいるから、そんなに長居してはいけないのも分かるが。ふーむ」


 グィードがいれば大丈夫。そして、女龍は自分の龍気の様子を感じながら、下手なことには首を突っ込まず、龍の力を使う場面でのみ使う。それを学ぶ機会でもある以上。



「私が行けるのはいつかな」


 ファドゥは静かな独り言を落として、足にくっ付いて来た、ルガルバンダの子供を抱っこした。大きくなったルガルバンダの子も、ファドゥにちゅーっとして、えへへと笑う。


 暫くは―― 子供たちの世話かな、と思うファドゥ。


 子供にちゅーを返してあげて、にっこり笑うと、抱っこしたまま『君はもう、練習出来そう』と二階へ連れて行った(※ファドゥは優しいから、子供は抱っこを嫌がらない)。



 *****



 ビルガメスも自宅で、ルガルバンダとお話し中。内容は、イーアンと連動。


「さっき。()()()な。まだのようだが。

 ビルガメスは昨日、ヨーマイテスに伝えたんだろ?反応はどうだった」


「そのままだ。特に何があるわけもない。シャンガマックには通じている」


「分かるのか」


「ドルドレンたちに教えた。シャンガマックに手伝わせることを、ヨーマイテスの後に伝えてやった」


「それと・・・シャンガマックが本当に手伝うのと、どう繋がる(※え、って感じ)」


 いつも端折りがちなおじいちゃんなので、自分が理解していることは、なおざりにする傾向。ルガルバンダは、質問の答えに合っていない気がして、本当に、シャンガマックが向かったかどうか、確認すると。

 ビルガメスは面倒そうに『朝。ヨーマイテスが馬車に動いた』と答えた。


「ヨーマイテスの動きが馬車にあるとすれば、それは『シャンガマックを連れて行った』ということだ」


 おじいちゃんの説明に、えー・・・と思うルガルバンダ。それで納得出来る辺りが、曖昧なような。友達の疑わしそうな表情をちらっと見ただけで、ビルガメスはそのまま、ベッドに横になり目を閉じた。


「もうじきだ。もう、間もなく。イーアンが飛ぶだろう。

 龍に変わるとは思えないが・・・()()()に備えて。俺が向かうつもりだ」


「万が一とは何だ。龍に変わることか?それが万が一」


「そうだ。イーアンは手っ取り早く動こうとするところがある。状況を見定めて動いているつもりだろうが、人間の対処と訳が違う。イーアンは龍で、相手はガドゥグ・ィッダンだ。

 グィードが出てきて、支えてもらえば。イーアンは最初の時より楽に、ガドゥグ・ィッダンを空に戻せるだろう。しかし、余計なことをする(←龍になっちゃう可能性)気もする」


 ビルガメスは閉じていた瞼をすっと開けると、天井を見つめながら『()()()()()()女龍とはな』と可笑しそうに呟いた。ルガルバンダも、そこには笑う(※同意)。


「龍になったところで。龍気を多く使うだけなのに『龍気が大きい幅になった』と勘違いしていそうだ(※もれなく大当たり)。

 あいつは・・・何度教えても、分かったような分かっていないような」


「ハハハ。本当だな。同じようなことを、何度も繰り返しているのに。変な女龍だよな(※変=イーアン)」


 ズィーリと比べるものではないだろうが、あまりにも対極に等しい二人の女龍は、常に話題に上る。


「ズィーリーは、徹底しているようなところがあったな。よくは知らんが、何も自分からは手出しをしなかったような」


 ビルガメスがルガルバンダを見てそう言うと、薄緑色の男龍も頷く。


「あの時代。ガドゥグ・ィッダンを動かせるやつもいなかったから、こんな事もなかったしな。

 大きな問題は、勇者が勇者じゃなかったことくらいだろう(←ギデオン、伝説の勇者のはず)」


「それはなぁ・・・もう。俺にはどうも言えん。お前の怒り方が、あの時は尋常じゃなかったのを思い出すくらいだ」


 そう言って笑うビルガメスに、ルガルバンダも苦笑いでイヤそうに首を振る。『ビルガメスは笑っているが。もしドルドレンがあんな男だったら』と言いかけて、ちらっと見ると、ビルガメスの顔が凍り付いていた。


「冗談でも言うな。ドルドレンが死ぬぞ(※とばっちり)」


「『そんな男じゃなくて良かったな』と、俺は言いたかったんだよ。怒るなよ」


「ドルドレンを消した後、イーアンは連れて帰る。それで万事解決するだろう(※不穏)」


「彼はそんな男じゃないぞ。お前が祝福したのに」


 ルガルバンダに注意され、ああ、そうだったな、とビルガメスは思い出したように頷いた(※危ない)。

 笑いつつ、ルガルバンダは話を戻す。連動にビルガメスが向かうことに、賛成ではないと伝えた。


「何でだ。理由は話したぞ。未然にイーアンの」


「それは分かるが。精霊の力が。お前まで行ったら・・・シャンガマックだけでは、精霊の力の石を保護できなくなるぞ。ただでさえ、龍気の残りが凄まじい状態なのに」


 おじいちゃん。指摘を受けて、ちょっとムスッとする(※注意キライ)。


「そんなことくらい対処する。俺は龍気の手伝いで行くわけじゃない」


「お前の言い方は分かりにくい。ビルガメスは何をする気なんだ。イーアンを指導するとは言ったが」


「あのなぁ。タムズだけじゃないんだぞ、自分の龍気を()()()()()ことが出来るのは」


 ん?ルガルバンダの目が、さっと開く。ビルガメスの言葉に、すぐにあれこれ考えて『もしや』と呟くと、横になっていた体を少し起こした大きな男龍は、片肘をついた手に頭を乗せて、友達を見た。


「お前はどうも。子供の頃から、すぐに勘違いをする。すぐに思い込むというかな」


「子供の頃なんか関係ないだろう!」


「いや。関係あるぞ。俺が説明しないで向かったら、きっとお前は俺のことを『どうして負担を掛けに出かけたのか』と他の男龍に伝えかねん(※当)。

 そんなに、俺が浅はかだと思うな。全く、どんな目で見られているのやら」


 やれやれ、と言った具合の大きな男龍に、ルガルバンダは黙る(※お子タマの頃の話を今頃)。


 はーっと息を吐いたルガルバンダは、言い返そうとして髪をかき上げると、ハッとした顔を向けた。ビルガメスもちょっと目を開いて『来たな』と頷く。



「始まったな。よし、では行くかな」


 大きい体をゆったりと起こし、ビルガメスはベッドに座り直した。それから自分を見つめている男龍に微笑むと、『俺の留守の間は、ミューチェズと遊んでやってくれ』と頼んだ。

お読み頂き有難うございます。

たまに投稿設定を間違えるのですが、今朝も設定した日にちを間違えていました・・・

今後、よくよく見てから、気を付けて投稿します~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ