表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物資源活用機構  作者: Ichen
精霊たちの在り方
1175/2959

1175. ガドゥグ・ィッダンと龍族と精霊の種類の話

 

 ビルガメスとルガルバンダは、イーアンが戻ってから、少し話し合う。


 イヌァエル・テレンの夕方は、燃えるような橙色の光に、澄んだ金色の光が映り込み、青い昼の空から夜の紺色混じりの空までが段々に重なる。



 その複雑に混ざり合う美しい空の下、大きな男龍は、ルガルバンダの子供を2~3頭あやしながら(※手でぱたぱた払い飛ばし、戻ってくる子供にまた繰り返す)座った床から見上げる空に呟く。


「ガドゥグ・ィッダンの連動後。すぐだろうな」


()()()()()()ものを、求められるとは思わなかった」


「その名を知る者は、中間の地にいるはずもないが。『空の城』とは、うまく名付けたものよ」


「そうだな。精霊たちはそう呼んでいるのかもな」


 ルガルバンダも近くに座ると、お父さんに寄ってくる子供を転がし(※扱い雑だけど遊んでいる)大きくなった体で、お父さんの長い髪を噛む子供を捕まえて、イヤイヤして逃げていく子供に笑う(※ベイベ自由が好き)。


 ビルガメスの大きな体に齧りつく子供は、ビルガメスが持ち上げてぎゅううっと腕に抱えると、やはり子供は逃げたがってジタバタし、解放されてイヤイヤしながら向こうへ行く。


「かわいいな(※可愛がっているつもり)」


「そうだな。俺が留守の間。子供を頼む」


「時間が掛かるか?」


 ルガルバンダの答えに、ビルガメスは質問。そう掛からないような気がする内容だが。大きな男龍に訊ねられたルガルバンダは、少し黙ってから、彼の視線に目を合わせた。


「どこにあるのかが分からん。ガドゥグ・ィッダン全体の下なら、すぐだろうが。『真下にあって、下敷き』のような()()()とは限らないだろう?」


 友達の答えに、ビルガメスは『ふむ』と頷く。言われればそうか、と(※おじいちゃんは他人事)。ルガルバンダは続ける。


「ガドゥグ・ィッダンも、場所を定めて()()に在るわけじゃないからな。偶々、そこだっただけで。

 イーアンに聞いた話だと、精霊が求める石は元々、黒く透き通った石だという」


「それは」


「そうだ。『ナシャウニットの足跡』だろうな。精霊の力が消えないまま、ガドィウグ・ィッダンの下にあるんだから」


 おじいちゃん、ちょっと考える。ナシャウニットがテイワグナ(あの辺り)に関与していただろうか・・・ナシャウニットくらいの精霊になると、もう一人か二人は同じようなのがいる。


「『ファニバスクワンの絵』も、可能性があるぞ。ナシャウニットか、ファニバスクワン絡みの石か」


 ビルガメスに言われて、ルガルバンダは彼を見つめ『ファニバスクワンの絵』と繰り返す。おじいちゃんはルガルバンダに首を傾げ『その可能性があるとすれば』と呟いた。二人の目が、慎重な光を持つ。



(あなが)ち、無いとも言い切れないか。

 イーアンがしてくれた、精霊の話。これまで結界に使っていた石が、この前、割れたそうだ。そして今日、また魔物が近くに出たことで、割れたとか。

 この前・・・とは、ヨライデ近くで起こった連動の3度目だろう。距離が近い。

 今朝の魔物は、連動の余波で開いた『海底の亀裂』そこから生じている。コルステインが倒したらしいが、イーアンじゃ分からなかったかもな」


 四本角を撫でたルガルバンダは『ファニバスクワンの絵』と呼ぶ石の塊であれば、龍気の増減に反応することを思い、話す。ビルガメスも頷いた。


「どちらにしても、連動の関係で、龍気の影響を受けたんだろうな。ガドゥグ・ィッダンの龍気の吸収は、中間の地では()()()()する」


 ふむ、と空を見つめたビルガメスは、戻ったイーアンのことを少し考慮しながら、先を続ける。


「ふーむ、そうなってくると。()()では心配だな。ナシャウニット()()の龍であれば、まぁ。俺達でも良いが。ファニバスクワンは」


「待て、ビルガメス。だからと言って、イーアンには任せられないぞ。

 ガドゥグ・ィッダンを見せることになる。それにイーアンが、ファニバスクワンに()()()()いるかどうか、分からない」


 ルガルバンダはさっと止めて、イーアンにそこまではさせないように、と伝える。


 おじいちゃんとしても、そこは出来れば避けたいところ。

 あの知りたがりのイーアンに、一度ガドゥグ・ィッダンの存在を見せてしまえば、確実に今後、何かしらあるごとに『あれを見せろ』と、可能性をすぐに繋げるに違いない(※イーアン注意報)。


「あれもなぁ・・・()()()()()ほど寡黙でなくても良いから、もう少し大人しかったなら、まぁ。話してやれないこともなかったんだが」


 苦笑いするビルガメスに、ルガルバンダはせっせと首を振って『イーアンに求めるな』とざっくり切り捨てた(※根掘り葉掘り聞きたがる&一度断っても諦めないイーアン)。


「しかし、本当にファニバスクワンだとしたら。俺たちだと壊しかねないぞ。

 ガドゥグ・ィッダンの下に閉ざされた年月を、未だに耐えている石に、龍族が触れたらどうなるか」


「それも。()()()()()龍族がだろう?参るな・・・ん。んん?ズィーリー?はて」


 腕組みして考えるおじいちゃんに、答えたルガルバンダ。ふと、思い出す。ビルガメスの金色の目が彼を見て『何だ』と続けるように促す。



「以前。ガドゥグ・ィッダンの関係ではなかったと思うが・・・ズィーリーたちの動きで。ファニバスクワンの話があった。その時は確か、バニザットが」


「バニザット。シャンガマックの家族(※長寿から見れば大別)だな?」


「そうだ。あの男が対処していた。あの魔法使いは、龍気以外の力は動かしたんだ。サブパメントゥの力に関しては」


「ヨーマイテスか」


 理解した様子のビルガメスに、そうだ、と頷くルガルバンダ。


「バニザットは、ズィーリーの信頼を得ていた。だから龍気の絡むことに関しては、ズィーリーに」


 空はズィーリー、地下はヨーマイテスに使い分け、他の力は自分が使う魔法で、多くを対処したと教える。ビルガメスはフフンと笑う。


「抜け目ない男よ。そうか・・・当時は中和の存在が、時の剣を持つ男だけだったからな。

 今のヨーマイテスの力では、動かしにくいだろうが。今回のような場合でも、昔は対処出来たわけか。

 しかし、今回。タンクラッドの力は使えない。あれを使えば、精霊に影響が出る。あの場にあるのは、龍気と精霊の力だ」


 思い出話の機転に、大きな美しい男龍はゆっくりと頷いて、ルガルバンダが何を言おうとしているのかを察した。


「お前はもしや」


「そうだ。バニザット、今回のシャンガマックなら。

 あいつは精霊の力、ナシャウニットの加護だが、精霊の力が仲間の内で一番大きい存在だ。彼に」


「そうもいかん。そのシャンガマック。ヨーマイテスと()()()()()()()


「ヨーマイテスと?過去だけでなく。現在もか」


 驚くルガルバンダに、ビルガメスも苦笑い。


「状況だけ聞けば。親子のようだ。ヨーマイテスが育てている。あいつも次から次へと、こちらが思いつかないことを・・・まぁ、長い歳月を待って、ようやく動き出した()()のためだろうが」


「なるほど。それか。それで、あの力を得たのか。シャンガマックは精霊の強力な加護の元に居るから」


「近づくため()()ではなさそうだがな。命がけの試みだったろうし。

 ヨーマイテスの目的は一つだ。それはもう、はっきりしている。今はその話はさておき。

 シャンガマックを使うにしても、ヨーマイテスが一緒となると、一緒に向かわれたら敵わん。連動どころじゃなくなる。

 ヨーマイテスを引き離してからでなければ、シャンガマックを動かせないぞ。それにシャンガマックがどの程度、自由が利くのかも」


「ガドゥグ・ィッダンを探られては困るから・・・の話なのに。さっきから、『精霊の頼みの石』に尽力しているみたいだな」


 ハハハと笑うルガルバンダに、ビルガメスも可笑しそう。『本当だな』どうでも良い話なんだが、と笑う。



「こうしたことも起こるだろう。仕方ない。ガドゥグ・ィッダンのことは、時が来るまでは伏せておくべきだ。

 イーアンもまだ、始祖の龍ほどには届かん。まだまだ、だ。全ては時が満ちるまで。それまでは俺たちがこうして、()()()精霊の小さな願いも聞いてやることもあるんだろう」


 皮肉そうに笑うビルガメス。こんなこと在り得ないなと、一緒に笑ったルガルバンダに、『お前が行くのを変更する』と伝える。ルガルバンダも頷く。


「どうする。シャンガマックを呼ぶのか。しかし、彼に知られるぞ」


「どっちみち。ヨーマイテスがくっ付いている時点で、シャンガマックは、()()()()ガドゥグ・ィッダンに入っているんだ。

 思い出せ。この前、イーアンが『シャンガマックの意識がない(※946話参照))』と話したことを。あれは」


 ビルガメスが促す途中で、ルガルバンダは大きく首を縦に振る。『あれか』そうだったな、と理解した。


「どうするつもりだ、ビルガメス」


「急ぎらしいしな。仕方ない。俺が行く。そしてヨーマイテスを呼び出す」


 大きな男龍の言葉に、直に話すつもりなのかと目で問うと、ビルガメスは少し頷いて『その方が面倒がない』と教えた。



()()の目的はどこにあるのか、はっきりはしないが。今はシャンガマックと()()らしいんだから。

 恐らく、ガドゥグ・ィッダンを教えることはないだろう。中へ連れて行って利用するにしても、そこがどこかは喋るまい。それなら、ヨーマイテスに『お前は近づくな』と伝えてやれば良い。

 そう聞けば。ヨーマイテスも、シャンガマックに『中の話を誰にもするな』と話すはずだ」


「そう。上手く行くと思うか?」



 ゆっくり立ち上がったビルガメスは、夜の始まりに輝く星を見上げて『そうなる』と微笑み、そのまま空へ飛んだ。

お読み頂き有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ